Knotあなたは私の希望
あなたは皆の希望
あなたは皆の耀き
あなたが耀き続けるために私がある
そしてそれこそが私達の“絆
ケフカを倒した後、マッシュは再び修行の旅に出た。時にはカイエンやガウと共に、また単独で。
だが気まぐれにフィガロ地方にもやってくる。その時は2、3日城に滞在した。
「陛下、マシアス殿下がいらしてますが」
執務室へ入って来た大臣は表情に暗い影を落としていた。
「うん」
エドガーは書類から目を離さずに答える。
「陛下、どうかもうお休みください、あとはわたくしが」
大臣は王の顔色を伺う。血の気の引いたエドガーの蒼白い顔を見て、明らかに辛いであろう事を思った。健康な身体であっても、連日追われる執務と国王としての仕事は負担がかかるものである。
「わかった。これだけやったら休む」
エドガーは縁なしの眼鏡の端を人差し指で上げながら、別の書類を手にした。
「陛下。お願いでございます。今度こそはマシアス殿下に」
「わかった。明日か、明後日には私から話す」
二週間前、マッシュが帰城した時にも、エドガーと大臣との間でこんな会話がなされた。
王がまた、この度も何も言わずに弟を旅立たせるのではと懸念する大臣である。
「すまない、後は任せる。今日は休むとしよう」
そう言ったエドガーは眼鏡をはずし、テーブルに置いて椅子から立った。流れるような金の眉をひそめ、額に手をあてたエドガーは、瞼を閉じたと同時に床に吸い込まれるように倒れた。
「陛下!」
重い瞼を開いたエドガーの視線に入ったものは、シルクのシーツに染みた紅だった。左手の甲に巻いた包帯から滲み出ていた。
三ヶ月程前に機械弄りをしていて、あやまってつくった傷である。未だに傷が治るどころか出血が止まらなかった。
今日も身体が酷い倦怠感と貧血に蝕まれていたが、エドガーは起き上がって化粧着を羽織った。
エドガーは朝の支度を手伝ってくれる女官が訪れる前に、必ず起きていた。いかなる者であれ無防備な寝姿を見られるのは、とても不快な事である。
近頃では椅子に座ってぼんやりと朝焼けを眺めている事が多かった。
西の塔では、マッシュが早朝から修行に励んでいた。彼は一日の殆どを修行で明け暮れているのである。どこにいようとも、規律正しく日課をこなすのであった。
「相変わらず早くから修行してんな」
聞き覚えのある声にマッシュは、入口に視線をやる。
顔に疵がある、銀の長い髪が目立つ派手な男の姿が目に入る。
「セッツァー! 久し振りじゃねぇか。朝から珍しいな」
「サウスフィガロの酒場で朝までカードをやっていた」
マッシュはセッツァーに座るように促した。
「お前も相変わらずの風来坊だな」
マッシュはサイドテーブルに用意されているお気に入りのお茶を入れ、セッツァーにカップを渡す。
「まぁな。これが俺の生きかただからな。せっかくだから寄ってみたら、お前が来てるって聞いたから」
「ほんとは、兄貴に会いに来たんだろ? 俺じゃお前の話し相手として面白くはないだろう」
マッシュは歯に衣を着せぬ。セッツァはふっと笑みを浮かべる。
「お前はほんと解りやすいな。図星だよ。エドガーは朝の謁見で忙しいんだとさ。王様ってのは大変な職業だよな」
セッツァーは軽く言い流したが、マッシュの顔が曇った。
「あ、悪い。仕方なくお前に会いに来たってな訳じゃないぜ」
「いや、それは気にしてないが」
マッシュの瞳が翳った。
セッツァーは怪訝な表情をマッシュに投げかける。
「近頃、帰って来ても兄貴は忙しくて会ってもくれないんだ」
「ケフカが世界をめちゃくちゃにしたから、フィガロも大変なんだろ? 国を統べる王としてあまりにも忙しすぎるんじゃねぇか?」
セッツァーは柄にもなく、マッシュの落ち込みに懸念する。
「それはわかるが。でも以前はどんなに忙しくても、俺が帰ってきたら必ず近況などを報告しあってたのにさ。今では大臣などを通じて、執務に忙しく時間を取れないって言われるばかりだよ」
セッツァーは腕を組み、椅子の背もたれに体を預け首を傾げた。
「お前らって、変だよな」
「えっ?」
「いくら、エドガーがフィガロの国王ったって、お前双子の弟だろ? 一体何を気遣ってんだよ? 執務室や寝室へ行けばいいじゃねぇか」
