神聖闘機L−seed + 超兵鬼神ガンドルフ ハードバーニング!Vol.1
「Great LINK」
鬼神の如き、いやまさに鬼神の一撃が、死の堕天使に決まる。
殴り抜いた姿勢のままで、鬼神の中の少年は叫んだ。
「なんで!わかんないんだよ!!!」
その瞳には既に涙さえ浮かびかけている。
それはあまりに悔しくて、悔しくて溢れ出る涙。
「どうしてなんだよ!!」
おかしくなりそうなほどの憤りの嵐は、まだ若い彼の心に苛立ちを強く与える。
思わず叩きつけた拳からは、血が滲んでいた。
「勇人。」
少年の耳に聞き慣れた、自分の友達の声が聞こえる。
それは、
ガンドルフ
その声に後押しをされたのか?
もう一度、もう一度だけ、勇人は問いかける。
「マナブさん!もう・・・もう・・・闘うのは俺達しか居ないんだ!!なのにどうして!!」
握りしめる拳。
力が入りすぎて、その拳が震え出す。
そして、食い込んだ爪が先ほどの傷とは違う、別な傷をつける。
それは、勇人の心の痛みよりは軽い。
ガンドルフも勇人の気持ちを理解しているのか?
その拳は強く握られたまま、微動だにしない。
「・・・・・・」
モニターに映る、まだ自分の弟にしても幼い少年の激昂を受け青年は黙ったまま。
ゆらりと立ち上がる堕天使。
いや、胸に刻み込まれた名前。
L−seed
蒼と白が、太陽を反射してこの世のモノとは思えないほどに幻想的に佇んでいた。
静かに対峙する二つの異形の機体。
鬼と堕天使
世界の命運を握った二機
瞳を交わすが、言葉は交わさない
拳は交わすが、心は交わさない
今までの戦いはそうだった。
ガンドルフには無数の傷、
対照的に
L−seedには深い一撃の痕。
だが・・・・ようやく、
訪れる、
繋ぐ時が。
「勇人君・・・なぜ、闘う?」
マナブは静かに尋ねた。
L−seedの手には、何の武器もない、もちろんガンドルフにも。
だが、この二機に限れば、これは無防備なのではない・・・・・
むしろ最大の攻撃準備態勢なのだ。
そんな緊張の中、紅くなり始めたマナブの瞳を、勇人の緑の瞳は見つめ続ける。
「みんなを助けたいんだ。」
「君も俺も、今や全世界の敵。誰を助けると言うんだ?」
「それでも、みんなを。
助けたい。」
「助けたモノが、その次には敵になる、それでも?」
勇人は静かに頷いた。
口元は強く引き締まり、それは絶対的な不利を知って、
悲壮な決意をしていることが伺い知れる。
ふと、マナブの口元に笑みが浮かんだ。
(L−seedを駆って、笑うのは久しぶり・・・いや、初めてかな?)
「勇人君、君の言う『みんな』は、俺のJusticeを滅ぼし、君の仲間達を彼らに捧げた。」
マナブの瞳から、血が抜けていく。
だが、勇人にはそれを気付くことが出来なかった。
マナブが言った言葉が、若い彼の哀しい思い出を蘇らせたから。
*******
それはある日、起きた。
夢のような・・・・・
悪夢。
侵略者たち、世の人型機械はこぞってそれと闘った。
だが、彼らは全てのコロニーを人質に取り、
彼らの投降を求めたのだ、世界の政府に。
愚かな者ども、保身しか考えない政治家達は生け贄を捧げた。
邪心を持った邪神に。
人型機械は侵略者に渡され、
人型機械のパイロット達は、何処かに幽閉される。
誰も疑問を持たなかったのか?
まるで殺してくれとナイフを相手に、親切に渡して上げたことを。
全コロニーはその人型機械たちによって、ほんの1ヶ月で滅ぼされた。
人類は滅びの時を迎えた。
だが、希望があった。
シノニム社において建造された、神秘の石ドルドストーンを持つガンドルフ。
そして、世界組織Justiceによって伝説の鉱石シオンを用い造られた、L−seed。
たった二つの、大きな希望。
偶然と必然で彼らだけは幽閉を免れたのである。
ガンドルフは多くの仲間達、友人達の血と涙によって、
L−seedは多くの人間と侵略者達の血によって。
だが、人間達は愚かにも、また侵略者に捧げモノをする。
軍隊によるシノニム社、Justiceの壊滅である。
ガンドルフ、そして勇人は、
人類のために闘いながらも、回りの人間達は火の粉が飛ぶので近寄るなと冷たく言われた。
L−seed、そしてマナブは、
初めから侵略者にも人類にも戦いを挑んでいた。
違いは、侵略者には滅びを、人類には縮小をということだけだ。
同じ希望でありながら、二つと二人は相容れない。
だが、ようやく、この時がやってきた。
相容れなければならない二つが、繋がれる時が。
「俺は・・・・奴らには負けない、負けたくない!例え・・・」
「俺が死んでも?」
勇人は静かに頷いた。
その瞳には、もう迷いは無い。
「マナブさん、闘いましょう。奴らを倒すまで。」
マナブは、勇人の言葉に少し沈黙する。
だが、その瞳にはもはや紅はない、
在るとすれば、闘志という名の炎の赤だろう。
そして、それは勇人の瞳の中にも宿っていた。
大地を感じさせる緑の彩りと共に・・・
「マナブさんは決して人を滅ぼすために闘っていたんじゃないでしょう?
方法は違うけれども、マナブさんも人を助けようとしていた、ううん、している!」
勇人はマナブに、溢れてくると闘志に乗せられた思いを言い放った。
そして、それはマナブに届く。
「こんな世界にした奴らを一人も逃がさないって、
約束できるなら・・・・・
・・・・・・そうしようか。」
マナブは、勇人にそう言って、少しだけ笑った。
勇人もそれを見て、大きく笑みを浮かべる。
マナブの言葉に隠された意味を、気付いていないわけではない、
けれども今の勇人は、その言葉の中のマナブの真意を純粋に信じることが出来る。
二人は強く頷いた。
始まる、
鬼と堕天使の宴。
大きな二つの希望は、互いを照らしより大きな希望へと・・・
画:魔裂 文:春神雅駆