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はじめに
日本では、英国式のマナーが公式となっています。
その理由は、明治時代に宮内庁がバッキンガム宮殿で西欧のマナーを学んだからです。
英国式のマナーとフランス式のマナーでは、左右逆のパターンが見られます。
これは、英国とフランスが戦争を重ねた仲という歴史的背景が影響しています。
もともとは、フランスのマナーが伝統的なものですが、19世紀中頃 ヴィクトリア朝時代に、英国のマナーが完成されました。
マナーは公式のものが正しいと、一律に考える必要はありません。臨機応変に対処して良いものだと思います。
実際、国際儀礼での公式マナーは、私たちの実生活には役立ちません。
日本人が和食を食べる時に、いつも小笠原流に沿っている訳ではありませんから、西洋料理でも同じことが言えるのではないでしょうか。
宮中晩餐会などでは、国際儀礼に沿わないマナーは批難の対象となります。
食べることは儀式の1つであり、目的ではありませんから、久しぶりに食べたとか、美味しいなどという発言はせず、黙って悠々と食べるのが礼儀です。
しかし、私たちがレストランでする食事は、食べる事が目的です。毎日、自宅で食べられるようなものならお金を払う必要はありません。
非日常的で美味しいものを楽しむために、レストランでのマナーが存在します。
もし、マナーで分からない点があれば、ウェイターに聞くのが良い方法です。
レストランのマナーで一番大切なのは、周囲を気遣いながら楽しく食事を進めることです。
食べるスピードが、1人だけ早かったり遅かったりしないようにコントロールします。また、パンを食べている人の近くにバターがなかったら、自分の手元のバターをさりげなく勧めるなどの気遣いが大切です。
ソーシャルマナーの1つとして、テーブルマナーでも「自分の周りを見る、観察する」ということは大切なことです。
着席と席次
基本はレディーファーストです。
お店に入るとき、また、テーブルに案内される時も女性が先頭になります。
しかし、物理的に男性が先になってしまう場合もあるでしょう。
その場合、着席する順序が重要になります。
レストランは、和室のように床の間がある訳ではないので、上席か分かりにくいものです。
一般的には、出口から遠くサービスにわずらわされない席が上席と言われますが、支配人が最初に椅子をひいた席が上席です。
支配人にテーブルまで誘導されたら、支配人が最初にひいた上席に女性が座ります。
男性が先頭を歩いていた場合は、自分の椅子の前で女性が着席するのを待ちましょう。
国際儀礼では、男性が先に着席したりすると、国辱ものになります。
公式の場では、女性 → ホステス → 男性が着席の順序です。
大勢での会食の席次は、支配人と話し合って、会合の目的にそった席次を決めるのが良いでしょう。
椅子への座り方ですが、椅子の左から入って、左から出るのが基本的ルールです。
<椅子の座り方・立ち方>
女性のハンドバッグは、自分の左側の床に置きます。理由は、右側に置くと隣のお客様の出入りの邪魔になるからです。テーブルの上には絶対に置いてはいけません。
バッグハンガーなども有効です。
メニューの選び方
海外のレストランには、セットメニューはありません。
日本人用にセットメニューが用意されている場合があり、そのメニューだけを見せることがありますが、それはお客様に対して失礼な態度です。
お料理は、お好みで2皿を選ぶのが基本です。
日本のレストランでも、セットメニューよりお好みで2皿を選ぶ方が安い場合がほとんどです。
エリゼ級でも基本は2皿になっています。
お料理はメインから先に決めると選びやすいでしょう。
メインに合わせた前菜を頼めば良いわけです。
メイン+前菜で足りなければ、スープや魚半身(ハーフポーション)などを頼みましょう。
デザートは、最初から注文する必要はありません。メインが終わりテーブルが綺麗になってから、改めてデザートやチーズを注文します。海外のレストランは1皿のお料理の量が多いので、コーヒーだけでも構いません。
ワインの選び方
メインが魚料理の場合は白ワイン、肉料理の場合は赤ワイン、という印象があるかも知れませんが、特にこだわる必要はありません。白ワインは魚の臭みを軽減し、赤ワインは肉の脂っぽさを軽減するのに相応しいとされているだけです。
ワインリストから何を選んで良いか分からない時は、ソムリエ(か担当のウェイター)に希望する価格層を伝え、料理に合うものを選んでもらいましょう。白ワインなら「辛口」「甘口」「やや甘口」「酸味の強いもの」など、赤ワインなら「重い」「軽い」などの好みを伝えると良いでしょう。
