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旅行会社を10倍賢く利用する方法

■お客さんのタイプ

おそらく、今までに旅行会社を1度も利用したことが無いという方は皆無に近いのではないだろうか。たとえ個人的には無くても、会社の旅行や総務が手配してくれた出張の切符などはどこかの旅行会社を使っているはずである。念のために言うが、筆者は旅行会社の利用を促進する意味で書いているのではない。何度も述べてきたように、旅行のスタイルは人それぞれであり、どういう手段で手配・予約するかはケース by ケースである。旅行会社を利用するのはその選択肢の一つに過ぎないと思っている。

では、具体的にどのように利用されているだろうか。
 A.旅行会社へのこだわりはなく、毎回違う業者を利用している。
 B.ほぼ毎回、特定の旅行会社を利用している。
 C.毎回、特定の旅行会社の特定の社員に申し込みをしている。

大別すればこのどれかになるだろう。そして、Aタイプの人が最も多いのではないだろうか。特に、海外ツアーを選ぶような場合、各社のパンフレットを山のようにかき集め、「こっちの方が安い、いやあっちの方がホテルがいい」などとやっている人は多いと思う。この究極が「○○-Road が何よりの愛読書」という人である。もちろん、同じ旅行をするなら1円でも安い方がいいのは誰もが思うことであり、料金のことを別にしても内容を充分に比較検討するのは大切なことだと思う。だが、まことに残念ながら、旅行会社の立場からすればこのタイプのお客さんの優先順位は低く、あくまでも「一見さん」の対応で終始することが多い。(この一見さんが自社の固定客になってもらえるような商品開発とサービスの向上が必要なのだが…)

さらに最も困るのが、いくつものツアーを掛け持ちで予約し、キャンセル料がかかる間際にキャンセルするお客さんである。旅行会社もバカではないから、こういう客の名前は忘れない。お客さんの立場からすれば、何も悪いことをしているわけではなく、自分に都合のいいツアーを吟味しただけのことなのだろうが、旅行会社はそうは思わない。「浮気をする人」としてインプットしてしまうのである。

決して、どちらの言い分が正しいかをここで論じたいのではない。が、長い目で見ればBやCタイプの人に比べて明らかに損をしているように思えてならない。

 

■常連客が得をする(1)

上では、旅行会社を利用するにあたり、「一見さんは常連客に比べて損をしている」という主旨のことを述べた。常連客が得をするのは世の中のどんな商売にも共通することだろうが、例を挙げてご説明したいと思う。

まず、ホテルや旅館を予約する場合。例えばあなたがAホテルかBホテルのどちらにしようかと迷っている時、旅行会社の社員が「Aホテルの方がいいですよ」と言ったからといって、必ずしも本当にそうとは限らない。社内のキャンペーンなどで「Aホテルを売れ」という業務命令が出ていることがあるし、また、送客手数料がAホテル15%、Bホテル10%であれば、ほぼ間違いなくAホテルを奨められることになるだろう。これらはABのどちらが良いかとは別の話である。

また、希望のCホテルを予約しようとして、運悪くすでに満室であった場合、たいていは「Cホテルは満室ですねぇ。Dホテルなら空いていますが」となる。Dホテルでも構わなければそれでいいが、どうしてもCホテルに泊まりたい場合、常連客にはキャンセル待ちの手配をしてくれる。詳しい作業内容は省略するが、私の経験上、よほど特殊な場合を除いてかなりの確率でCホテルを確保できるはずである。

お盆や年末年始の帰省の切符の手配にも同じことが当てはまる。JRの指定席券の場合、発売日に確保出来なければキャンセル待ちをコンピューターに入力するのだが、同じキャンセル待ちでも一見さんと常連客とではなぜか確保できる確率に差が出る結果になるものである。

