オイルポンプ

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 今回はオイルポンプです。ベースとなったエンジンの走行距離が12,000kmであったので本来なら洗浄して組むだけでも良いのですが,やはり何かしないと気がすみません(笑)。出来ればVVTに対応して流量&リリーフ圧の上がった新型NBのオイルポンプを入れてみたかったのですが,さすがにそんな予算はありませんでしたね。
せいぜい買えたのが,これ↓(^^;。

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新型NBオイルポンプのリリーフ・プレッシャー・コントロール・スプリングです。
えらい長い名前がついていますが値段は200円くらいとお買い得です(^^;。
まあ,純正のままでもスプリングを組む時に適当なワッシャー挟み込んでプリロードを上げてやれば良いのですが,良くある方法なので今回はちょいと違った方法を試してみたいのだ(^^;。

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左側が元からついていたNA8Cの純正で右側がRSU用。
見た目はほどんど変わりないですが,RSU用はかなり硬いです。

サイズ的には楽勝で流用できそうですが,本当にそのままで付けても良いのか?がちょいと気になったのでいろいろ調べてみましょう。

とりあえずリリーフ・プランジャが何kg/cm2で開くのかを調べてみる事に。

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こちらはNA8Cの純正オイルポンプのリリーフ部分。
油圧が上がって来た時,このようにちょっとだけプランジャが開きリリーフが開始されるはず。
この状態でのスプリングの縮み量を測定やれば,その量にばねレートを掛ければスプリング荷重が解り,さらにプランジャの断面積で割ってやればリリーフ圧が求まります。
プランジャの断面積はプランジャ径がφ16なのですぐに計算できますが,ばねレートは良く解りません。
使用しているばね材が普通のばね鋼ならバネ自体の形状から,ばね定数;kは下記の式によって計算も出来ます。
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G:横弾性係数、d:線径、N:有効巻数、D:平均コイル径

んが,さすがに材質は見ても解らないので,やっぱり実測しましょう。

ここでまたもやボール盤の登場です(^^)。

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即席スプリングテスター@ケルン式(笑)。
これによって縮み量と荷重を測り簡単にばね定数;kが計算できます。

計算式は以下の通り簡単です(^^)。
k=P/δ
P:荷重、δ:縮み量(たわみ)

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実際にNA8Cのスプリングを測定している様子。
ちょいと縮めたところでダイヤルゲージとデジタル秤のゼロをセットして,そこから10mm縮めた時の値を読み取ります。この状態では6336gの荷重が掛っているのが解ります。
しかしこのテスターではダイヤルゲージ内部のばねによる荷重も合成されていますので,後からばねをセットしていない状態でダイヤルゲージを10mm縮めてやり,その荷重を差し引いてやります。

この場合はダイヤルゲージの荷重は40gだったので,プレッシャー・コントロール・スプリングの荷重は6,296g(6.296kgf)となり,NA8C純正のばねレートは

k(std)=P/δ=6.296/10≒0.630kgf/mm

となりますね。
プランジャーが開き始める時のスプリングの縮み代を測定すると13.5mm縮んでいたので,その時のリリーフ圧は

リリーフ圧;P(std)=スプリング荷重/プランジャー断面積=0.630×13.5/((1.6/2)^2×3.14159)=4.23kgf/cm2

となり,実際にロドスターの油圧計でもこんな感じなので,大体当っているでしょう(^^;。

同様にRSUのばね定数も測定し,リリーフ圧を計算してみましょう。

ばね定数;k(rs2)≒0.802kgf/mm

リリーフ圧;P(rs2)=0.802×13.5/((1.6/2)^2×3.14159)=5.38kgf/cm2

結構リリーフ圧が上がっているのが解ります。ロードスターの場合,完全暖気後なら大体4,000rpmを過ぎた辺りからリリーフし始め,レブリミットに当るまでリリーフ圧が維持されていますので,高回転領域ではこの油圧で潤滑される事になりますね。若干高すぎて駆動ロスが増えるかとは思いますが微々たる物でしょうし,一応メタル等の潤滑にとっては安全サイドになるし,VVTの付いていない新型NB6CにもRSUと同じオイルポンプが付いているので不具合が起こる事はないでしょう(^^;。

ちなみに前述の計算式に当てはめて弾性係数;Gを求めてみましょう。

ばねの形状を測定すると
有効巻数;N=12
平均コイル径;D=9.5mm
線径;d=1.6mm
であったので前述の式を変形して当てはめてみます。

NA8C純正の場合
G(std)=8kND^3/d^4=8×0.630×12×9.5^3/1.6^4=7912(kgf/mm2)