テイスティングは、品質・保存状態の確認であり、好みのワインであるかの確認ではありません。順序は以下の通りです。
1.色
ほとんどのテーブルクロスは白であり、ワインの色はグラスをテーブルに置いたままで確認できます。
2.香り
グラスはテーブルに置いたまま、手をグラス元に添えてゆっくり回し、多くの酸素とふれるようにします。
その後、グラスを手に取り、鼻の下へ持っていき、香りを嗅ぎます。
3.味
少量のワインを口にふくみ、味・後味を確認します。
ナプキンの扱い方
ナプキンを膝にかけるタイミングは、公式の場合は、ホステスが掛けてからになります。
しかし、堅苦しいことは考えず、自分の膝の上に、ナプキンが必要になったときに置けば良いのです。
レストランでは、着席してすぐでも、パンが配られてからでも構いません。ただし、慌てて膝に掛けるのはおかしいことです。
ナプキンは、1/2か1/3に折って、折り目を手前にするのが一般的ですが、自分の使いやすいように置けば良いものです。
三角形に折って、端をお尻の下に敷くと落ちないで済みます。
ナプキンは床に落ちても自分で拾いません。メイドの手をわずらわせないために、
プロトコルの場合でも、お尻の下にナプキンの端を敷くことがあります。
<ナプキンの置き方>
ナプキンの使用目的は、手を拭く、口をおさえることです。
口を左右に拭いたり、大げさに使うのは良くないことです。こまめに使い、口の汚れを取りましょう。口にお料理の脂分を付けたままワインを飲むと、グラスが汚れ、ワインの表面に油膜が張りワインが香らなくなります。なお、口紅は、薄めに付けるか、落ちにくいものを選びましょう。
顔を拭いたり、テーブルを拭いたり、パンくずを払うのもいけないことです。
何かこぼしたら、ウェイターを呼んで軽く謝れば良いのです。
ホームパーティなど、何かを汚して迷惑をかける場合は、拭いても構いません。
中座するときは、広がらないようにかるくたたみ、椅子の上に置くと良いでしょう。テーブルの上が奇麗だったら、テーブルの上でも構いません。
食事が終わったら、たたんでテーブルの上(自分の左側)に置きます。
置くタイミングですが、公式の場合は、ホステスが置いた後になります。ホステスがナプキンをテーブルの上に置いたら、それが食事の終わったの合図です。
早くテーブルの上に出すのは、「早く帰りたい」「早く帰れ」の意味になってしまうので気を付けましょう。
分からない場合は、席を立つ時で良いのです。遅めに出すことが大切です。
パンの食べ方
「パンを食べ始めるのはスープが出てきてから」は、オールドファッション。このようにこだわるのは日本だけです。海外の食事では、スープが出ない場合もあります。スープが出る前からパンが配られるお店なら、最初から食べても構いません。
パンは、一口大か二口大にちぎって食べます。メイン皿などの上でちぎると、パンくずが散らかるのを最小限に抑えられます。かぶりついても構いません。テーブルクロスの上に落ちたパンくずを片付けるのはウェイターの役目です。気にする必要はありません。
お皿残ったソースをパンで拭うのはして良いことです。公式の場では避けたほうが良いと言いますが、抵抗があるならば、パンをちぎって皿の上に置き、ナイフとフォークでソースを塗れば良いでしょう。
ソースを奇麗に拭うのは、一生懸命ソースを作った料理人にとっては嬉しいことなのです。
パン皿がない場合は、直接テーブルクロスの上に置いて構いません。昔、テーブルクロスを汚して良いのは、貴族の特権でした。
バターは出る場合と出ない場合があります。最近では、公式の場でもバターが出ますが、昔は出ないものでした。そのため、バターナイフを置く場所は決まっていません。
スープの飲み方
スープはスプーンで飲みます。すくう量はスプーンの7分目です。すくう量が多いと、飲む際に頭が下がり、姿勢が悪くなるので気を付けましょう
英国式では、手前から奥へすくい、スプーンは、固形物を食べる以外は口に入れず、スプーンの横側から飲みます。少なくなったら、手前を持ち上げて傾けます。
フランスは、イギリスの逆になります。
フランスは、奥から手前にすくい、スプーンの先から飲みます。少なくなったら、スープ皿の向こう側を持ち上げて傾けます。
オーストリアやアメリカでは、スプーンは口の中に入れなければいけません。
飲み終わったら、スプーンはスープ皿の中に置きます。
<スープを飲む時のスプーンの動き>
イギリス式 |
フランス式 |
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飲んだスープが熱かった場合は、慌てずに、水かワインを口に含み冷ましましょう。
