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生涯学習審議会

1999/06/09 答申等
生活体験・自然体験が日本の子どもの心をはぐくむ−「青少年の[生きる力]をはぐくむ地域社会の環境の充実方策について」− (答申)

 生活体験・自然体験が日本の子どもの心をはぐくむ

生活体験・自然体験が日本の子どもの心をはぐくむ



生涯学習審議会「青少年の[生きる力]をはぐくむ地域社会の環境の充実方策について」答申


目  次

はじめに

I  子どもたちの心の成長には、地域での豊かな体験が不可欠
    (1)生活体験が豊富な子どもほど、道徳観・正義感が充実
    (2)お手伝いをする子どもほど、道徳観・正義感が充実
    (3)自然体験が豊富な子どもほど、道徳観・正義感が充実

II  子どもたちの体験を充実させるための地域社会の環境づくり〜基本的な視点〜
    (1)世界や地域を能動的に変革していく人間づくりを目指す
    (2)地域の体験を通して試行錯誤していくプロセスが、子どもを育てる
    (3)子どもたちに様々な体験の機会を意図的・計画的に提供していく
    (4)新しい人材や組織の参加により、子どもたちの体験の機会が飛躍的に拡充する
    (5)子どもたちをプログラムの企画段階から参画させるような取組により、自主性を引き出す
    (6)新しい情報手段の活用により、子どもたちへの働きかけの可能性が広がる

III  今、緊急に取組がもとめられること
    1  地域の子どもたちの体験機会を広げる
      (1)政府全体が連携し、子どもたちの体験の機会を広げる
      (2)民間企業の力を借りて、子どもたちの体験の機会を広げる
    2  地域の子どもたちの遊び場をふやす
      (1)川・農村のあぜ道・都市公園を子どもたちにとって遊びやすい場にする
      (2)大学・専門学校等の高等教育機関や専門高校の教育機能を活かす
      (3)博物館や美術館を子どもたちが楽しく遊びながら学べるようにする
    3  地域社会における子どもたちの体験活動などを支援する体制をつくる
      (1)体験活動への参加を促す情報を全ての子どもたちや親に提供する新しいシステムをつくる
      (2)新しい情報通信手段を活用して、子どもたちに直接働きかける
      (3)悩む子どもたちの相談に24時間対応できる体制を全国につくる
    4  子どもたちの活動を支援するリーダーを育てる
      (1)子どもたちのためのボランティアを紹介し、参加できる体制をつくる
      (2)学生や社会人が子どもたちの自然体験活動リーダーとなれるよう、登録制度をつくる
    5  子どもたちを取り巻く有害環境の改善に地域社会で取り組む
    6  過度の学習塾通いをなくし、子どもたちの「生きる力」をはぐくむ
      (1)民間教育事業の今後の方向性
      (2)過度の学習塾通いをなくし、子どもたちの「生きる力」をはぐくむ
    7  家庭教育を支援したり、子育てに悩む親の相談に24時間対応できる体制をつくる


     参考資料
  1  「青少年の[生きる力]をはぐくむ地域環境の充実方策について」
      (諮問文(抄)、文部大臣諮問文理由説明(抄)、生涯学習局長補足説明(抄))
  2  青少年の[生きる力]をはぐくむ地域社会の環境の充実方策に関する審議経過
  3  生涯学習審議会委員・特別委員






生活体験・自然体験が日本の子どもの心をはぐくむ

生涯学習審議会「青少年の[生きる力]をはぐくむ地域社会の環境の充実方策について」答申


はじめに

     平成8年7月の中央教育審議会第一次答申において、今後における教育の在り方について、ゆとりの中で、子どもたちに「生きる力」をはぐくむことが基本であり、「生きる力」は学校・家庭・地域社会が相互に連携しつつ、社会全体ではぐくんでいくものとして、家庭や地域社会における教育力を充実していくことが提言されました。また、教育改革プログラムにおいては、平成14年度から完全学校週5日制を実施することとされ、学校教育における教育内容の厳選と軌を一にして、家庭や地域社会における子どもたちの体験活動の推進や体験活動の場の充実を図ることが課題となっています。
   このような中、生涯学習審議会は、平成9年6月に文部大臣から「青少年の[生きる力]をはぐくむ地域社会の環境の充実方策」について諮問を受け、第1小委員会を設置して審議を行うこととしました。その後、平成10年6月の中央教育審議会答申(「新しい時代を拓く心を育てるために」)において、家庭や地域社会が子どもたちの心をめぐる問題にどのように取り組んでいくべきか具体的に提言されたことも踏まえつつ、幅広い角度から審議を進めてきました。
   その結果、日本の子どもの心を豊かにはぐくむためには、家庭や地域社会で、様々な体験活動の機会を子どもたちに「意図的」・「計画的」に提供する必要があり、平成14年度からの完全学校週5日制の実施に向けて、子どもたちの体験活動の充実を図る体制を一気に整備するため、具体的な緊急施策を提言することとしました。
   子どもたちの心を豊かにはぐくむためには、教育関係者だけではなく、私たち大人一人ひとりが、それぞれの立場で子どもの問題に関心をもち、活発な議論をしながら取組を進めていくことが大切です。本審議会が緊急にしなければならないこととして提示した取組が速やかに実施されることはもちろん、この答申をきっかけとして、私たち国民の間に、自分にできることを通じて、子どもの心を豊かにはぐくむ活動に参加しようという気運が高まっていくことを期待しています。


I  子どもたちの心の成長には、地域での豊かな体験が不可欠

  平成10年度に、文部省は「子どもの体験活動等に関するアンケート調査」を行いました。この調査は、小学校2・4・6年生及び中学校2年生合計約1万1千人等を対象としたものですが、その結果から、子どもたちが「生活体験」、「お手伝い」、「自然体験」をしていることと、「道徳観・正義感」が身についていることとの関係を調べたところ、その間には次のような高い相関の傾向がみられるという注目すべきことが明らかとなったのです。


(1)生活体験が豊富な子どもほど、道徳観・正義感が充実
  「小さい子どもを背負ったり、遊んであげたりしたこと」、「ナイフや包丁で、果物の皮をむいたり、野菜を切ったこと」といった生活体験の度合いと、「友達が悪いことをしていたら、やめさせる」、「バスや電車で席をゆずる」といった道徳観・正義感の度合いを、それぞれ点数化してクロス集計したところ、「生活体験」が豊富な子どもほど、「道徳観・正義感」が身についている傾向が見受けられました。

(2)お手伝いをする子どもほど、道徳観・正義感が充実
  また、「食器をそろえたり、片付けたりすること」、「新聞や郵便物をとってくること」、「ペットの世話とか植物の水やりをすること」といったお手伝いをしている度合いと、「友達が悪いことをしていたら、やめさせる」、「バスや電車で席をゆずる」といった道徳観・正義感の度合いを、それぞれ点数化してクロス集計したところ、「お手伝い」をしている子どもほど、「道徳観・正義感」が身についている傾向が見受けられました。

(3)自然体験が豊富な子どもほど、道徳観・正義感が充実
  さらに、「チョウやトンボ、バッタなどの昆虫をつかまえたこと」、「太陽が昇るところや沈むところを見たこと」、「夜空いっぱいに輝く星をゆっくり見たこと」といった自然体験の度合いと、「友達が悪いことをしていたら、やめさせる」、「バスや電車で席をゆずる」といった道徳観・正義感の度合いを、それぞれ点数化してクロス集計したところ、「自然体験」が豊富な子どもほど、「道徳観・正義感」が身についている傾向が見受けられました。



II  子どもたちの体験を充実させるための地域社会の環境づくり〜基本的な視点〜

  「子どもの体験活動等に関するアンケート調査」の結果でみたように、地域での体験が豊富な子どもほど、道徳観・正義感が身についているという注目すべきことが明らかになりました。私たちは、自信をもって子どもたちの体験を充実させるための地域社会の環境づくりを進めていこうではありませんか。では、地域社会の環境づくりを考える場合、私たちはどのような視点に立てばよいのでしょうか。

(1)世界や地域を能動的に変革していく人間づくりを目指す
  今、私たち日本人は21世紀という新しい時代を目の前にしています。今世紀は激動の時代であり、私たちはめまぐるしい社会の変化を経験してきましたが、数々の苦難に見舞われながらも先人の努力によって今日の繁栄を築くことができました。この間、私たちは、欧米諸国に追いつき、追い越すことを目標として努力し、豊かな生活の実現に全力を傾けてきました。そして、真面目に努力する勤勉性という私たち日本人の長所もあって、経済的には急成長を成し遂げ、奇跡とさえいわれる成功を手にすることができたのです。
  世界経済の中で大きな地位を占め、所得水準の面でも世界のトップレベルになった日本は、国際社会から政治的にも経済的にも多くのことを期待され、特に、地球環境問題、エネルギー問題、食糧問題、人権の問題など人類の英知を結集して解決しなければならない問題について率先して取り組むことなどが期待されています。私たちは、これまでのように欧米諸国を参考にするだけではすまない状況にあり、自分たちの手で新しい科学や技術、社会システム等を創り出し、今までになかったフロンティアを開拓していかなくてはならないのです。
  このような状況を踏まえると、目前の21世紀に生きる私たちにもとめられるものは、国際社会や地域で地球環境問題等大きな課題に積極的に取り組み、世界や地域を能動的に変革していくことができる自立した人間像でしょう。私たちには、全世界の人々が共に平和と幸福を享受して生きていける世界を創っていくという夢のある大きな課題が与えられているのです。子どもたちには、地域を愛し、国を愛し、世界をよりよくしていこうとする心をもった人間に成長してほしいのです。このため、子どものころから、自分で課題を見つけたり、自分で学び自分で考えることのできる資質や能力、それを支える正義感や倫理観等の豊かな人間性、文化を大切にする心、たくましく生きるための健康や体力等を備えた「生きる力」を培っていかなければなりません。
  また、一方、日本人に欠けている点として、自己主張がはっきりしない、自分で判断することを避ける傾向があるという指摘をよく耳にするところです。このような傾向は、これからの時代を生きていく日本人が克服していかなければならない課題です。子どもの頃からしっかり自分の意見を持ち、意見の違う人の主張も受け入れながら、合意点を見つけ出して物事を決めていく。自分の行為の結果に責任を持ち、周囲のせいにしない。このような態度や姿勢を積極的にはぐくんでいくことによって、国際社会に通用するコミュニケーションの力も身についていくでしょう。

(2)地域の体験を通して試行錯誤していくプロセスが、子どもを育てる
  私たちは、このような21世紀の日本人に必要とされるものを、どのような環境で子どもたちにはぐくんでいくことができるのでしょうか。子どもたちに必要な「生きる力」は、生きた知識の積重ね、つまり様々な体験や活動を通して子どもたちが主体的に考え、試行錯誤しながら自ら解決策を見いだしていくプロセスにおいてこそはぐくまれるものだと考えます。そして、そこには子どもたちの心を揺さぶるような様々な体験、様々な人々との関わり、交流が必要です。
  このように考えると、子どもたちの「生きる力」をはぐくむ環境は、学校はもとより身近な人間共同体である地域社会にこそもとめられるのではないでしょうか。私たちはまず自らの足元を見つめ直し、自らが生活する地域の身近なところから子どもたちの置かれている状況について考え直してみることが必要なのです。また、その際、地域社会を構成する単位である家庭の問題を地域社会との関わりの中でとらえていくことが大切です。家庭は、子どもたちが最も身近に接する社会であり、すべての教育の出発点となる場です。その意味で、家庭教育のありようが、ひいては地域社会の子どもたちの活動に影響を与えることを私たちは自覚し、家庭の役割をしっかり果たしていかなければならないのです。
  子どもたちが、地域社会の中で大人とともに、ボランティア活動、まちづくり、地域行事等に参画する機会が豊富に準備されており、地域社会の一員として自分たちの住む地域社会の問題を自分のこととしてとらえる機会を持てるようにすること、大人たちと夢や希望を共有できるようにすること、そのような経験の積重ねが自ずと豊かな人間性をはぐくみ、主体的な姿勢を身につけることにつながっていきます。このような取組が広がりを持つことによって、子どもたちが成長したとき、地域社会や自分の国の問題だけでなく、世界が直面する問題に積極的に取り組む意識や意欲が芽生えるものだと考えます。
  しかし、今日の子どもたちは、地域社会の中で、全身で日の光をいっぱいに浴びるように直接体験の機会が豊かに得られる環境に置かれているのでしょうか。子どもたちは、地域社会の様々な大人たちとの関わりの中で、汗をかきながら伸び伸びと活動に取り組むことができるようになっているのでしょうか。残念ながら、子どもたちは、このような環境に暮らしているとは言い難いと思います。いじめ、非行等の問題行動やその背景にあると指摘されている子どもたちの間の正義感・道徳観の低下は、子どもたちの置かれている今の状況を映し出しているのではないでしょうか。

(3)子どもたちに様々な体験の機会を意図的・計画的に提供していく
  子どもたちの調和のとれた人間形成を図るためには、その発達段階に応じて達成すべき課題があるといわれています。乳児期には信頼感を育てるため、親や周囲の人は乳児に対し一貫した対応をとることが必要ですし、幼児期には自発的な意思や行動を尊重し、幼児が失敗しても受けとめてもらえる体験を通して安定感の中で自立に向かっていけるよう配慮しなければなりません。また、少年期には自己決定の機会に配慮し、自発性や活動性を養い、積極性、創造性、連帯性などの基礎をはぐくむことが必要であるといわれています。子どもたちの「生きる力」は、学校での組織的、計画的な学習のほか、家庭を含む地域社会で、親子の触れ合い、友達との遊び、地域の人々との交流などの様々な体験や活動を通じて、これらの発達課題を適切な時期に達成することによりはぐくまれるということができます。
  子どもたちが地域社会で活動する時、自然や社会の現実に触れる機会をもっと豊富に持てるようにすることが必要です。子どもたちは具体的な事物とのかかわりをよりどころとして、感動したり、驚いたりしながら、考えを深める中で、自然の姿、実際の生活、社会の在り方等を学んでいくからです。そして、そこで得た体験をもとに、学校で学んだ知識について、自分のものとして理解を深めていくことができるのです。子どもたちにとって、体験は成長の糧、いいかえれば「生きる力」をはぐくむ上で欠くことのできない栄養素であるといってもよいでしょう。
  しかしながら、今日の子どもたちの生活体験、社会体験、自然体験は大変貧弱なものとなっています。特に、学年が上がるにしたがってゆとりのない生活を送るようになり、これらの体験から学ぶ機会はますます減少しているのが現状です。現代社会では、様々な体験の機会を子どもたちが日常的に得ることができた時代とは違い、あえて子どもたちに活動や体験の機会を提供することが必要となっています。私たちは、子どもたちの体験機会の充実という課題に、意図的・計画的に取り組んでいかなければならないのです。
  ひるがえって、大人社会についてみると、物質的な豊かさや便利さを追いもとめ続けてきた結果、多くの人々が「企業社会」なるものに埋没してしまい、職場の同僚とのつき合いやサービス残業に追われ、子どもとすらゆっくり話をする時間も持てない状況に陥っていることは、よく指摘されるところです。さらには、社会全体の利益や秩序よりも所属する特定の組織や個人の利害得失を優先するといった公共心や正義感の欠如、自らの発言や行為に責任を持つことなく、他人任せや他者へ責任を転嫁する姿勢、他者との出会いや交流から得られる心の豊かさよりもモノ・カネ等の物質的な価値や快楽を優先したり、専ら利便性や効率性を重視するといった風潮があります。このような社会一般の風潮を見るにつけ、大人社会は、今まさに「次世代をはぐくむ心を失う危機」に直面しているといってよいと思います。
  いまや、大人が、地域社会で子どもと積極的に関わっていない状況、なかでも会社勤めの親が子どもとゆっくり話をする時間も持てない状況を根本から見直し、国民皆がそれぞれの立場で次代を担う子どもたちを豊かにはぐくむために努力する社会に変わっていくために、自らの考えや行動を改めなければならない時期にきているといえるでしょう。私たち大人は、まず自分自身のこれまでの生き方を改め、大人同士が互いに手を携えながら、この危機を乗り越え、子どもたちに「生きる力」をはぐくんでいかなくてはなりません。行政には、関係団体、民間企業等や地域社会の大人たちが、それぞれの立場から子どもたちへの働きかけができるよう、コーディネーターとしての機能を発揮することが期待されます。
  完全学校週5日制が、平成14年(2002年)度から実施されます。完全学校週5日制は、家庭を含む地域社会での子どもたちの生活時間を増やすことによって、子どもたちにゆとりを確保し、地域社会での生活体験、社会体験、自然体験の機会を充実させることを目的としています。学校外における様々な体験が、子どもたちの「生きる力」をはぐくむための重要な鍵であるとされ、子どもたちの生活の在り方や学習の環境を大きくかえる完全学校週5日制を目前にした今をおいて、家庭や地域社会の教育力を充実させるチャンスはないのではないでしょうか。私たちは、この機会を逃すことなく、家庭や地域社会の教育力を充実させるための体制を一気につくりあげていくことが必要なのです。この点については、既に文部省において、完全学校週5日制の実施に向けて、平成13年度までに地域で子どもを育てる環境を整備し、親と子どもたちの様々な活動を振興することを目的とした「全国子どもプラン(緊急3カ年戦略)」の策定が進められていますが、私たちはこの報告が提言する方向に沿って施策が展開されるよう大いに期待しています。

