Swingroove Review
March 2001
Title/Musicians/Revel |
"No Substitutions〜Live in Osaka" Larry Carlton Steve Lukather (Victor) |
Who? |
70年代中期のクルセイダースでの白人らしからぬブルージーでファンキー演奏で一躍注目を集めた、リー・リトナーと並ぶ「フュージョン・ギター」の巨匠、ラリー・カールトンと、グラミー受賞グループTOTOのギタリスト/ヴォーカリスト、スティーヴ・ルカサーとの夢の共演盤。ルカサーにとってのカールトンは、プロになって以後も、常に憧れの存在で、ライブの中でも、日本語で「センセイ、センセイ」と言って心底慕っている様子。98年大阪ブルーノートでのライブ録音。 |
With? |
クリス・ケント(b) グレッグ・ビソネット(ds) リック・ジャクソン(key) |
Reflection? |
彼らが、大阪ブルーノートでライブを行っていた週に、何曜日か忘れましたが私も足を運びました。やはり人気アーティストの共演ということで、少しでも良い席をゲットしようと、セカンド・ステージの開場一時間半くらい前にも関わらず、もうすでに行列…。そして、お店の前には「ヒビノ」の中継車が。そうか、これはライブ・レコーディングもされるんだ!。ライブまで後一時間以上もある行列の中で、すでに興奮状態に陥ってしまったことを鮮明に覚えてます。それから、「出るらしい〜リリース延期…」を何度も繰り返し2年以上たった2001年2月21日にめでたくリリースにまで漕ぎ着けました。私の見たセットの1曲目のCDと同じジェフ・ベックの「ザ・パンプ」でした。ヘヴィーなリズムを持った、少しダークな感じのロック・ナンバーですが、お互いの存在を確認し合うようにダイアログを交わしながら、徐々に盛り上がってゆくというオープニングに相応しいナンバーです。2曲目は、R&Rテイスト炸裂のカールトンのソロ一枚目「夜の彷徨」収録の「ドント・ギヴ・イット・アップ」。3曲目は、同じく、「夜の彷徨」収録のバラッド・ナンバー「昨日の夢」。TOTOでは、あまり見せることのない、ルカサーの繊細が光ってます。4曲目は、マイルスの「オール・ブルース」。カールトンのスタジオ・ライブ作「ラスト・ナイト」にも収録されていた曲ですが、こちらでも、ルカサーのブルージーなアプローチが見事です。そして、ラストが、カールトンと言えばこの曲という感じの「ルーム335」。スローテンポからスタートして、リズムが入ってきてから、「あのテンポ」になるスタイルの演奏は、珍しいものではありませんが、曲頭のスロウなパートから「あの」メロディをルカサーが弾いてるんです。ここでは、ルカサーが「ネタフリ」的にメロディーやアドリブ・パートを積極的に演奏し、サビの部分で、本家の御大が、黄門様の印篭を出すが如く、ギブソンの335で登場!します。近年のカールトンといえば、頭の毛?同様、寂しいものがありましたが、ルカサーにインスパイアされた、このステージでは、70年代後半〜80年代初期の勢いが戻ってきてる感じがします。カールトン&ルカサーの「ルーム335」を聴くだけでも、このCDを買う価値は十分、あると思います。ちなみに、この「ルーム335」、演奏時間が、4分少々と短いのが気になりますが、実際のライブ演奏でもこんな感じだったので、決して編集して短くしたものではありません。サイドメンでは、ジェフ・ポーカロみたいに気持ち良く「ハネる」グレッグ・ビソネットのドラムが印象的でした。 |
etc… |
実際に見たライブのCD化だけに、本当に嬉しい1枚です。特に、ラリー・カールトン。ステージが整えば、まだまだ、このようにホットでロックな演奏が出来るんですから、次作のソロ作では、妙にスムース・ジャズを意識したような匿名的なサウンドを止めて、こんなロック&ブルースな力のある音楽を聴かせてもらいたいものです。スティーヴ・ルカサーも、
ディヴィッド・ガーフィールドとのフュージョン・ロック・ユニット「ロス・ロボトミーズ」でまた作品を作って欲しいですね。 |
Points? |
★★★★☆ |
Title/Musicians/Revel |
"The Making Of Kind Of Blue" Miles Davis (Kind Of Blue) |
Who? |
