臨海副都心

大観覧車

Palette town

大観覧車大好き

 薄暮の頃、ゆりかもめに乗ってレインボーブリッジを渡ると、巨大な円弧が車窓に飛び込んでくる。大観覧車が、東京湾の夕暮れの空をくっきりと切り取り、美しいイルミネーションを輝かせている。直径100m、最高頂115m。フジテレビのややレトロなSF的建物と共に、臨海副都心地区、通称「お台場」のシンボルである。いや、最早、東京のランドマークと言えるかもしれない。
 私は、ジェットコースターが苦手だ。怖いことは嫌いだし、スピードだって楽しいと思わない。ついでに言うと辛いものも嫌いだ。どうしてあのような「苦痛」にお金を払う人がたくさんいるのかと思うと、頭が混乱してくる。でも、この観覧車は、好き。一緒に乗った人が「これはヒーリングですね。」と言った。そうかもしれない。高さ115mから景色の見える所ぐらい、東京には、星の数ほどあるだろう。それでも、この観覧車が人気なのは、エレベーターで一直線に上昇するのではなく、ゆっくりと散歩するように空の中を揚がって行くからだ。
プロセスを楽しみたい。
風に揺られて、「あ、揺れた」と言いながら、「東京タワーが見える、羽田空港が、飛行機が見える。」と言いながら、そしてかすかな機械音を聴きながら、ゆらりと昇っていくのは楽しい。隣のゴンドラに乗るカップルが、見えたり見えなかったりするのもちょっぴり刺激的。
あ、因みにこの観覧車は、どんなに混んでいても二組同じゴンドラに乗せていない。やはり、東京の夜景を二人で独占するのがいい。
 観覧車からは、レインボーブリッジ、東京タワー、羽田空港、エトセトラ、エトセトラと東京中のものが見える。風向きによっては、羽田に着陸する飛行機が、目の前をとおる。海のかなたから一直線に観覧車に向かい、目の前で左旋回する。次から次へと。
冬の天気の良い日なら、雪を頂いた富士山がくっきり見えるだろう。楽しみにしたい。
 この観覧車は、夜のイルミネーションが格別に美しい。東京のあちこちから見ることができる。良く見えるレストランは、人気があがって席がとれないそうだ。また、飛行機からも見えるときがある。私も羽田着の飛行機で右端の席に乗って見たことがある。16種類のパターンが、次々と出現する。中間色もきれいにでている。やや派手さを押さえた演出がいいのだろう。東京中の人から見られているなかを自分がゴンドラに乗って昇っていると思うと不思議な気がする。
 観覧車の話を人にすると、10人が10人ともまず「何分乗るの」と聞いてくる。殆どの場合、「何が見えるの」より先にだ。乗っている時間がそんなに意味のあることとは思えないのに。不思議。人間ってそういうものなのかもしれない。もしかしたら、今の日本がそうなのかもしれない。ゆっくりと考えていたい。プロセスを楽しみながら。