京都府の日本海側、日本三景『天の橋立』で知られる宮津市の『籠(この)神社』に、海部(あまべ)氏の古い系図がある。
平安初期貞観年中に書写された略称『祝部(はふりべ)系図』(本系図)と、江戸初期に書写されたより詳しい『勘注系図』(かんちゅうけいず)である。
現存する最古の系図として国宝に指定される。
『勘注系図』は初代彦火明から数えて七代目、すなわち六世孫建田勢命(たけだせのみこと)と同じ代位に、とてつもない尊大な名の女性を記す。
宇那比姫命(うなびひめのみこと)、天造日女命(あめつくるひめみこと)、大倭姫(おおやまとひめ)、竹野姫(たけのひめ)、大海靈姫命(おおあまのひるめひめのみこと)、日女命(ひめみこと)である。
『大倭姫』と言うのは地方豪族の姫の名ではない。
『日本書紀』を見ても、皇女に倭姫というのはあるが、大倭(おおやまと)と大の尊称のつく姫や皇女はいない。
大倭という尊称がつくのは天皇名くらいのものである。この人は天皇と同格の尊称を持つのである。
もう少し詳しく見てみよう。
宇那比姫というのは、建田勢命の、またの名を大宇那比(おおうなび)と云うから、兄弟かもしれない。幼名または本名であろう。
天造日女命は天下を造った姫という意味であろう。
竹野姫はこの一族が『竹』あるいは『建』とよばれることによる。
大海靈姫(おおあまひるめひめ)命の『大海』はこの一族が『海部(あまべ)氏』と名のるように『海(あま)』に尊称の大がついたものである。興味深いのは靈(ひるめ)である。巫女(みこ)の意味を持つ。
ご存知のように『魏志倭人伝』は卑弥呼が『鬼道を事とし』とする。
『後漢書倭伝』は『鬼神道』であるが、いづれにしても、巫女の要素を連想させる。この名もまた靈姫(ひるめひめ)すなわち巫女姫(みこひめ)なのである。
最後極めつけは日女命である。読みは『ひめみこと』であろう。
魏の使者がこの音を『卑弥呼』と書き表しても不思議はない。
この国宝は真っ赤な偽系図、それとも史実。あなたのご意見をお聞かせください。
[2004/05/03 13:18:49]