Halloween Love
見つめていることだけは、許されるのでしょうか?
決して、私のこの思いは誰にも・・・貴方にも、伝えないから。
でも、たった一日・・・10/31の夜だけは、
思い切って貴方を誘うから。ゼッタイ断らないで欲しい。
”どうしたんだ?めずらしいな”と言わんばかりの表情で
貴方が私の顔を、まっすぐに見つめた。
そうよねえ、普段、まるで避けているかのように、
いつも目をそらしているから。
でも、あなたはほほえんで”いいよ”と言ってくれる。
「私の胸の内を知ってるの?」
心の中でそう呟いてみる。・・・知ってるかもね。
今日、ストリートは仮装行列の渦と化す。
私たちは、二人で仮面を手に、やってきた。
ここは大勢の、いろんな仮装をした人たちで賑わっている。
私も、仮面をつけた。
私の斜め前に貴方が立ち、おもむろに腕を曲げた。
貴方の腕に自分の腕を絡めた、その瞬間に
私の夜が始まった。
〜 Halloween Night 〜
誰に会っても平気。ううん、誰にも出会わない。
まるで異国に二人、迷い込んだかのようなひととき。
雑踏の中、貴方の腕にしがみついて歩く。
人生も、こんな風に歩いてゆけたら・・・
幻想に胸を締め付けられる。貴方の歩くペースは速い。
ショウウインドウの前で、ふと、二人で立ち止まる。
ティディーベアが、椅子に座っている。
それを眺める私の肩に、何かが乗った。
それは、貴方の腕・・・
予想もつかないシチュエーションだった。
まさか、そんな風にしてくれる人とは、思ってなかった。
一瞬、私の頭の中の時間だけが止まる。
人生も、そんな風に貴方が包んでくれたら・・・
今夜だけ、こんな幻想に心を委ねることをお許し下さい。
だけど、私は固まったまま、暫く身動き出来ないでいる。
そして又、腕を組んで歩きはじめた。
ほんのささやかな背徳
ただ、これだけの事
今日が終わる頃には貴方はうちに帰って、
子供たちを抱きしめるパパに戻る。
貴方の心に私は存在しない。それでいい。
ただ、私が勝手に夢を見る、そんな夜が一日暮れる。
それに、貴方が協力してくれる。なんて・・・贅沢な贅沢な夜。
恋する気持ちは、そう・・・まるで暑かった日々が嘘のように
朝の風のひんやりとした冷たさに心動かされるように
突然に感じる驚き・・・
貴方に出逢ってから、もう何年にもなるというのに
「人生のパートナー」が居る・・・それだけで、
恋の対象には、とても想うことなんてなかった。
これからも、この恋心は私の胸の奥底に沈めて、
ただ、貴方の事を眺めていたい。それだけでいい。
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