Innovate製 空燃比計 LM-1 のデータロガーを使ってみる

 

 最近GRIDが代理店で販売しているInnovateのデータロガー機能付きの空燃比計;LM-1を使っている人が多くなりましたが,せっかくのデータロガー機能を使っている人はあまり見かけないのでもったいないなあと思っていたり,おいらにLM-1の周辺機器を製作する依頼が増えてきたので動作確認をし易くするために,おいらもLM-1を買うことにしました(^^)。

データ-ロガーの機能としては空燃比の他に任意の5chのデーターを毎秒12回のサンプリングで約44分間LM-1の本体に取り込むことができ,パソコンを繋げばパソコンのハードディスクに一杯になるまでリアルタイムログを取る事ができます。

基本的には,エンジンのセッティングのためのログ機能としているようですが,Gセンサー等を繋げばドライビングの為のデータを集める事も可能となります。

LM-1以外にDL-32データーロガーとかを繋げばSDカードに最大32chまで同時にデータをとることができますが,おいらの周りにはLM-1ユーザーが多いのでLM-1の可能性を検証する為,5chに絞ることにしましょう。

とは言え,

エンジンのセッティング用では

1.エンジン回転数
2.エアフロ電圧→吸入空気量
3.点火時期
4.車速
5.縦G

ドライビング用では

1.エンジン回転数
2.アクセル開度
3.車速
4.横G
5.縦G

あたりのデータが欲しくなりますが,いちいちセンサーを繋ぎ換えるのは面倒なのでスイッチによって切り替えられるようにしました(^^)。

この辺のLM-1やセンサー類の取り付けの話はまたの機会にしますが,とりあえずは先日の58ジムカーナ第2戦でドライビング用のデータを取ってみたので,ちょいと紹介することにしますね。

 

’07年 58ジムカーナ第2戦のコース図

今回データを取ったコースです。

070527gym.gif (6411 バイト)

 

LogWorks ログ・ウインドウ

LM-1にはLogWorks2という解析ソフトが付いてきます。これはフリーでダウンロードもでき
本家のInnovateに行けば最新版や新しいLogWorks3のベータ版もダウンロード出来ます。

最新ソフトのLogWorks3ベータ版のログウインドウを開くとこんな感じとなります。(基本的にLogWorks2も同じ)
本当は空燃比のログも表示されますが,特にドライビングの解析には必要ないので非表示にしてあります。
(日本語のコメントはおいらが貼り付けたものですのでソフト上はでは表示されません。)

lw301.png (37991 バイト)

基本的には縦軸,横軸共に拡大できるので見たいところを拡大してじっくり見ることになりますが
便利なグラフ機能とかがいろいろとあるので,それらををいくつか使ってみる事にしましょう。

 

・X−Yプロット

ここれは任意の2チャンネルを縦横軸に割り付け表示する機能です。

LogWorks3ではちょっとうまく表示できなかったので下のグラフはLogWorks2の日本語版で表示させています。)

今回はドライビングの解析なので縦・横Gを割り付けます。
感覚的に解り易いように縦Gは加速方向をマイナスに,減速方向をプラスにとっております。

従って上記のログウインドウでも加速方向が通常とは反対の下方向(マイナス)にしております。
(本当はXYプロットグラフの表示だけ反転できれば良いのですが,ソフト側が対応していないので
ログを取る段階でプラスマイナスを反転させています。ベータ版なのでInnovate Motorsports Forumでお願いすれば
対応してくれそうなのだが,英語の人たちなので私はお願いが出来ません(泣)。)

xyplot01.png (16091 バイト) xyplot02.png (15058 バイト)

このグラフはScatter Plot(左) と Line Plot(右) の2通りの表示が出来ます。

特徴はScatter Plotの方は点の繋がりが粗い方が荷重の移動時間が早く,
密になっているところでは移動時間が長いことが解ります。
それに対しLine Plotではデータの時系列の繋がり見やすくなります。
まあ,各自のお好みで使い分ければよいでしょう。

グラフ上の中心線と1.0Gを示す赤い丸はソフト上では表示されませんが解り易いように
エクセルに貼り付けて私が追記しましたです。
ちなみにLogWorks3では設定の条件を満たせばこの中心線と円も自動で表示
できる機能もあります。


上図のデータ自体は第2戦のおいらのBestラップ1分3秒67(最後のラップ)のデータで,
そこそこ1Gの丸の付近で走っている事が解りますね。

せっかくログが取れたので,もう少し詳しく見てみることにましょう(^^)。

 

1コーナ前後のデータ

  xyplot03.png (15710 バイト) 070527gym1.gif (4497 バイト)

左のXYプロットのグラフ上の青い線がスタートして2速に入ったところから1コーナーを立ち上がった
ところまでをトレースしており,大体は右のコース図の青い破線と青い丸数字に対応させています。

・青線の初め〜@まで
2速全開では0.4G弱で加速しており,今回のコースは1コーナーのクリッピングポイントがだいぶ奥になっていたので,
全開のままターンインが可能でした。最近のラジアルタイヤの性能が著しく向上してきたので,セオリー通りの
ストレート部分でブレーキングを終らす必要はなくなってきましたね。

そしてターンインをし始めると0.4〜0.3Gの加速Gを保ったまま右方向の横Gが増えていき,
グラフで丁度@の印のところまで(横Gで約0.8Gまで)アクセル全開です。
(この辺りは結構恐いですね(^^;。)

ちなみに@に向かって行くいつれ加速Gが鈍っているのはアクセルを抜いている訳ではなく
エンジンのトルクバンドが過ぎ,更にエンジンや駆動系のフリクションロス等が増えてくるので
全開でも加速がたれてくるのです(^^;。