となり,ほぼ普通のばね鋼である事が解ります。(ばね鋼のG:横弾性係数は8000kgf/mm2)
RSUのも同じ様に計算して見ると同じ材質だと考えられますね。

ここでリリーフ・プランジャのストロークを見てスプリングがどこまで縮むかを見てみることにしましょう。
リリーフ油路の直径がφ10あるので10mm近くストロークすると考え,ばねの状態を調べてみました。

ばねの自由長;45.7mm
セット長;35mm
リリーフし始め;32.2mm
リリーフ全開時;22.2mm

となっていましたが,純正スプリングの線間密着高さは22.4mmなので全開時には線間密着していそうですね(^^;。
大丈夫なのかなぁ?

ちなみにリリーフ全開時の油圧は計算すると7.30kgf/cm2でしたが,実際に暖気後のエンジンを高回転まで回しても油圧計の6kgf/cm2を振り切る事はなかったので,ここまでスプリングは縮んでいないのでしょう。でも冷間時の始動直後は振り切っているなぁ(^^;。

そしてRSUのスプリングでは線間密着高さが23.8mmなのでリリーフ油路の10mmはストロークできず,8.4mm開いたとこで線間密着してしまします。その時の油圧は8.74kgf/cm2。始動直後の油圧がどの位まで上がっているのか解りませんが線間密着時の応力が高過ぎるので精神衛生上良くありません。ちなみにRSUのオイルポンプのリリーフ油路は6.5mm幅の穴しか空いていないので線間密着しないようになっていますね。

ちょっと上の話が解りにくいと思うのでまとめてみました。でも解り難いかも(^^;;;。
定番のロアシートにスペーサーを入れた場合のも書いておきましょう。

    NAノーマル NAスペーサー 新型NB 新型NB流用 新型NB流用
      1mm厚の場合   ストッパー無し ストッパー付き
スプリング(SP)自由長 mm 45.7 45.7 45.7 45.7 45.7
SPセット長 mm 35 34 35 35 35
リリーフ開始時SP長さ mm 32.2 31.2 32.2 32.2 32.2
リリーフ全開時SP長 mm 22.4 22.4 25.7 23.8 25.3
プランジャーストローク mm 9.8 8.8 6.5 8.4 6.9
ばね定数(実測値) kgf/mm 0.63 0.63 0.802 0.802 0.802
             
リリーフ開始時圧縮長 mm 13.5 14.5 13.5 13.5 13.5
同圧縮力 kgf 8.5 9.1 10.8 10.8 10.8
リリーフ全開時圧縮長 mm 23.3 23.3 20.0 21.9 20.4
同圧縮力 kgf 14.7 14.7 16.0 17.6 16.4
             
ピストン径 mm 16 16 16 16 16
ピストン断面積 cm2 2.011 2.011 2.011 2.011 2.011
             
リリーフ開始圧 kgf/cm2 4.23 4.54 5.38 5.38 5.38
             
リリーフ全開圧 kgf/cm2 7.30 7.30 7.98 8.74 8.14

こんな感じですが,油圧が最大どのくらいになっているか解らないのでリリーフプランジャーが全開になっているかは定かではありません。ひょっとすると全然線間密着なんかしてないかも知れません。

しかし,とりあえずは線間密着しない様にする為にストッパーを作りましょう(^^;。

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ステンレスの皿ビスを密着高さの1.5mmくらい手前で当る長さに加工し,スプリングのロアシートの中にセットします。

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こんな感じになります。

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ストッパーを入れるとプランジャーのストロークが少なくなり,リリーフ油路の断面積も小さくなってしまうのでちょいと油路を広げてやることにしました。RSUのリリーフ断面積の具体的な数字が解らなかったので,どのくらい広げるかは感でしたけど...(^^;。

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んで,オイルポンプにセットするとこうなります。

ここで,この写真を見て問題があることに気付いた人がいたら偉いです(^^;。
そう,プランジャとロアシートの間に溜まったオイルの抜ける通路がなくなり,このままでは油を入れると恐らくプランジャが下がってくれないでしょう(^^;;;;。

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こんな感じでロアシ−トを削って油の流路を確保してやりました。

このスプリング交換の効果と不具合はエンジンが完成し,載せ替えて実走するまで解らないので大きな賭けとなりますので,あまり真似をしない方が良いかも知れませんよ(^^;;;;。
素直にワッシャ−を噛ませる方法にしておけば良かったかな?(笑)

実走レポートでの評価をお待ち下さい(^^)。


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