Review
April
JB Project"Brombo "
JB Project/ Brian Bromberg(b) 神保 彰(ds) Otomaro Ruiz(p,rhodes)
日本のプロデューサーの、「神保のタイコにブロンバーグのコントラバスを組み合わせれば
面白いんじゃない?」というアイデアを神保に打診したことからスタートしたというユニット。
今回は、すべてコントラバス(アコースティック・ベース)を弾いてるブロンバーグにしても、
神保にしても、とにかく手数の多い、いわゆる「バカテク系」なんで、
バタバタ弾きまくるだけで退屈な感じでは?という先入観があったが、
実際に聴いてみると、結構というか相当カッコいい。
ブロンバーグは、ビリー・コブハム、グレッグ・ビソネット、神保は、カシオペアで、櫻井や鳴瀬という、手数の多い「うるさい」
相棒とリズムセクションを組んでいた経験があるんで、互いに押し引きしながら、コンビネーションはなかなかまとまっているが、
どちらかと言えば、このプロジェクトのホストリーダーである神保が、「一歩引いて」ブロンバーグを上手く暴れさせてる感じもする。
この種のミュージシャンが、普通の「チーチキ♪チーチキ♪」なジャズを演っても面白くないことは、当人や演出サイドも
心得てるようで、形式は「ピアノトリオ」ながら、雰囲気は、「アコースティック・フュージョン」といった感じ。
神保=ブロンバーグのリズムだが、この感じ、なんかに似てるな?と思いながら、聴いてると…、
コリア=ウェックル=パティトゥッチのアコースティックバンドのリズムの雰囲気だ!。
特に、収録曲中一番ジャズっぽいトレーンの「ジャイアント・ステップス」やラテン風味な「マンボNo5」ではその印象が強い。
ただ、ウェックル=パティトゥッチよりも、グルーヴが太いというか力強い。
1曲目の「ジャイアント・ステップス」のスピード感、8曲目の完全なデュオ曲「ブロンボ」のグルーヴ感を聴け!!。
そのことがはっきりと分かるはず。
ベース弾きの私は、「ブロンボ」でのエレベのスラップ奏法をコントラバスに置き換えたような超グルーヴィーな
ブロンバーグにヤラれました・・・(でも私はコントラバスは弾けましぇ〜ん、トホホ・・・)マジ、カッコいいです。
ブロンバーグが渋くメロディアスに決めるシールズ&クロフツの「サマー・ブリーズ」という異色?のカヴァーもいい感じ。
粒立ちが良過ぎてペキペキした神保のドラムは、正直、あまり、好みではなかったのですが、
ゲスト的存在のブロンバーグを立てるといういい意味での「引き芸」や、
楽器愛好家だけじゃなく、音楽としてトータルに楽しめるものにしようとするプロデューサー的才能を上手く発揮しており、
神保彰というミュージシャンを見直すきっかけになりました。
最後にピアノとフェンダーローズを弾くオトマロ・ルイーズのことも…この人も本来は結構な「バカテク」な人ですが、
ここでは、リズムセクションに変なちょっかいを出さず、メロディーライン担当に徹してますが、
「マンボNo5」や「ソー・ホワット」でのローズや「サマーブリーズ」でのピアノなど、
さりげなくカッコ良さやセンスの良さを発揮してます。
久々に、「ライブが見たい」と思うカッコいいユニットの誕生です。
ライブを通して、上手く熟成させれば、相当面白いユニットになると思います。
(2003年4月2日)
Steve Cole(ts,ss) "NY LA"
w/ Brian Culbertson Deron Johnson Otmaro Ruiz (key) David Mann(key,ts) Paul Jackson,Jr.