(4)新しい人材や組織の参加により、子どもたちの体験の機会が飛躍的に拡充する
  地域には、若者から高齢者まで様々な年齢層の、様々な職業や活動をしている大人たちが住んでいます。また、地域には年齢の異なる子どもたちのグループ・団体も結成されています。地域社会には、子どもたちが学校や家庭の中だけでは体験することのできない様々な体験の機会があり、格段に豊富で生きた活動や体験の機会を提供できる可能性を秘めているのです。まさに地域社会は子どもたちの「心の教育」のための素材が眠る宝庫だといえるでしょう。
  しかしながら、これまで、子どもたちに体験の機会を提供する取組に参加しているのが、一部の大人に限られるという問題点が指摘されてきました。これでは、地域社会がもつ可能性を十分に活用しているとはいえません。今後は、PTAや子ども会の活動においても自ら積極的に関わろうとしなかった保護者、子育てを終えた人々、これまで子どもたちの活動に関わりや接点がなかった社会人、高齢者、学生など地域の人々が気軽に参加してみようと思えるような試みが是非もとめられるところです。また、近年、心の豊かさをもとめて、大人たちがグループをつくり多様な分野で生涯学習、ボランティアや文化・スポーツ活動を楽しんでいます。これらのグループの多くは同じ目的や興味・関心によって結びついており、中央教育審議会第一次答申が提示する「第4の領域」の活動といえるものです。私たちは、このような大人たちの多様な活動に、子どもたちを巻き込んでもらうことを期待しています。
  実際、地域ぐるみで子どもたちを育てる素晴らしい活動をしている事例も数多くあります。それらの地域では、もっと多くの大人たちが参加できるようにしていくことを、さらに、このような地域ぐるみでの活動の輪が全国津々浦々に広がっていくことを私たちは願っています。私たちは、大人たちが子どもたちと共に生き、学び、成長していくことができるような地域社会づくりを提案したいのです。
  子どもたちの活動にかかわる地域の大人の参加を促す環境づくりが必要であることは、これからの学校運営にも当てはまります。中央教育審議会は、平成10年9月、公立学校の校長が学校運営に関し学校外の有識者等の意見を幅広く聞き、必要に応じ助言をもとめる「学校評議員」の設置を提言しています。これは、学校運営に保護者だけでなく様々な分野で活躍している地域の大人たちの協力を得ることが不可欠であると考えたためです。学校で子どもたちの悩みを受けとめる「心の教室相談員」になるのも地域の大人たちですし、いじめ、暴力行為といった子どもたちの問題行動への取組に地域の大人たちが協力することによって、学校の「荒れ」がおさまったという例もみられます。また、平成14年度から実施される新学習指導要領では、「総合的な学習の時間」はもとより各教科でも体験が重視されています。地域の大人たちが特別非常勤講師や学校支援ボランティアとして学校の授業に協力する姿がどの学校でも日常的にみられるようになれば、そのねらいとする教育を実現していくのに大きな力となるでしょう。地域で子どもたちにものづくり、伝統文化、農業や商業等の体験ができるよう指導してくれる人たちがたくさんいるようになれば、今後、学校でも子どもたちの先生になってもらうことが期待されるのです。
  学校は、地域での子どもたちのボランティア活動、文化・スポーツ活動、自然体験や職業体験に関する情報の親や子どもたちへの提供やこれらの体験の評価を積極的に行うべきです。評価については、高等学校でボランティア活動や就業体験等について広く単位として認定できるようになりました。現在、生徒の学校外における体験的な活動のうち単位認定できるものについて、全国高等学校長協会からガイドラインが示されていますが、今後は、各都道府県等において、地域の実情や生徒の実態などに応じて、ガイドラインを作成し、実社会での就業体験など生徒の学校外における活動の成果を単位として認めるようにしていくべきです。また、このように学校外の体験活動を広く正規の教育として認めるという柔軟で弾力的な高等学校教育を実現するのに、しばしば地域の人々の意見や働きかけが実際の力になることが多いことから、例えば「学校評議員」を活用して、積極的に地域から地元の高等学校に対して要望、注文など具体的な意見表明を行ってもらうことを期待します。
  私たちは、これまで子どもたちの活動に参加しなかった地域の大人や親の参加を提案しました。そのうえで、私たちは、子どもたちに様々な体験の機会を意図的、計画的に提供していくことを提案していますが、それには、これまでのように文部省、教育委員会、青少年団体等の社会教育団体だけの取組では、その広がりに自ずと限界があります。しかし、他省庁、地方自治体の教育委員会以外の関係部局・機関、教育関係以外の民間団体や民間企業という新しい組織の力を借りることができれば、子どもたちの体験の機会や場を飛躍的に拡充することができます。例えば、農村、商店街といったコミュニティーや河川、森林、国立公園、都市公園といった資源、民間企業の工場、事務所が、他省庁、地方自治体の関係機関、関連の民間団体や民間企業の協力により、子どもたちに開かれれば、従来では考えられなかったような展開が可能になるのです。
  このため、文部省は他省庁と、教育委員会は首長部局と連携することによって、また、関連の民間団体や民間企業の協力を得ることによって、具体的な施策にまで築き上げる必要があります。その際重要なことは、これらの新たな組織が既にもっている資源をできるだけそのまま子どもたちのために開いてもらう、あるいは、当該組織の本来の仕事の一環として取り組んでもらえるようにするということであり、そのこと自体がこれらの組織にとってのメリットになるようにするということです。このような施策になることによって、子どもたちに通常では得難い体験の機会を提供できることになるだけでなく、これらの組織の積極的かつ主体的な取組を可能とし、さらに広がっていくことが期待されるのです。

(5)子どもたちをプログラムの企画段階から参画させるような取組により、自主性を引き出す
  子どもたちの体験活動は、子どもたちに「生きる力」をはぐくむ有効な手段です。そのためには、子どもたちが主体的に考え、試行錯誤しながら自ら解決策を見いだしていくプロセスが重要になります。しかしながら、現実に意図的・計画的に子どもたちの体験機会の拡充を進めていく上で、プログラムを計画する大人がその点を忘れている例が多々見受けられます。大人が真剣に子どもたちのことを考えて計画しているにもかかわらず、そのことがかえって子どもたちの自主性や自発性を失わせる結果に終わることもあるのです。
  例えば、地域行事の祭りで、法被をはじめ大人たちがすべて用意し、子どもたちはただ順番におみこしをかつぐというのでは、自ら参加しているという意識はなかなか持てないでしょう。また、まちの青年たちが子どもたちのために周到な自然体験プログラムを用意し、子どもたちを遊ばせたとしても、子どもたちよりも青年たちの方がより感傷的になってしまったというのでは、誰のためのプログラムなのかわからなくなってしまいます。これらの例では、子どもたちもそれなりに楽しんでいるのでしょうが、大人が準備したプログラムの上に乗って活動しているだけで、「お客さん」になってしまっているといえないでしょうか。
  私たちは、子どもたちに様々な体験の機会を意図的・計画的に提供していく際に、子どもたちが自分たちで考え、自らかかわることができるような取組になっているか常に点検していく必要があります。そのためには、なんらかのかたちでプログラムの企画段階から子どもたちを参画させるという姿勢が大切です。企画段階から参画した子どもたちは、創意工夫することによって創造性を培うことができますし、プログラムの内容も子どもたちのニーズに沿った豊かなものになることが期待されます。地域の祭りに子どもたちの希望を募り、いくつかのアイデアを採り入れたり、採り入れられなかったアイデアについても危険性の面などその理由を納得できるように説明すれば、子どもたちも祭りに参加しているという意識を持てるのではないでしょうか。祭りは地域の伝統行事ですから、子どもの意見を採り入れた取組が困難な場合もあるでしょうが、子どもが参加できる部分について工夫するなど方法はあるのです。
  また、子どもたちを時間で追い立てることがないよう、活動プログラムに「ゆとり」を持たせ、子どもたちの試行錯誤を積極的に促すような配慮も必要です。子どもたちは、「ゆとり」の中でプログラムに主体的に取り組むことが可能になり、その体験を通して主体的な人間性を身につけることができるようになるでしょう。さらに、異年齢の子どもたちが切磋琢磨できるような取組にすることによって、主体的に集団をリードしたり、積極的に自らの役割を果たしていく責任感をはぐくむことができます。

(6)新しい情報手段の活用により、子どもたちへの働きかけの可能性が広がる
  情報メディアへの過度ののめり込みは、屋内への閉じこもりに現れるような人間関係の希薄化、直接体験の不足、心身の健康への影響などの問題に拍車をかけるおそれがあることが指摘されています。その結果、人間関係をつくる力、共感して思いやる心などが子どもたちに十分はぐくまれないことや、死や生に関する現実感覚が薄れるのではないかといったことなどが懸念されています。また、仮想現実の世界が広がることにより現実との混同を生じるなど、子どもたちの健やかな心の成長に大きな影を落とすおそれがあると指摘する声もあります。
  しかしながら、高度情報通信社会では、子どもであっても、大人と同様に多様な情報に簡単に触れたり発信したりすることができ、両者の垣根は極めて低くなります。このことを良い方向に生かせば、子どもたちへの働きかけの可能性が広がり、子どもたちの知性や感性を触発し、日常生活の幅を広げ、それを豊かにすることができます。子どもたちに身近な地域社会の図書館、公民館等を全国的にマルチメディアで結べば、地域社会の中で地理的に離れた場所にいる人たちと直に交流することができ、自分たちの地域とは、産業、人口、歴史、気候、風土など全く異なった条件の中で暮らす人たちの生活に接することができます。マルチメディアを通して主体的に楽しみながら学ぶことができるよう、子どもたちの「遊び感覚」を刺激するような取組も有効かもしれません。
  また、情報化社会では、情報通信の高度化に対応できない、いわゆる「情報弱者」は、生活していく上で不利な状況に置かれることになるといわれていますが、21世紀を生きていく子どもたちにとって、マルチメディアを活用する機会の充実は、誤った情報や不要な情報に惑わされることなく、真に必要な情報を取捨選択し、自らの情報を適切に発信し得る能力を身につけていく上でも意義のあることだと考えられます。

III  今、緊急に取組がもとめられること

1  地域の子どもたちの体験機会を広げる

(1)政府全体が連携し、子どもたちの体験の機会を広げる
  都市化、産業構造の変化等により、地域において子どもたちが田植えなどの農作業を経験したり、工場で職人さんの働く姿を見たりすることも少なくなってきました。地域社会の結びつきが弱まったことにより、子どもたちが地域の伝統行事に参加することも稀になり、地域のお年寄りや若者に交じって昔から受け継がれてきた行事をやり遂げたときの満足感や地域社会への郷愁を感じることもほとんどなくなりました。このように、一昔前の地域社会の状況であれば、子どもたちが自然に体験できたことで、今日ではできなくなってしまった日常体験が非常にふえています。
  また、都市化や少子化が進んだことにより、地域で集団的遊びが成立せず、子どもたちが異年齢集団の中で切磋琢磨しながら過ごす機会も格段に少なくなってきています。かつてのように、子どもたちが近所の大人に誉められたり、叱られたりすることが日常的に見られることもなくなりました。他方、子どもたちが学校の成績だけで評価されることが多い状況に置かれていることもよく指摘されるとおりです。これらのことは、子どもたち同士の間で、互いに多角的に評価しあう場面が乏しくなり、子どもたちが自分自身の価値を自ら見出すことが難しくなってきていることを意味しています。地域社会で大人が子どもたちに積極的にかかわり、同学年の子どもたちとのつながりだけでなく、異年齢集団の中で多様な活動を行う機会と場を子どもたちに提供することが大切です。そのような機会を充実させることによって、子どもたちは学校での勉強とは異なった活躍の場が得られ、そこに子どもたち一人ひとりにとって多角的な評価が生まれること、そのことがそれぞれの子どもたちに自信を持たせ、他者に対する思いやりの心や協調性などの社会性がはぐくまれることにつながるでしょう。
  いまや私たち地域の大人がこぞって意図的・計画的に、子どもたちを様々な職業体験やものづくり、伝承遊びなど地域に根ざした活動に参加させ、子どもたちがこれらの活動を通して、郷土への理解や愛着を深め、しつけを体得し、新しい職業観や将来への夢をはぐくんでいくことができるようにしなければならないのです。
  地域社会における様々な活動の中でも、自然体験は、子どもたちにとって、自然の厳しさや恩恵を知り、動植物に対する愛情をはぐくむなど、自然や生命への畏敬の念を育てたり、自然と調和して生きていくことの大切さを理解する貴重な機会となります。さらに、自然の中での組織的な活動は、きまりや規律を守ること、友達と協力することなどの大切さや自ら実践し創造する態度を学ぶことができるなど、まさに総合的な学習の機会ということができます。
  子どもたちの自然体験活動については、これまでは学校引率中心の自然体験プログラムが広く見られましたが、学校が教育課程の中で全員一斉に実施するプログラムには日程や内容において限界があると指摘されています。子どもたちの自然体験の機会の充実は、むしろ地域社会が中心となり幅広くその機会を提供できるよう取り組むべきです。地域社会が担い手となる子どもたちの活動は、自然体験の先輩である地域社会の大人たちとの交流や学年を超えた異年齢の子どもたちが一緒に活動できるといった観点からも、優れた内容を提供することが可能ですし、子どもたちの自然体験活動に実績のある青少年団体の協力を得ることもできます。
  他方、自然体験活動は、多くの省庁でそれぞれの観点から積極的な取組が進められており、省庁間で連携した体験プログラムとすることによって、その活動の広がりや深まりが可能となります。文部省や教育委員会だけで進めるのではなく、各省庁や地方自治体の各部局の既存の組織・資源・マンパワーと連携して進めることができれば、子どもたちが通常得難い多彩なプログラムを提供することができます。例えば、農業体験は、農業の重要性や苦労を知るだけでなく、働くことの大切さや環境を守ることの意義を学び、毎日口にする食べ物あるいは健康について考えるきっかけを与え、生きるものに対する思いやりの気持ちをはぐくむことのできる貴重な機会となります。農林水産省は、このような食農教育の意義を提唱していますが、文部省が農林水産省と連携して、農村で都会の子どもたちを受け入れて農業体験の機会を提供できれば、中山間地域の活性化にもつながるのです。関係省庁と連携することにより、最近、自然体験活動の中で大きな注目を集めている長期の自然体験活動、国立公園での環境保全活動、森林の保全活動等に子どもたちを参加させることも可能になるのです。

    【当面緊急にしなければならないこと】
    ◎  全国津々浦々で地域に根ざした子どもたちの体験活動を展開する
      地域に古くから伝わる伝承遊びやものづくりなど地域の文化を伝える活動、冒険的な活動や自然体験活動、世代を超えてのボランティア活動やお年寄りや障害をもった人たちとのふれあい体験活動、地域に住む外国人との交流等、全国津々浦々で地域に根ざした子どもたちの体験活動を展開する。実施に当たっては、市町村におけるPTA、青少年団体の関係者、企業・地場産業関係者、自治会の代表者、その他関係機関・団体(JA、JC、老人クラブ等)、教育委員会等行政関係者などで構成されるネットワーク組織をつくって進める。一過性のイベントでなく継続的な事業となるよう配慮する。また、青少年団体等の地域に根ざした特色ある活動への取組を促進する。

    ◎  国立公園管理官のお手伝いをしながら、環境保全の意義や苦労が学べる機会を提供する
      国立公園で環境保全活動を担い、自然を守るため大変な努力をしている国立公園管理官(パークレンジャー)やパークボランティアに子どもたちが同行して、パトロール、一般利用者への指導啓発、登山道、海辺等の清掃・維持補修、植栽・種子散布などの植生保全、動植物生息調査などの活動を体験できる機会を提供する。子どもたちは、環境保全の意義や国立公園管理官やパークボランティアの苦労を学び、倫理観、思いやりの心などの豊かな人間性をはぐくむことができる。(環境庁と連携)

    ◎  子どもたちが、農家やユースホステル等に長期間宿泊して、自然体験、農作業等を体験できる機会を提供する
      子どもたちに、少しでも長く豊かな自然体験をさせるため、施設を新たにつくるのではなく、農家やユースホステル等既存の施設を活用し、夏休みに2週間程度の長期間宿泊して、自然体験、農作業等の勤労体験、環境学習、地域の伝統行事への参加、レクリエーション等が体験できる機会を提供する。(農林水産省・日本ユースホステル協会と連携)

    ◎  子どもたちが、植林・下刈り等を体験しながら、森林保全の苦労や森林文化が学べる機会を提供する
      地域の生活環境や文化の形成に深い関わりをもつ森林を守る活動をしている森林インストラクターに子どもたちが同行して、植林・下刈り等の森林づくり活動、森林環境学習、野鳥観察、木工・炭焼き等のものづくりなどを体験しながら、森林保全の苦労や森林文化が学べる機会を提供する。(林野庁・PTAと連携)

