第2話「鉄人、少年時代を省みる」


私のパソコンライフの原点は、遠く小学6年生の頃にさかのぼります。
当時はちょうどファミコンがブームになり始めた頃で、徐々に家庭にゲーム機が浸透していった時代でした。
私も、友達の家へ遊びに行った時に初めてファミコンに触れ、その面白さに衝撃を受けました。
もうファミコンが欲しくて欲しくてたまらなくなった私は、親に必死にファミコンを買ってくれるよう頼みました。

 

 

ですが、それに対する父の返答は、次のような謎に満ちたものでした。

「あんな遊びにしか使えないオモチャは買わん!」

 

 

…オモチャとはそもそも遊びに使う物では?という素朴な疑問は完全に無視され、ベルリンの壁より頑丈な
父の反対にあい、私はファミコン購入を断念せざるを得ませんでした。
ですが、代わりに父が私に買い与えてくれた物がありました。それが
MSXだったのです。
しかも当時の値段で
79000円という、小6のガキへのプレゼントとしてはえらく高価なシロモノでした。
おそらく、父は「パソコンなら勉強にもなるからいいだろう」と考えたのでしょう。
結局はファミコンと大差ない扱いを受けてましたが。
ともかく私はこのプレゼントに素直に感謝し、雑誌のBASICプログラムを打ち込んだり、お絵描きツールで絵を描いたり、
MSX用のゲームで遊んだりと、それなりに楽しく使いこなしていました。

 

 

しかし、間もなくひとつの重要な問題が浮かび上がってきました。
それは
友達と全然話が合わないということです。
「ゼビウス」の無敵技や、「ドルアーガの塔」の宝の出現方法などの話で盛り上がってるのを聞いても、
私には何の事だかサッパリ。
読んでる雑誌も、周りが「月刊ファミリーコンピュータ」だったのに、私だけ「マイコンBASIC」でした。
登下校の会話なんて、こんな感じでした。

「なあ、お前パソコンでどんなゲームやってんの?」
「ファミコンとあんまし変わんないよ。最近はゼビウスみたいなのやってる」
「へー、そういうのもあるんだ。なんてタイトル?」
スカイジャガー。知ってる?」
「・・・・・・・・・・」
「あと『スパルタンX』そっくりなやつもあるなぁ」
「…なんて名前だ、それ?」
聖拳アチョー
「・・・・・・・・・・」

 

 

ただ、パソコンを持っていて、ひとつ得をする事がありました。
それは、周りが私の事を
すごい奴と勝手に一目置いてくれたことです。
今からは想像もできないくらい、当時は小学生の分際でパソコン持ってる奴は珍しかったんですよ、ホント…。
すっかり調子づいた私は、雑誌のプログラムを打ち込んだだけのゲームを
自作と偽って友達に自慢したり、
子供だましの簡単なBASICプログラム(画面をフラッシュさせたりするようなもの)で、周りの賞賛を浴びたりなどといった
かわいらしい悪行をしばしば行っていました。
今となっては、懐かしい思い出です。少年時代っていいもんですねえ。
以上が私のパソコンライフの原点です。

 

 

…そして、最後に一言。

みんな、だましてすまん。


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