永遠の泉
それは今より遙かむかし。 End
遠い砂漠の国のお話。
一人の男が長い長い旅の果てに見つけた泉を近隣の人々に教え、その後、砂漠の直中に城を建て王となりました。
国は栄えその血は脈々と継がれていきました。
あるところにさながら天使のように美しい娘がいました。
髪は蜂蜜のように艶やかな金。頬をほんのり紅に染め大きなオアシスの瞳を持っていました。
娘の名はクリステール。水晶の名を持つ少女はその名の通り純粋で無垢でした。
少女は母を知りませんでした。彼女は未来を見通す不思議な力を持っていたので、父は人の好奇を引かぬように旅の中で少女を育てました。
ある時、親子の乗った船が嵐に遭い、流されて見知らぬ所に漂着しました。
再び大地を歩いて歩いて、たどり着いたのは名前も知らぬ砂漠の国。延々と砂が吹き荒れる中を進み、そのはずれにあった修道院を目の前にして父親の、命は尽きてしまいました。
親を亡くした女の子は、その身の上を不憫に思った修道女達に大切に育てられました。
それから数年の月日が流れ、少女だったクリステールはいまや15歳。天上の女神もかくやとばかりの美しさになりました。
見渡す限りの砂の大地にも微かに季節の移ろいがあり、ますます太陽が容赦なく照りつける夏へと向かっていました。
クリステールがいつものように泉へ水を汲みに来て、ふと懐から父の形見の金の指輪を取り出して父を思い出していたとき、後ろから突然飛び出してきたチョコボに驚いて手にしていた指輪を取り落としてしまいました。慌てて水面を覗き込んで見ましたが、ただただ波紋が広がるばかり。途方にくれた彼女が見上げると、その大きな鳥に跨っていたのは、白金の鎧に身を包んだりりしい騎士でした。
若い騎士の立派な様子にかなり身分の高い人だと思い、急いで居住まいを正しクリステールは身を屈めました。
「狩の途中水を貰おうと仲間から抜けてきたのだが、なにかお困りの様子。いかがいたされた?」
クリステールが指輪を落としたことを告げると、自分が驚かせた所為だとすぐに気づき、詫びを入れ指輪を探してくれました。
見つけた指輪を差し出す若者は、クリステールの美しさに心を奪われ、また少女もその騎士の物腰や優しい気遣いに心を動かされ、二人はすぐに恋に落ちました。
この若い騎士こそ誰あろう建国の徒の末裔、フィガロ王スチュアートでした。
砂漠の王の求婚を、クリステールは承知して、若き王と美しき王妃の婚姻を国中が祝福しました。
程なくしてクリステールは身ごもり、王は手放しで喜びました。
しかし・・・・・・若過ぎた王妃に出産の負担は重く、しかも生まれた子が双子だったためとうとうクリステールの体は耐え切れず、彼女はその短い生涯を閉じてしまいました。
王の悲しみは深く、また美しき王妃の逝去に国中が悲しみに包まれました。
愛する妻が残した子は、玉のような男の双子で、先に生まれた兄が「強き槍」と言う意味のエドガー、後に生まれた弟が「神の贈り物」と言う意味のマシアスと名づけられました。
父王は母親を亡くした兄弟をこの上なく愛しました。
二人は分け隔てなく愛情深く育てられ、いまや5歳になりました。
その日、いつになく沈んだ様子で父の前に来た二人に、王はわけを尋ねました。
するとエドガーがその夏空を映した海のような青の瞳を潤ませて、
「母上が死んだのは僕たちの所為なの?僕たちが生まれてきたから母上は死んだの?」
と聞きました。
スチュアート王はこの言葉を聞いて驚き、そして怒りました。
「誰がそんなことを・・・・・・」
王は言葉を詰まらせ、小さな兄弟を抱きしめました。そして、二人をある部屋へ連れて行きました。
「ごらん」
厚い扉を開けると、あまり広くないその部屋はビロード張りの椅子が一脚あるだけの、大きな窓から光が入る明るい部屋でした。壁には大きな肖像画が掛けられていました。
金色の柔らかそうな髪を高く結い上げ真っ白なドレスに身を包み、羽のついた扇を手に持った美しい女性がこちらを向いて微笑んでいる絵でした。
「母上・・・・」
そうですこの絵は、双子の母クリステールの姿なのです。
兄弟はことあるごとに、父にこの肖像画の前に連れてこられていました。ですから彼らはいつでも母を感じることができました。
「そうだ。それはお前たちを産んでくれた母上。クリステールだ。お前たちがそんなことを考えていたなんてことを彼女が知ったらどんなに悲しむだろう」
少し潤んだ父の声に、双子の兄弟は俯いてしまいました。
それでもエドガーはどうしてもお父様の本心が聞きたかったのです。
「でも・・・父上はお母様に生きていて欲しいと思ったでしょう?」
「それはそうだ。あれは本当に美しく聡明な女性だった。生きていて欲しかった・・・・生きてお前たちを見て欲しかった・・・・」
「父上・・・・・」
「私はお前たちが彼女を死なせたなどと考えたことは一度もない。母上はお前たちを命がけで生んでくれたのだ。だから私もお前たちを精一杯育てる。それが彼女の最期の願いだったから・・・・」
「父上。ごめんなさい。変なことを言って。僕、もうあんなこと言わないし、思わない。僕たちは父上と母上が願ってくださったから生まれてきたんだね」
「そうだよ。二人とも本当にいい子に育っている。クリステール、安心してくれ。この子達は私が立派に育ててみせる。お前はそこで見守っていてくれ」
父は膝を折り双子の肩を抱き、3人の眼は美しい母に注がれています。
王は空の上で見守る最愛の妻に二人の王子の幸福を誓うのでした。
フィガロ兄弟を生み出してくださった
嵯峨栗生さんの書いたお話を
ほんの少し使わせていただきました。
ですからこの中に出てくるエピソードは
裏設定と同義です。
フィガロ兄弟のファンの方にはどなたにも楽しめると思います。
ちょっと消化不良気味ですが・・・(汗)
サイトを始めて2周年、来てくださる皆さんに支えられてここまで来ました。
本当に感謝しています。
これからもまったりとしか更新しない亀管理人ですが、
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