また、国内・海外を問わず、飛行機を使ったツアーでは、どのコースにも設定人数(=仕入れ席数)というものがあり、その人数の申し込みがあればそれ以後はキャンセル待ちになってしまうのだが、常連客にはその設定人数を越えて追加の席を確保する場合もある。つまり、設定人数20名のコースを無理矢理22名にしてしまうというようなことも行われているのである。

ここに挙げたのはほんの一例に過ぎない。もう少し特殊な例は次回に。

 

■常連客が得をする(2)

最近では、異常なまでの超激安ツアーを目にすることが多くなったが、一昔前までは業界内の自主規制で方面別の「最低販売価格」が決められていた。例えばホノルル5日間のコースなら84000円で、建前上はこれより安いツアーは存在しなかったことになる。(実際にはカード会社などが「会員用」という名目でこれを下回る商品を販売していたが…) その後、HISなどがこれより安いツアーを続々と発売し、各社がそれを追随する形で現在に至っている。

ところが、その当時でも激安商品は存在したのである。特定の航空会社やホテルとの特別交渉で生まれた商品で、「出発日限定、ホテル限定」であることが多かったが、料金的には間違いなく“破格値”であった。特に、航空会社との年間販売契約の年度末にあたる3月にこういう商品ができることが多く、筆者が記憶する中では「香港4日(ホテル日航香港)」「シンガポール5日(マンダリンホテル)」などがともに5万円であった。どちらもその当時の相場の半額程度である。このほかにも北海道スキーや沖縄など、各方面の商品が存在した。

これらの商品にはパンフレットなどなく、従って“公”になることはない。常連客や営業マンの得意先などに手書きのコピーを見せて「こんなのがありますがいかがですか…」などとやっていたのである。私が在籍した会社では、念を入れて「社員研修用商品」などと銘打ち、しかも「コピーには社名を絶対入れるな」という指示も出ていたくらいである。

「いくら行きたくても3月に5日も休みは取れない」「たとえ5万円でも香港には行きたくない」と言われればそれまでだが、こういう情報を知り得るか否か、その差は大きいように思う。少なくとも一般の人は知らないことだし、年間の全ての商品の中には食指をそそるものがひとつくらいはあるだろうし…。なんといっても同じツアーが半額で行けるかもしれないのである。

 

■安くなるのか?

ここまでは「常連客が得をする」という話をしてきた。これに対し、読者の方から質問のメールを頂戴した。大要は「常連になれば値引きがあるのか?」というもの。ある意味では読者の皆さんのいちばん興味のあることだろう。筆者はすべての旅行会社の事情を知っているわけではないので断定的なことは言えないが、「ほとんど無い」もしくは「ほぼ無い」と言えるだろう。もちろん、全く無いわけではない。大手などではクレジット提携の自社カードを発行し、その会員になれば国内外のツアーが5%程度割引になるケースがあるし、利用毎のポイント制を採り、一定ポイント貯まれば5000円の旅行券をプレゼントするエージェントもある。また、ツアーを2ヶ月前までに申し込めば1万円引きというようなキャンペーンを組むこともある。だがこれらは「そういうシステムがある」というだけで、「常連客への値引き」とは意味がやや異なる。おそらくご質問の主旨は「顔見知りになればまけてもらえるのか?」ということだろう。

考えてみれば、旅行会社というのは「定価販売」が守られている数少ない業種の一つではないだろうか。少なくとも車のように「値引きが当たり前」ではないし、パソコンのように「モデル末期になれば安くなる」ということもない。一部のツアーや格安航空券では出発日間際の空席に対し大幅なディスカウントをすることがあるし、ホテル・旅館で当日の予約に割引を適用することもある(【注】こういう主旨のWebサイトもいくつか登場している)が、これらはまだまだ一般的ではなく、しかも「計画的に」これらを狙うのも現実には難しいだろう。

話がそれたが、私の経験を振り返っても、よく知ったお客さんだからといって会社の経費で値引きをしたことはほとんどない。ホテルや旅館の手配に対する旅行取扱料金(500円程度)をサービスするくらいである。会社としても、特別な理由のない値引きは認めない方針であった。