セッツァーは肩を竦めて言う。
「国王の寝室は、弟の俺でも王の許可がないと絶対行けない場所なんだ。執務室は、子供の頃、兄貴とかくれんぼうをしていて、悪戯に訪れ、親父の怒りをかった。それ以来、王の寝室と同じように神聖な部屋として訪れる事はできない。残るは兄貴の私室と、兄貴が気に入っているピアノの間だが」
マッシュにしては珍しく後ろむきであった。
「じゃぁ、私室へでも行きゃぁいいじゃねぇか」
セッツァーは少々苛立ちを露にした。
「……」
マッシュは俯き口を閉ざした。セッツァーは見なれないマッシュの態度に驚いた。ケフカ打倒の旅を仲間と共にしていた頃のマッシュは、いつも皆を励ますような笑顔を絶やさなかった。そんな彼の表情に暗い影が落ちるのはよっぽどの事である。
マッシュから口を開くまでセッツァーは待った。
「きっと何か悩みを抱え込んでいるんだ。兄貴はいっつも一人で抱え込む。そういう時は何も話してくれないんだよ、何でも一人で決めてさ。俺信用ないのかな」
「そんな事はないだろう。お前に心配かけるのが嫌なんだろ、あいつはそんな性格さ」
「解ってる。まぁ、兄貴から話してくれるまで待つさ。こういう時は俺が躍起になっても、はぐらかされそうだしな。お前にこんな話して、何か俺らしくないな」
頭をかきながら照れる。マッシュはようやくいつもの笑顔を取り戻した。
「あぁ、お前が悩む姿なんてらしくないぜ。俺が様子を見てきてやるよ。俺も久しくエドガーに会ってないからな」
セッツァーは西の塔を後にすると、執務室へと向かった。
「ったく、弟のくせに何を遠慮してやがんだよ」
セッツァーは遠慮なく執務室向かう廊下を歩く。すれ違う貴族や衛兵達が怪訝な表情を向けるが構わず進んだ。
彼はいつもふらりとフィガロ城に現われては、エドガーのいる部屋へ真っ直ぐ向かう。
謁見の間と国王の寝室以外なら、何処へでも無粋に入って行った。
執務室ではエドガーと大臣、秘書官達の数人で仕事をこなしている。紙とその上を走るペンの音以外は殆どしない。時折エドガーが静かに指図する。
入口の扉がノックされても大臣以外は気にもせず、黙々と仕事を続けていた。
「セッツァー様!」
大臣の声にエドガーはようやく書類から目を離し、呆れた表情をつくった。
「通してあげてくれ」
執務室に似合わぬ派手な男が入ってきても、他の者達は驚きもしなかった。国王の風変わりなこの友人は、突然やってくる事が多かったので慣れていたのである。
セッツァーはエドガーの前まで来ると、彼のかけている縁なしの眼鏡を取り上げた。
「篭って仕事ばかりしているから、蒼白い顔になってんだよ、たまには休憩取れよ」
「全くお前はいつも突然やって来るんだな」
エドガーは肩を竦めて微笑した。
「そうだな、少し休もう。皆も夕刻まで好きにしておいで」
「ありがとうございます」
大臣達はエドガーに挨拶を述べると、速やかに立ち去った。
「何かお前、暫く見ないうちに、ほんとやつれたな? 色男が台無しだぜ」
「お前は相変わらず男前だな。俺の部屋へ行こうか」
エドガーは悪戯な笑みを浮かべ、椅子を立ちあがろうとした。
「!」
エドガーはバランスを崩し、倒れそうになったが椅子の背もたれに捕まり態勢を整えた。
「おい、大丈夫か?」
「ああ、大丈夫、ちょっと立ち眩みがしただけだ。行こう」
エドガーが扉の方へ向かうのをセッツァーも後に続く。
「あっ!」
扉を開けようとしたエドガーは、小さな声を出すとその場に屈み込んだ。
「エドガー?」
エドガーらしからぬ行動に驚いたセッツァーは、自身も屈んで彼の顔を覗き込んだ。
鼻頭を抑えている手の指の間から流れている色鮮やかな真紅が、エドガーの白い手を染めていた。
それは指間を溢れるように流れ出し、象牙色の大理石の床を紅に染めつつあった。
「エドガー! こっちへ来て仰向けになれ」
エドガーの鼻腔からの夥しい量の出血に心配したセッツァーは、彼の肩を抱き寄せ立たせて近くの長椅子に寝かしつけた。
セッツァーは懐から取り出した絹のハンカチーフをエドガーに差し出す。
エドガーは無言で受け取り、鼻元にあてがったが白い絹は見る見るうちに真っ赤に染まってしまった。