Tony Maiden(g) Alex Al Will Lee Reggie Hamilton(b) Michael White(ds) Lenny Castro(perc)
Mauli B.(vo) etc…
スムース系テナー奏者スティーブ・コールの3枚目のリーダー作。
一頃のリッピントンズがやりそうな爽やか系のインストとヒップホップ風味のヴォーカルフィーチャー
ナンバーの2本立といった感じ。
インスト曲のほとんどをスムース系の人気者ブライアン・カルバートソンがプロデュースしており、
インパクトや驚きはほとんどないが、この種の音楽の愛好家のツボを突くサウンドメイクが
されているので、そっち系のFMでのブレイクは保証されたようなものでしょう。
この手の作品にはつきものの、「カヴァーもの」は無く、オリジナル曲だけで勝負しているが、
「どっかで聴いたような??」というレベルながらさらっと聴きながす分にはまぁ合格点といった所。
生のドラム&アップライトベースというリズムで、ラップ&ヴォーカルを
前面にフィーチャーしたラストトラックのヒップホップ・ナンバーが唯一の聴き所?、
一旦、フェードアウトした後、シークレット・トラック的に登場するジャムセッション風の
演奏は、ソウルにグルーヴしててカッコいい。
コールのサックスだが、曲によって雰囲気が違うのは、どうなのか??。
リッピントンズみたいな曲では、ジェフ・カシワみたい、ヒップ・ホップ風味の少し
ディープな曲では、カーク・ウェイラムっぽい、ソプラノでのスロウは、ケニーG??。
まぁ、スムースジャズという世界だけを飯の種にするんなら、これでもいいんだろうけど、
ケニーG、デヴィット・サンボーン、故グローヴァー・ワシントン,Jr.みたいな、
ジャンルを超えて活躍をするインストゥルメンタリストになりたいんだったら、
「自分の声」をちゃんと作っていかないと、スムースジャズというブームが去った後は、
これでは正直、辛くなると思う。
(2003年4月2日)
Doc Powell (g) “97th &
w/ Patrice Rushen George Duke (key) Marcus Miller Sekou Bunch Dwayne “Smitty” Smith (el-b) Harvey Mason Land Richards(ds)
Benny Moupin Ron Brown(sax) Luther Vandross(back-vo)・・・
かつてマンハッタンのアルバムタイトルの場所にあったジャズ・クラブ「ミケルス」に出演していたころの思い出にインスパイアされて出来たという
中堅ブラコン系フュージョンギタリスト、ドク・パウエルの新作。
「ミケルス」といえば、70年代後半、あのSTUFFなんかもレギュラー出演していたフュージョン系に強いクラブだったが、NYのバブル期の地上げにあったとかで、
随分前に潰れてしまったけど、当時、店主のパット・ミケルは、同じコンセプトのジャズ・クラブをまた作るわ、と言っていたが、果たして実現しているのだろうか?。
その頃の思い出〜というコンセプトからか、ベンソンの名演で知られるボビー・ウーマック作の「ブリージン」やラムゼイ・ルイスの「サン・ゴッデス」、マービン・ゲイ
の「ホワッツ・ゴーイング・オン」といった70年代のヒット・ソングのカヴァーも収録されている。
粒立ちが良いナチュラルな音とセンスの良いフレーズが定評のパウエルのギターで聴く、そんな70年代の名曲、
セクー・バンチのスラップベースのリズムも心地いい「ブリージン」や
ジョージ・デュークがあの印象的なキーボードフレーズを奏でる「サン・ゴッデス」はかなり気持ちいい。
がしかし、1曲目の中途半端なラテン調の曲をはじめとするパウエルのオリジナル曲がしょぼい、カヴァー曲が良過ぎるのか、
余計に他の曲がつまらなく聴こえてしまう。
もひとつ苦言、ラスト収録のマービンの「ホワッツ〜」だが、これは、87年のファーストアルバムに収められてる同曲に使われていた、ルーサー・ヴァンドロスの
リーダー&アレンジのコーラス部分を使いまわして、ギター&リズムのみをリテイクして作ったもので、ルーサーの新しいヴォーカル入り?と期待して聴くと
超がっかり!何でこんなことすんのかなぁ??
