高橋青年のステファン・グラッペリ物語 

1「ヤング・ジャンゴ」

 遠い昔、高橋青年が20歳の頃の事です。
 寒い冬の日、偶然入った中古レコード屋で、高橋青年は一枚のレコードを見つけました。
 それは、フランスのバイオリニスト、ステファン・グラッペリの「ヤング・ジャンゴ」というレコードでした。

 そのレコードを聴き、高橋青年はとても強い衝撃を受けました。
 そしてどんどん彼の音楽世界にのめり込んでいきました。
 今思うと、この一枚のレコードとの出合いが、高橋青年の人生を変えてしまったのかもしれません。

 ジャズ・バイオリンの巨匠、ステファン・グラッペリは、1908年、パリで生まれました。
 1934年、伝説のジプシ−・ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトと共に「フランス・ホットクラブ五重奏団」を結成し、創成期のヨーロッパ・ジャズ界で、弦楽器だけのジャズバンドとして大活躍しました。

 ジャンゴが若くして亡くなった後も、ソロとして長年活動を続け、数々の名演をこの世に送り出しました。
 「ヤング・ジャンゴ」は1979年の作品。
 当時71歳のグラッペリが、若手ミュージシャンを集めてジャンゴを追悼したアルバムで、円熟の極地に達したグラッペリの素晴らしい演奏を聴くことができます。

 グラッペリの音楽と出会ってから、高橋青年は「バイオリニストになりたい!」と強く思い始めました。
 そして来る日も来る日も、バイオリンの練習に明け暮れました。

 やがて、高橋青年が大学3年生になった頃、彼は雑誌の中に信じられない記事を発見しました。
 なんとそこには「5月にステファン・グラッペリ初来日!」と書かれていました。

 80歳を越えたグラッペリが、初めて日本にやって来るというのです!
 高橋青年は、「奇跡が起きた!」と思いました。

つづく

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