プロのツール。プロボックス


概要

 プロボックスは、従来のカローラバン・カルディナバンに代わる商用バンとして、トヨタがダイハツと共同開発した「商用スペシャル」なクルマである。動力系統をヴィッツと共用とし、ホイールベースを伸ばし、まさに「箱」と言っていいスクウェアなボディを被せることで、コストを抑えつつも従来のカルディナバンを凌ぐラゲッジルームを実現した傑作である。リアシートを立てた状態でもフィールダーを軽く凌ぐスペースを持ち、シートを倒すとヴィッツベースとはにわかに信じられない、軽トラ並の巨大な「荷室」が現れる。このことだけとっても、プロボックスの存在意義は十分に果たされている。

 しかし、プロボックスは、スペース以外の部分でも、ベースのヴィッツとは完全に切り離された専用設計部品が採用され、ビジネスツールとしての利便性をさらに高めている。例えば、インストゥルメントパネルは(恐らくここはダイハツが作ったと思われるが)、大きなスピードメーターにペン立てやセンターテーブルといった、オシャレではないし安っぽい素材だが便利な装備が付いた専用品だし、営業車としては珍しい全車フルファブリックの新開発シート。柔らかいがホールドもよく疲れにくい逸品だ(ヴィッツファミリーでは最高のシートだろう)。また、足回りも、フロントはヴィッツ系の流用だが、リアはスタビライザー付きの専用設計。ホイールハウス以外は荷室に張り出さないように設計された、コイルスプリング採用の新開発サスだ。ボディ形状に関しても、単なる「箱」ではなく、ブリスターフェンダーとすることでできる限りホイールハウスを室内から逃がし、スクエアな荷室を実現するというこだわりよう。他にも、バンの場合はトヨタ初のコモンレール式1.4Lディーゼルターボエンジン(カタログ燃費23km/L)も選ぶことができる。ヴィッツベースとは言うものの、ほぼ全面的に専用設計。外見からはそうは見えないが、まさにコダワリのスペシャル品なのである。

 そんな「最高のビジネスツール」を目指したプロボックスだが、「走り」の面でも期待の持てるスペックを持っている。例えば、1.5LのエンジンはあのヴィッツRSと同等の110ps仕様で、車重も2代目ヴィッツRSと同じ1,030kg(FF・MT)。全高も1,510mm(FF・ワゴン)とイマドキのクルマとしては低く、重心が低い。積載時の荷重変化に対応して締め上げられたサスペンションにフロント・リアのスタビライザー。また、ロングホイールベースによる安定性も期待できる。まぁ、ビジネスツールとしては当然なのだが、MTの設定もあり、ATもヴィッツ譲りの高性能ミッション、SuperECTである。「ビジネスツール」としての一面に加えて、ヴィッツRSと同等かそれ以上の「スポーツカー」としての性能も兼ね備えている…ような期待を抱かせるのが、このプロボックスである。実際、営業マンからは「案外きびきび走る」と好評のようだ。

街乗りインプレッション(ワゴンF-EXTRA/1.5L FF)

 まず、乗り込んだ瞬間に感じるのは着座位置の高さ。ヴィッツファミリーとしては全高が低いので目線も低いかと思ったが、そうでもない。ヴィッツやistのような高めの目線だ。室内の雰囲気は暗めで、色気はゼロ。シートも見た目は平凡だが、座り心地が柔らかめでショックの吸収もよく、長時間乗っても全然疲れない、隠れた逸品である。余計なギミックがない分手の届くところに使うもの(スイッチ類等)は何でもあり、運転に集中できる。

 さて、エンジンをかける。エンジンノイズはまさに1NZといった高周波まじりのハイメカサウンドで、静粛性は高い。走り出してもその印象は変わらず、エンジン系のうるささは全くない。むしろ、タイヤによってはロードノイズが気になる程度である。エンジンパワーは、まずまず。NZ系特有の低速トルクの不足はあるし、変なマネジメントに起因するレスポンスの悪さも感じられるが、流れに乗るのはそれほど苦ではないレベル。回せばそれなりにパワーも出る。少しくらいなら回してもうるさくならないのは、さすがトヨタ様という感じだ。

 足回りは、正直硬い。マンホールの蓋やギャップを拾うとガツンとややハネ気味のショックを伴う。これはおそらくスタビライザーによるもので、特に片輪だけギャップを拾うような場面では足回りの硬さを如実に感じる。硬いはずの足回りだが、ロールやピッチングは決して小さくない。ヴィッツ系の足回り特有のヒョコヒョコしたストロークを感じ、ist同様「硬いんだけど今イチスポーティさに欠ける」という感覚がある。また、このサイズにしてヴィッツ同等の軽さが災いしているのが、フロア剛性。路面からの入力があると、足回りが突き上げた後にフロアのブルブルした「揺れ残り」を感じる。それから、インチアップするとワンダリング、つまり轍でハンドルを取られるようになる。こんなところが、一般人には「プロボックスは乗り心地が悪い」と感じられる一因であろう。