後、FMでのオンエアを意識してるのか?1曲のタイムが、「使いまわし」の「ホワッツ〜」以外、ほとんどの曲が4分前後というのも納得いかない、マーカスや
ジョージ・デューク、パトリース・ラッシェン、ベニー・モウピン、ハービー・メイソンなど、良いミュージシャンがせっかく参加してるのに、これじゃ〜ホント、
もったいない、もったいない。
「ポロポロッ」とメロディー弾いて、「パラパラッ」とアドリブかまして、ハイ終わり・・・みたいなスムース・ジャズの世界に閉じ込めるには、ほんと惜しいギター奏者です。
ファースト作「ラブ・イズ・ホエア・イット・アット」のように〜自分で歌いギターも引きまくる、リズムは当時のルーサーバンドの同僚、
ヨギ・ホートン(ds)=ティンカー・バーフィールド(b)〜みたいなR&Bフュージョンで、自分の本当のカッコ良さをアピールして欲しいもんです。
(2003年3月4日)
Chick Corea(p) “Rendezvous In
w/ Bobby McFerrin(vo) ,
Miroslav Vitous(b)=Roy Haynes(ds),
Roy Haynes(ds)=Joshua Redman(sax)=Terence Blanchrd(tp)=Chris McBride(b),
Gary Burton(vib),
John Patutucci(b)=Dave Weckl(ds),
Avishai Cohen(b)=Jeff Ballard(ds)=Steve Wilson, Tim Garland (sax)=Steve Davis(tb)
Gonzaro Rubalcaba(p),
Avishai Cohen(b)=Jeff Ballard(ds),
Eddie Gomez(b)=Steve Gadd(ds)=Michael Brecker(sax),
Avishai Cohen(b)=Jeff Ballard(ds)=Chaka Khan(vo)
一昨年12月にNYのブルーノートで3週に渡って行われた「チック・コリアの芸歴40周年、生誕60周年記念」(あんたは演歌歌手かっ!ちゅーねん?)
のライブイベントからの抜粋もの。
なんせ抜粋なんで、それぞれのトラックの印象は、面子の割には、正直、低い。
そんな中、「アルマンドズ・ルンバ〜ブルーモンク〜アランフェス〜スペイン」を
チックのパーカッシブなピアノと打楽器とベースが混じったようなボビーのヴォイスで躍動的に聴かせてくれる
ボビー・マクファーリンとのデュオと、
シンプルでスウィンギーなジャズピアニストになりきって楽しそうに、シャカ・カーンをサポートする国内盤のみのボーナス・トラックが
印象に残った。そいえば、最近、チックも参加した82年のシャカのジャズ作「エコーズ・オブ・エラ〜あの頃のジャズ」が、
ライノから再発されてて、改めて聴いたが、跳ねるチックのピアノとウネるシャカの声が表裏一体となって結構、新鮮で楽しかった。
そそそ、これに話を戻さないと・・・。
ヴィトゥース=ヘインズの「ナウ・ヒー・シングス〜」トリオ、「クリスタル・サイレンス」のバートンとのデュオ、
パティトゥッチ=ウェックルの「アコースティック・バンド」トリオ、ブレッカー=ゴメス=ガッドの「スリー・カルテット」ものなどの
いわゆる「リユニオン」ものは、ことごとく、つまらない。
この手の企画は、誰がやっても、いい演奏が出てきたためしがないが、ここでもやっぱりそうだった。
とにかく、初演時の「スリル」「躍動感」が全然感じられない。客が喜ぶから、ビジネス(=銭)になるから・・・という邪な考えがミエミエ。
逆に、見直した??聴きなおした?のが、アヴィシャイ=ジェフの「ニュートリオ」と「オリジン」。
ストイックにアレンジされた中に構成美を感じるタンゴ調のオリジンの演奏を聴くと、このユニットでチックが何がやりたいか?が
少し見えてくるよう。
「ニュー・トリオ」は、複雑なリズムやユニゾンパートをさらりと弾きこなしながら、「ナウ・ヒー〜」「アコースティック〜」トリオよりも強力なパワーと勢いを感じさせる。
まぁ、「オリジン」や「ニュートリオ」という現在進行形なユニットが面白いというのは、アップ・トゥ・ディトなミュージシャンであるチック・コリアとすれば、
当然といえば当然か?。