器の中のスープを冷ましたい場合は、スプーンを使用します。スプーンのほとんどは金属製で表面温度が低いので、それを利用し、スプーンでスープの中をかき混ぜるか、スプーンの背でスープの表面を回すなどして冷まします。息を吹きかけて冷ますのはマナー違反です。
カップスープの場合、カップの中にスプーンを置くのは不安定なので、お皿の上に置きます。場所は手前でも奥でも結構です。
飲んでいる途中でパンを食べるときなどは、一時的に外側に置きます。
<カップスープのスプーンの置き方>
カップスープは、中身がスプーンですくえなくなったら、取っ手を両手に持って飲みます。
ナイフとフォーク
ナイフ・フォークをフラットウェアと呼びます。
お皿を中心に、フォークが左側、ナイフやスプーン、その他は右側と決まっています。
どんなにお料理の数が多くても、フォークは最高3本までしか置いてありません。
上には置かないのが公式の正しいマナーです。
フラットウェアがたくさん並ぶのは英国式です。
フラットウェアの柄の飾りが、表にあるのは英国式です。フランスでは、食事の前には伏せて置くため、柄び飾りも裏にあります。
これはイギリスに対する反発です。
ナイフ・フォーク類は、テーブルの上にある好きなものを使ってかまいません。
食器が足りなくなったら、ウェイターが補うのがつとめです。
外側から使うのが基本ですが、形式にこだわる必要はありません。
お料理はフォークで押さえ、左側からナイフで一口大に切って食べます。切る場所は、フォークで刺した近くです。西洋のナイフは、押すと切れる形状になっていますので、押しながら切るようにします。(日本のナイフは引くと切れる形状になっています。)
食べ物は必ず一口大の大きさにしてから口元へ運びます。かじってお皿に戻すのは禁物です。肉類など、予め全部を一口大に切っておくのは良くないことです。お料理が冷めますし、肉汁などの旨みが流れ出てしまいます。
骨付きの肉(ラムチョップなど)は、骨を外してから一口大の大きさにして食べます。骨の近くにフォークを刺し、骨に沿ってナイフを入れて外します。
ナイフやフォークを上向きに持つのは良くありません。
先はいつも下に向け、しゃべるときはお皿の上に置きましょう。
ナイフは刃物です。振り回す、舐めるは禁物です。
英国式マナーでは、フォークの背に料理をのせます。
表に乗せてはいけません。
また、フォークを右に持ち替えるのは、「ジグザグeating」と言って禁物です。
フランスでは、フォークの背に料理を乗せるのはハシタナイ事とされています。
もともと、フォークですくうのが伝統的なフランスの食べ方でしたが、イギリスが、それを邪道としたのです。
フランス式では、フォークを右に持ち替えて構いません。
アメリカでは、子供が扱い易いように持ち替えるのが一般的です。
<フォークでの食べ方>
イギリス式 |
フランス式 |
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ライスが出てくるのは日本のみです。
当初は英国式で、フォークの背に乗せて食べていましたが、不便なためにすたれてきました。
食べている途中で、ナイフやフォークを置くときは、お皿から柄が飛び出さないように、お皿の中に、ナイフの上にフォークを伏せて置きます。
伏せたフォークの山状の下にナイフが入いる形になります。
<食事中のナイフ・フォークの置き方>
イギリス式 |
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食器を揃えるのは、食事が終わった合図です。
6時の方向が英国式、3時の方向がフランス式、他国は斜め向きです。
フォークを伏せておくのはフランス式です。
<食事が終わった時のナイフ・フォークの置き方>
一般的な注意事項
食事中、お皿類は手で持ち上げてはいけません。
お料理は、全員に配られたら食べ始めます。
長いテーブルで大勢で会食するときには、自分の周囲4〜5人に配られたら食べましょう。
テーブルでは右が上座になります。お料理の残り(魚の骨など)や、退席時のナプキンは、自分の左側(下座)に置きましょう。
クチャクチャと口から音を立てたり、すすって食べるのは厳禁です。
犬食いは厳禁です。
耳を塞がなければいけないマナー違反には特に注意しましょう。
チップは10-15%が一般的です。理由もなしに余計なチップを置くことはありません。20%がMAXです。領収書にサービス料が含まれていたら、別途チップを払う必要はありません。レストランでサービス料が課せられる場合は、その旨がメニューに記載されています。
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