中世ヨーロッパが熱烈に求めたスパイス(香辛料)謎の丁字(クローブ)

その効用は、キリスト誕生と同じ2000年前から知られていた。神官が王に接見するときに「息を清らかで、さわやかで、かぐわしくするためにナツメグとクローブを口に含んでいる」と言われている。しかし、その産地は謎のままであった。アラビアの商人でさえ分からなかった。
 取引の形が特殊で相手が「精霊」とであると信じられていたからである。島民との物々交換のような対面交易で無かったためである(沈黙交易)。12世紀以降は、ジャワ島の付近であるとわかりはじめた。

その形も変わっているため、中国では「丁香」(釘のスパイス)と呼ばれ、また、他の国でも「釘」にたとえられた。薬の効用以外にも料理用スパイスとして重要であった。特にイランの古王国パルティアでは、クローブとナツメグは「王の香料」として貴重なものであった。丁字について知るサイト 

丁字(クローブ)シジギウム・アロマティクム (Syzygium aromaticum)


丁字(グローブ)
 これはモルッカ群島(テルナテ島とティドレ島)にのみ育つ喬木の蕾で、それを乾燥させた香辛料である。丁字はフトモモ科の植物で、常緑高木で高さ40メートルほどにもなる。葉は対生、花は薄紫色、長楕円の実を結ぶ、蕾の乾燥物は香辛料、薬用となり蒸留してチョウジ油となる。 (『日本語大辞典』講談社刊 第二版)

この「丁字」は「オイゲノール」という殺菌力の強い要素をふくんでいるので、前述の肉などの保存に使われるため、特に必要であった。また、媚薬としての効能もあった。上のイラストは1578年に描かれたもの。(『香料博物事典』山田憲太郎著 〔株〕同朋社刊 1979年 )

 ヨーロッパが最も手に入れたかったのは「丁香」(丁字とも言う、古い本では「丁香」だが、現在は丁字となっている)と「肉ずく」(肉桂)である。大航海時代の先陣を切ったポルトガルもこの二つを熱烈に求めたのである。


アイコン〈丁字の木の実録〉
 マゼランの航海に同行したイタリア人ピガフェッタの丁字の木を見た印象から『丁字は白く、熟してくると赤く、乾くと黒くなる。一年に二回、6月と12月の 収穫が出来る。丁字は山地にだけ生育している。海から近くとも遠くてもだめである。香気が強く、熟したときは山全体が香気に包まれる。』

「肉ずく」はバンダ島にのみ育つ常緑樹の実で、ナツメッグ(ナツメグ)ともいわれる。メースと言われる香料もこの木から造られる。 動物性の香料としては「竜ぜん香」、「麝香」があり、香木としては、「壇香」 もある、正倉院に納められていることから良く知られている。どちらも古くから 珍重されたものである。

アイコン 〈現在の丁字生産地〉
 『1770年、フランスはモルッカから丁字をアフリカのブルボン島(レユニオン島)やケニヤに移植することに成功した。アラビア人はザンジバル島などで栽培に成功した。今では丁字の世界生産量の95パーセントを東アフリカのペンバ島、ザンジバル島、マダガスカルで占めている』 『香りと文明』 奥田治著 講談社刊 1986年
アイコン フランスのモルッカ諸島より苗木を盗む話は『ピエール・ボワールの冒険』に記載。

簡単に紹介したが香辛料は、防腐剤としての効能とのほかに媚薬や強壮剤の効果もあり、薬として食欲増進、解熱剤、鎮痛剤として利用された。海上交易品で 特に貴重品となり、莫大な利益をもたらした。 

《香辛料の種類…乳香、胡椒、砂糖など》


「乳香」(にゅうこう)「没薬」とはゴム系の香料、「蘇合香」はギリシャから小アジアで育つマンサク科の樹脂系の香料、「安息香」はタイ、ベトナム、スマトラなどで産出する日本人に馴染みのある香料は「沈香」「きゃら香」である。 しかし、ヨーロッパ人にはあまり好まれていないようだ。

「胡椒」(こしょう Poivre)は古くから知られ、東西ともに喜ばれ、大量に消費された。中世のヨーロッパでは、コショウのように高いという言い回しがあるくらい、もっとも高い香辛料であった。そのため、貨幣経済が未発達の頃には交易や贈り物として使用され貴族や商人たちの富のシンボルとなった。

『東方見聞録』で有名なマルコポーロもコショウについて多くのページを割いている。なかでも『中国に届く商品にはすべて君主に納める税が課される。宝石、真珠が10パーセントなのに、コショウではそれが44パーセントにものぼる』とある。このようにコショウは大事な交易品であった。ポルトガルがインド航路の発見に異常な熱意をそそぐ目的にもなった。

コショウの産地はインド南部マラバール海岸に育つ、蔓生の 種子である、これにはブラックペッパーとホワイトペッパーがある。ヨーロッパ では「シナモン」、日本では「肉桂」と呼ぶ香料もある。

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