なんで、チックの熱心なファン以外は、2枚組みで、少し値も張ることだし、あえて見送ってもいいCDだと思う。
個人的には、今まで、あまりいい印象の無かった「オリジン」や「ニュートリオ」を見直すきっかけになったんで、これはこれでよかったんだけど・・・。
(2003年4月11日)
Cues Trio Meets David Liebman “Feel”
Roberto Tarenzi(p) Lucio Terzano (b) Tony Arco(ds)
w/ David Liebman(ts,ss)
ディヴ・リーブマン以外は、知らない人だったが、梅田WAVEで1680円だったので、衝動買いしたアイテム。
リーブマン参加盤といえば、闇雲に買うと、結構、アブストラクトだったりフリーだったりして、「ワチャ〜ァ〜・・・」ということもしばし・・・だけど、
これは、2曲目に、50年代マイルスの名曲(「1958マイルス」なんかに収録)「フラン・ダンス」(ラストにも、別テイクとして収録)が入ってたんで、
「フリーであんな曲やらんやろぅ・・・」と推測し購入。
いやいや、結構アタリでしたわ、これ。
「Cues Trio」は、トニー・アルコというイタリア人ドラマーがリーダーのイタリアン・ピアノトリオで、
ピアノのロベルト・タレンツィは、欧州ジャズ愛好家が最近注目してる新進の若手らしい。
このロベルト君、かなり器用な人で、スロウなバラードでは、「リッチー・バイラーク風」かと思えば、アップテンポにスィングするトラックでは、
ブレッカーバンドのジョーイ・カルデラッツォのよう、特に、アップテンポでグイグイ、ドライブする演奏が気に入りました、カッコいいですよ。
ディヴ・リーブマンは、コンセプチュアルなテーマがあったりする作品じゃないんで、良い意味で、力が抜けている感じ。
特に、3曲目のスロウな「クエスト」(バイラークとの共作で、2人のユニット名にもなった)やマイケル・ブレッカーみたいにブロウする8曲目のアップテンポナンバーでの
テナーが良い。
マイルスの「フラン・ダンス」でのテーマを吹くソプラノは、マイルスのミュートトランペットみたい、最初は、原曲を慈しむかのような優しい演奏、
でも盛り上がると・・・いつもの、「ぴ〜ひゃらひゃら〜♪」となってきてますが・・・その後のロベルト君のピアノソロもいい。
リーダーのドラマー、トニー氏は、別段、個性があるわけじゃなく、ソツの無い演奏、曲によって微妙にアクセントを付けながらサウンド全体を上手くまとめてる感じ。
「穏健派」なリーブマンのワンホーンカルテットとして、幅広くお薦めできる、「普通のジャズ」です。
2002年7月録音作。
(2003年4月16日)
Gabor Szabo(g) “High Contrast”
w/ Bobby Womack(rhythm-g) Wolfgang Melz Phil Upcharch(el-b) Mark Levine(key) Jim Keltner(ds) etc・・・
後にジョージ・ベンソンの演奏で大ヒットした「ブリージン」のオリジナルバージョンが収録されてることで知られる1枚。
71年トミー・リピューマのプロデュースにより、当時、彼が主宰していた「ブルーサム」からリリース。
例の「ブリージン」は、数年前に発売されたブルーサムのBOXセット内で、CD化されたが、アルバム単位ではおそらく世界初CD化だろう。
ガボール・ザボウは、ハンガリー出身のギタリストで、ナベサダやディブ・グルーシンの師匠にもあたるヴィブラフォン奏者ゲイリー・マクファーランドの
バンドなどで活躍、インパルス・レーベルにも名盤を残している。
ゲイリーといえば、60年代後半にスタン・ゲッツやCTIの諸作あたりで開花する「イージーリスニング・ジャズ」の
先駆け的存在だが、彼のバンド出身のガボールも早くからその種のテイストを取り入れていた。
しかし、まぁ〜、何で、ハンガリー出身のジャズ系ギタリストのガボールとサザンソウルを代表するような存在のボビー・ウーマックが、
競演したのだろう??。
トミー・リピューマのアイデアだろうが・・・やっぱり謎だなぁ・・・誰が知りませんか??。
目玉の「ブリージン」だが、有名なジョージ・ベンソンが「カラー写真」だとすると、ガボールの原曲はといえば「モノクロ写真」。
