今日のはじまり

 

 遅い目覚め、眩い朝日を浴びて床から身体を無理やり引き離す。
 両手にすくった冷たい水、顔を洗い、麗らかな春の一日が始ま
る。
 本来、目を覚ますべき時刻は過ぎていた。後は素直に開き直り、
少し遅れた朝食を満喫することにしよう。
 顔をタオルで拭き、ちょうどいいタイミングでコーヒーの芳ば
しい香りが台所から発ち込める。
 朝の、一日の始まりは、濃いコーヒー、これに勝る物はない。
 クロワッサンでも口に咥えて、陽だまりブランチと洒落込むこ
とにしよう。
 カフェオレとはいかないまでも、パンとコーヒー、一寸したパ
リジャン気分が味わえる。
 やはりハムエッグぐらいはなければ、早速準備に取り掛かる。
 冷蔵庫を開けて、玉子を取り出す。ふっと目にした藁包、思わ
ず手を伸ばす。
 あぁ ―――― 哀しいかな日本人、ハムエッグにクロワッサン、
パリジャン気分の朝食が何処かへ消え、代わってご飯に納豆、こ
の誘惑に負ける。
 和食にコーヒー、アンミスマッチ ―――― 遅い朝食を陽だま
りのなかで味わう。
 小さな挫折から一日が始まる。だからっと言って後悔はしない
が、素直な気持ち、哀しい
 寂しい一人住まい、新聞を読み、世間の時世を知る。
 熱いコーヒーが食後の喉を潤おした。
 やはり、一日の真の始まりにコーヒーは欠かせない。
 陽だまりで新聞と共にコーヒーを味わい、平凡な幸せに浸る。
そう、けして渋い緑茶であってはならない。
 時計の針が十一時を指す。新聞を折りたたみ、さぁ、行こう。
 本当の一日の始まりだ!

 

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