    ◎  子どもたちや親子が地域でスポーツを楽しめるきっかけづくりを行う
      子どもから高齢者、初心者からトップアスリートまで、様々な年齢、技術・技能の住民が、多様なスポーツに親しむため、住民参加で運営される総合型地域スポーツクラブ、それを支援するための広域スポーツセンターを育成したり、プロスポーツ選手などの協力を得て子どもスポーツ教室を開催するなどして、子どもたちや親子が、異なる年齢の人々とともに各種のスポーツや健康プログラムを楽しめるきっかけづくりを進める。
      また、子どもたちや親子が安心してスポーツに親しめるよう、スポーツ安全保険等について周知し、その活用をすすめる。

    ◎  地域社会における子どもたちの文化活動を充実させる
      子どもたちが、地域社会で、ミュージカル、オーケストラ等の舞台芸術や美術等の優れた芸術文化、民俗芸能や伝統技術等のふるさとの文化に触れることができるよう、学校、文化施設等の相互連携を密にし、子どもたちが自ら参加する文化活動や鑑賞の機会を広げる。 


(2)民間企業の力を借りて、子どもたちの体験の機会を広げる
  平成11年2月、PTAが、東京都内の2カ所の商店街で、小・中学生が商業活動体験に取り組むモデル事業を実施しました。子どもたちは、薬局、花屋、おもちゃ屋、食堂などの中から自分が働きたい店を選んで、レジ打ち、商品の陳列、注文受けなど様々な体験をしました。参加した子どもたちの顔は、それぞれにやり遂げたあとの充実感に満ちあふれ、子どもたちからは、働くことの大変さや喜びが実感できたという感想も聞かれました。また、お客さんからは励ましの声がかかるなど、地域の大人が地域の子どもに目を向ける契機ともなりました。
  現代社会では、子どもたちが接する大人は、極端にいえば、家族や学校の先生だけというケースが増えてきています。以前ですと、お使いに行って、商店街のいろいろなお店の人とその店の様子を見ながら話す機会がありましたが、大型スーパー等の出現により、そのような機会も減ってきました。近所のいろいろな職業を持つ人たちから声をかけられたり、叱られたりといったことも少なくなりました。親も含めて生活圏から離れた会社勤めの人々が増え、いろいろな職業の大人の働く姿を見ることもなくなってきています。このような状況において、子どもたちに商店街を開いてもらうことの意義は極めて大きいのです。
  今日、昔ながらの中心市街地の中には、その活性化や振興が課題となっているところが多くなっていますが、商店街が子どもたちを受け入れる活動を通して、子どもたちの家族や友達だけでなく、地域の人々が商店街を訪れ、商店街のよさに改めて気づくきっかけともなります。このように、商店街が子どもたちに開かれれば、子どもたちは日常の生活では得難い体験ができるだけでなく、商店街としてもそのアイデンティティーづくりやまちづくりの契機となることが期待できるのです。
  また、様々な業界の民間企業に、その工場、研究所や事業所を子どもたちのために開いてもらえば、極めて有意義な機会を子どもたちに提供することになります。例えば、保険業界が週末、子どもたちや親子のために事務所を開き、保険についての体験学習の機会を提供すれば、子どもたちは保険の仕組みや自己責任の重要性を生きた知識として学習することができるでしょう。子どもたちにとっては、教科書でよりも、身近なものとして保険制度を深く理解できることになるのです。このような取組は、民間企業に企業メセナのような社会貢献事業に新たに取り組むことをもとめ、景気の影響を受けやすい新たな負担をお願いすることにもならず、むしろ実のある広報にもなるはずです。
  さらに、民間企業は従業員によって支えられていますが、従業員の家庭生活が安定していることや子どもが健やかに育っていることは、活力ある企業活動を営んでいくうえで基本となることでしょう。そこで、民間企業が従業員の家族やその子どもに自然体験、職業体験など、家族が一緒になって活動できるよう積極的に促していくことは、従業員の家庭にうるおいをもたらし、それが従業員の人々を元気づけ、必ず企業自身の活力につながります。このような取組はそれぞれの民間企業において極めて重要になっていくのではないでしょうか。この点、労働界における取組にも期待されます。
このほか、自然体験についても、子どもの体験不足が指摘されており、その体験機会を飛躍的に拡充していかねばなりません。そのためには、青少年団体や地域での取組が広がることに加えて、旅行業界による自然体験活動への取組が重要となります。このため、多彩で良質な自然体験プログラムが旅行業界の手で提供されることになるような仕組みが必要となるでしょう。

    【当面緊急にしなければならないこと】
    ◎  子どもたちが商店街で様々な商業活動を体験し、しつけも体得できる機会を提供する
      子どもたちが、夢や希望を抱いて将来の進路について考える機会を持ち、しつけも体得できるようにするため、PTAや子ども会の活動の一環として、商店街で子どもたちを受け入れてもらい、実際に働きながら商業活動を体験する機会を提供する。子どもたちは、商業活動を通じて、挨拶が人とのコミュニケーションづくりに役立つことや、働く人の生き甲斐や生産活動に対する心構えなどを身につけることができる。(中小企業庁・全国商店街振興組合連合会・PTA・子ども会と連携)

    ◎  産業界の協力を得て、企業が従業員の家族や子どもに体験活動へ参加するよう促すことを普及奨励する
      産業界の協力を得て、民間企業が、従業員の家族やその子どもが農家等に宿泊して農作業体験・自然体験をする機会へ参加することを促す。
      また、民間企業が、工場、研究所や事務所などの施設を子どもたちや親子に開放し、体験に基づいた学習ができる機会を提供する。(経済同友会等との連携)

    ◎  旅行業界と青少年団体等との連絡会をつくり、自然体験プログラムを充実させていく
      子どもたちの自然体験の機会を充実させていくには、民間企業、特に旅行業界の取組が重要となることから、旅行業界と青少年団体や自然体験・環境教育に取り組んでいる民間団体との間で連絡会(コンソーシアム)の結成を進め、旅行業者の主催する子どもや家族向けの自然体験プログラムを質量ともに充実させていく。 


2  地域の子どもたちの遊び場をふやす

(1)川・農村のあぜ道・都市公園を子どもたちにとって遊びやすい場にする
  私たちは、子どもたちに、21世紀を主体的に生きていくためにふさわしい心を持ってほしいと願っていますが、そもそも心は教えるものではなくはぐくまれるものです。子どもたちは遊びや体験活動の中から自分のやりたいことを見つけ、それに夢中になることにより自らの心をはぐくんでいきます。今私たちにとっては、子どもたちに「いかに勉強させるか」と同様に、「いかに遊ばせるのか」が重要な課題となっているのです。
  しかしながら、現代社会では子どもたちが自由に遊べる場も少なく、小さい頃から個室で過ごすことが多いのが現状です。幼児期から、激しい遊びから遠ざけられて、仲良く、おとなしくするよう育てられており、達成感が味わえる経験が不足していたり、けんかをした場合の手加減といったこともわかっていません。また、自分の意思を伝えるコミュニケーションが苦手で、特に異年齢間の子どもたちの人間関係が失われつつあります。子どもたちが屋外で自由に遊ぶ機会をもち、その中で達成感を味わったり、感動する体験を豊富にもつことができるようにすることが緊急の課題とされているところです。
  子どもたちにとって、遊びは自分の内面を自由に表現できる楽しい活動です。遊びは子どもたちが自発的に行うもので、身体活動を活発にし、仲間集団での多様な人間関係を体験し、新しいアイデアを生み出したり、未知なるものを探索したりといった創造的な活動も行われるなど、人間形成にとって極めて重要なものです。また、遊びは自然な内的発展としての自己活動であり、発達課題を達成するために有効な体験の多くがそこで得られることをみても、本人には学習という意識はないでしょうが、教育的価値の高いものといえます。特に、屋外での遊びは、日光、外気など自然の刺激を直接受けながら、のびのびとした全身活動として展開されますし、また、集団的な活動になることが多いため、運動機能の向上や社会性の発達にもとりわけ有効です。
  子どもたちの成長にとって大切な意義をもっている遊びを行う場所として、身近な河川や農業用水路は極めて重要なフィールドになる可能性があります。私たち大人が子どもの頃は、川で泳いだり、魚とりをするなどして遊んだものです。しかしながら、いつしか河川の岸壁はコンクリートで覆われ、子どもたちは近づかなくなりました。いまや、関係省庁と連携することにより、河川等を子どもたちの自然体験活動の場、遊び場として見直していく必要があります。河川等の整備・改修等は、これまで防災・治水等の観点から行われてきましたが、子どもの活動場所としても生かす観点をもち、できるだけそのままの自然環境を生かしながら行われることが期待されるのです。
  また、公園についても、人工的に管理されたスペースの比重が大きくなっていて、子どもたちが木登りやどろんこ遊びをしたいと思ってもできなかったり、芝生はあっても立ち入ることが禁止されていたりするのが実情です。子どもたちが自由に遊ぶことのできる公園を各地域に用意することを大いに進めるべきです。その際に気をつけたいのは、ハードだけでなくソフトの面も含めて、「量」と「質」を合わせた視点を取り入れることが必要だという点です。地域によっては、プレイパークのように地域住民が行政と協力しながら遊び場の運営に主体的に取り組む体制をつくりあげ、プレイリーダーが遊び場で子どもたちを見守り、私たちが子どもの頃経験した遊び方を伝承しているなど、単に施設を整備したというにとどまらないユニークな活動が展開されているところもあります。
  地域の子どもたちの遊び場を整備する観点から注目されるのは、近年、河川、港湾、森林、都市公園といった資源を子どもたちの体験活動のフィールドとしても活用しようという関係省庁の動きが広がりを見せていることです。例えば、海岸については、文部省と海岸事業を所管している4省庁(農林水産省、水産庁、運輸省、建設省)が共同で、良好な海辺の自然環境を活用し、子どもたちが豊かな人間性や健康・体力をはぐくむ場として利用しやすい海岸づくりを行う「いきいき・海の子・浜づくり」事業を実施しています。この事業は、海岸整備の計画段階から教育委員会と海岸事業担当部局が連携し、整備後の活用方法を念頭におきながら、子どもたちが海辺の自然やスポーツを安全に楽しめる海岸を創り出していこうというものです。
  このように、公共事業を所管する省庁が事業段階から完成後のフィールドの活用に関係する省庁との連携を模索する傾向が見られることから、文部省や教育委員会においてもこのような方向を積極的に推進し、子どもたちの自由な遊び場の整備に結びつけていくことがもとめられるのです。

    【当面緊急にしなければならないこと】
    ◎  川を子どもの遊びや自然体験の場にふさわしい水辺にする
      河川管理者、教育関係者と環境保全関係者が一緒に全国の各地域の河川を調査し、子どもたちの活動場所としてふさわしいところをリストアップし、登録する。リストアップされた水辺には、掲示板を設置したり、河川の地図やどのような活動ができるのかといった情報を、地域の親や子どもたちに提供する。また、必要なものについては、教育関係者等の意見も採り入れながら整備や改修工事を行い、川を自然の姿に戻し、子どもの遊びや自然体験の場にふさわしい水辺にかえていく。(建設省・環境庁と連携)

    ◎  農村の水路を子どもたちが足を浸して魚つりや水遊びができるようにする
      農業部局関係者と教育委員会関係者が一緒に農村の水路等を調査し、子どもたちの活動場所としてふさわしいところをリストアップしていく。リストアップされた水路等を整備し、農村の水路を昔ながらの農村の水路のように、子どもたちが足を浸して魚つりや水遊びができるようにかえていく。リストアップされた水路等で、どのような活動ができるのかといった情報を、地域の親や子どもたちに提供する。(農林水産省と連携)

    ◎  子どもたちが木登りや芝生の中で自由に遊べる都市公園をつくる
      子どもたちが、都市公園で木登りをしたり、芝生の中で自由に遊べるよう、公園の設計者、野外教育の専門家、公園利用者等で構成する研究会をつくって、都市公園の機能を見直し、その整備・運営方法等を研究する。研究会の報告を踏まえ、都市公園の在り方に関するガイドラインを策定し、全国で子どもたちの自由な活動ができる都市公園の整備を促進する。(建設省と連携) 


(2)大学・専門学校等の高等教育機関や専門高校の教育機能を活かす
  大学・専門学校等の高等教育機関や専門高校には、子どもたちの関心や興味を呼び起こし、夢をはぐくむことが期待できる施設や設備があります。その教育機能を活かすことができれば、子どもたちに様々な体験の機会が広がるでしょう。大学・専門学校等の高等教育機関や専門高校の教育機能を子どもたちのために活かすことは、学校側にも大きな意義があるのです。これらの学校は地域にありながら、地域住民にどのような学校でどのような教育が行われているのかあまり知られていません。そこで、子どもたちのために学校を開くことにより、地域の人々に学校の存在や役割を広く知ってもらい、その理解を促進するよい機会になるのです。また、学生や生徒にとっても、子どもたちの指導に当たったり、子どもたちのお父さん、お母さんや地域の大人たちの前で専門的な知識・技能を披露したりすることを通じて、専門的な知識や技術を学ぶことの誇りや意義を改めて自覚できる機会ともなります。
  大学や大学共同利用機関には、高度な研究・実験施設や様々な自然体験活動ができる附属農場・演習林などがあり、これらの教育機能を地域の子どもたちのために活かすことができれば、他の施設では得られない貴重な体験ができます。また、各種工作機械を備えた実習工場や設計製図、パソコンなどの最新の設備をもつ高等専門学校の教育機能を活用すれば、ものづくりの機会を子どもたちに提供することができます。
  地域に密着した高等教育機関として、実践的な職業教育・専門的技術教育を行っている専門学校の教育機能を地域の子どもたちのために活かすことができれば、子どもたちの興味・関心を引く多彩な体験学習の機会が提供できます。コンピュータで設計図をつくるCADシステムの体験やロボットの製作実習、プロの料理人に学ぶ調理実習、理容・美容についての専門的な講義や実習、介護福祉の実習などの機会が考えられ、子どもたちの世界はますます広がることとなるでしょう。
  また、農業高校、工業高校等の専門高校では、農業・園芸を実習し、生産することの意義や気候に左右されやすい農業の難しさを学習したり、自動車の整備方法を体験し、自動車のメカニズムを学習するといったすばらしい機会を子どもたちに与えることができます。生徒たちもいきいきと子どもたちや親を指導してくれるのではないでしょうか。
  学校施設の開放が度々提唱され、地域社会のコミュニティーセンタ−にするための学校施設の在り方の研究も始められていますが、学校施設の利用について、手続が煩雑だという声を依然として耳にするところです。子どもたちのための地域社会の環境を充実させる観点から、利用手続の簡素化や弾力化を図ることがもとめられます。

    【当面緊急にしなければならないこと】
    ◎  大学、大学共同利用機関や高等専門学校の教育機能を子どもたちの体験活動に活かす
      週末や夏休み等に、高度な研究・実験施設等をもつ大学や大学共同利用機関、高等専門学校を地域の子どもたちに開放し、超伝導実験、体験航海、星座教室、望遠鏡の公開、農業体験、パソコン、工作機械を使ったものづくり体験など、多彩な活動が体験できる機会を提供する。

    ◎  専門学校等の教育機能を子どもたちの体験活動に活かす
      週末や夏休み等に、専門学校等を地域の子どもたちに開放し、ロボットの製作実習、プロの料理人が教える調理実習、理容・美容の実習等、多彩な活動が体験できる機会を提供する。

    ◎  専門高校の教育機能を子どもたちの体験活動に活かす
      週末や夏休み等に、専門高校を地域の子どもたちに開放し、農業実習や園芸教室、ものづくり教室、パソコン教室等の多彩な活動を体験できる機会を提供する。

    ◎  学校施設の開放について、利用する側の立場からの利用手続等の弾力化を促進する
      学校施設の利用申込書の提出期間の指定、訪問しての申込書の提出、あるいは申込書への押印などの手続を利用者の立場に立って見直し、電話、FAX、電子メールでも申込みができるようにするなど、利用手続の簡素化や弾力化を促進する。 


(3)博物館や美術館を子どもたちが楽しく遊びながら学べるようにする
  博物館や美術館は、子どもたちの体験活動の観点からみると、学校ではできない実物との出会いなど貴重な学習機会が提供できる社会教育施設です。しかしながら、現在の博物館や美術館の運営をみると、子どもたちの体験活動の充実という観点からは、必ずしもその潜在的な資源が有効に活かされているとはいえないケースも多いのではないでしょうか。博物館や美術館は、静かに見学するだけではなく、その豊富な資料を活かして、子どもたちが自分たちの血となり肉となるような学習ができる場として期待されています。
  このため、博物館や美術館には、子どもたちが主体的に五感を使って体験できるような展示や事業を展開し、子どもたちが楽しく遊びながら学べる「子どもや親に開かれた施設」になるようにしていくことがもとめられます。博物館や美術館が本来持っている様々な教育機能を積極的に活用していくことによって、子どもたちは自然界の原理や技術、歴史、伝統文化、美術等を体験的に理解できるようになるのではないでしょうか。
  さらに、このような子どもたちが主体的に五感を使って体験できるような活動は、博物館や美術館のみならず、公民館等の社会教育施設においても積極的に取り組まれ、全国の子どもたちが身近なところで、科学やものづくりへの関心がかきたてられるようになることが望まれます。