ベンソンバージョンよりも、ややスロウなテンポで淡々と演ってます。この曲の作者でもあるウーマックのリズムギターだけが、
鋭く切り込んでますが、ケルトナーのタイコも、ストリングスも淡々・・・時間も3分ちょっとなんで、あっという間に次のトラックへ・・・。
これは、推測ですが、プロデューサーのリピューマは、いまいち、このバージョンが気に入ってなかったのでは??。
ま、気に入らないというよりも、ガボールのギターに合わなかったというか・・・何というか・・・。
んで、ベンソンのワーナー移籍第一弾となる「ブリージン」制作に当たって、「この曲にあうのは、こいつだ!」とばかりに気合を入れて作ったのが、
ベンソンバージョン?という気がする。
原曲の気合の入らないしょぼいストリングスに比べて、ベンソンのクラウス・オガーマンのストリングスが何と流麗で美しいこと!。
とにかく、この作品、「ブリージン」以外には、あんまり聴き所、ありません。
「チャカポコ、チャカポコ〜♪」したリズムのファンキーな曲も入っているのですが、ウーマックのリズムギターはグルーヴしてるのに、
ガボールのリードギターは全然、グルーヴしない、線の細い音で淡々とメロディーを弾いてるだけ。
ガボールのギターの魅力は、繊細さにあると思うけど、このような黒くザックリとしたサウンドの中では、その個性が活かされて無い感じ。
そのあたりの失敗は、ガボールの責任というより、プロデューサーのリピューマの失敗なんだろな、名プロデューサーも「木から落ちる」ということか??。
やっぱりこれ「迷盤」です。
「ブリージン」の原曲が入ってる、という資料的価値以外はあんまりないような・・・でも個人的には「ミスマッチ」が面白く意外と気に入ってる気も??
ええの、悪いの・・・どっちやねん??。
上手く表現できませんが、そんな感じの作品です。(ようわからん・・・苦笑・・・すんません。)
クロスオーバーの黎明期にひっそり咲いてた「あだ花」的1枚。
(2003年4月17日)
Freddy Cole(vo) “In The Name Of Love”
w/ Jason Miles(key,produce) Romero Lubambo Dean Brown Jeff Mironov(g) Jay Beckenstein David Mann(sax)
Jane Monheit(vo) Mark Egan Will Lee(b) Keith Carlock(ds) etc・・・
故ナット・キング・コールの弟、フレディの「コンテンポラリー・ラブ・ソング」作。
別段、この人にファンということはないんだけど、歌ってる曲を見ると・・・好きな曲ばかり・・・ということで購入。
「ハーバー ライツ」(ボズ・スキャッグス)「ジャスト・トゥ・シー・ハー」(スモーキー・ロビンソン)「イン・ザ・ネイム・オブ・ラブ」(ロバータ・フラック、
ラルフ・マクドナルド&ビル・ウィザース)「アンジョー・ジ・ミン」(イヴァン・リンス)・・・良い曲ばかり選曲してます。
ナットに似た少しハスキーな渋いヴォイスで、そんな素晴らしいラブソングの数々を、良い意味で「ライト」に聴かせてくれてる。
ポップな曲、例えば、スモーキーの「ジャスト・トゥ〜」やボズの「ハーバー〜」あたりでの、ジェイソン・マイルスの手がけたバックトラックは、
通信カラオケのMIDI演奏?みたいで、フレディの渋い声に負けている感じもしないではないが、
フレディもプロデューサー&キーボードのジェイソン・マイルス、双方の得意とするイヴァン・リンスのブラジルものでは、凄くスムースで良い感じ。
さりげなくフィーチャーされるホメロ・ルバンボのアコースティック・ギターも気持ち良い。
ジャズ・ヴォーカルというよりも、ジャズ風味のAOR作という感じなんで、ロックっぽいAORの苦手なそっち方面のファンにも薦められる作品だと思う。
フレディ・コールって、もう71歳らしいけど、こんな作品をさりげなく作れるなんて、若い、若い、素晴らしいですね。
(2003年4月17日)
Grover
Washington,Jr.(sax) “Feels So Good /
w/ Bob James Dave
Grusin(key) Eric Gale Steve Khan(g) Gary King Louis Johnson Anthony Jackson(el-b) George Mraz(b)