・@〜Aまで
@からすかさずブレーキングを行いますが,既に横方向のGが0.8Gと高い状態なので
慎重かつタイヤのグリップ円限界付近までになるようにブレーキの踏力を調整します。

グラフでは1Gの円のギリギリまでブレーキングが出来ているのが解ります。

・A〜Bまで
ここは普通にブレーキを抜きながら縦Gが緩くなった分だけ横Gが使えるので舵を若干切り足し
グリップ円の限界付近をキープしたままクリッピングポイントに付きます。
ちなみに@からここのBまではアクセルを入れることはありません。

・B〜Cまで
Bでクリップを過ぎたので舵を抜きながら丁寧にアクセルを入れて行きます。ここでも当然ながら
グリップ円を超えないようにする事が大事ですが,次のストレートの加速に影響するので
縦Gと横Gのバランスを感じながらグリップ円の限界を攻めてきます。

・C〜青線の最後まで
Cを過ぎると縦Gがこれ以上増えないのでグリップ円の中に収まった状態となり,
旋回Gは残ったままですが気にせずに全開加速を行います。


以上,このように割と頑張ったことがデータで解ります(笑)。

ちなみに午前中の走行(約1秒落ち)ではここまできれいなグラフになっておらず,
区間タイムを比較するとこの区間だけで0.2秒ほど差がついていました。

今回のコースでは外周の中高速コーナーが3つあるので同じように注意して走れば
0.6秒くらい短縮する事ができる話になりますね。

 

2コーナ前後のデータ

xyplot04.png (15880 バイト) 070527gym2.gif (4662 バイト)

次に2コーナーの進入から立ち上がりまでのログを見てみましょう。

・青線の初め〜@まで
2コーナへの進入ラインはほぼ直線でしたので横Gがほとんどない状態でフルブレーキできます。
しかし,コースの脇の方は路面が滑り易いのでミスを恐れてイケてないブレーキングだった為,
0.8G弱しか減速Gが出ていません(^^;。

・@〜Aまで
@のフルブレーキングでフロントに荷重が残っている状態を利用してしっかり旋回Gを立ち上げ,
グリップ円に沿ってAまで繋げるのが理想なのでしょうが,おいらの車がフロントに荷重が掛かり
にくいのもありますが,うまくコントロールできていないのがバレバレです(^^;。

・A〜B〜Cまで
A〜Bではターンインが甘く,B〜Cではアクセルを入れるのが遅い事でグリップ円に沿って
コントロールできていないことが解ります(^^;。

まあ,タイトなコーナーなので1コーナより短い時間の間でグリップ円の限界をトレースしなくては
ならないので難しいと言えば難しいのですが,結局はヘタッピなのがばれてしまいました(T_T)。

ヘタッピなのはさて置き(笑),車のセッティングで自分の短所をカバーする方向性もある程度は見えてくると
思いますので,そういう使い方も出来ますね。

ちなみにはるーか号だと@〜Aの区間はものすごくきれいにトレースできることでしょう。
いつかデータを取ってみたいですね。

 

他には左の横Gで1.1Gを越えているところがありますが,これは6コーナーの外周右ターンでして,
ハードブレーキングからうまくタイヤに荷重をかけることができれば,当然タイヤのグリップ限界も
高まるので,もう少し走り方を研究すれば全体的に1.1G付近で走れる可能性もあり,
更なるタイムアップもできたかもしれません。>ホントかな?

とまあこんな感じで感覚だけでなくデータで見ることで新たな発見ができるかもです。

 

統計グラフ

各チャンネルの値で時間に対する度数分布を表示する事ができます。

下のグラフはエンジン回転数の度数分布でバーの高いところ程,使用時間が
長意事を示しており,約3500〜6500rpmの範囲がよく使われている事が解りますね。
特に2速でのコーナリングからの立ち上がりの回転数と思われる4500rpmの頻度が
非常に高く,この前後のエンジントルクが重要になっている事もよく解り,エンジンの
セッティングのヒントにもなりますね。

stats01.png (7275 バイト)

 

プレイバック機能

サンプリングしたデータを後からパソコン上で再生できるプレイバック機能があります。
各メーターは普通のアナログタイプからバーグラフや数字だけとかいろいろ自由に設定できます。

LogWorks3になってからは下図の左上のように縦横Gをベクトル表示する機能も追加になりました(^^)。

基本的には見て楽しむような機能ですが,タイムが伸び悩んだりして人からアドバイスをもらう時に
見てもらったりすれば良いかもですね。

playback01.png (27405 バイト)

一応,参考までに動画を置いておきますね。

070527芸北第2戦
ファイルサイズが大きいので(24.2MB)
右クリックで保存してから見て下さい(^^;。

コースを走っていない人が見ても良く解らないかもしれませんが,
コース図を見ながらスロー再生すれば何とかなるかな(^^;?

 

とりあえずのまとめ

他にもいろいろな機能がありますが,MOTEC等の本格的なデーターロガーと比べるとサンプリングレートも低く,
ソフトの完成度もイマイチのところもありますが,空燃比計におまけで付いている機能と思えば
許せる範囲と言うか充分過ぎるくらいで,値段的にも私のようなビンボーロドスタ乗りでも
何とか買える範囲なのでコストパフォーマンスではマルだと思いますね。

また,58ジムカーナのように一日に15本も走るような時は現地で解析する余裕はあまり無いですが,
タカタとかのサーキットでは一日走ってデータを取り,次回に走りに行くまでにじっくり解析する
ような使い方のほうが,より良いでしょうね。

それから,絶対値で見るよりは複数の人で同様のデータが取ってお互いに比較したりするのが良いと思います。

では、また時間が取れたらいろいろと報告しますね(^^;。


戻る