    【当面緊急にしなければならないこと】
    ◎  博物館や美術館で、子どもたちが主体的に五感を使って体験できるような展示活動を進める
      学校休業土曜日等を中心に、子どもたちが楽しく遊びながら自然界の原理や技術、歴史、伝統文化、美術等を体験的に理解できるようにするため、参加体験型やハンズ・オン(自ら見て、触って、試して、考えること)を活用した展示を進める。
      事業を進めるに当たっては、博物館や美術館からアイディアを募集し、優れたアイディアを事業化するなどモデル事業としての取組を進め、その成果を全国に普及する。

    ◎  子どもたちの科学やものづくりへの関心を深める教室を全国的に開催する
      子どもたちの科学やものづくりへの関心を深めるためには、時間を気にせずトライ・アンド・エラーが許されることが必要であり、週末等に全国の公民館や科学館において、地域の教員、職人、企業の技術者等が子どもたちに、ボランティアで科学の実験・ものづくりの指導を行う教室を全国的に開催する。また、そのプログラムの充実を図るため、国立科学博物館、国立オリンピック記念青少年総合センターにおいて、実験シナリオ、マニュアル、モデルキット等を作成する。

    ◎  子どもたちが最先端の研究成果に触れる機会を提供する
      大学や大学共同利用機関が、科学系博物館等と連携し、子どもたちが最先端の研究成果に直接触れることができるよう、科学実験体験、施設見学等を開催する。(科学技術庁と連携)

    ◎  子どもたちが美術に親しみ、理解を深める機会を提供する
      主として公立の美術館・博物館において、子どもたちがなじみやすい作品を中心とした展覧会、文化財公開事業を開催し、子どもたちの美術や伝統文化に対する理解を深める。

    ◎  学校休業土曜日等の博物館・美術館の無料開放等を促進する
      全国の国公私立博物館・美術館に、学校が休みとなる土曜日等の子どもの入館料の無料化を呼びかけるなど、子どもたちが参加しやすい活動の場となるよう促進する。
      なお、私立の登録博物館については、このような無料化の優遇措置を講じることなどにより、登録博物館の設置運営を主な目的とする民法法人に特定公益増進法人となる道が開かれているということについて、広く周知する。 


3  地域社会における子どもたちの体験活動などを支援する体制をつくる

(1)体験活動への参加を促す情報を全ての子どもたちや親に提供する新しいシステムをつくる
  「学校が休みの今度の土曜日に子どもにどこかで自然体験をさせたい」、「週末に親子でボランティアしてみたい」などと親が思いたったとき、様々な体験の機会が、いつどこでどのように行われるかの情報を、民間情報も含め、親や子どもたちにもれなくタイムリーに提供できるシステムを全国的に整備していくことが必要です。
  しかしながら、現状はかならずしもこのような体制が整備されている状況にはなく、親や子どもたちは知り合いからの口コミといった個人的なつながりによって参加の輪を広げていることが多いのではないでしょうか。あるいは自治体の広報誌を通じて一部の、しかも公的な機関が主催する活動についての情報を知るといった程度にとどまっているといってもよいでしょう。これでは、親子で活動をしたいと思っても、自治体の広報誌が手元にもうなく、しかし改めて市役所に電話をするまでのふんぎりもつかないといったことが常ではないでしょうか。この点については、平成10年度に文部省の委嘱事業として、千葉市、札幌市、福岡市で実施された調査研究において、地域の各種体験活動に関する小冊子が有効な情報伝達手段であるとして市民の好評を得たことが注目されるところです。この調査研究では、多くの人たちが情報さえあれば地域社会での体験活動への参加を希望しているにもかかわらず、いつどこでどのような事業が行われているか知ることなく参加の機会を逸しているという状況に置かれていることが明らかになりました。今後、あらゆる角度から検討し、子どもたちの様々な体験活動に関する情報提供を十分効果的に行うことができる体制をつくりあげていく必要があるのではないでしょうか。
  例えば、親や子どもたちは、誰が主催しているかよりも、どのような活動ができるかに関心があり、行政・民間を問わず幅広い情報をもとめているのですから、公的な機関ばかりでなく民間からの情報も幅広く集め、提供していくことが不可欠です。これまで、地方自治体や教育委員会には民間の情報を提供することにためらいがみられ、積極的でない傾向がありますが、勇気をもってこのような状況を変えていく必要があるのです。提供する情報に関する責任の所在は、事業等の主催者にありますから、利用者が事業等に参加する場合には、各自で事前にプログラムの詳細を確認することをもとめていくことも必要でしょう。これとあわせて、子どもたちが体験活動等に参加する場合の保険の制度についても充実が図られることが必要であり、その制度が事業等の主催者にも、参加しようとするグループや家族にも広く紹介されていくことがもとめられます。
  それでは、具体的にはどのような情報提供システムが考えられるのでしょうか。私たちは地域の情報連絡拠点として「子どもセンター」が全国につくられていくことを提案します。子どもたちの体験活動は基本的には地域を拠点として行われるものですから、情報収集・提供も市や複数の町村にまたがる郡といった単位で行うことが適切です。地域の子どもの自然体験、ボランティア活動、スポーツ・文化活動、地域行事、職業体験機会等子どもたちのあらゆる体験活動に関する情報を、行政関係者だけでなく、PTA関係者、青少年・スポーツ団体関係者、企業・地場産業関係者、自治会の代表者、学校教育関係者、その他関係機関・関係団体(老人クラブ、JA、JCなど)の関係者で協議会といった情報連絡組織をつくって収集すれば、幅広く情報を集めることができるのではないでしょうか。また、情報の収集提供は、地域の情報だけでなく、国や都道府県の情報がタイムリーに入手できることが必要です。そこで、インターネットやパソコン通信を活用して、各省庁など国の情報、県の各部局や民間情報を幅広く集めて行います。また、青少年団体、スポーツ・文化団体の情報に接することの少ない親や子どもたちに、これらの団体の窓口の情報を提供することももとめられます。団体にとっても、活動内容を親や子どもたちに紹介したり、子どもたちを募集するのに、極めて効果的なツールとなるでしょう。子どもセンターの開設場所は、行政機関、公民館、図書館等の社会教育施設、学校の余裕教室、コミュニティーセンターなどの一室でよいと考えます。そして、収集した情報を地域の人たちに提供していくのですが、ここで大切なのは、気軽に地域の人たちが立ち寄れる雰囲気づくりをすることです。
  情報提供は、簡便な情報誌の作成や相談を受けることによって行うことが適当です。インターネットが普及してきたといっても、その利用者はまだ少数にとどまっているのが現実です。今日、人々が頻繁に足を運ぶ場所として都市部を中心に日常生活にとけ込んだ存在となっているコンビニエンスストアや全国くまなく設置されている郵便局など身近な生活拠点を活用し、子どもたちの体験活動に関する情報誌を定期的に作成・配布するようにすれば、こうした活動に関する情報を幅広くかつ適切にお父さん、お母さんや子どもたちのもとに届けることができるのではないでしょうか。小児科や歯科の待合室など親子の集まるところに置いてあってもよいと思います。
  このような情報提供システムは、市町村の教育委員会の社会教育主事や公民館主事が「黒子役」をつとめることがあっても、地域の大人たちのボランティアが中心となり、運営されることが基本です。このような情報提供システムの運営に地域の大人たちが参加することから、まちづくりも始まるのではないでしょうか。

    【当面緊急にしなければならないこと】
    ◎  親や子どもたちの様々な活動に関する情報提供を行う「子どもセンター」を全国展開する
      親や子どもたちの様々な活動に関する情報提供を行う「子どもセンター」(情報連絡組織)を、3カ年で全国の市・郡単位ぐらいに1カ所(全国では1000カ所程度)を目標に設置する。情報提供は、簡便な情報誌の作成や電話等で相談を受けることによって行い、情報誌の配布は、身近なコンビニエンスストアや郵便局などを活用する。
      運営は、PTA、青少年・スポーツ・文化団体、NPO、企業・地場産業、学校、郵便局をはじめ、地域の様々な団体・機関の関係者で構成する協議会とボランティアが行う。 


(2)新しい情報通信手段を活用して、子どもたちに直接働きかける
  急激な情報技術の進展が見られる高度情報通信ネットワークを基盤としたマルチメディアは、地理的・時間的な制約を越えて、人々が主体的に学習する機会を広げるとともに、分散している学習資源を集積し、共有化することを可能にする点で注目を集めています。このような機能に着目すれば、地域の子どもたちの様々な体験活動の充実を図る上でも積極的にマルチメディアを活用することが期待されます。特に、従来、知識を一方的に教わることになりがちであった子どもたちが、マルチメディアを活用することによって、自ら情報を収集・分析したり、遠隔地の子どもたちとの間でも、これを発表しあったり、議論したりといった能動的な体験ができるようになります。
  地理的制約がないというマルチメディアの利点を活かして、全国津々浦々で子どもたちに直接働きかけ、夢や希望を与えたり、子どもたちの心を揺さぶるようなことができないでしょうか。文部省には、衛星通信を利用した教育情報通信ネットワークが整備されています。衛星通信による「子ども放送局」を創設し、全国津々浦々の子どもたちが集まる図書館、公民館、学校開放を行っている学校等にパラボラアンテナ等の受信設備を備えることにより、学校が休みの土曜日に、教育情報通信ネットワークを活用した子どもたちへの情報提供が可能になります。
  スポーツのヒーローやヒロインに直接接することができる子どもたちは稀でしょうが、このようなネットワークを活用すれば、金メダリストがあの瞬間どのような気持ちで競技に挑んだか、それまでどのような厳しい練習や訓練を積んできたか、チームワークの大切さなどを子どもたちに直接伝えることができます。また、国内外の一流の科学者が、研究室からあるいはロケットの打上げ現場から、子どもたちにリアルタイムで、人類の自然の神秘に挑む夢や勇気を語りかけることもできます。衛星通信は双方向が可能なので、科学技術について疑問に思ったことを子どもたちが質問したりすることも可能です。まだまだいろいろなことができます。新幹線は我が国がその技術水準を世界に誇る交通機関ですが、流線型の形状は職人さんの手作業によってつくられていることはあまり知られていません。その御苦労や、職人さんの高い技術が日本の技術水準や優れた伝統文化を支えていることを子どもたちに伝えたいのです。田圃でアイガモを使った有機農法や、品種改良に取り組んでいる農家の夢や御苦労も是非子どもたちに知ってもらいたいのです。いろいろな職場で苦労しながら誇りをもって働いている大人たちの姿を見せることができれば、働いている大人の姿を普段あまりみることのない子どもたちの世界も広がるでしょう。また、青少年団体や環境教育のグループが子どもたちと一緒に活動している様子を実況中継できれば、自然体験や環境保護活動を自分たちもやってみたいという子どもたちの自発的な意欲も膨らんでくるのではないでしょうか。もちろん、文部大臣が子どもたちにメッセージを送る際にも、タイムリーに子どもたちの心に直接呼びかけることができます。
  そして、これらの衛星通信を活用した「子ども放送局」の番組は、子どもたちが図書館等に行ったときに、「何かやっているなあ」と気づくような空間にモニターの画面が置いてあり、自然に目にとまることになればよいと考えています。お父さん、お母さんが子どもと一緒にその場に居合わせたら、番組を一緒に見ることにより、子どもとの会話の世界も格段に広がることでしょう。
  また、「子ども放送局」の運営に子どもたちを参加させ、その声や創意が生かされるような仕組みが考えられれば、さらに子どもたちの関心を呼び、大きな夢と希望を子どもたちにはぐくむことができると思います。
  このほか、全国の青少年教育施設をはじめとする社会教育施設をマルチメディアで結び、週末等に全国の子ども同士で語りあったり、自然環境をテーマに学習している遠隔地の子どもたちと、それぞれの地域で採集した植物の画像や活動の様子を交換したりして、子どもたちの体験を深めていくことも考えられます。

    【当面緊急にしなければならないこと】
    ◎  衛星通信による「子ども放送局」を創設する
      衛星通信の送受信設備を国立オリンピック記念青少年総合センター等に設置し、学校が休みとなる土曜日等に、スポーツのヒーローやヒロインが、金メダルは厳しい練習やチームワークのおかげであることを伝えたり、国内外の一流の科学者が、研究室やロケットの打上げ現場から、子どもたちにリアルタイムで、人類の自然の神秘に挑む夢や勇気を語りかけたり、職人さんの技術のすばらしさ・苦労や、自然の中での青少年団体の活動・訓練の様子を伝える。子どもたちが集まる公民館、図書館、博物館、児童館、学校開放を行う学校等を対象として、受信設備(パラボラアンテナ等)を設置する。
      また、ソフトは、科学技術庁の「サイエンスチャンネル」や農林水産省の「グリーンチャンネル」など、各省庁のソフト・プログラムなどの有効活用や連携を行う。 


(3)悩む子どもたちの相談に24時間対応できる体制を全国につくる
  子どもたちの抱える悩みについては、親、先生など子どもたちの身近にいる大人が、同じ目の高さでその声をじっくり聞いて受けとめ、子どもたちを信頼してその自己実現を助けるといった姿勢で接することが必要です。また、周囲の親しい友達が、同じような悩みを抱える年齢にある者同士で互いに支え合うことも大切です。
  しかしながら、現代は子どもたちのゆとりのなさや友達つきあいが浅薄なものになりつつあるのが実情です。いじめや性の問題、自分の生き方や家族・友人関係などの様々な悩みを抱えながら、だれにも相談することができずに、一人で悩んでいる子どもたちは少なくないものと思われます。
  子どもたちが日常生活の中で疲れを感じ、いじめ、不登校、非行等様々な子どもたちにとっての危機が生まれている現状で、子どもたちが気軽に何でも相談することができる窓口を設けることが重要です。また、これらの相談活動は、子どもたちが自分で自由に使える時間帯に気軽に相談することができるように、また、子どもたちの声を受けとめ、必要に応じ、的確かつ迅速な助言を行うことができるような体制をつくることに配慮しなければいけません。相談しやすさという観点からは、気軽に相談できる電話による相談体制の充実を図ることも重要となるでしょう。
  現在、各都道府県の教育委員会においては、子どもたちの悩みにこたえる電話相談を行っていますが、そのほとんどが平日の昼間から夕方までの時間帯に限られているのが実情です。しかし、子どもの電話相談は、授業が終わり子どもたちが自由に相談することのできる夕方から夜間にかけての利用が多く、現在の体制ではこれらの声に十分応えられません。子どもたちの生活パターンに対応した体制を早急に整備することが必要だと考えます。
  夕方や夜間での対応を、公的機関のスタッフだけで行うには困難な面もあるでしょう。地域には悩んでいる子どもたちに何かしてあげたいと考えている多くの大人たちがいます。そのような地域の大人たちがボランティアとして子どもたちの電話相談に協力できるようにしてはどうでしょう。比較的年齢の近い大学生や専門学校の生徒などによるピアカウンセリングも親近感があってよいと思います。もちろん、実施に当たっては、教育委員会の方で心理学、精神医学、カウンセリング等の十分な専門的研修・訓練の機会を提供することが必要になります。このような活動を通して子どもたちの生の声に耳を傾ける大人が一人でも増えることによって、地域で子どもを育てる大人の輪はさらに広がっていくでしょう。
  子どもの電話相談は、教育委員会以外にも、青少年部局、児童福祉部局、警察等の公的機関や民間団体が、それぞれ相談体制を設けています。関係者間で密接に連携をとり、必要な場合にはそれぞれの役割に応じて相談を適切に引き継ぐなどの機動的な対応ができるよう連携がもとめられます。
  また、このような子どものための相談体制が設けられていることについては、学校等とも連携して子どもたちにその存在を周知していくことが必要です。

    【当面緊急にしなければならないこと】
    ◎  24時間体制による子ども悩み電話相談を全国的に整備する
      現在、全都道府県の教育センター等で実施されている子どものための電話相談を、ボランティアの協力を得て、24時間対応できるよう整備していく。整備に当たっては、これまでの昼間の電話相談の取組等を踏まえ、その運用時間を延長する方法などによって対応していく。インターネット・FAXの併用や相談員を配置しない場合の深夜の時間帯の対応についても考慮する。 