Steve Gadd Hervey Mason(ds)
Ralph MacDonald(perc)・・・
長年、廃盤状態だった75年の「フィール〜」と76年の「シークレット〜」が、2イン1CDにて、復刻。
復刻してくれたのは、オーストラリア!の「Raven」なるメーカー。海賊か?と疑ったが、クレジット関係を見る限りそうじゃないみたい。
アルバム毎の参加ミュージシャンや録音データもちゃんとしているし、おまけに、ボーナストラックで「フィール〜」と同じ75年に発表された名盤「ミスターマジック」から
「パッション・フラワー」まで入ってて、収録時間は、CDのギリギリ75分57秒!よく出来た再発企画じゃあ〜りましぇんかぁ〜。
この2作品のうち有名なのはダントツで「フィール〜」の方で、タイトル曲などは、ベスト盤なんかにも入ってたりするが、「シークレット〜」は日陰の存在。
でも今、改めて聴いて気持ちよかったのは、実は、「日陰」の「シークレット〜」の方。
タイトル曲を含む2曲に、ルイス・ジョンソンの「ベンベン」スラップベースが参加しているなど、ファンク色の濃い「フィール〜」に対し、
「シークレット〜」は、ハンコックの「ドルフィン・ダンス」をやっており、クロスオーヴァーの範疇ながら、ややジャズっぽい雰囲気。
「シークレット〜」には、全編、キーボードでディヴ・グルーシンが参加しており、グローヴァーのソウルなサックスをやんわりと包み込む浮遊感ただよう
フェンダーローズが何とも気持ち良い、グローヴァーとの絡みは、グルーシンの77年のリーダー作「ワン・オブ・ア・カインド」の1曲目の「モダージ」のよう。
また、アンソニー・ジャクソン=ハーヴィー・メイソンのリズム(「ドルフィンダンス」のみジョージ・ムラーツのコントラバス)もしなやかにグルーヴしてる。
今の耳で聴くと、大仰なホーンアレンジや当時のR&Bの流行を意識したようなファンクリズムがやや古いというかダサく感じる「フィール〜」に対し、
「ソフト&メロウ」(いや〜懐かしい表現・・・)な「シークレット〜」の方が、エヴァーグリーンな魅力があるように感じた。
2作品を通じ、すべてのギターソロを担当するエリック・ゲイルの素晴らしさ、カッコ良さも再認識、ここに収録されてる曲のレングスは、6分弱〜9分もあり、
全盛期のエリックのソロを存分に楽しめる。
全部、「かっちょい〜」「すんばらしいぃ〜」「きもちいぃ〜」では、レビューにならないんで、「シークレット〜」持ち上げる結果になったが、
ここに収録されてる2作品、両方とも、実に良い、フュージョン〜クロスオーヴァーの歴史に残る名盤です!。
80年の「クリスタルの恋人たち」(ダサい邦題・・・”Just The Two Of Us”でええやんねぇ〜)大ヒット以降、ソフト&メロウな側面ばかりが注目されたが、
実は、力強いR&Bなテイストとソフト&メロウなテイストを併せ持つグローヴァー・ワシントン,Jr.というサックス奏者の本当の魅力を強くアピールしているのは、
72年のデビュー作「インナー・シティ・ブルース」から、75年の「ミスター・マジック」を経て、76年の「シークレット〜」あたりだということを改めて実感した次第。
(2003年4月20日)
David Garfiled(key) “Giving Back”
w/ Will Lee(b,vo) Jimmy Johnson Jimmy Earl Freddie Washington John Pena(b) Vinnie Colaiuta Simon Phillips Steve Ferrone
Greg Bissonette Ricky Lawson(ds) David Paich Steve Porcaro Greg Phillinganes(key) Steve Lukather Paul Jackson,Jr. Mike O’neill
Ricardo Silveira Lee Ritenour Steve Farris Tim Pierce Mike Miller(g) Larry Klimas Gerald Albright Eric Marienthal Brandon Fields Michael Brecker(sax)