「すまない」
「そんな事、いちいち気にすんな。それより、出血が酷いな」
セッツァーは渡したハンカチーフを持っている、エドガーの左手の甲に巻かれた包帯も紅く染まっているのを目にした。
「その左手の傷、まだ治らないのかよ? それって俺が前に来た時、三ヶ月程前にあやまって切ってしまったって言ったよな?」
セッツァーはいつになく、声を荒立てた。
「…あぁ、そうだったかな?」
エドガーは曖昧に応える。セッツァーの渡したハンカチーフは、元の白い部分を全て血で染めてしまったようだ。
「エドガー…」
セッツァーは口を閉ざす。マッシュと会いたがらない理由が解った。
「お前さ……。もしかして白血病ってやつに患ったんじゃねぇか?」
エドガーの微かに揺れた蒼い瞳に、セッツァーは図星と言わんばかりの瞳を向けた。
「お前が見抜くとは驚きだね」
エドガーは失血で意識が朦朧とする中、相変わらず余裕の表情を向けていた。
「まぁ、俺も伊達に年くってないし、世界を遊び歩いているわけじゃないからな。お前と同じような症状の奴を見た事がある。」
エドガーの相変わらずの口調に対して、セッツァーも軽口で返してみたものの、渡したハンカチーフは愚か、彼の白い指先までも紅く染まっていくのに複雑な感情を抱いた。
「エドガー。お前、どう見たって今の状況苦しそうだぜ。もう意地張るなよ」
セッツァーは解っていた。このままだとエドガーは、あと数ヶ月のうちに亡き人になるであろう事を。だが、ここで彼の心を乱すほどのことでもない、それはお互いによく解っている事でもあった。
「俺の骨髄とやらを、くれてやってもいいが、俺のじゃうまくはいかないだろ? 恐らくマッシュのが他の誰のよりも合うんだろうな。そうじゃないのか?」
さらりと問いかけたセッツァーの言いたい事をエドガーは解っていた。
「……」
「だからこそ、マッシュに言えねぇんだよな! お前ってやつは……」
エドガーは暫く黙っていたが、やがて静かな口調で話し始めた。
「お前の言う通りだ。マッシュには言えない、だが……」
エドガーの真っ直ぐに向けられていた蒼い瞳が、セッツァーの光に照らされた藤色の瞳を逸らした。
「お前が思う通り、マッシュに言わなければならない。そして恐らく、マッシュの骨髄をもらえば、何とか治癒するだろう」
「お前は自分だけの体じゃねぇんだろ? 世界を旅してても聞くが、なかなか有望な国王らしいじゃないか?」
セッツァーは多くを語らなかった。いやエドガーとセッツァーとの仲では、余計な言葉を持って語らずとも、互いに言いたい事は解った。
「お前の言う通り、俺はこんな病で死ぬわけにはいかない! だが、この命を救ってくれる唯一の奴が何でマッシュなんだ!」
エドガーは眉をひそめる。セッツァーが渡したハンカチーフは、既に止血する効果は全くなかった。
「あいつは、今でこそあんな体型だが、城を出る前は生まれ付き体が弱く、いつ儚くなるか。幼い頃から俺はそれを一番恐れていたんだ」
ここは砂漠の中の城とは思えない程、緑が茂り水が溢れた唯一の庭園である。この庭園は身分に関係なく、日頃国王に仕えている者達にも開放されている場所でもある。
マッシュは木陰で寝転がり、午後の休息を存分に楽しんでいた。穏やかな午後の陽射しと、散歩している貴族や、官僚、女官達の声がマッシュには心地よかった。
「以前にも増して寝具の出血が気になりますわ」
マッシュはその話し声に反応し、上半身を起こして辺りを見渡す。彼も知る、兄の神聖な寝室の清掃を担当している、入室を許可されている女官二人の姿を見た。
「毎朝、枕元が真赤に染まっていますわ」
「ええ、あのままでは陛下は……」
女官の会話にマッシュは起き上がり、木陰より飛び出そうとしたのを止めた。
マッシュは双子の兄であるエドガーが何故、毎朝シーツを汚す程、出血しているのかを知らない。兄に忠実に仕えている女官がそんな事を知り、兄弟である自分が何も知らない事実にショックを抱いてしまった。
−以前にも増して出血が気になりますわ−
−あのままでは、陛下は−
女官達の声がマッシュの中で連呼する。
(出血? あのままでは陛下が……?)
