swingroovereview may-june 2001

 

"To Grover With Love" various artist (Q-Records-Atlantic 92945-2)

musicians

Gerald Albright Jay Beckenstein Michael Brecker Steve Cole Dave Koz Everette Harp Ronnie Laws Dave Mann Paul Taylor Richard Eliott (sax) Herbie Mann (fl) Jason Miles George Duke Greg Fhillinganes Joe Sample(key) Chuck Loeb Jeff Minonov Russ Freeman Dean Brown Peter White(g) Will Lee Gary King Francisco Centeno(b) Buddy Williams Richie Morares(ds) Randy Brecker(tp) Pabro Batista Cyro Baptista (perc) Joey DeFrrancesco(org) Regine Bell Chaka Khan Sounds Of Blackness (vo)

impressions

「トリビュート屋」ジェイソン・マイルスが、オーガナイズしたグローヴァー・ワシントンJRのトリビュート作。

打ちこみと生の楽器を上手く組みあわせたサウンドは、70年代〜80年代初期にかけての「クロスオーヴァー〜

フュージョン」の魅力と今の「スムース・ジャズ」のカッコ良さを上手くブレンドしてる感じ。

「ワインライト」(ジェラルド・アルブライト)「ジャスト・ザ・トゥ・オブ・アス」(レジーナ・ベル、スティーブ・

コール&ジョージ・デューク)「インナーシティ・ブルース」(ロニー・ロウズ&サウンズ・オブ・ブラックネス)…

などお馴染みの曲を多数収録。

ラス・フリーマンのギターをフィーチャーして、ウィル・リーのグルーヴィーなベースが気持ち良い「イースト・リバー・ドライブ」も、クールで良い。グローヴァーのメロウなサックスのイメージを上手くギターで表現してる。

まぁ「オリジナルと比較してどうのこうの…」と言わず、グローヴァーの演奏が残した楽曲の素晴らしさを気軽に楽しめばなかなか楽しい作品だと思う。

今の「スムーズ・ジャズ」の原点が、ケニーGじゃなく、グローヴァー・ワシントンJRにあることを再確認した。

points〜

★★★★

 

"International Quintet" Evans-Bailey-Gilmore-Skowron-Zawdzki (Walkaway Records LC008)

musicians

Bill Evans(sax) Victor Bailey(b) David Gilmore(g) Janusz Skowron (key) Krzysztof Zawadzki(ds)

impressions

ポーランドで、「Walkaway」なるフュージョン・バンドをやっているドラマー、ザワズスキーなる人間と

エヴァンス、ベイリー、ギルモアというNYのミュージシャンとの謎のセッション作。

エヴァンスの「Let The Juice Loose」や「Hobo」ベイリーの「Kid Logic」なんかをやってるんで、

主役は、エヴァンスやベイリーといった感じ。

エヴァンスの「ブルーノート東京」でのライブ盤を思わせる熱さも、所々には感じられるが、ポーランド人ドラマーが、

いまいちのせいか、アメリカ組がやや冷めた演奏に終始してる。

とはいいつつ、やっぱり、エヴァンスやベイリーのプレイは、「超」がつくほどカッコイイんで、2人のファンは必聴。

points〜

★★★★

 

"Live At The Baked Potato" various artists (Tonecenter TC40172)

musicians

Jeff Richman(g) Vinnie Colaiura Simon Phillips Dave Weckl Ralph Humphrey Danny Gottlieb Chad Wackerman (ds)

Abraham Laboriel Dave Carpenter Tom Kennedy Jimmy Haslip (el-b) Robert Hurst (b)

Mitch Forman Russ Ferrante Jefff Babko Peter Wolf (key) Steve Tavaglione Brandon Fields (sax)

impressions

ギタリスト、ジェフ・リッチマンが中心となったLAの人気ライブ・スポット「ベイクド・ポテト」でのライブ音源を集めた作品。

リッチマンというギタリストそのものは、ソリッドなロック風味のサウンドでカッコイイ所もあるが、セッション屋さんの域を出るものではない。器用なギタリストなんんだけど…。

聴き所は、リズム・セクションに参加してる大勢の人気ミュージシャン。

特に、意外と珍しい?エイブ・ラボリエル=ディヴ・ウェックルというリズムによるマーカス・ミラー作のマイルス・チューン「Splatch」での、弾けるようなリズム・セクションは聴きもの。

またラス・フェランテのピアノが光る、ボブ・ハースト=ダニー・ゴットリーヴのリズム・セクションによるジャジーな4ビートナンバーも渋い。

人気ライブ・スポット「ベイクドポテト」のありふれた日常を切り取ったような「素」の状態がカッコイイ作品。

points〜

★★★☆

 

"Live At The Baked Potato 2000" Greg Matheson (LMNOP Music 2001)

musicians

Greg Mathieson (key) Abraham Laboriel (b) Michael Landou (g) Vinnie Colaiuta (ds)

impressions

グレッグ・マシソンの自主制作盤による2枚組。

収録曲は、スティーブ・ルカサーやジェフ・ポーカロをフィーチャーした、かつての名盤「ベイクド・ポテト・スーパーライブ」でお馴染みのものなど、LAフュージョン的にカッコイイ曲ばかりで、1曲の時間も10分近く〜17分ちょっとまでと、ほとんどノー・エディット状態。