4  子どもたちの活動を支援するリーダーを育てる

(1)子どもたちのためのボランティアを紹介し、参加できる体制をつくる
  地域コミュニティーや子ども同士のつながりが弱くなっている現在、地域における様々な体験の機会を充実させていくには、遊び場で子どもたちを見守り、昔ながらの遊びなどを伝承するプレイリーダーが必要とされる時代にあるということもできます。
  また、親たちや地域で子どもたちをどこかへ連れていって、色々な体験をさせようとしたとき、ボランティアとして一緒に活動してくれる人たちがいれば、親たちは気軽に子どもたちにこのような活動をまたさせてみようということになります。
  一方、最近、仕事を持つ社会人や比較的時間に余裕のある学生、高校生や地域の高齢者の間に、自らの心を豊かにするために、社会に何らかの関わりを持ったり貢献してみようと考えている人たちが増えてきています。このような意欲のある人たちが「新しい人材」となって、地域社会で子どもたちの体験活動のお手伝いができるようなきっかけが提供できないでしょうか。
  学生や高校生、会社員、高齢者等が、子どもたちのためにボランティアをしたいと思っても、どこに連絡すれば活動できるか分からない状況にあることから、地域でボランティアをもとめるグループの情報とボランティアになりたい人をつなげる仕組みをつくっていくことが必要です。
また、ボランティア団体等がもつ人材情報を活用し、そのネットワーク化を進めるとともに、このような活動を希望する人たちのための情報を集約する機関(ボランティアセンター)を設けることももとめられます。

    【当面緊急にしなければならないこと】
    ◎  全国津々浦々の「子どもセンター」でボランティアを紹介する
      全国の「子どもセンター」において、PTAや地域のグループが子どもたちの活動を支援してくれるボランティアを募集しているという情報を収集し、プレイリーダーを派遣することのできる青少年団体やグループ等の窓口の紹介を行うなど、相談に応じ、派遣を支援する。
      また、ボランティアになりたい人たちにも、これらの団体・グループの窓口を紹介したり、ボランティアバンクへの登録を奨めるなど、相談に応じる。

    ◎  ボランティア活動についての全国的な情報提供・相談窓口を開設する
      ボランティア活動に対する関心の高まりに対応し、ボランティア活動を行いたい人が、電話などにより容易にボランティア活動の情報を入手できる全国的な情報提供・相談窓口を国立婦人教育会館に開設する。
      相談窓口においては、全国のボランティア活動に関する情報をデータベース化し、a.子育てボランティアへの参加希望者に対する実施団体の紹介、b.介護ボランティアを必要とする人への実施団体の紹介、c.定年退職後のボランティア活動希望者への団体紹介などを行う。 


(2)学生や社会人が子どもたちの自然体験活動のリーダーとなれるよう、登録制度をつくる
  子どもたちの自然体験活動については、非日常的な自然の中で宿泊を伴い、しかも行動半径の広い活動を行うことが多くなることから、子どもたちの活動を支援するリーダーの存在が不可欠です。子どもたちの自然体験活動の機会を拡充していくには多数のリーダーが必要となりますが、それにはリーダーになりたいという学生や社会人に道を開いていくことが鍵となります。
  どのような進路を目指す学生であっても、自然の中で子どもたちのために汗を流すことに充実感を味わい、自ら進んでリーダーを目指し研鑽を積むことが誇りとなり、それが社会からも積極的に評価されること、そしてこのような学生が社会人になって我が国における地域の自然体験のリーダーや支援者に育つことが期待されます。
  フランスでは、自然体験活動のリーダーの統一的な養成制度が確立しており、そのリーダーは、アニマトゥール(男性)、アニマトゥリス(女性)と呼ばれています。資格は17歳から取得することができ、資格を取った多くの大学生たちが、フランス各地の自然体験活動の施設で夏休みの間アルバイトとして活躍しています。また、アメリカでは、各団体ごとに体系化されたカリキュラムに沿って、大学生はカウンセラーとして、高校生はジュニアリーダーとして養成され、子どもたちの指導に当たっています。
  我が国においては、自然体験活動の指導者を養成するための標準的なカリキュラムは整備されておらず、青少年団体や自然体験・環境教育に取り組む様々な分野の民間団体がそれぞれ独自にリーダーを養成していますが、参加の広がりが乏しいのが現状です。これは、各団体が独自にリーダーを養成し、その間につながりがないため、子どもたちの自然体験活動のリーダーになりたい人やお手伝いをしたい人たちに幅広く広報することができず、リーダーになりたい人は口コミでしか接する手段がないためです。
  そこで、このような現状を改め、リーダーになりたい人がその申込窓口や方法を的確に知ることができ、リーダーになるための研修を受けることができるようにするため、青少年団体や自然体験・環境教育に取り組む様々な分野の民間団体が、ゆるやかに連携して、広報周知活動を行い、参加希望者のニーズにあわせて受入れができるようにしていくことが大切です。そのために、これらの民間団体がネットワークを形成し、ある団体のリーダーの資格・登録が他の団体の資格・登録のどのレベルに当たるのかがわかるように、各団体の資格・登録に共通のランクを設定するなどして、各団体の自然体験活動のリーダー養成を互換しあえるようにすることが必要です。
  子どもの自然体験活動の裾野を広げるには、青少年団体、自然体験・環境教育に取り組んでいる様々な分野の民間団体、民間教育事業者、旅行業者・観光業者等の民間企業などがそれぞれ主催する多彩な自然体験プログラムが提供されていく必要があります。そのために、親が安心して子どもを自然体験活動に参加させることができるよう、自然体験プログラムを指導するリーダーについて社会的信頼を確保するための基準となる仕組みがつくられることが重要であり、そのような仕組みとして、学生や社会人が子どもたちの自然体験活動のリーダーになれるよう、民間団体間のネットワークによる登録制度を是非作ってもらいたいのです。
  自然体験活動のリーダー養成は、青少年団体等の民間団体のほか、大学等の高等教育機関においても自然体験活動の指導者養成が行われています。しかしながら、現在、2大学1大学院で履修できる課程・コースが設けられているほか、教員養成系や体育系の一部の学部において、野外教育・環境教育等関連する授業科目が開設されているに過ぎません。大学等の高等教育機関における自然体験活動指導者の養成が、今後さらに拡充されることが望まれます。
  このようにして、養成された学生には、例えば青少年教育施設の指導系職員や国立公園管理官(パークレンジャー)、日本の自然体験活動指導者のトップランナーとして活躍することが期待されるとともに、今後、アウトドア産業、旅行業、ホテル・旅館等の分野で活躍の場も多くなると予想されます。
  また、長年企業等で勤めてきた熟年層にも、子どもたちの自然体験活動のリーダーにふさわしい意欲や体験をもっている人たちが多くいると考えられますが、自然の中で子どもたちを指導しようと思っても、リーダーになれないのは、情報不足や仕事をしながら学べる研修の場がないためであり、このような状況を抜本的に改めていく必要があります。登録制度は、このような人たちにも、リーダーとして活躍するための方法を伝えることになります。さらに、大学等の高等教育機関における自然体験の指導者養成の授業を、衛星通信システムを活用して受講できるようになれば、社会人にとっては仕事をしながら学べる機会が得られることにもなります。

    【当面緊急にしなければならないこと】
    ◎  自然体験活動のリーダーの登録制度に関する調査研究を行う
      自然体験活動の広がりに伴い必要となっているリーダー養成の拡充とその社会的信頼性の確保のため、登録制度の確立を目指し、調査研究を進める。登録は、青少年団体、自然体験、環境教育に取り組んでいる民間団体等の間のネットワークにより民間の手で行う。
      各団体の養成プログラムについては、大学の学生部の窓口を活用するなどして、全国の学生に周知する。また、リーダーとしての登録情報は、全国の子どもセンターを通じて、プレイリーダーをもとめる地域の団体・グループや企業、旅行業者に提供し、登録されたリーダーの活躍の機会を広げる。

    ◎  高等教育機関における自然体験活動の指導者養成を推進する
      将来の我が国の自然体験活動指導のトップランナーの養成につながるよう、高等教育機関において、自然体験活動について幅広くかつ体系的に履修できるコースの開設など、指導者養成を推進する。
      授業は、社会人の学習や教員の自己研修を支援するため、衛星通信システムを活用した公民館等での受講やインターネットの活用が可能となるようシステム開発を進め、通信制大学・大学院を活用する。
      また、一部の国立青少年教育施設等において、民間団体や民間教育事業者との連携により、トップランナーの養成・研修を行う。 


5  子どもたちを取り巻く有害環境の改善に地域社会で取り組む

  最近、テレビ等のメディア、成人向けのビデオ、図書等のゆきすぎた性描写や暴力表現等が問題となっており、極めて多くの親が子どもたちの心に悪影響を及ぼすことを懸念しています。平成10年には、ナイフ等を使用した子どもの凶悪事件が続き、メディア上の有害情報を問題とする世論が高まりました。文部省は関係省庁にテレビへのVチップや事前表示の導入等について前向きかつ速やかな検討を行うことを、また、テレビ、図書、ビデオ、コンピュータソフト等の自主規制団体や販売業者に一層の自主規制への取組を要請しました。
  このような状況の中、郵政省では、放送分野における視聴者政策の充実を図っていく一環として「青少年と放送に関する調査研究会」を設置し検討を重ね、平成10年12月に、Vチップの導入については継続検討としたものの、テレビ番組を審査する第三者機関の設置、放送時間帯の設定、放送番組分類基準や事前表示の導入について提言を行い、各提言の早急な具体化に向け、専門家会合を発足させ検討を進めています。
  有害情報から子どもたちを守るための活動としては、従来からPTAが、マスコミに自主規制を要請してきたところですが、必ずしも関係業界が前向きな対応を行ってきたとは言い難いのが実情です。このような取組を効果的に行うためには、会員の協力を得て、担当の組織を設けるなどして、テレビ、図書、ビデオ、コンピュータソフト等の内容や販売店等における陳列の状況を把握し、実態を十分に踏まえた説得力のある要請活動につなげる努力がもとめられます。マスコミへの対応だけではなく、必要に応じて、個別のテレビ番組のスポンサーと改善に向けて話合いの機会を設け、要請を行うなどの取組も検討すべきでしょう。そして、このような取組の過程で得られた資料は、子どもたちを取り巻く環境の実態を広く世論に訴えるためにも活用できることから、わかりやすいかたちでまとめられることが望まれます。
  一方、公共性の高い放送業界や番組のスポンサーには、このような自主規制への取組と合わせて、質のよい子どものためになる番組づくりに力を入れていくことが大いに期待されます。

    【当面緊急にしなければならないこと】
    ◎  PTAがテレビ番組の全国モニタリング調査を行う
      一部のテレビ等のメディアの子どもたちに対する有害情報の実態について、PTAが全国組織である利点を生かして、日ごろから番組のモニターを行うなど番組内容を十分調査し、放送業界やスポンサーへの要請に反映させていく。

    ◎  PTAが地域で成人向けのビデオ等の区分陳列状況の調査を行う
      子どもを地域で守るため、PTAが、地域の青少年育成関係組織や学校、教育委員会、警察等の関係機関と連携し、ビデオレンタル店、書店やコンビニエンスストアにおける成人向けのビデオや図書が一般のものと区分して陳列されるよう、モニターをしながら働きかける。

    ◎  放送に関する青少年対策の充実を働きかける
      青少年と放送に関する関係機関の検討に当たって、教育関係者の積極的な意見が反映されるよう働きかける。 


6.過度の学習塾通いをなくし、子どもたちの「生きる力」をはぐくむ 

  子どもたちの学校外の学習環境としては、社会教育施設をはじめ、通信教育など各種メディアによる教育機会提供事業、おけいこごと塾、スポーツ教室、学習塾など多様な民間教育事業による活動があります。民間教育事業は、小学生の7割以上が習字、そろばんやピアノなどの音楽関係、水泳・サッカーなどの各種スポーツといったいわゆるおけいこごとを習うなど、青少年団体の実施する様々な体験的な活動とあいまって、多様な学習機会を提供しており、子どもたちの学校外での学習環境のひとつとして大きな役割を果たしています。特に、今後学校がその本来の役割をより有効に果たすとともに、学校・家庭・地域社会における教育のバランスをより良くしていくという観点から学校教育のスリム化が図られていく中で、これらの民間教育事業は学校教育とは異なる子どもたちの多様な学習ニーズに応えていくという役割が求められていくものと考えられます。  
  しかしながら、子どもたちの「生きる力」をはぐくむためには、今後とも家庭や地域での豊かな体験活動が必要であるということを考えると、このような学習活動への参加も子どもたちの「生きる力」をはぐくむものとして行われることが大切であり、このような観点からは、本審議会では、子どもたちの長時間に及ぶ通塾や土曜日・日曜日や夜間の通塾によって健康や心身の発達に著しい影響を生ずるおそれのある過度の学習塾通いとその低年齢化ということについては、子どもの発達段階にふさわしい生活体験、自然体験など様々な学習機会を制約し、その結果、知徳体のバランスのとれた望ましい人間形成に悪影響を及ぼすおそれがあるとの強い懸念をもつものです。  
  本審議会では、民間教育事業の今後の方向性を示すとともに、過度の学習塾通いの現状を明らかにし、改善の方向等について提言を行うこととします。  


(1)  民間教育事業の今後の方向性 

  民間教育事業は、学習塾のほかにも、小学生の7割以上が習字、そろばんやピアノなどの音楽関係、水泳・サッカーなどの各種スポーツといったいわゆるおけいこごとを習うなど、青少年団体の実施する様々な体験的な活動とあいまって、多様な学習機会を提供しています。民間教育事業は、子どもたちの学校外での学習環境のひとつとして大きな役割を果たしています。特に、今後学校がその本来の役割をより有効に果たすとともに、学校・家庭・地域社会における教育のバランスをより良くしていくという観点から学校教育のスリム化が図られていく中で、これらの民間教育事業は学校教育とは異なる子どもたちの多様な学習ニーズに応えていくという役割が求められていくと考えられます。  
  しかし、一方で、都市部を中心にして、小学校低学年ではスポーツや音楽などのおけいこごとを習い、高学年からは学習塾通いというパターンが定着しつつあることが指摘されています。  
  そして、一部のいわゆる進学塾を中心として過度の学習塾通いがみられる一方、学習塾でもキャンプや野外体験活動などのプログラムを導入しているところもありますし、学習塾で理科・科学実験教室などを開設するところもでてきています。  今後、学校教育は、教育内容を基礎・基本に厳選して、子どもの体験を重視しつつ、自ら学び自ら考える「生きる力」を育成する教育を目指していきます。このため、学習塾を含めた民間教育事業も、学校教育における基礎・基本のうえにたって、いわゆる受験のための知識や技術ではなく子どもたちの「生きる力」をはぐくむような自然体験・社会体験プログラム、創造的体験活動や課題解決型の学習支援プログラムなどの提供を進めていくことが望まれます。  
  また、地域における子どもたちの体験プログラムを充実していく観点からも、民間教育事業と行政とが連携して地域の中で親や子ども、地域の人々の異年齢集団でともに楽しめる多様なプログラムが展開されることが切に望まれます。  
    【当面緊急にしなければならないこと】 
    ◎  民間教育事業者に自然体験・社会体験プログラム、創造的体験活動や課題解決型の学習支援プログラムなどの提供を促す  
      学習塾を含めた民間教育事業も、学校教育における基礎・基本のうえにたって、いわゆる受験のための知識や技術ではなく子どもたちの「生きる力」をはぐくむような自然体験・社会体験プログラム、創造的体験活動や課題解決型の学習支援プログラムなどの提供を進めていくことを促す。  

    ◎  地域の中で異年齢集団による多様なプログラムが展開されるように促す 
      地域における子どもたちの体験プログラムを充実していく観点からも、民間教育事業と行政とが連携して地域の中で親や子ども、地域の人々の異年齢集団でともに楽しめる多様なプログラムが展開されるよう促す。  


(2)  過度の学習塾通いをなくし、子どもたちの「生きる力」をはぐくむ 
   
a.  学習塾通いの実態と子どもたちへの影響 
  平成5年度に文部省が行った「学習塾等に関する実態調査」では、小学生の通塾率は23.6%、中学生の通塾率は59.5%となっており、全体としては、36.4%で昭和60年度の26.3%と比較して約10%の増加となるなど年々上昇している傾向がわかります(資料1)。小学生・中学生とも、学年が上がるにつれて通塾率が高まり、小学校6年生で41.7%、中学校3年生で  67.1%となっている状況にあります。一方、平成9年度に行われた「学習塾に関するアンケート調査報告書」(以下「アンケート調査」という。)によれば、小学校6年生の通塾率は43.2%となっています(資料2)。  
  子どもの通塾率は、大都市部では高くなっており、平成9年度に東京23区と地方都市等全国3地域で行われた調査(以下「平成9年調査」という。)では、学習塾のうち進学塾に通っている小学5年生は8.5%ですが、大都市部では25.6%となっています(資料3)。  

(資料1)学年別通塾率の状況 

 
      区  分   平成5年度 昭和60年度
小学校   1学年     12.1%       6.2%
  2学年     14.1     10.1
  3学年     17.5     12.9
  4学年     23.6     15.4
  5学年     31.1     21.1
  6学年     41.7     29.6
      計     23.6     16.5
中学校   1学年     52.5     41.8
  2学年     59.1     44.5
  3学年     67.1     47.3
      計     59.5     44.5
      合  計     36.4     26.3
 

〔資料出所〕 
・平成5年度「学習塾等に関する実態調査」(文部省) 
・昭和60年度「児童・生徒の学校外学習活動に関する実態調査」(文部省) 

(資料2)小学校6年生の通塾率 
小学校6年生の通塾率













〔資料出所〕平成9年度「学習塾に関するアンケート調査報告書」(日本PTA全国協議会) 
   