Airto Moreira Lenny Castoro(perc)Randy Brecker Walt Fowler(tp) Alex Ligerwood Jason Scheff Bill Champlin(vo)
June Kuramoto(koto)・・・
いや〜豪華な面子ですわぁ〜。「仕事」としてこの人達に発注すると果たしてどれほどのギャラがかかることやら・・・。
西海岸の「フュージョンマスター」ディヴィット・ガーフィールドの人柄というか人望というか交友関係の広さというか・・・そのあたりで「お友達価格」になったんだろな。
でないと、ほとんど、自主制作に近い、こんな作品で、こんな面子は無理だわ。
この人は、故カルロス・ヴェガ(ds)とのラテンフュージョンユニット「カリズマ」(ヴェガの死後は、ラテン色が無くなり、コンテンポラリー・ジャズ路線になったが・・・)や
TOTOのルカサーとの「ロス・ロボトミーズ」などのリーダー、ジョージ・ベンソンやナタリー・コールなんかのツアーバンドのディレクターとしても知られるが、
「デヴィッド・ガーフィールド」という単独の名前でのリーダー作は、これで3枚目とのこと。
キーボード奏者としては、この人、正直、そんなに個性はなく、「並」だと思うが、サウンドメイクというかプロデュースというか仕切りというか・・・は、
やはり絶妙、天才的、素晴らしい。
70年代後半あたりから、リトナーあたりの「LAフュージョン」やTOTOやデヴィット・フォスター関係のAORなんかを愛聴してる30代半ば以降のおじさん
(わしのことかいな・・・)、おばさんには、ハマる内容でしょう、ズバリ、国内仕様をディストリビュートしてる中田利樹氏のクールサウンドのファン層、直撃。
何故か、アメリカの作品でありながら、アメリカで売ることをほとんど考えてないようで、流行の「スムースジャズ」の匂いはほとんどせず、
生のドラム&ベースの抜けの良いリズムがスコンスコン決まるサウンドは、まさに「フュージョン」。
これだけの面子が参加し、それぞれの曲で、それ相当の活躍をしてるので、聴き所は、全編に渡ってるが、その中から少し掻い摘むと・・・。
LAフュージョンファンには、ヒロシマのジューン・クラモトの琴が良い効果をだしてるミディアムテンポで都会的な1曲目、
「カリズマ」ファンも納得のブラジリアンテイストな5曲目、ブラジリアンギタリスト、リカルド・シルヴェイラのアコギもいい感じ、
フレディ・ワシントン=リッキー・ローソンのリズムやジェラルド・アルブライトのサックス、ガーフィールドのキラキラしたピアノも小気味良い「モロLAフュージョン」な8曲目、
リトナーのギターをフィーチャーした少しフォーキーな12曲目を・・・。
またハード目なフュージョンファンには、
グレッグ・ビソネット&ヴィニー・カリウタ(ds) ジミー・ジョンソン&ウィル・リー(b)という「ツインリズム」をバックに、ブレッカー兄弟のトランペットとテナーが叫び
スティーヴ・ルカサーのハードなギターが吠えまくる3曲目・・・なんでもトニー・ウィリアムスに捧げたというこの曲、もともとは、ジェフ・ベックに書いた曲で、
本当は、アラン・ホールズワースのギターを入れたかったそう・・・さもありなんという曲想、
と「ロス・ロボトミーズ」にブランダン・フィールズ&ウォルト・ファウラー&マイク・ミラーが加わった11曲目を。
AORファンには、元サンタナ、アベレージ・ホワイト・バンドのアレックス・リジャーウッド、ジェイソン・シェフとビル・チャンプリンという「シカゴ」な2人、それに
ベース弾きのウィル・リーまで、「歌」で参加してる、ボズ・スキャッグスの「ロウダウン」を少しだけ髣髴とさせる4曲目、
ハイトーンで少しハスキーなAORムード満点なリジャーウッドをリードシンガーに迎えた、アイズレーブラザーズのカヴァーの7曲目「フォー・ザ・ラブ・オブ・ユー」と
8曲目のスティーリー・ダンの「ジョジー」を…アイズレーのカヴァーは、LAフュージョンっぽく良い意味で軽く跳ねてます、
スティーリーの方は、ジミー・アールのスラップベースとスティーヴ・フェローンのグルーヴィーなドラムを強調したファンキーな雰囲気、
