鳩アニメ     2007.01.27
《第三の鳩の物語……箱船を飛び去った三番目の鳩の話》

「第三の物語」について……
 この物語は「レゲント」ステファン・ツヴァイク著 西義之訳(みすず書房刊 1974年)に「第三の鳩の物語」として収録されている。

本の解説によれば、「第三の鳩」は連作5編の内のひとつである。ツヴァイクは第一次大戦中からロマン・ロランらと共に平和主義を唱え、戦後ナチが台頭するとその蛮行(ユダヤ人迫害)に抗議を唱え続けた作家である。その精神がこの5編に溢れている。「第三の物語」は旧約聖書に題材を求め、永遠の平和を探す鳩の話である。
他の4編は、「永遠の兄の眼」「ラケルの愛」「似ていて、似ていない姉妹の物語」「 埋められた燭台」である。「レゲンデ」は「ツヴァイク全集 21巻」みすず書房刊(1974年)に含まれている

あらすじ……
「金属のような蒼空から、陽光はさんさんとしてふりそそぎ、照り映えていた。この世の目覚めは見るも荘厳であった。飛び続けた鳩は幸福に酔いしれ、自分の任務も忘れ、いつしか方舟に帰ることすら忘れた。疲れた鳩は森を見つけ舞い降りた、人間は住んでおらず、時は過ぎ死すら彼女(ハト)の事を忘れたようだ。時折、人間の声や木を切る音が聞こえたが、鳩は夢と現実が入り交じり瞑想の中に住んでいた。突然、全世界が震動をはじめ、忌まわしい音が聞こえた、戦争が始まったのだ。彼女は急いで空に飛び立った、崩壊する森から平和の地を求めて。見える世界は戦争が起き血が流れていた。彼女はノアにオリーブの枝を持ち帰えろうと思ったが、何処にも祖宗ノアの姿はなかった。かんらん(オリーブ)枝を持ち帰る場所は見つからなかった。今でもふとした時に鳩が飛び回るかすかな音が聞こえる。」

 読後、平和を求めながら、力による解決を求める人間の、好戦的な面(心の暗部)を感じさせる。彼の作品には、フロイトの影響が見られと言われる、異常な状況下での人間の心理を分析して描いた。その作品には、暴力に対抗できない知識人作者の虚脱感を見る思いがする。


作者について……
 ステファン・ツヴァイク( Stefan・Zweig 1881.11.28ー1942.2.23)は、1920年から1930年代に良く知られた作家である。生まれはウィーン、ユダヤ系オーストリア人で織物商の裕福な家庭であった。ウィーンやベルリンで学んだあと、1934年頃から小説を書き始める。また、彼は「芸術家のオリジナル原稿や自筆原稿カタログ」のコレクターとして知られる。ゲーテの原稿やベートーベン、モーツファルトの楽譜など貴重なものが含まれている。彼はインド、アフリカ、中央アメリカ、ロシアなどに旅行した。1919年からザルツブルグに住む、しかし、ナチズムの台頭が起きるとロマン・ロランなどと共に抗議行動を起こした、しかし、ナチスのユダヤ人排除政策により、彼の作品も焚書となった、時代の趨勢には適わず友人達からも孤立した。身に危険が迫るとイギリスに亡命した。その後、アメリカ・ニューヨークに短期間滞在、1942年にブラジルに移る。第二次大戦が起こりアメリカが参戦すると精神的に追いつめられたのか、1942年2月22日、彼と彼の妻がベットの上で自殺しているのが発見された。


本の写真 彼は短編や小説などで活躍した。彼の作品はアメリカとヨーロッパで映画化され、日本でも公開された。

「マリー・アントワネット」製作アメリカ(1937年)日貿映画配信、「忘れじの面影」製作アメリカ(1948年)東宝配給、「哀愁のモンテカルロ」製作イギリス(1952年)BCFC=NCC、「不安」製作イタリア(1954年)大映配給、「哀愁のみずうみ」製作フランス・ドイツ(1968年)ヘラルド配給、「ウィーンに燃えて」製作アメリカ・西ドイツ(1988年)ベストロン映画配給などが日本で公開された。

 
左は『Fantasic Night&other stories』の表紙、幻想的なイメージで大きな彗星が描かれている。「レゲンデ」の5編の短編を集めたものと思われる。
参考、「ノアの大洪水 伝説の謎を解く」金子史朗著 講談社現代新書、「シュテファン・ツヴァイク」河原忠彦著 中公新書 1998年発行、「集英社 世界文学大事典3」集英社刊 1997年。
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