(資料3)地域別にみた学校外学習機会利用率(小学5年生)    (%)

  
  学 習 塾 学習塾のうち進学塾 学習塾のうち補習塾 家庭教師 通信教育 宅配教材 市 販 書   
全  体(2665)   
33.0
    
8.5
  
18.2
  
5.7
  
24.5
  
17.9
  
33.5
大都市(769)   
47.5
  
25.6
  
16.0
  
7.8
  
25.1
  
14.3
  
35.0
地方都市(708)   
33.8
    
2.8
  
25.3
  
5.4
  
28.7
  
24.2
  
37.7
郡部(1188)   
23.2
    
0.8
  
15.4
  
4.5
  
21.5
  
16.6
  
30.1
  

注1)郡部は東北地方の郡部、地方都市は四国の県庁所在地、大都市は東京23区内。 
注2)学習塾には、表の進学塾、補習塾の他に「その他」のカテゴリーがあるが、この表では省いた。 
注3)(    )内はサンプル数。 
〔資料出所〕平成9年度「第2回  学習基本調査報告書  小学生版」(ベネッセ教育研究所)

   
  このような学習塾通いをしている子どもたちの生活をみると、「アンケート調査」によれば、小学6年生が1週間に塾に通う日数は、1日ないし2日が66.9%と最も高く、5日以上通っている子どもは8.8%にすぎません(資料4)。また、塾での学習時間は1日1〜2時間ぐらいが8割を超えており、ほとんどが2時間程度以内となっています(資料5)。  
  しかし、平成7年に全国3地域(東京、千葉、岐阜)で行われた調査(以下「平成7年調査」という。)では、小学5・6年生が1週間に塾に通う日数は週2日が通塾者全体の3割強、3日が約3割、平均で2.8日で、特に小学6年生になると、週に4日以上塾に通う子どもが約3割に上ります(資料6)。また、「平成9年調査」では、小学5年生の学習塾での学習時間は1日3時間以上が2割を超えており、特に進学塾においては、3時間以上が6割を超えているという結果もでており、特に大都市部における子どもたちが学習塾で過ごす時間が長くなっている状況がうかがわれます(資料7)。  

(資料4)1週間のうちの学習塾に通う日数(小学6年生)
1週間のうちの学習塾に通う日数
































〔資料出所〕平成9年度「学習塾に関するアンケート調査報告書」(日本PTA全国協議会) 



(資料5)学習塾での一日当たりの授業時間(小学6年生) 
学習塾での一日当たりの授業時間
































〔資料出所〕平成9年度「学習塾に関するアンケート調査報告書」(日本PTA全国協議会) 
   
(資料6)1週間の通塾の日数×属性              (%)                            

  
     1日   2日   3日   4日   5日   6日   7日   平均
  全  体 11.5 34.1 29.4 15.5   7.4   1.6   0.5   2.8日
性別 男子
女子
13.5
  9.5
35.5
32.9
28.4
30.3
14.0
17.1
  6.0
  8.8
  1.9
  1.2
  0.7
  0.2
  2.7日
  2.9日
学年 5年
6年
14.2
  9.6
37.3
31.6
27.5
30.8
13.9
16.8
  5.4
  8.9
  0.6
  2.3
  1.1
  0.0
  2.7日
  2.9日
  

〔資料出所〕平成7年度「モノグラフ・小学生ナウ  Vol.15−6」(ベネッセ教育研究所) 
   
(資料7)塾のタイプ別にみた通塾日数・塾での学習時間(小学5年生)(%)

 
A.通塾日数 1日 2日 3日 4日 5日 6日 毎日 無答・不明
全  体(880) 12.4 51.7 15.6   9.3   5.0   1.4   0.8   3.9
補習塾(485)
進学塾(227)
その他(  94)
  
13.2
  7.0
20.2
  
68.5
17.6
55.3
  
  9.7
32.2
14.9
  
  3.9
24.2
  6.4
  
  1.9
15.0
  0.0
  
  0.8
  2.6
  1.1
  
  0.6
  0.9
  1.1
  
  1.4
  0.4
  1.1
  
 

  
B.塾での学習時間 30分くらい 1時間くらい 2時間くらい 3時間くらい 4時間以上 無答・不明
全  体(880)   4.1 36.6 33.9 14.7   6.1   4.7
補習塾(485)
進学塾(227)
その他(  94)
  4.7
  0.9
  5.3
44.3
  7.5
66.0
43.5
24.7
17.0
  3.7
42.7
10.6
  1.2
20.7
  0.0
  2.5
  3.5
  1.1
 

  注1)B.塾での学習時間は、1日平均。 
  注2)(  )内はサンプル数。 
〔資料出所〕平成9年度「第2回  学習基本調査報告書  小学生版」(ベネッセ教育研究所) 
   
  また、学習塾に通っている子どもの帰宅時間をみると、「アンケート調査」によれば、7割以上が7時ごろまでと答えている一方で、9時ごろ以降も約15%いる状況になっています(資料8)。  
   
(資料8)学習塾が終わって家へ帰る時刻(小学6年生)  学習塾が終わって家へ帰る時刻
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
















   
〔資料出所〕平成9年度「学習塾に関するアンケート調査報告書」(日本PTA全国協議会) 
   
  このような学習塾通いについては、「学習塾等に関する実態調査」の中で、学習塾に子どもを通わせている親が考える「良かったこと」として、「学校の授業がわかるようになった」(34.1%)、「勉強に興味、関心をもつようになった」(27.3%)などがあげられています(資料9)。  
  一方で、「アンケート調査」では、学習塾通いが「過熱している」と思う小学生の保護者は全体の66.9%となっています。また、現在の学習塾通いについて「改善したほうがよい」と思う保護者は半数の50.3%で、その主な理由は、a.遊びや生活体験が不足し健全な精神の発達を妨げるから(47.6%)、b.有名校への進学熱・競争心をあおるために自己中心的になりやすいから(44.3%)、c.学歴偏重社会の弊害を改めようという動きに逆行するから(37.7%)となっています(資料10)。  
   

(資料9)塾に通って良かったこと(保護者)                    (%)

                            
  
        小  学  校 中学校計 全体計
    計 低学年 高学年
1.「学校の授業がわかるようになった」   30.3
(−)
  
  29.5
(25.1)
  
  30.7
(35.1)
  
    36.8
  (39.2)
  
  34.1
(36.6)
  
2.「勉強に興味、関心をもつようになった」   31.5
(−)
  
  32.2
(33.2)
  
  31.1
(30.0)
  
    24.4  
  (27.6)
  
  27.3
(29.5)
  
3.「一人でも勉強する習慣がついた」   33.8
(−)
  
  42.1
(−)
  
  30.2
(−)
  
    22.1
  (−)
  
  27.0
(−)
  
4.「熱心に教えてくれた」   19.9
(−)
  
  14.6
(20.0)
  
  22.1
(30.9)
  
    29.7
  (36.7)
  
  25.6
(32.6)
  
5.「学校の授業より進んだことを教えてくれた」   24.9
(−)
  
  25.1
(22.7)
  
  24.7
(24.3)
  
    20.5  
  (18.8)
  
  22.3
(21.2)
  
6.「進路選択や受験に必要な情報が得られた」   7.9
(−)
  
  2.4
(6.6)
  
  10.3
(11.0)
  
    20.9  
  (14.7)
  
  15.5
(14.0)
  
7.「特にない」   12.9
(−)
  
  13.4
(15.0)
  
  12.6
(10.4)
  
    13.2  
  (11.5)
  
  13.1
(11.0)
  
8.「テレビの見すぎ、遊びすぎがなくなった」   11.5
(−)
  
  11.0
(18.4)
  
  11.8
(18.4)
  
    13.3  
  (19.0)
  
  12.6
(17.2)
  
9.「友達が増えた」   13.0
(−)
  
  10.9
(18.7)
  
  13.9
(20.6)
  
    10.3  
  (14.0)
  
  11.4
(15.9)
  
10.「家庭で勉強を見てやらなくてもすむようになった」   8.6
(−)
  
  5.8
(3.9)
  
  9.8
(10.5)
  
    13.2
  (8.8)
  
  11.3
(  9.3)
  
11.「学習塾の指導で志望していた私立・国立中学校に合格できた」   −
(−)

  
  −
(−)

  
  −
(−)

  
    1.4  
(−)

  
  0.8
(−)

  
  ※  その他   7.2
(−)
  
  8.9
(14.5)
  
    6.5
(10.3)
  
    4.3
  (4.4)
  
    5.5  
(  7.3)
  
 

  注1)(  )は昭和60年度「児童・生徒の学校外学習活動に関する実態調査」の数 
〔資料出所〕平成5年度「学習塾等に関する実態調査」(文部省) 
   
(資料10)
  10−a.  学習塾通いが過熱していると思うかどうか(小学生の保護者)

学習塾通いが過熱していると思うかどうか
   
   
   
   
   
   
   
   














   
10−b.  学習塾通いの現状を改善した方がいいと思うか(小学生の保護者)    
   
学習塾通いの現状を改善した方がいいと思うか
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
10−c.  学習塾通いを改善したほうがよい主な理由(小学生の保護者)  
学習塾通いを改善したほうがよい主な理由
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   





















   
  〔資料出所〕10−a.、b.、c. 
                平成9年度「学習塾に関するアンケート調査報告書」(日本PTA全国協議会) 
   
  子どもたちの学習塾通いについては、様々な意見が指摘されていますが、このような生活を送っている子どもたち、とりわけ、小学校段階からの中学校に進学するための過度の学習塾通いについては、次のように、様々な生活面、成長発達面等への影響を及ぼしているものと考えられます。  
○  豊富な生活体験、自然体験、家庭でのお手伝いをする時間が乏しくなり、心の成長に悪い影響を与えているのではないか。 
○  疲れやストレスがたまり、そのことにより生活のリズムが乱れ、その後の健康体力の形成や心の成長発達に悪い影響を与えているのではないか。  
○  深夜までの塾通い等により、学校で授業に集中できなかったり、保健室で休みをとったり、放課後の活動に参加できなかったりするなど、学校生活に悪い影響を与えているのではないか。  
○  家庭で親とコミュニケーションをとる時間が少なくなったり、「孤食」に表れているように食生活が乱れたりするなど、家庭生活に悪い影響を与えているのではないか。  
○  過度の学習塾通いが知識偏重主義を助長し、子どもたちの「知徳体」のバランスのとれた発達を阻害しているのではないか。 
   
  これらのことについては、本審議会が行った関係者からのヒアリングにおいても、次のような事例が報告されています。 

    家庭生活面では、
・  過度の母子間での密着関係が非常に強い生活が特徴となっている。
・  保護者が学習塾の成績やテストの結果などに一喜一憂し、穏やかな家庭環境が保たれにくい。
・  学習塾に弁当を持っていって、夕食を10分程度で済ませる子どもが多いなど、家庭で夕食をとらなかったり、「孤食」するなど食生活のリズムが乱れている。
・  塾通いは楽しいと答える子どももそれなりに多いが、受験勉強への不安からストレスがたまっている。
・  豊かな生活体験が阻害されている傾向があり、自分の身の回りのことやお手伝いなどができないことが多い。
・  学習塾通いの子どもたちは体力が落ちやすい。
・  国際的にみても、過度の学習塾通いによる日本の子どもの生活態様は少しいびつになっている。
などの指摘。
    学校生活面では、
・  受験にマイナスになる役割や活動は避ける傾向が強い。
・    学校の中で子どもたちの思考のプロセスを大切にした授業を展開しようとする際、知識先  行の通塾の子どもたちが授業を軽視したような発言をして、他の子どもの学習の妨害をする  こともある。また、学習の遅れがちな子どもを軽んじることがある。
・  学校行事等で放課後友達と一緒に活動をしていても、塾の時間がくると抜けてしまうことがある。
・  疲れていて、登校してしばらくはぼんやりして授業に集中できなかったり、保健室で休みをとったりしていることが多く、午後にはイライラする子どももいるなど生活のリズムが乱れる傾向がある。
・  塾に通っている子ども同士で群れをつくり、他の子どもたちとうまく交流しないことがあるなど学級をまとめ上げていく際に妨げになることがある。
・  子どもたちは、群れ合い楽しそうに振る舞うが、仲間関係・コミュニケーションが深まらず、防御的な生活スタイルを身につけてしまっている。
・  塾は能力別クラス分けを行っており、絶えず試験の成績、結果によるクラス落ちの不安に直面し、学校の勉強を軽視する傾向がある。
などの指摘。
  学習面では、
・  すぐに結論や正解を急ぎ、途中の努力やプロセスを省略する傾向にある。したがって、簡単な問題でも、深く追求するとよく理解できていないことが多い。
・  成績の向上、受験に合格するという達成目標に子どもの意識が集約され、また、予め用意されたメニューに従ってこなしていく学習が中心となっており、課題を自ら発見したり、問題解決的な学習を行うことに向かわない傾向がある。
・  じっくり調べたり自分なりの方法でまとめるような時間をかけた学習を嫌がる傾向がある。
・  成績至上主義の意識が強く、テストの点数を気にしすぎる。「競争的・偏差値的価値観」を強くもっている。
・  正解主義が強く、問題を解く過程での間違いをノートに残すことを嫌がる傾向がある。
・  子どもたちの知徳体のバランスのとれた発達が阻害される傾向がある。
などの指摘。


  また、学習塾通いについては、子どもは「楽しい」と言っているという指摘もありますが、本審議会では、委員が直接都内の小学校2校を訪問し小学校4・5・6年生の意見を聞いたところ、子どもたちからは次のような声が多く聞かれました。  
  本審議会としては、これらの子どもたちの意見からは、子どもたちは学習塾に通っている間そのものは楽しいと感じていても、家庭や日常生活において学習塾での成績やテストの結果による大きなストレスやプレッシャーを受けていると考えざるを得ません。  

・  夕食は塾で弁当を食べる。夜なかなか寝つけない。
・  テストや勉強のことが気になってなかなか眠れないことがある。
・  遊びたいなら塾を辞めてもいいと言われるが、今まで塾に通ったことを考えると今更やめられない。仕方ないので中学受験をした後で遊びたい。
・  塾に行っているときは楽しいが、遊ぶ時間がない。塾に行っていない子をみるとうらやましいがあきらめている。
・  親が中学受験をするように決めている。よく親、特に母親から勉強するように言われたり、塾での成績が悪かったりすると怒られるのが嫌だ。
・  いじめなどの問題がないといわれている学校を受験したい。
・  高学年になると塾での時間が長くなるので憂鬱(ゆううつ)だ。
・  手伝いをするよりは勉強しなさいと親にいわれるので、手伝いはあまりしない。
・  友達づきあいをきちんとしていないと性格が暗くなって面接に影響があるかもしれないので、ちゃんと遊ぶようにしている。
などの発言。



  基本的には、学習塾における指導は私的な教育活動の分野に属するものであって、学習塾に子どもを通わせるかどうかは、本来保護者の判断に委ねられています。また、学習塾の実態は多様で、児童生徒の学習塾通いに伴う影響なども個々の学習塾や児童生徒等によって様々ですし、学習塾やこれに通う状況は地域によっても異なります。いわゆる補習塾など、その指導によって子どもたちが「学校の授業がわかるようになった」とか「勉強に興味、関心をもつようになった」などの評価を受けているものもあります。しかしながら、一部のいわゆる進学塾などにみられる、長時間に及ぶ通塾や土曜日・日曜日や夜間の通塾によって健康や心身の発達に著しい影響を生ずるおそれのある過度の学習塾通いやその低年齢化は、子どもたちを学習塾中心の生活に駆り立て、そのことにより家庭での団らんが失われたり、それぞれの子どもの発達段階にふさわしい生活体験、自然体験など様々な学習の機会を制約し、望ましい人間形成に悪影響を及ぼすおそれがあるとの懸念が指摘されていて、看過できない問題であると言わなければなりません。  
  一方、子どもたちの生活体験、自然体験、家庭でのお手伝いの経験が豊富な子どもほど道徳観、正義感が充実しているという調査結果もでており、子どもたちの「生きる力」をはぐくむためには、豊富な体験や経験が必要といえます。  
  本審議会では、子どもたちの「生きる力」をはぐくんでいくためには、特に小学生段階から過度の母子密着関係と成績至上主義の強い意識の中で過度の学習塾通いが行われている現状を改めていかなければならないと考えます。  


b.  小学校段階からの過度の学習塾通いをなくし、子どもの「生きる力」をはぐくむ 
ア.学校教育、入学者選抜を改善する 
  学習塾通いの背景には、学校における指導のあり方、入学者選抜のあり方等の問題があることを考えると、この問題に対しては、学校教育の充実、入学者選抜方法の改善等を通じて過度の学習塾通いの必要性を少なくしていくことが最も肝要であり、効果的でもあります。学校関係者は、学習塾通いの問題を真剣に受け止め、この問題に積極的に取り組むことが必要です。  
(ア)  学校教育を改善する 
  学校教育の充実については、従来から、教育課程の基準の改善や個に応じた指導の充実、教育条件の整備などの努力が進められてきていますが、一方で、本審議会でのヒアリングにおいて、次のような点も指摘されています。  

