小児の医療について
あさこ小児科内科医院院長
浅古 和弘
はじめに
 わが国では、少子・高齢化社会が急速に進みつつある。それにともなう医療の充実も望まれているがその重点は、高齢化対策や介護保険などの老人医療に向けられている。こと小児医療に関しては大きな関心を持たれていないのが現状である。そこで、この機会に小児医療や小児の救急医療の現状について考えてみたい。
@ 少子化について
 最近少子化ということが社会的に深刻に受けとめられている。その原因については、さまざまな意見が述べられているが男女とも晩婚化が進み女性の未婚率が上昇したことが最大の原因の一つであろうとされる。一般家庭に行った厚生省の調査では、夫婦が理想とされる三人の子どもを持たない理由として、両親の子育てにおける肉体的・精神的・経済的負担が大きすぎることがあげられており直接の出生率低下の主要な原因となっている。
 そこで少子化対策の一環として育児と仕事が両立するように働く女性への育児支援が求められている。北欧では女性の職場への進出が顕著であるが、その出生率は日本を上回っており、このことから仕事はかならずしも出産・育児のマイナス要因になるとは限らず、仕事場の環境の整備が大切であると考えられる。そして社会全体が子どもを育てやすい環境になっていくことが重要である。
A 小児の医療について
年齢別の一人あたりの医療費を調べてみると65歳以上の高齢者の年間医療費は〔約55万6千円〕であるのに対し0~14歳のそれは〔約7万7千円〕で高齢者の7分の1以下弱にすぎない。
 高齢者にかかる医療費に対して小児の医療費がいかに少ないかがわかる。現行の保険制度の恩恵が高齢者に多く反映されているものと捉えるならば、ぜひ乳幼児や児童にもそれが波及してほしいものである。
 ぜひ乳幼児や児童にもそれが波及してほしいものである。
 例えば子どもにかかる保険給付等の一部負担金助成制度の対象年齢は、草加市においては平成16年より就学前(小学校入学年の3月末まで)に給付対象年齢が引き上げられた。{それ以前は3歳未満(三歳になる誕生月末日まで)}であった。今後さらに対象年齢の拡大がなされ、子どもにかかる医療費が軽減されれば子どもを持つ親ばかりでなく、今後子どもを持ちたいと望んでいる人達にとっても朗報となるであろう。

B 小児診療所について
 前述の少子化および小児の疾病軽症化にともない受診者数は減少傾向にあるがそれに伴い小児科医の役割も変容してきた。それは診断・治療を主にしたものから予防接種や健診業務などの保健分野に求められてきているのである。 また少子化がもたらす外環境である社会面や経済面への影響は容易に予測ができることであるがこれから子どもたち自身にどのような影響が現れてくるのかという内環境への影響、例えば兄弟友人関係からはぐくまれるはずの思いやりや我慢心、社会性の欠如等『子どもの心の健康』にも留意し身近な診療所という特性を生かしその対処に小児科医として大きな役割を果たしていかなくてはならない。平成7年度より予防接種が集団接種から個別接種に移行して小児科の来院者数の減少にやや歯止めがかかったようでもあります保健分野の重要性は今後の大きな取り組むべき課題といえる。
C 小児医療費について
 従来の出来高制では、小児の特性ゆえ、検査・処置・投薬・画像診断等はいずれも少なく、 また小児の急性疾患での治癒力の優れたことなどから小児科の入院外診療報酬は他科に比べて1件あたりの点数が低いことは常識であり、低価な診療報酬が続いていた。しかし、平成8年4月より乳幼児と老人で外来点数包括制(定額払い・いわゆるマルメ)がスタートした。小児科を標榜していれば3歳未満には小児科外来診療料が算定できる。
 小児科診療所では来院者の3分の1近くを3歳未満が占めており包括制を選択することは収入の安定をはかることでは有効である。しかし、導入により患者さんの窓口負担増につながるので先の乳児医療の補助制度が不備な地域では一考を要する。
 また乳幼児では老人の包括性に認められている急性増悪時に出来高算定に戻ることは認められていない。したがって外来にて乳幼児が重症化した場合、各種検査を行ったり数日にわたる抗生剤の点滴などの治療が出来難くなったのも現実問題である。
 将来的に現在の単純包括制ではなく、さらに実際の検査・治療に結びついた疾患別包括制の導入が待たれるのである。
D 小児の救急医療について
 最近、特に病院の小児科の窮状が叫ばれている。実際、病院の経営が厳しい現況では、病院小児科の不採算性などの経済的理由により効率化の第一として小児科部門の医師の定員や病床の削減、時には病棟の閉鎖などが行われていると報告されている。救急医療における小児科の患者数は全体の40%〜60%を占めているが救急医療に携わる小児科医のマンパワー不足は著しく、小児科勤務医は過重労働を強いられている。
 夜間に救急で小児科を診る病院は少なく、ごく一部の小児科専門医のいる医療機関に小児救急患者の集中が起こっている。
病院小児科の存在なくして地域医療とりわけ小児の救急医療の成立は考えられず、小児の入院医療に対する受入態勢や病院小児科の存続を図る抜本的な対策が望まれる。
E おわりに
 小児医療は少子化や医療保険の改革など社会情勢の変容でさまざまな影響を受けている。
 それが小児医療の向上の妨げになることなく、これからも小児科医がより専門性を発揮できるよう、特に病院小児科の危機的状況を改革し地域診療所との連携を確実なものとした地域医療体制の充実が望まれる。
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