新羅ホテル |
▼読者投稿
「二度と泊まりたくないホテル」のコーナーは、ホテル経験の浅い読者たちの、誰にも聞いてもらえない怒りやしっくりこない気持ち、納得出来ない対応、それらを公正な立場から判断してコメントを頂ける場として非常に有意義で、有り難く思っています。ホテル側が私たちの意見を無視しようと、このようなぺージが存在する限り、少しでも被害者を減らし、消費者自体が賢くなれると何よりだと思います。今後も頑張って下さいね、応援しています。
さて、私は現在韓国ソウルに住んでいて、先日こんなことがありました。ホテル宿泊時のエピソ−ドではないのでちょっとこのコーナーの趣旨からずれていたらごめんなさい。
先日、ソウルでは一流といわれる新羅ホテルにフレンチを食べに行きました。ランチでしたが、ちゃんと予約を入れて行きました。予約を入れる際に、支配人という方の対応がちょっと高慢な感じでした。電話を切る際に「うちは高級レストランですのでそれなりの格好でお願いします」などと言われ、ちょっと馬鹿にされたような気分でした。
しかし行って見るとさすが新羅。味、調度品の趣味、眺望、どれをとっても最高のものでした。スタッフもコースの前半はすごく感じよく応対してくれました。
因みにその日は普通の日ではなく、こちらの旧正月の前日でした。いわば日本の大晦日のような雰囲気で、どこかひっそりとしてお客も少なく、私たちが到着した時点でお客は私たちを含めて三組だけで、その後もお客は入ってきませんでした。その一組が帰り、もう一組も席を立つと、スタッフはみな姿を消し、一人の方が出てきてテーブルを片づけ、テーブルクロスを代え、そこに皺を伸ばすスプレーをかけたり、ディナー用のテーブルセッティングをし、キャンドルを並べていきました。
私たちがメインを食べ終わってコーヒーとデザートが運ばれました。私たちはコーヒーが好きだし、そのコーヒーがとても美味しかったので、少し悪いとは思いつつもコーヒーのお代わりを頼んでしまいました。持ってきてくれたウェイターは笑みを浮かべながら「お客様貸し切りですから、このコーヒーは追加料金ですね。」と、冗談とも本気ともつかない皮肉を言いました。
この一言に、私はとても驚き、ショックを受けました。今までこういう一流ホテルのフレンチでは、たとえ最後の客になっても「どうぞゆっくりして下さい」というようなことをたてまえにせよ言われて来たので、早く席を立って欲しいことをほのめかすようなこのウェイターのジョーク?には冷や汗が出る思いでした。
もちろん最後のコーヒーは味わうどころではなく急いで席を立ち、支払いもレジでしました。ここでも支配人と見られるタキシードの方が、支払いを済ました私たちを見送りもせず、レジを閉めるのに専念していて、「ありがとうございました」の一言もないのです。他のスタッフも誰一人として顔を見せませんでした。わたしたちは非常に美味しかった料理と、文字通り「追い出された」ような気分とのギャップに納得がいかないまま、ホテルを後にしました。
家に帰ってからも、あの料理にあの雰囲気、是非また行きたいレストランには違いないのだけれど、あの一言は許せない・・・などといつまでも気になってしまって、とうとうホテルにメールで苦情をいいました。但し、韓国語が上手ではないので英語で書きました。そしたらすぐに支配人からメールが来て、お詫びがありました。・・・が、この支配人という方の英語も相当なもので、文法は間違いだらけ、とりあえず謝っておられることは理解しました。そして、正式にお詫びしたいから住所を教えてくれ、と書かれていました。
住所を書いて返送した、その日か、その翌日の夕方。夕食の準備をしているといきなりベルがなり、マンションの小窓から確認すると、見た事のない男性が二人、タキシードのような服装で立っています。まさか・・・いきなり訪ねて来るなんて。わたしときたら、体調も悪く、すっぴんでひどい格好でした。でも居留守を使うわけにもいかずとりあえずエプロンを外してドアを開けると、玄関先でその人は支配人だと名刺を差し出し、今回の件は謝る、これはお詫びのしるしだ、と大きなケーキを置いていかれました。
いくらお詫びをするとは言え、都合も聞かずいきなり人の家を訪問して、ちゃんとした格好もしていない私にむしろ申し訳ないような気にさせるなんて。これが一流のサービスといえるでしょうか。もちろんお忙しい支配人直々にわたしの家まで訪ねて下さるのはそうそうできない心のこもったサ−ビスととることもできる思います。しかし、個人のプライバシーや、私生活を重視してくれたら、そういうことはできないはずだと思います。
周りの雰囲気も察しないでコーヒーのお代わりを頼んだことや、住所を教えておいて、もしかしたらその方達が見えるということを予測しなかった自分もばかですが、なにかあのレストランのサービス、支配人のやり方には気持ちよい印象を受けません。また、アメリカ生活の経験があるとはいえ母国語でない英語を使って苦情のレターを書いたのも行き違いの原因だったと思います。
この話を読んで下さってどう思われますか? 私にマナーがなく、非常識な面があれば教えて下さい。こういう謝罪方法は国際的に通用するのでしょうか?
(Zさん)
■作者コメント
元の迎賓館を利用した新羅ホテルはソウル一の格式の高さで、日本でいえば帝国ホテルに相当するホテルです。部屋が狭いことと場所がやや中途半端なことを除けば、文句なしにトップクラスのホテルです。
一般論ですが、折り目正しいスタッフでも、日本人にはややくだけた接し方をするホテルはたくさんあります。今回のケースがそれに相当するのかどうか、なんとも言えませんが、「うちは高級レストランですのでそれなりの格好でお願いします」というのはあまりにも慇懃無礼です。
その後の対応については、メールでの謝罪、スタッフが出向いてお詫びするという、形式的には誠意あるものと言えます。日本人の発想と韓国人の流儀との間で微妙なズレがあるのは、ある程度はしかたのないことです。少なくとも、一般の個人宅に支配人クラスのスタッフがやって来て謝罪するというのは、かなり特殊なケースと言えます。本当に申し訳ないと思っていなければ、そこまではしないのではないでしょうか。
▼読者投稿(その後)
その後、ホテルの総支配人から丁重な謝罪のレターとともに、「我々のレストランにラストチャンスを下さい」とディナークーポンが送られてきたとのこと。Zさんもすっかり「見なおした」ご様子です。
■関連サイト
新羅ホテル
http://seoul.shilla.net/jpn/
*このページの内容はメールマガジン No.154(2002.03.15発行)・No.155(2002.03.22発行) に掲載したものです。