・  学習塾での指導は、成績の向上、受験に合格することといった明確な目標値を設定することができて、子どもたちが達成感を得ること  ができるが、小学校教育においてはこのような明確な目標値を設定することが難しいことから、子どもたちが小学校教育に充  実感を抱きにくい面がある。
・  中学校受験に向けた効率的な指導を行う学習塾と比べると、学校の教師の学習指導力  や熱意は必ずしも十分ではないのではないか。
・  小学校においても、もう少し子どもたちの個人差や習熟の程度に応じたきめの細かい教育に力をいれるべきではないか。
・  公立中学校では、ややもすれば学習指導よりも生徒指導にウエイトがおかれて教師が学習指導にじっくり取り組めない場合がある。
・  学習塾は、子どもたちの学校の授業にかかる予習・復習の肩代わり的機能を果たして  いる状況にある。


  また、前出の「アンケート調査」では、小学生の保護者が学習塾のあり方に関連して学校教育に望む取組として重要だと思っている主な項目として、a.授業をわかりやすく改善して、基礎・基本をしっかり学習させる(57.3%)、b.豊かな人間性を養うため、個性を尊重し、伸び伸びした学校生活をさせる(49.9%)、c.教育の内容や指導法を改善向上させるため、教師の資質の向上を図る(26.4%)となっています(資料11)。  
   
(資料11)学習塾の在り方に関連して望まれる学校教育の取組(小学生の保護者) 
学習塾の在り方に関連して望まれる学校教育の取組

   
















   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   



〔資料出所〕平成9年度「学習塾に関するアンケート調査報告書」(日本PTA全国協議会) 
   
   
   
  このようなことから、今後、小学校教育をはじめ学校教育では、これまで多くの知識を一方的に教え込みがちであった教育から、自ら学び自ら考える力を育成する教育へと転換を図り、教育内容を厳選して、ゆとりの中で、子どもたちに「生きる力」をはぐくむという改善の方向が示されました。  
  教育内容の厳選は、子どもたちが、ゆとりをもって基礎・基本をしっかり習得するようにしたり、学ぶ意欲や学び方、知的好奇心・探求心を身につけるようにするとともに、自分で考え、自分の考えをもち、それを自分の言葉で表現することができるような力を育成し、「生きる力」としての学力の質を向上させようとするものです。  
  このため、教育課程の基準の改善の方向を踏まえて、それぞれの学校においては、わかりやすい授業の創造と基礎・基本の定着を図るため、子どもたちの実態等に応じて個別指導やグループ別指導、繰り返し学習など個に応じた指導の充実を図り、子どもたちに基礎的・基本的な内容が確実に習得されるよう指導方法の改善充実を進めるとともに、子どもや地域に信頼される学校づくりに積極的に取り組む必要があります。  
  特に、今後は学校教育においても、もう少し子どもたちがお互いに切磋琢磨(せっさたくま)しながら、達成感や自己充実感を味わうことのできるよう、個に応じたきめ細かい学習指導の充実を図ることが必要です。  
  そして、保護者の方々にも、このような学校教育の改善の進展について理解していただきたいと考えます。 
   
    【当面緊急にしなければならないこと】 
    ◎  子どもや地域に信頼される学校づくりに積極的に取り組む 
      学校においては、学ぶことの意義や自らが主体的に忍耐づよく学ぶ意欲や態度の重要性、基礎的・基本的な学力をしっかり身につけることの大切さを教えていくことは何より大事である。そのためには、わかりやすい授業の創造と基礎・基本の定着を図るため、子どもたちの実態等に応じて個別指導やグループ別指導、繰り返し学習など個に応じた指導の充実を図り、子どもたちに基礎的・基本的な内容が確実に習得されるよう指導方法の改善充実を進めるとともに、子どもや地域に信頼される学校づくりに積極的に取り組む。  
      特に、今後は学校教育においても、もう少し子どもたちがお互いに切磋琢磨(せっさたくま)しながら、達成感や自己充実感を味わうことのできるよう、個に応じたきめ細かい学習指導の充実を図る。 

   
(イ)  入学者選抜を改善する 
  小学校段階から子どもたちが学習塾に通っている理由のひとつとして、中学校入試の内容・方法等の問題があります。実際、ある有名中学校の入学生に対して行った調査(資料12)では、小学校時代に学習塾に通っていた生徒は97%で、そのうち週に4回以上通っていた生徒が88%、また、そのうち学習塾での学習時間が1日3時間以上の生徒は66%となっていて、多くの子どもたちが「小学校の『教室での学習』は受験にはほとんど役に立たない」と述べていると報告されています。  

(資料12)【ある有名中学校の入学生に対する調査】(抜粋)
                                    (平成7年度入学の  123人が対象)
○小学校6年生の時、塾に週何回行っていましたか。
  a.1回=2人  b.2回=2人  c.3回=9人  d.4回=44人  e.5回=56人  f.6回以上=5人
○塾で学習していた教科は次のどれ、またはどの組み合わせでしたか。
  a.国語=0人  b.算数=0人  c.社会=0人  d.理科=0人  e.国語・算数=3人  f.国語・算数・社会・理科=116人  g.その他=0人
○通常の1日の場合、塾での学習時間はどのくらいでしたか。
  a.1時間以内=1人  b.1〜2時間=1人  c.2〜3時間=38人  d.3時間以上=79人
○塾のある日は夕食はどうしましたか。
  a.家で食べてから出かける=17人  b.途中で食べる=3人  c.途中で軽く食べ、帰宅してからもう一度食べる=27人  d.弁当をもって行く=62人  e.塾で注文して食べる=1人
○模擬試験の回数を次の中から一つ選んでください。(注  1年間)
  a.5回以下=13人  b.6〜10回=19人  c.11〜15回=31人  d.16〜20回=7人  e.21回以上=47人
  


  この調査結果からも、「学習塾」を抜きにして中学受験が考えられない状況があきらかになっています。 
  一部の私立中学校や国立大学附属中学校では、子どもたちが通常の小学校の教育課程を履修しただけでは解くことが困難な入試問題が出されていると指摘されています。このような入試問題のあり方が子どもの学習塾通いを招いている理由の一因にもなっていると考えられます。  
  元来、私立中学校は独自の建学精神に則った特色ある教育を行い、また、国立大学附属中学校は教育研究に資する実験的教育を行うことをその趣旨としているものであるが、子どもたちが小学校の早い段階から過度の学習塾通いをし特別な訓練を受けなければ合格できないような一部の私立中学校や国立大学附属中学校のあり方は問題であるといわざるを得ません。今後、これらの学校の入学者選抜は、もっぱら受験のための知識や技術をはかるのではなく、原点にたちかえり、その特色とする教育方針や設置の趣旨にふさわしい入学者選抜のあり方を工夫していただきたいと考えます。また、入試問題のあり方についても、このような一部の私立中学校や国立大学附属中学校では、小学校の教育内容からみて高度な内容の問題や特別の訓練を要するような試験問題が出題されることのないよう、受験のための知識や技術ではなく「考える力」をはかるような入試問題の改善や選抜方法の改善を行うことが強く望まれます。  
  なお、私立学校関係者や国立大学附属中学校関係者等に、今後、中学入試のあり方についての調査研究を進めるよう促すことが必要です。 
  また、子どもたちのこのような学習塾通いの背景のひとつには、保護者や子どもたちが小さい頃からいわゆる「よい大学」への進学を意識していることが考えられます。大学入学者選抜については、知識重視型の入試から「考える力」をみる入試に転換したり、ボランティア活動などの学校外での経験を評価するといった改善が進められてきていますが、今後、一層選抜方法の多様化や評価尺度の多元化等の改善が進められるよう促していくことが必要です。  
   
    【当面緊急にしなければならないこと】 
    ◎  「考える力」をはかるような入試問題の改善や選抜方法の改善を望む 
      一部の私立中学校や国立大学附属中学校では、小学校の教育内容からみて高度な内容の問題や特別の訓練を要するような試験問題が出題されることのないよう、受験のための知識や技術ではなく「考える力」をはかるような入試問題の改善や選抜方法の改善を行うことを強く望む。  

    ◎  中学入試のあり方についての調査研究を促す 
      私立学校関係者や国立大学附属中学校関係者等に、今後、中学入試のあり方についての調査研究を進めるよう促す。 

    ◎  大学入学者選抜の改善を促す 
      大学入学者選抜について、一層選抜方法の多様化や評価尺度の多元化等の改善が進められるよう促す。 

   
イ.家庭や地域社会で過度の学習塾通いを改善する 
  今後子どもたちの過度の学習塾通いを改善していくためには、学校教育を改善することや入学者選抜を改善することはもちろん必要なことですが、それに加えて、保護者の方々にも、そのために様々な取組をお願いしたいと考えます。  
  多くの保護者の方々も、日本の将来を担う子どもたちにとって本当に何が大切なのか、気がついてきているのではないでしょうか。たとえ中学入試に成功したとしても、そのあとでゴムのひもが伸びきったようになってしまい、目的ややる気を失ってしまっては仕方ありません。ひたすら学習塾に通い、家庭でのお手伝いや遊び、友達づきあいを十分に経験しない子どもが個性や創造性をもち感性豊かでたくましい子どもに育つでしょうか。自らの学(校)歴に基づいて古い価値観を押しつけているところはないか、学習塾に行かせておけば安心といった理由で学習塾に通わせていないか、小学校の早い段階からの過度の学習塾通いという現状について、保護者の方々にも改めて考えてみていただきたいと思います。  
   
    【当面緊急にしなければならないこと】 
    ◎  子どもが家族とのコミュニケーションや団らんの機会を十分にもてるよう求める 
      家庭の中で親子が会話し、お手伝いをしたりすることを通じて子どもの健やかな心身の発達がはかられる家庭教育はきわめて重要である。このため、家族とのコミュニケーションや団らんの機会が十分に確保されるように、小学生は夜7時ごろまでには塾から家に帰るよう、本審議会としては保護者に理解を求めることとしたい。また、学習塾が小学生を対象に7時以降にわたる指導コースを設けないよう求めることとしたい。  

    ◎  学習塾に関するPTA等の取組が望まれる 
      PTA等からなる地域の連絡組織をつくり、地域の実情等に応じて、学習塾が小学生などの子どもたちに対し夜遅くまで授業を行っているようなことはないかについてモニタリングを行い、それに基づいて学習塾関係者に改善を求めたり、地域のPTAの横断的組織と学習塾関係者との連絡協議会を設け意見交換、情報交換などを行うことが望まれる。 

  また、平成14年度から完全学校週5日制が実施されますが、このことに伴って学習塾通いが増加するのではないかとの懸念も指摘されています。学校週5日制は、子どもたちの家庭や地域社会での生活時間を増やして、子どもたちにゆとりを確保し、家庭や地域社会での豊富な生活体験や社会体験、自然体験の機会を与えていこうとするものですが、過度の学習塾通いはその機会を失わせることになります。  
  学習塾関係者も完全学校週5日制の実施に当たって、その趣旨を十分に理解し、節度ある行動をとるように求めます。 
   
  なお、このような過度の学習塾通いが子どもの心身の発達に与える影響について、今後、国立教育研究所等において多角的かつ実証的な調査研究を行っていくことが必要です。  
   
    【当面緊急にしなければならないこと】 
    ◎  学習塾関係者に完全学校週5日制の趣旨に沿った対応を求める 
      学習塾関係者においては、完全学校週5日制の実施に当たって、その趣旨を十分に理解し、節度ある行動をとるように求める。 

    ◎  過度の学習塾通いについての調査研究を行う 
      過度の学習塾通いが子どもの心身の発達に与える影響について、今後、国立教育研究所等において多角的かつ実証的な調査研究を行う。 

   
ウ.学(校)歴偏重社会を是正する 
  我が国の18歳人口は平成4年度の約205万人を頂点として減少期に入っており、平成10年度は約162万人になっています。この傾向は今後も続き、平成21年度には約120万人規模まで減少していく中で、進学率は上昇するものの、志願者に対する入学者の割合である収容力は100%になると試算されています。今後、少子化等が進み18歳人口が減少していくことにより、相対的に大学に進学しやすくなると考えられます。また、高等教育における専門教育のウエイトは大学学部から大学院へシフトする方向にあり、18歳段階での競争の意味合いが減少していくと考えられることなどから、大学受験の重みは緩和されていくと考えられます。  
  一方、企業においても、採用に当たって出身大学名を聴取しないといった取組が増え、採用のあり方が、学歴よりも対人関係能力や創造力、判断力などの総合的な能力を求める傾向にあります。  
  また、企業においても、新規学卒者一括採用や年功序列・終身雇用に表れるような雇用構造が大きく揺らぎ、そのことによりいわゆるブランド大学に入学しブランド企業に入社すれば幸せであるという構造が崩れてきており、また、親もそのことに気づいてきている状況にあります。  
  このように、「学(校)歴偏重社会」は是正されてきていますし、今後このような傾向は一層進むものと考えられます。 
  子どもを持つ保護者の方々は、「学(校)歴偏重社会」がこのように是正されてきていることを改めて考えていただきたいし、このような社会の変化を踏まえると小学校段階から例えば中学入試を目指す等によりひたすら受験勉強をさせることは決して望ましいことではないということを理解して欲しいと考えます。  
  また、このような社会の変化の動向等については、子育てサークルなど子育てに関する地域の様々な学習機会の場において、情報が十分に提供され認識が広がることが望まれ、これに対する行政の働きかけを促すことも必要です。  
  さらに、企業においても、今後とも一層学(校)歴に偏らない観点からの採用を行ってもらうことを求めます。 
   
    【当面緊急にしなければならないこと】 
    ◎  学(校)歴偏重社会是正の動向について情報を提供する 
      「学(校)歴偏重社会」が是正されてきている社会の変化の動向等について、子育てサークルなど子育てに関する地域の様々な学習機会の場において、情報が十分に提供され認識が広がることが望まれることから、これに対する行政の働きかけを促す。  

    ◎  採用の改善を企業に求める 
      企業においても、今後とも一層学(校)歴に偏らない観点からの採用を行ってもらうよう求める。 


7  家庭教育を支援したり、子育てに悩む親の相談に24時間対応できる体制をつくる

  家庭は、子どもたちが最も身近に接する社会であり、家庭での教育は、基本的な生活習慣や生活能力、自制心や自立心、豊かな情操、他人に対する思いやり、善悪の判断などの基本的倫理観、社会的なマナーなどの基礎を子どもたちにはぐくむものであり、地域社会での子どもたちの活動にも影響を与える、全ての教育の出発点です。
  しかしながら、近年の都市化、核家族化等によって、地縁的なつながりを頼りに子育ての知恵を得ることが難しくなったこと、個人重視の風潮など人々の価値観が変化したことなどによって、家庭教育をめぐる状況にも大きな変化が生じています。過保護・過干渉やその反対に無責任な放任、育児不安の広がりやしつけへの自信喪失など、今日の家庭教育をめぐる問題は見過ごすことのできない状況にあるのです。地域社会での人間関係が希薄化している今日、地域の子育て経験者に相談もできず、また人々の活動区域が狭い範囲に限定されていた時代と異なり、心おきなく相談できる親や兄弟姉妹も近所に居住していないことも多く、地域社会での家庭教育に関する相談体制、支援体制は極めて弱いものとなっています。また、少子化で兄弟姉妹も少なくなっていますし、地域の連帯感がうすれていることもあり、小さな子どもに接することなく育った親も多くなっており、昔と比べて親の子育てに関する知識が極めて乏しい状況にあることを念頭に置かなければなりません。高齢者の介護を家庭だけに委ねるのではなく地域で支えることがもとめられていますが、家庭教育についても、公的な機関や地域の様々な団体・グループのネットワークによって支援体制の充実を図っていくことが不可欠な状況となっているのです。
  これまで行われてきた家庭教育学級には、ともすれば家庭でのしつけに強い関心をもっている親が参加していましたが、いまや家庭教育を行う上で配慮すべき事柄や各都道府県の相談窓口等についての情報を、全ての親に伝えるようにすることが必要です。このため、学校など教育関係機関の活用だけでなく、厚生省や地方自治体の母子保健を担当している部局と連携して、親との接点を模索していくことがもとめられます。また、地域における家庭教育を地域で支援していくために、家庭教育に関する講座や子育てサークル等に関する情報提供には、子どもセンタ−の活用が考えられます。
  子育ての電話相談については、各都道府県の教育委員会において実施されていますが、その多くは昼間の時間帯に限られているため、親が必要なときにいつでも相談できるようにはなっていません。地域のつながりが弱くなり相談相手も少ない状況の中で、親の悩みに応える相談体制を充実していくことも急務となっています。

    【当面緊急にしなければならないこと】
    ◎  母子保健の機会を活用して、全ての親の家庭教育を支援する
      家庭教育の課題や家庭教育に関する学習機会、相談窓口についての説明や案内を記載した手帳やノートを、母子健康手帳交付時など4回の母子保健の機会の活用や全国の学校を通じて、乳幼児や小・中学生をもつ全ての親に配布する。家庭教育をめぐる重要な課題をテーマにしたビデオを作成し、乳幼児健診の会場や家庭教育の学習会などで視聴できるようにする。また、母子保健の機会における家庭教育についての教室・講座の開設等の取組を進める。