どういう事なんだ! マッシュの中で不安が募る。
そして兄はきっと重病に患ったと知り、“それが俺を避けている理由”なのだと悟る。
兄貴は肝心な事を決して言ってくれなかった、これまでもそうだったと、マッシュはそう思いながら己の無力さに嘆いた。
俺は何もかも一人で抱え込んでしまう兄貴の為に、少しでも力になりたいと願ったからこそ城を出て修行した。それは温室育ちで病弱だった俺には厳しい日々だった。
全ての痛み、苦悩、責任を抱えてきてくれた、兄の力になりたい。ただその思いだけで、これまで頑張って来れた日々。
10年振りに再会して、少しはその願いが叶ったと過信していた。だが、未だに兄は重要な事を何も言ってくれなかったのである。あの頃と変わらず、たった一人の家族である弟に何一つ相談するどころか、ただ一人で抱え込んでしまう兄。
マッシュは酷く胸が痛んだ。
−あのままでは陛下が−
女官の言葉が木霊した。
「兄貴!!」
バタンッ!
執務室の扉が乱暴に開けられた。
エドガーとセッツァーは取り乱したマッシュの姿に少しばかり驚く。しかしエドガーを見たマッシュの表情は見る見るうちに変化した。
「……」
マッシュは長椅子に身体を預けているエドガーの姿に動揺する。鼻元から首筋まで白い肌を染めている鮮血。
「セッツァー……」
マッシュは震える声でエドガーの傍らにいるセッツァーに声をかけた。
「あぁ、誤解しないでくれよ。俺がエドガーを殴ったわけじゃないぜ」
咄嗟にセッツァーは軽口をたたいた。
「兄貴……それ……。何で言ってくれないんだよ!!」
大柄のマッシュは柄にもなく、蒼い瞳を潤わせた。
「ごめん、マッシュ」
「どうして!! 俺ってそんなに兄貴に信用ないのかよ!」
マッシュはエドガーに詰め寄る。
「待てよ、マッシュ。そうじゃなくて、エドガーは誰よりもお前が大事なんだよ。だからお前の哀しむ顔を見たくないし、お前が辛くなるのを見たくないんだ」
セッツァーはマッシュを制した。
「それと、お前もお前だな、エドガー。いい加減、マッシュに対して過保護すぎねぇか? マッシュはもう立派にお前の力になれる程鍛え上げてるぜ」
「セッツァー……」
エドガーは微かに頷いた。
「自分でマッシュに説明してやれ!」
「兄貴……」
エドガーはマッシュの不安な瞳を見ると心が痛んだ。だが、やがて静かに口を開く。
「やっかいな病に患ってしまって、出血が止まらないんだ」
「それって……治らないのか?」
マッシュの顔が哀しみで歪む。エドガーが一番見たくない弟の顔である。
「いや、ただ」
エドガーは瞳を伏せた。
「お前の骨髄が必要なんだ」
「骨髄?」
マッシュは聞きなれない言葉に首を傾げる。
「なぁに、大した事ないんだよ。簡単な手術で移植できる」
とセッツァー。
「何だよ。そんな事なら、何も隠す事なかったじゃねぇか。こんなになる前にもっと早く言ってくれれば」
「そうだね」
エドガーは小さく呟いた。
セッツァーは別のハンカチーフで、血で汚れたエドガーの顔を拭いてやる。しかし、いくら拭っても鼻からの出血は止まろうとしない。
「そんなに大した事はないかもしれないが、病弱だったお前から貰うのは気が引けるんだ。せっかく自由に飛びまわれるようになった、お前がまた……」
「兄貴、ありがとう。だが、もう心配しなくてもいいぜ。俺は大丈夫だ。それより兄貴は兄貴だけの身体じゃないんだ。フィガロ国皆のものなんだぜ。その辺をよく自覚してくれよな」
マッシュの言葉を聞いてエドガーは弱々しく微笑んだ。出血がひどく意識が朦朧とした
途端、エドガーは完全に意識を手放した。
ゆっくりと瞼を開けたエドガーの視界に、見慣れた寝室の天上が入って来た。
「陛下! 陛下が意識を取り戻されましたぞ」
ベッドのカーテンの外では、安堵した表情の大臣と医師達の姿があった。
