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老舗が消えていく

もうニュースなどでご存じと思うが、大阪の名門・ホテルプラザがこの(1999年)3月で閉鎖されることになった。プラザといえば、ロイヤル(現リーガロイヤル)、東洋ホテルと並んで「大阪の御三家」と呼ばれた老舗ホテルである。中年以上の方にとってはプラザは“憧れのホテル”であったかも知れない。私も、中年の域には達していないが、関西人として、また旅行業界に身を置いた立場として、「プラザがなくなる」と聞けば柄にもなく感傷的な気分になってしまう。大阪では、同じく歴史のある大阪コクサイホテルも3月で廃業、中堅のインターナショナル堂島ホテルも経営母体が倒産するなど、ホテル界の厳しい現状を象徴するようなニュースが年明けから続いている。リーガロイヤルが市内のグループホテルの売却先を探しているとの噂も聞こえてくる。

ホテルプラザは、今でこそ設備的にはとりたてて長所はないが、大阪らしい手厚いサービスには定評があったし、経験豊富なスタッフの親身な接客姿勢は後発の外資系ホテルにも決して劣っていたわけでもない。近年では「スタンダードシングルが9500円」というビジネスマン向けの企画がヒットするなど、それなりに頑張ってはいたようだ。だが、赤字は膨らむ一方。有り体の言葉だが、“旧き佳き時代”の名声だけではやっていけないということだろう。

そもそもバブル期頃までは、大阪ではむしろホテル不足が叫ばれていた。その頃の高級ホテルといえば、先の御三家のほかには日航や全日空、都ホテルがあったくらいで、ニューオータニやヒルトンができたばかりであった。それが90年代に入って、南海サウスタワー、阪急インター、ウェスティン、ハイアット、帝国、リッツと、一流ホテルが続々開業。その下のクラスでも三井ベイタワー、シーガル天保山、なんばオリエンタルなどがオープン。この10年の間に大阪のホテルは一気に供給過多になってしまった。単に客室数が増えた問題だけでなく、宴会・婚礼という限られたパイの取り合いの中で、新しいホテルにシェアを食われた影響も大きかったと思われる。

せめて今のうちにホームページを見ておこう、と思ったが時すでに遅く、2月10日でこちらも閉鎖されていた。新しい魅力あるホテルが誕生するのは素直に嬉しい。だが、古いホテルもなんとか消えずに頑張ってほしい。そう強く願望する今日この頃である。

 

*このページの内容はメールマガジン No.025(1999.02.14発行) に掲載したものを加筆・修正したものです。

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