    ◎  「子どもセンター」において家庭教育に関する情報提供を行う
      「子どもセンター」において、子育てグループ、父親や母親の家庭教育の学習機会、親子共同体験についての情報提供や、子育て支援ボランティアになりたい人たちへの情報提供・相談窓口の紹介を行う。

    ◎  24時間体制による家庭教育電話相談を全国的に整備する
      現在、全都道府県の生涯学習センター等で行われている親の家庭教育についての悩みに応える電話相談を、ボランティアの協力を得て、24時間対応できるよう整備していく。整備に当たっては、これまでの昼間の電話相談の取組等を踏まえ、その運用時間を延長する方法などによって対応していく。インターネット・FAXの併用や相談員を配置しない深夜の時間帯の対応も考慮する。 







参  考  資  料




1  「青少年の[生きる力]をはぐくむ地域社会の環境の充実方策について」
(諮問文(抄)、文部大臣諮問理由説明(抄)、生涯学習局長補足説明(抄))

2  青少年の[生きる力]をはぐくむ地域社会の環境の充実方策に関する審議経過

3  生涯学習審議会委員・特別委員名簿





諮  問  文(抄)


  次の事項について、理由を添えて諮問します。

  1  青少年の[生きる力]をはぐくむ地域社会の環境の充実方策について
  2  社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について

              平成9年6月16日

文部大臣    小  杉      隆        


(理由)
○諮問事項1について
  今日、子どもたちをとりまく現状については、ゆとりのない生活、実体験の不足、家庭や地域社会の教育力の低下などが指摘される中で、いじめ、薬物乱用、性の逸脱行為など様々な憂慮すべき問題が生じている。
  このような状況の下、これからの変化の激しい社会の中で、地域社会の大人たちが手を携え、心豊かにたくましく生きることができる青少年をはぐくんでいく環境を醸成することが強く要請されている。
  平成8年7月の中央教育審議会第一次答申においても、21世紀に向けて、子どもたちに[生きる力]をはぐくむことが重要であるとして、家庭や地域社会における教育の充実が提言されたところである。
  また、2003年度(※)を目途とする完全学校週5日制の実施に向けての取組が進められることを踏まえ、地域社会における多様な学習プログラムの提供や、学校・家庭・地域社会の連携を支援する体制を整備していくことも重要な課題となっている。
  以上を踏まえ、今後の子どもたちの家庭での生活や地域社会での活動の在り方と、[生きる力]をはぐくむ地域社会の環境充実のための具体的方策を検討する必要がある。
    ※  平成10年4月の教育改革プログラムの改正により、完全学校週5日制の実施は2002年度に改められている。 


○諮問事項2について

    (以下略)





文部大臣諮問理由説明(抄)


平成9年6月16日      


1.第4期生涯学習審議会の発足にあたり、一言御挨拶を申し上げます。
  皆様方には、お忙しいところ、本審議会への御就任を快くお引き受けいただき、誠にありがとうございます。

2.この生涯学習審議会は、生涯学習の振興に資するための施策に関する重要事項を幅広く御審議いただく審議会であります。平成2年8月に発足した第1期審議会から第3期審議会までを通じて貴重な御提言をいただき、これらを踏まえ、文部省では施策の積極的な推進に努めてきたところであります。

3.この間「生涯学習」という言葉は広く我が国社会に定着し、人々の学習活動は一層活発になってきております。しかし、全体的には、生涯学習社会の実現に向けての取組は、まだ緒についたばかりの状況であります。21世紀に向けて、我が国社会の発展を支える国民一人一人の能力を生涯にわたり最大限発揮できるようにするための関係施策の充実が、依然、強く求められております。
  このような状況を踏まえ、今期審議会においては、次の3つの事項について御審議いただきたいと考えております。

4.まず、諮問事項1の「青少年の[生きる力]をはぐくむ地域社会の環境の充実方策について」であります。
  先の中教審第一次答申でも、子どもたちの[生きる力]をはぐくむための様々な提言がなされておりますが、社会生活を営む上での基礎的な資質を養う青少年期において[生きる力]をはぐくんでいくことは、自ら学び、自ら考える力の育成など生涯学習社会にとって特に重要な課題であります。
  今日の子どもたちをとりまく現状を見ると、ゆとりの乏しい生活実態や実体験機会の不足が指摘され、また、家庭や地域社会の現状については、核家族化・少子化の進行、地域の連帯感の希薄化などから、それらの教育力の低下が指摘されております。また、いじめ、薬物乱用、性の逸脱行為など子どもたちをめぐる様々な憂慮すべき問題も生じております。
  このような状況の中、今まさに、地域社会の大人たちが手を携え、子どもたちの[生きる力]をはぐくんでいく環境を醸成することが強く求められております。
  また、2003年度(※)を目途とする完全学校週5日制の実施に向けての取組が進められることも踏まえ、より一層の体制整備が重要な課題となっています。
  以上を踏まえ、今後の子どもたちの家庭での生活や地域社会での活動の在り方と、[生きる力]をはぐくむ地域社会の環境の充実方策について、御検討をいただく必要があると考えます。
  この場合、少子高齢化や情報化など社会の変化の状況も視野に入れ、地域社会における子どもたちの「学び」と「遊び」の環境を充実させるための体制整備などについて、従来の制度や発想にとらわれず、幅広い観点から具体的方策を御検討いただきたいと思います。
  その際、学習塾、お稽古事塾など民間の教育事業についても、子どもたちをとりまく学習環境の一つとして、その役割や教育行政の対応の在り方等について、基本的方向を御検討いただきたいと考えます。

    ※  平成10年4月の教育改革プログラムの改正により、完全学校週5日制の実施は2002年度に改められている。 


5.次に、諮問事項2の「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」であります。
  (中略)

6.今一つの審議事項は、「生涯学習の成果を生かすための方策について」であります。 
  (中略)

7.ただいま申し述べました3つの審議事項は、いずれも緊要なものであり、御審議に当たっては、テーマ別に委員会を設けていただいたり、社会教育分科審議会で集中的に審議するなど、機動的、弾力的な方途で、自由闊達に御審議をお進めいただければと存じます。

8.委員各位におかれましては、御多忙のところ恐縮に存じますが、なにとぞ格別の御協力を賜りますようお願い申しあげます。



生涯学習局長補足説明(抄)


平成9年6月16日      


  ただいま文部大臣から、第4期生涯学習審議会の審議事項について説明があったが、私からは、3つの審議事項に関し具体的に検討願いたい項目案について、補足的に御説明申し上げたい。

1  「青少年の[生きる力]をはぐくむ地域社会の環境の充実方策について」

  検討項目として、例えば、次のような点をお願いしたいと考えている。

○  今後における青少年の家庭での生活や地域での活動の在り方
  子どもたちの[生きる力]をはぐくむ地域社会の環境の充実方策についての総合的な検討をいただく上で、まず、子どもたちをとりまく家庭での生活や地域での活動の現状とこれからの展望を明らかにし、今後の在り方の基本的方向を御審議いただきたい。
  事務局としても、審議と並行して、子どもたちの生活実態などについて必要な調査等を行っていきたいと考えている。

○  体験活動の拡充方策
  中教審第1次答申も指摘するように、[生きる力]をはぐくむためには、学校のみならず、地域社会において様々な人々と交流し、様々な体験活動を積み重ねていくことが重要である。このような観点から、ボランティア活動、自然体験活動、青少年団体活動、文化・スポーツ活動など各種の体験活動の機会を一層充実させるための支援・促進方策の検討をお願いしたいと考えている。
  また、中教審答申においては、地縁的な活動から目的指向的な活動へと人々が参加意欲を移しつつある中で、そうした活動を通じて子どもたちをはぐくんでいくという、従来の学校・家庭・地縁的な地域社会とは違う「第4の領域」の育成を提唱しているが、このような活動の育成方策についても御審議いただきたい。

○  少子高齢化社会に対応した青少年の活動の充実方策
  今後の少子高齢化の進展を見据え、例えば、異年齢の子どもたちによる集団活動や子どもたちと高齢者との交流活動の促進方策、さらには高齢者の持つ豊かな知識と経験を子どもたちの健全育成に生かす方策などを検討いただきたいと考える。

○  高度情報通信社会に対応した青少年の活動の充実方策
  高度情報通信社会に対応して、子どもたちが図書館等地域の身近な施設で端末やネットワークに触れ、慣れ親しむ機会を充実させることは重要であり、そうした活動を充実させる方策について、検討いただきたいと考える。
  他方、実体験の不足を招くなど情報化の進展にともなう「影」の部分への対応についても御審議いただきたい。

○  民間教育事業の役割、教育行政の対応の在り方
  子どもたちの学習環境としては、学校や社会教育施設、青少年団体の活動のみならず、通信教育など各種メディアによる教育機会提供事業、お稽古事塾、スポーツ教室、学習塾など多様な民間教育事業による活動もある。子どもたちの[生きる力]をはぐくむという観点から、民間教育事業者の役割、教育行政の対応の在り方についての基本的な方向等について検討いただきたいと考える。
  特に、多くの子どもたちが通う学習塾は、過度の学習塾通いによる弊害が指摘される一方、地域における子どもたちの多様な学習活動を支える面でも無視できない存在となっており、その役割、在り方などについても、正面から議論していただきたい。

○  [生きる力]をはぐくむ地域社会の環境充実のための体制整備
  子どもたちの[生きる力]をはぐくむ環境充実のためには、学校・家庭・地域社会が有機的に連携し、地域社会全体での横断的な教育支援体制を整備することが重要である。特に完全学校週5日制の実施に向け、子どもたちの様々な活動の場や機会の提供などの条件整備を行う必要がある。その際、保護者が家庭にいない子どもや障害のある子どもたちへの特段の配慮が必要である。
  このような観点から、例えば、子どもの育成に関する様々な機関・団体と学校からなる教育支援組織の形成、児童福祉施設等教育行政以外の関連施設の活用、地域社会が家庭教育を支援する仕組みづくりなど子どもたちの環境充実のための体制整備についての具体的方策を御審議いただきたい。

○  青少年をとりまく有害環境の浄化
  今日の青少年をとりまく社会環境の現状を踏まえ、学校、地域の関係諸機関、地域住民、家庭等の参加の下に、青少年をとりまく有害環境の浄化や関係業界への働きかけ等地域を挙げた取組を図るための方策について御審議いただきたい。

2  「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」

  (中略)

3  「生涯学習の成果を生かすための方策について」

  (中略)

  以上、3つの審議事項について、具体的な検討項目案を補足説明した。もちろんこれらに尽きるものではなく、この他にも必要な事項については、積極的なご議論をいただければ幸いである。
  何とぞよろしく御審議をお願い申しあげる。 



    
青少年の[生きる力]をはぐくむ地域社会の環境の充実方策に関する審議経過

                                                                                                                                                                
<総会>
  第42回総会    平成9年6月16日(月)
    ○「青少年の[生きる力]をはぐくむ
                        地域社会の環境の充実方策について」諮問等

  第43回総会    平成10年3月30日(月)
    ○第1小委員会における審議状況について等

  第44回総会    平成11年4月28日(水)
    ○「中間まとめ」を文部大臣に提出

<第1小委員会>
  第1小委員会    平成9年12月10日(木)
    (第1回)○座長に奥島孝康委員を選出
               ○自由討議
                (今後の検討の方向について)

  第1小委員会    平成10年1月30日(金)
    (第2回)○自由討議
                (青少年をめぐる環境についての現状と問題点について)

  第1小委員会    平成10年2月19日(木)
    (第3回)○自由討議
                (青少年に関して国及び自治体等が講じている施策について)

  第1小委員会 平成10年3月11日(水)
    (第4回)○自由討議
                (青少年に関して国及び自治体等が講じている施策について)

  第1小委員会    平成10年4月9日(木)
    (第5回)○自由討議
                (これまでの主な意見について)

  第1小委員会    平成10年4月22日(水)
    (第6回)○ヒアリング  <財団法人キープ協会、警視庁>

  第1小委員会    平成10年5月19日(火)
    (第7回)○論点メモに基づいて討議

  第1小委員会    平成10年6月11日(木)
    (第8回)○論点メモに基づいて討議

  第1小委員会    平成10年9月22日(火)
    (第9回)○中間まとめの骨子案に基づいて討議

  第1小委員会    平成10年12月9日(水)
    (第10回)○「中間まとめ」の文案に基づいて討議

  第1小委員会    平成11年1月28日(木)
    (第11回)○「中間まとめ」の文案に基づいて討議

  第1小委員会    平成11年3月31日(水)
    (第12回)○「中間まとめ」の文案に基づいて討議

  第1小委員会    平成11年4月14日(水)
    (第13回)○ヒアリング<聖心女子大学助教授  樋田大二郎氏、ベネッセ教育研究所長  島内行夫氏>

  第1小委員会    平成11年4月27日(火)
    (第14回)○自由討議
                (民間教育事業について)

  第1小委員会    平成11年5月10日(月)
    (第15回)○ヒアリング<新宿区立西戸山小学校長  村越政則氏、筑波大学附属駒場中学校副校長  井上正允氏、株式会社日能研代表  高木幹夫氏>

  第1小委員会    平成11年3月31日(水)
    (第16回)○ヒアリング<穎明館中学・高等学校長  久保田宏明氏、ヤマハ株式会社音楽普及部長  望月武文氏>

  第1小委員会    平成11年5月19日(水)
    (第17回)○学習塾関係部分の文案に基づいて討議

  第1小委員会    平成11年5月25日(火)
    (第18回)○答申素案に基づいて討議

  第1小委員会    平成11年6月1日(火)
    (第19回)○答申案基づいて討議






生涯学習審議会委員名簿


平成11年6月現在


◎:会長  ○:副会長


  荒巻  禎一      京都府知事
  飯田  宗映      富山県民生涯学習カレッジ学長
  石塚    貢      科学技術会議議員
  井内慶次郎      財団法人日本視聴覚教育協会会長
  生内  玲子      評論家
  大野  重男      社団法人中央青少年団体連絡協議会理事
  大森    厚      学校法人中央工学校理事長
  岡野俊一郎      国際オリンピック委員会委員
○奥島  孝康      早稲田大学総長
  川村  皓章      財団法人日本レクリエーション協会副会長
  木村    孟      学位授与機構長
  坂口美代子      坂口電熱株式会社代表取締役社長
  塩谷    稔      日本電子総合サービス株式会社代表取締役社長
  杉山  富栄      前社団法人日本PTA全国協議会評議員
  中村  紘子      ピアニスト
  南雲  光男      日本商業労働組合連合会会長
  浜口  義昿        日本中央競馬会理事長
  原  ひろ子      お茶の水女子大学ジェンダー研究センター長
  福川  伸次      株式会社電通電通総研研究所長
  邊見  正和      社団法人東京湾海難防止協会理事長
  松下  直子      全国地域婦人団体連絡協議会事務局長
  矢澤富太郎      太田昭和監査法人会長
  山谷えり子      サンケイリビング新聞編集長
  山本  恒夫      筑波大学教授
◎吉川  弘之      放送大学長
  若林  之矩      労働福祉事業団理事長
  渡辺    弘      前東京都台東区立上野中学校長



生涯学習審議会第1小委員会委員名簿


平成11年6月現在


○:  座  長


【委    員】
    荒巻  禎一    京都府知事
    飯田  宗映    富山県民生涯学習カレッジ学長
    石塚    貢    科学技術会議議員
    井内慶次郎    財団法人日本視聴覚教育協会会長
    生内  玲子    評論家
    大野  重男    社団法人中央青少年団体連絡協議会理事
    岡野俊一郎    国際オリンピック委員会委員
  ○奥島  孝康    早稲田大学総長
    川村  皓章    財団法人日本レクリエーション協会副会長
    木村    孟    学位授与機構長
    坂口美代子    坂口電熱株式会社代表取締役社長
    塩谷    稔    日本電子総合サービス株式会社代表取締役社長
    杉山  富栄    前社団法人日本PTA全国協議会評議員
    中村  紘子    ピアニスト
    南雲  光男    日本商業労働組合連合会会長
    原  ひろ子    お茶の水女子大学ジェンダー研究センター長
    福川  伸次    株式会社電通電通総研研究所長
    山谷えり子    サンケイリビング新聞編集長
    渡辺    弘    前東京都台東区立上野中学校長

【特別委員】
    明石  要一    千葉大学教授
    井上  泰次    お茶の水女子大学附属中学校教頭
    奥山恵美子    仙台市教育委員会生涯学習部生涯学習課長
    久保田宏明    穎明館中学・高等学校長
    汐見  稔幸    東京大学助教授
    島内  行夫    ベネッセ教育研究所長
    島田  益吉    社団法人日本PTA全国協議会副会長
    杉原    正    財団法人ボーイスカウト日本連盟総コミッショナー
    高城義太郎    玉川大学教授
    高塚  雄介    早稲田大学学生相談センター専門相談員
    樋田大二郎    聖心女子大学助教授
    村越  政則    新宿区立西戸山小学校長
    望月  武文    ヤマハ株式会社音楽普及部長





(生涯学習局青少年教育課)

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