元Mrミスターというスティーヴ・ファリスのハードなギターもカッコいい・・・どっちもほんと良い感じのカヴァーに仕上がってる。
んな感じで、ことしで30代半ばに突入する?おじさんになってしまった私のようなファンには、ヨダレたらたら、涙ものの1枚です。
当分、参加ミュージシャンの詳細とカラー写真までのってるCDのインナーブックを眺めながて、ニヤニヤしながら、朝な夕なにこれを聴く日々が続きそう。
でも・・・おじさん、おばさんじゃない10代後半〜20代の人は、楽器をやってる人のほかは、あんまり聴かないんだろなぁ・・・この手の音楽は・・・
ほんとカッコいいんだけどなぁ・・・。
(2003年4月25日)
Tower of Power “Oakland Zone”
Emilio Castillo(sax,vo) Mike Bogart Adolfo Acosta(tp) Jeff Tamelier(g) Stephen “Doc” Kupka(bs) Tom Politzer(sax) Roger Smith(key)
Francis Rocco Prestia(b) David Garibaldi(ds) Larry Braggs(vo)
バンドの看板メンバーの一人、ロッコ・プレスティアが、昨年、重大な肝臓病を患い、生体肝移植を行ってなんとか一命をとりとめたそうだが・・・その後、あんまり情報が
無かったんで、命だけは・・・かな?もうTOPでの演奏は無理・・・??と半ば諦めていたところ、タワレコのTOPのコーナーに見慣れぬジャケットが・・・。
また、新しいコンピュレーションかいなぁ??でもよく見ると、新譜!?。レーベルは、以前までの「Epic」じゃなく、「Or Music」なるマイナーレーベル。
愛するTOPの新譜ということなら、マイナー盤でもなんでも、とにかく、買わんとあかん!。
早速、CDのビニールを破り、CDを取り出し、プレーヤーに乗せ、「Play」を押すと・・・プクプクしたグルーヴィーなベース・・・ロッコのベースだ!!、
ザックリとしたファンキーなホーンセクション・・・まさしく、TOPのサウンド、それも70年代前半〜半ばの佳き時代のヤツだ!!。
ということで、CDを聴く度に盛り上がっております・・・ハイ。
90年代後半のアルバム「Souled Out」などでは、フュージョン畑のジェフ・ローバーなんかと組み、ループのリズムを取り入れるなど、ややアップ・トゥ・ディトな
演出もされてましたが、今作では、そんな演出はまるでなし!、70年代初期〜中期のザックリとしたオークランド・ファンク、そのまんま。
まぁ、当時のパワーやスピード感は、経る年月の中に置いてきてしまった感じもしますが・・・それは円熟と解釈しておきましょう。
リードヴォーカリストは、今回、チェンジしたようですが、これは少し残念、前任者、ブレント・カーターは、70年代の全盛期のヴォーカリスト、レニー・ウィリアムスの勢いやパワーを彷彿とさせていただけに、ニューヴォーカリストの線の細さは、少し気になるけどなぁ・・・。
とはいいつつ、リーダーの「ミミ」ことエミリオ・カスティリオがいて、ドク・グプカのバリトンサックスが、ホーンセクションのボトムでブーブーいってて、
ロッコ=ガリバルディのファンキーなリズム、それに、面子は変われどテイストは不動なTOBホーンセクションさえあれば、もう何も要らない・・・
これがTOPの魅力なんだなぁ・・・これが・・・。
ファンキー、グルーヴィーだけがTOPの魅力じゃなく、メロウでせつないミディアム〜バラード系もいいんだけど、今作でも、オークランドの夕暮れといった感じの
ミディアムナンバーの4曲目や7曲目のバラードで、その魅力を発揮、10曲目のほのぼのとした70年代ポップスっぽい雰囲気の曲もいいな・・・。
最後に嬉しいお知らせを・・・。
彼らの公式サイトhttp:/www.bumpcity.com内の歴代のメンバーを紹介したhttp://www.bumpcity.com/bandmembers/index.html
(卒業したメンバーのリーダー作なんかも紹介されてて面白いよ)
の中のロッコのページによると、リハビリ中のロッコが今年のツアーには戻って来る、とのこと。
新作をひっさげて、日本にも来日してもらって、ベイエリアのファンキーな風を運んできてもらいたいな。
(2003年4月30日)