コラム2:「選択肢」を粗末にするな!


サウンドノベルの中で、最初の作品にして最大の知名度を誇る作品…弟切草
「サウンドノベル」というジャンルを確立し、映画化もされた、ゲーム史上に残る名作と言ってもいいでしょう。
今回は、数あるノベルゲームの中で、なぜ弟切草が最大の人気を誇るのか、
それをもう一度確認してみたいと思います。

 

「そんなの今更言われるまでもねえよ」って思う人もいるでしょう。
ですが、巷にはびこる数多くのサウンドノベル
もどきを見るにつれ、
このままでは、サウンドノベルの本当の魅力が忘れ去られてしまうのではないかという気がしてならないのです。
どうも多くのメーカーさんは、弟切草が売れた理由を勘違いしているのではないかという気がしてならないのです。
正直言って、その理由をきちんと理解しているメーカーさんは、弟切草の製作元であるチュンソフトさんの他には、
「学校であった怖い話」「晦」を作ったパンドラボックスさんぐらいしかいないのではないか…と思います。

 

 

弟切草の最大の魅力…それは千変万化するシナリオにあります。
こう言うと、「他のサウンドノベルだっていろんなシナリオがあるじゃねえか」と思うかもしれませんが、
弟切草が他のサウンドノベルと大きく違う点がひとつあります。
それは、弟切草にはゲームオーバーがないということです。
言いかえれば、どんな選択肢を選んでもよいということです。
しかも、選んだ選択肢によって、エンディングのみならず、ゲーム中に起こるイベントも様々に変化してくれるので、
繰り返しプレイしても飽きにくいのです。
無論、そのせいでシナリオに矛盾が出てくるという欠点はありますが、
「この選択肢ではどういう展開が見れるんだろう」というドキドキ感は、それを補って余りあるものがあります。
他のサウンドノベルに多い「途中の展開はほとんど同じ、エンディングだけが違う」という欠点がないのです。

 

 

そう、「弟切草」は選択肢を選ぶのが楽しいゲームなのです。
これは他の多くのサウンドノベルには見られない特徴です。
他のサウンドノベルでは、選択肢を誤ると即ゲームオーバー(またはストーリーが中断するだけのエンディング)に
なってしまうことがほとんどです。
プレイヤーはその度にロードし、他の選択肢を選び、またダメだったらやり直し…と、
延々と「選択肢つぶし」の作業を繰り返すことになります。
つまり、選択肢を選ぶことがあまり楽しくないのです。
これは、特にシナリオ重視のノベルゲームによく見られる現象です。
せっかく素晴らしいシナリオが用意されているのに、まったく思考を必要としない「選択肢つぶし」の作業のために
シナリオのテンポが崩されてしまい、盛り上がりに水を差された経験はありませんか?
「弟切草」と他の多くのサウンドノベルとでは、ここが決定的に違うのです。
「弟切草」は選択肢を大事にしているゲームなのです。

 

 

ビジュアル(ムービー)重視にますます拍車がかかる昨今のコンピューターゲームにおいて、
サウンドノベルというジャンルは、もしかしたら滅びる運命にあるのかもしれません。
ですが、もしこれからもサウンドノベルを制作するメーカーさんがあるのなら、
選択肢というものを、もう少し大事に扱ってもらいたいものです。
「弟切草」や「学校であった怖い話」のような、選択肢を選ぶのが楽しいゲームを作って欲しいです。
選択肢を単なる時間稼ぎの道具に貶めないで欲しいです。


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