80年代の「ベイクド〜」よりは、レイド・バックはしてるけど、マイク・ランドゥやヴィニーはイキまくり状態。「力技」なヴィニーとのリズム・セクションで、かつての覇気の戻ったエイブのベースも素晴らしい。随所にあの「フラメンコ」ソロやパワフルなスラップ・ソロを聴かせてくれる。元気なエイブのソロを聴いてると、かつての「コイノニア」を思い出してしまった。

という感じで、残念ながらほとんど印象に残らないのが、マシソンのキーボードというのは、80年代の「ベイクド〜」と同じ。

古くからの「フュージョン」ファンには、もう涙ちょちょぎれる2枚組。

points〜

★★★★★

 

"360 Urban Groove" Jimmy Sommers (Higher Octove Jazz HOJCD 10317)

musicians

Jimmy Sommers(sax) Jeff Carruthers Freddie Moffet Mitch Forman (key) Norman Brown Tonny Organ (g) Alex Al (b)

Lenny Castro(perc) Les Nubians Ginuwine Raphael Saadiq Eric Benet Sparkie (vo)

impressions

ジョニー・ソマーズというサックス吹きの名前は初めて耳にしたが、このCD自体はかなりカッコイイ。

「カッコイイ」と言っても、ジョニー・ソマーズのサックスが良いんじゃなくて、サウンド・メイク全体の話。

サックスそのものは、凡庸だが、クリアに伸びるハイトーンな音色が、伊東たけしを思わせる。

スムース・ジャズやR&Bのトレンドを上手く活かした打ちこみ中心のリズムと、ありふれたサックスをカヴァーする豪華なヴォーカル陣が、ジャンルを超えた「アーバン・グルーヴ」ミュージックを生み出してる。

UKのジャズ・ファンク調の心地よいリズムとクーリオのヴォーカルが超クールなボズ・スキャッグスのカヴァー「Lowdown」がイチオシ。原曲での印象的なベースラインは、アレックス・アルがグルーヴィーに再現。

エリック・ベネイのヴォーカルというかコーラスをフィーチャーしたメロウなミディアム・チューンもクール&スムース。

「スムース・ジャズ」は正直、もう飽き飽きしてるが、上手くR&B的な感覚を取り入れた理屈抜きにカッコイイ作品なら、この手のサウンドもまだまだ捨てがたい。

points〜

★★★☆

"The Second Miletone" Eric Alexander (Milestone MCD-9315-2)

musicians

Eric Alexander (ts) Jim Rotondi (tp) Harold Mabern (p) Peter Washington (b) Joe Jarnsworth (ds)

impressions

タイトル通り、エリ・アレのマイルストーン第2作目。

ここ数年、彼の中で、初期からの流れであるデクスター・ゴードン的な部分と、コルトレーン的な部分が葛藤していたような感じがしたが、新作では、ある程度、自分の中で消化した様子。タイトル曲のアップテンポにスウィングするナンバーでの流麗に流れるテナーは、そのことを証明しているかのよう。

しかし、上手く流麗になればなるほど、彼に対する興味が薄れてくるのは、何故なのか。

その理由は、いまいちまだよく分からないが、「面白くなくなっている」のは間違いない。

ライブで聴かせてくれる、火を吹くようなアグレッシブなテナーでも良いし、初期のようなデックスばりの豪快なテナーでもいい、とにかく、この辺で、評価が賛否両論の真っ二つに割れるようなインパクトのある作品を作って欲しい。

このままでは、「コンコード」系のテナー奏者になってしまいそうな予感が。

ご都合主義的評論家、寺島何某に誉められるようなジャズ・メンはあきませんよ。

points〜

★★☆

 

"Paradise" Tom Harrell (BMG 09026-63738-2)

musicians

Tom Harrell (tp) Jimmy Greene (ts) Freddie Bryant (g) Xavier Davis (p) Ugonna Okegwo (b) Leon Parker Adam Cruz(ds)

Cafe (perc) Luis Colin (harp) with strings section

impressions

日本での人気や知名度はいまいちだが、アメリカでは、トップ・ジャズミュージシャンとして確固たる地位を築いてる、トム・ハーレルの新譜。

ジャズの大リストラが続く米レコード業界にあって、未だにメジャーのBMGからリリース出来ているのは、そんな絶大な人気があるからに他ならない。

今作も、ストリングス・セクションとの共演によるコンセプチュアルな作品で、ハーレルの作曲や編曲の才能にスポットを当てた感じ。

個人的には、このような作品は好きでは無いが、ハレルの書くメロディーには、いい意味での「ジャズ」っぽさがあり、そこを中心に楽しめば、実験的な臭いを上手く払拭できる。また打楽器を取り入れたりして、4ビ―トにこだわらず、いろいろなリズムにもチェレンジしているが、「キワモノ」になることなく、作品の中に躍動感を加えている。

現在のハーレルのレギュラーバンドのジミー・グリーン(ts)やザヴィアー・ディヴィス(p)も瑞々しい演奏を聴かせてくれてる。

雲の上から聞こえてくるようなハーレルの優しいトランペットやフリューゲルを、少しゴージャスな感じで楽しめる作品。

points〜

★★★☆