エドガーはゆっくりと状況を把握した。マッシュによって骨髄の移植を受けたのだと。
「マシアスは?」
「殿下は大丈夫です。手術後、二日程安静になさっていましたが、今朝も日課の修行に励んでおられました」
大臣は喜びを隠せなかった。エドガーの顔色がとても良い。
「これ以上ない程の適合でございました。さすが双子のご兄弟でございます。陛下、手術は成功です。もうこれで、苦しい思いをなさらずとも良いでしょう」
医師も晴れやかな表情をエドガーに向けた。
「皆、ありがとう。随分と心配をかけて、すまなかったね」
エドガーの表情にいつもの笑顔が戻ったのを、大臣と医師達は何よりも喜んだ。
「おはよう、レネー。朝早くから熱心だな」
汗の飛沫を散らしながら修行に励むマッシュ。エドガーは久し振りに、西の塔にあるマッシュの修行部屋を訪れた。
「兄貴!」
エドガーの元気な姿にマッシュは手放しで喜んだ。
「すまなかった、レネー」
「謝る事はないだろ? 俺が幼少の頃、床に伏せっている事が多くて、でもいっつも兄貴は時間が許す限りずっと看病してくれていたじゃないか。俺だってたまには兄貴の役に立たせてくれよな」
エドガーは優しく微笑し、ゆっくり頷いた。
「ようやく、兄貴の役に立てたぜ、十数年もかかったけどな」
マッシュは肩を竦めて笑った。
半開きの窓、バルコニーから乾いた風が二人の金の髪を微かに揺らした。
「あのさぁ。前にも言ったけど、俺は兄貴にだけフィガロを押し付けたわけじゃないぜ! 兄貴が俺の事自由にしてくれたけど、でも、俺は亡き親父の子で、兄貴の弟なんだ。
俺はまだ危なっかしいかもしれないけど、でもフィガロを統べる兄貴の、出来るだけ力になりたいんだ。
だから、兄貴一人で困難を抱えないで、まず俺に相談してくれよ。唯一の家族なんだからさ!」
「そうだな。俺は過信しすぎていたな。お前だけは自由にしてやりたい、王政や、王家、貴族等の陰鬱な政治的しがらみから、一切遠ざけてやりたいなどと。たまたま俺が兄として生まれ育っただけなのに傲慢な考えだったのかもな」
マッシュはゆっくりと首を左右に振った。
「俺こそ、ありがとう。ずっと兄貴に守られていた。これからは一緒に頑張って行こうぜ」
マッシュの言葉にエドガーは強く頷く。
乾いた風が二人を優しく包み込んだ。フィガロ独特の風が二人の金の髪をそっと撫でた。
そんな風を、この地をこよなく愛しているフィガロの双子であった。
あなたはかけがえのない人
あなたのかわりは誰にもできない
あなたがいるから耀き続けられる
あなたと共に未来を築こう
そしてそれこそが私達の“絆”
The End
〜あとがき〜
初めていらした珍味野郎様の60000キリリクにて。
陛下を殺めたり、病弱にしたり、失わせたり、近頃こんなネタばかりで…ダメですね〜(^^;
エドガーとマッシュのお互いの兄弟としての大切さ、今回はお互いの気遣いを見直すというのがテーマです(一応)
セッツァーに“いい加減マッシュに対して過保護じゃねぇ?”と言わせた事、他人が見れば、そう思うかもしれない、うちの陛下(苦笑)
陛下は薄倖の美人系? のイメージでいつも書いている私ですが(苦笑)
いつもそうとは限らない…。陛下も人間なんです、白血病に患かれば、陛下らしからぬ、“鼻血”だって、思いっきり出します(^^;
今後は、美しく理想の陛下像をどんどん崩したい〜な性格の陛下編を書いていくかも…です。
その第一段、陛下も鼻血出します、ということで。
あと、この世界で骨髄移植なんていう技術あったの?という現実的な話題はつっこまないでくださいね(^^;
2001.9.28
Louis
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