 ただし、これは1名乗車で空荷の場合。積載状態では乗り心地は雲泥の差で、どんな場面でもフラットな、とてもいい乗り心地に変貌する。また、積載状態での安定性も抜群で、ステアリングの手応えからロールの小ささに至るまで全ての操作感がワンランクアップする。これははっきり言ってものすごく驚きだ。また、それ以外の場面では、高速道路での乗り心地のよさも素晴らしい。高速域での乗り心地のよさは、やはり高速使用の多いビジネス仕様ならではの嬉しいポイントであろう。

 やはり、プロボックスはスポーツカーではなく、荷物を載せて初めて成り立つビジネスツールなんだな、と感じた瞬間である。

頭文字Dインプレッション

 さて、峠を越えて物資を届けることも多いこのプロボックス。藤原豆腐店の配達車として十分使えるかどうか、気になる(?)ところであろう。そこで、峠に持ち込んでみた。

 まず、2速主体の小さいコーナーが続く低速コースでは、エンジンパワーはそれなりに十分。かなり回しても静粛性には合格点を付けられるレベルにある。

 しかし、足回り・駆動系は、スポーツカーの域には全く達していない、というのが正直な印象だ。まず、街乗りで感じたロールの大きさは健在。ぐぐぐっとアウトに荷重をかけていくと、サスとタイヤから大きなロールが発生する。ピッチングも小さくはないから、コーナリングはかなりクルマ全体がぐわんぐわんと動く感じになり、高速コーナーではタイヤのよじれも手伝って限界に達する前の不安感が大きい。また、出口でアクセルを踏むと、アウトに荷重がかかった状態ではインリフトが発生し、インが空転してパワーがかからない(シャーシのねじれ剛性の低さも原因だろう)。MTのデキの悪さも(入りづらい)、走りに水をさしている。

 確かに車重の軽さなりの軽快感はあり、スピードも速いとは思うが、走っていて気持ちいいかというと、そうではない、というのが正直な印象である。コップの水をこぼさないように、豆腐を飛び散らせないように速く走るということは、サイドブレーキを使ったとしても至難の業であると思う。

分析と対策

 さて、このプロボックスの走りを分析してみよう。

 以上のことから考えると、「標準の車高ではフロントサスのジオメトリーが極めて悪い」「ジオメトリーが悪いままではスタビは逆効果」「積載状態の少し車高の落ちた状態の方が、プロボックスのサスが本領発揮しやすい」ということではないかと思われる。だから、考えられる対策としては

  1. 標準車高のまま、1名乗車で使うことが多いのだったら、フロントのスタビを外すとよいのでは。
  2. スタビを生かしたまま走りを高めたいのであれば、車高を落として積載状態に近い状態を作り出してやればいいのでは。
  3. インリフトによるホイールスピンを抑えるために、LSDを入れる(ヴィッツRS用のヘリカルを安く手に入れるといいかも)。

ということではないだろうかと思われる。

対策してみました。

 サスのジオメトリー効果を確かめるため、車高を下げてみた。

使用パーツ

 これらのパーツを装着した結果、フロント約4cm、リア約3.5cmのローダウンとなった。まず、見た目、悪っぽくなった(^^;)。その他、フロントのキャンバーがややネガになった。トーはちゃんと見ていないので分からない。

乗った感じ

 ここではサスのジオメトリー改善が目的であるため詳しい乗り心地等のレポートは他に譲る。まず、走ってみて感じるのは、ワンダリング性能の向上。今までは轍でステアリングが取られ、ちゃんと握っていないとどこかに飛んでいきそうだったのだが、これが見事に影を潜めた。また、ロール量も思った通りに減り、コーナーでの接地性変化がかなり小さくなった。つまり、荷重変動でタイヤがよれることによるアンダーステアがなくなり、より安心してコーナーを攻めることができるようになった。特に高速コーナーの安心感は別格で、タイヤのよれを気にすることなく、安心して入っていくことができるようになった。悪い点は、トーの変化か、舵角がやや増えたような感じがすること。まぁ、一般走行においては許容範囲の舵角であり、燃費が悪くなったりしない限りは調整の必要性を感じないが。

 ということで、結論は、プロボックスをちゃんと走らせるには、ローダウンは必須。ということだ。特にお薦めは、純正オプションのローダウンスプリング。乗り心地が劇的によくなる上に、ステアリングの手応え・走っての安心感・キビキビ感も増す。純正バネより柔らかいからショック換えなくてもいいし。

採点

個人ユースとしては、80点。車高を下げれば90点。業務用としては、ノーマルでも90点。たまに荷物を積む必要性がある人は、候補に入れるといいと思う。ただし、エアウエイブは乗用車としての資質の高い強力なライバル。よく比べた上で検討した方がいいだろう。

戻る