「安くならないのなら常連になる意味がない」と仰る方もいるだろう。「お金がすべて」「値引きされることが最大の魅力」という方にはそれ以上の反論の言葉はないが、過去3回に述べたようなメリットはあるし、お金には代えられない利用価値もあると思うのだが…。

 

■常連客になるには

ここまでは、常連客が得をする話をしてきた。そこで次は、「どうすれば常連客になれるか」について。もちろん、「何回も利用すること」となるわけだが、

ポイントは
・「旅行会社の常連になる」のではなく「特定の社員の常連になる」ことである。旅行業界はまだまだ人間の手作業による部分が多く、顧客管理なども会社ベースではなく、担当者レベルで行われていることが多い。さらに、「無理な注文・難しい手配」を処理するのも社員の手作業である。その社員が「あと一押し」の作業をするか否かは、あなたのことをどれだけ大切に思っているかにかかってくる。会社の顧客名簿に載っているだけではほとんど意味がないのが実状である。

さらに、できれば
・女性社員ではなく、男の営業マンと仲良くなること。
女性の読者の方が多いこのマガジンでこんなことを書くのは問題かも知れないが、決して男女差別的な意味で言っているのではなく、まして性別による能力差を言っているのでもない。一般に女性社員が店頭専任であるのに対し、男性営業マンはメインである団体旅行のセールスをする傍らで添乗業務もこなす。従って現地の最新情報に詳しい。また、ホテル・旅館・業者などに「顔が利く」ことが多く、少々の無理難題でもなんとかしてくれる可能性が高い。欠点は、昼間は外回りをしているので連絡がつきにくいこと。当然ながら海外添乗に出ている間は音信不通になってしまう。

そして
・顔と名前を覚えてもらえるまで、その担当者に直接申し込みをする。
その際に「他の旅行会社は一切利用していない」と思わせることである。内緒で他社のツアーと比較するのは結構だが、表面上は「他社には見向きもしない」という姿勢で接しなければ「大切なお客さん」ではなくなってしまう。

旅行会社の取り扱い商品は意外に幅広く(詳しくは次回に)、その気になれば利用できる機会は結構多いと思う。ただし、これまでに書いてきたように、料金面だけを比較すれば「旅行会社を利用しない方が安い」ことも多いだろう。その差額を将来の「無理な注文・難しい手配」への投資と思えるかどうか、である。

 

■旅行会社の利用機会は以外に多い

旅行会社はもちろん旅行の予約をするところだが、その取り扱う商品は意外に幅広い。今回はそれをご紹介したいと思う。会社の規模や形態によって若干違うが、中堅以上の一般的な旅行会社ではほぼ同様であろう。

・国内外パックツアー
・宿泊券(ホテル・旅館・民宿・ペンション・国民宿舎・休暇村など)
・JR券
・航空券
・主な私鉄の乗車券・特急券
・長距離バス、定期観光バス、フェリーなどの切符
・貸切バス、タクシー、レンタカーの手配
・食事、宴会、弁当の手配
・ゴルフの予約
・テーマパーク、遊園地などの入場券
・観劇やイベント(博覧会など)のチケット
・団体旅行の手配
・教会(結婚式)の手配
・海外鉄道パス
・旅行用品(スーツケースや海外おみやげなど)の販売及びレンタルの取次
・旅行保険
・トラベラーズチェック

などが一般的なところだが、これら以外にも、

・旅行積み立て
・旅行券(商品券)
・ハイウェイカード
・スキーリフト券
・グルメチケット

などを取り扱うケースもある。
これらの中で「国内外パックツアー」については、自社の商品だけでなく、他社のツアーも取り扱っている。これは知っておいてよいことで(知らずに利用されている方も多いと思うが)例えば「ルック(JTB)」を日本旅行で申し込むことができるし、「マッハ(日本旅行)」を近ツーに申し込むこともできるということ。一連の「旅行会社の常連になる」という話とも関連するが、どうしてもその会社の商品に希望のコースが無ければ他社のツアーでもその会社に申し込めばいい、ということである。(ただし、その旅行会社どうしが契約していなければダメだが、誰もが知っているような商品ブランドならたいていは契約しているはずである。)

ちょっと以外なところでは、旅行保険を取り扱うということは損保の代理店を兼ねているということで、自動車保険や火災保険の取り扱い(取り次ぎ)もしているのである。

 

■好かれる客

どんな商売にも「好かれる客」と「嫌われる客」とが存在する。旅行会社でも同じである。「贅沢な旅行をするからいい客、安い(貧乏な)旅行しかしないから悪い客」という尺度も確かにあるが、もっと広い意味で「好かれる客」の条件とは何か? についてお話しようと思っていたところ、タイミングよく読者の方から投稿をいただいたのでご紹介する。

  ………(前略)………

私も、ここ数年は同じ旅行会社の同じ営業さんでみんなやってもらっていました。最初何回か頼んだ時、とても親切で熱心にやってくれたので、自然にまたあの人に頼みたいということになったのです。そうしているうちに、先方も覚えてくれますので、けっこう急に頼まなくてはならなかった時に、駄目でもいいから、といって申し込んだのに、「他のお客さんとはちがいますから、できるだけやりますよ」といって、どうやってか予約をとってくれたのには驚き、感謝もしたものです。

その人も、やっぱり外回りの営業さんなので、自分でもホテルや旅館の生の情報を持っているので、相談しても「お宅はここはむかないでしょう。××の方がきっと気に入ると思います」とか、きめこまかく対応してくれるので、とても助かります。

だいたい、お勧めされてはずれることは近頃はめったとないです。料金についても、できるだけは考えてくれているようですが、やはり予約の取りやすさと、いってきたあとの満足度が違うのが大きいと思います。

ただ、よい関係ができるためには、顧客のほうも努力する必要があるんじゃないかと私は思いますので、以下のような点は気をつけています。

 1.自分の希望ははっきりさせる

ある程度、好みなどがわかってくればともかく、そうでないうちは特に、具体的に言ったほうがいいと思います。遠慮して、お任せしますとか言われるほうが困るみたいです。そして、そうした方がお客さんに満足してもらえる可能性が高くなるのでやりやすいそうです。

 2.手配してもらった旅行の感想は必ず伝える。

よくなかったら、どこがどう気に入らなかったか必ず言う。レベルの問題でなく、自分の好みと合わないため、満足できない事もあるが、そのときは、好みと違ったらしいと伝える。これをしていくと、だんだん好みなどを理解してもらえるようになります。また、満足した時も必ずお礼とともにどこがよかったか伝えます。忙しいのに悪いかなとは思いますが、行ってきて楽しかったらありがとうと言いたいので、これはやっています。

 3.マナーの悪い客にならない

あんまり無茶なことを言ったり、ドタキャンしたりしないように気をつける。子どももおりますので、キャンセルしたことがないわけではありませんが、できるだけ迷惑が少ないよう、連絡等は努力しました。また、決まりのキャンセル料は気持ちよく払うのが客の仁義だと思います。自分がされたくない事はしないようにすればいいのではないかと思います。

まだあるかもしれませんが、取りあえず。みなさんのよい旅の足しにでもなれば幸いですが。
(Y.Bさんより)

全くこの通りである。私が書こうとしていた内容とあまりにも同じなため、補足の余地もないほどで、ここに書かれていることがすべて実行できれば、間違いなく「好かれる客」であり、旅行会社からも大切に思われるはずである。

 

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*このページの内容はメールマガジン No.030(1999.03.11発行) ・ No.031(1999.03.18発行) ・ No.032(1999.03.24発行) ・ No.035(1999.04.05発行) ・ No.036(1999.04.11発行) ・ No.037(1999.04.17発行) ・ No.040(1999.05.05発行) に掲載したものを加筆・修正したものです。

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