1959年に発表された「モダン・ジャズの金字塔」的存在とも言えるマイルスの「カインド・オブ・ブルー」制作のため録音されたテイクを、OKテイク、NGテイク含めてコンプリート収録したブートCD。昨年ソニー〜コロンビアで発表された「ラウンド・ミッドナイト」〜「サムディ・マイ・プリンス・ウィル・カム」までのマイルス=コルトレーンの演奏をコンプリート化した箱モノを制作中に流出したものらしい。2001年3月には、このシリーズの第二弾「メイキング・オブ・ラウンド・ミッドナイト」もリリースされるらしい。渋谷宇田川町のCD屋「マザーズ」で入手可能。 |
With? |
ビル・エヴァンス、ウィントン・ケリー(p) ジョン・コルトレーン(ts) キャノンボール・アダレイ(as) ポール・チェンバース(b) ジミー・コブ(ds) |
Reflection? |
2001年1月のレビューで紹介した「アンノウン・セッションズ Vol.1」と並んで、中山康樹氏の「マイルスを聴け!2001」で絶賛されていた「新着」ブートのひとつ。収録されているものは、トラック1に「フレディ・フリローダー」「ソー・ホワット」「ブルー・イン・グリーン」が(1959年3月2日午後2時半〜5時半 7時〜10時)、トラック2には、「フラメンコ・スケッチズ」と「オール・ブルース」が(1959年4月22日午後2時半〜5時半)、それぞれ途中で終ってる不完全なNGテイクと正規盤にも収録されてるOKテイクが録音順に入っています。まぁ聴く前には、あの名盤の録音風景がコンプリートで入ってる!ということで、えらく興奮しながら、聴き始めましたが…。聴き終った後は、「あぁ…こんなもん??」というのが正直な感想です。そんな中、新たな発見も何点かはありました。例えば、「フレディ・フリーローダー」。「ソー・ホワット」などの、いわゆる「モーダル」なサウンドがメインの作品の中では、一番コンサーヴァティヴな雰囲気を持つハーモニー部分を何度も録リなおすなど、この曲への意外?とも言えるこだわりを感じます。また「フラメンコ・スケッチズ」。レナード・バーンスタインの「サム・アザー・タイム」〜ビル・エヴァンスの「ピース・ピース」を経てマイルスの手により「フラメンコ・スケッチズ」に生まれ変わったこの曲のメロディーやピアノのバッキングをいろいろ試していて、「モード」的な技法に一番こだわった曲ではないかと思います。「フラメンコ〜」は、CDバージョンの他に、もう1バージョン収録されていて、一瞬「おぉっ!」と思いましたが、よく考えて見ると、このバージョン、例の箱モノや、現在の「カインド・オブ・ブルー」には追加されてるものでした…。まぁ…もしちゃんとした形での、別テイクや未発表曲があれば、箱モノに収録されてるはずで、ここでのNGテイクは、いくら世界初登場とは言っても、所詮「残りカス」みたいなものです。その他の曲では、比較的楽に、録音されているような印象を受けました。 |
etc… |
はっきり言いましょう。大したものではありません。「マイルスを聴け!2001」などを読むと、そそられますが、一度聴いたら、「あぁ…こんなもん?…」と絶対になるはずです。音質も、当然、きちんとリ・マスターされてないので、最新版や箱モノに収録されてるバージョンとは、比較にならないほど良くないです。それに、これもまた1枚約4000円。「マイルス変態」以外は、「幻」として終らせるほうが賢明なブートだと思います。 |
Points? |
作品の性格上、評価不能 |
Title/Musicians/Revel |
"Kickin' It" Jeff Lorber (Samson Records) |
Who? |
70年代後半より、ジェフ・ローバー・フュージョンを結成し、その後、ソロ・アーティストやプロデューサーとしても活躍するフュージョン・キーボード奏者。プロデューサーとして、ケニーGやキャリン・ホワイト、エリック・ベネイなどの才能を開花させた功績は大きい。ノーバス、アリスタ、ワーナー、ヴァーヴ・フォーキャストなどに数多くのフュージョンの名盤を残している。 |
With? |
ジェラルド・アルブライト スティーヴ・コール ゲイリー・ミーク(sax) トニー・メイデン マイク・ランドゥ(g) アレックス・アル(b) リル・ジョン・ロバーツ(ds) レニー・カストロ(perc) サイーダ・ギャレット(vo) ジェリー・ヘイ(tp) ビル・リーセンバーク(tb) ダン・ヒギンズ(sax)… |
Reflection? |
前作は、日本のエイベックス、そして、今作は、マイナーレーベルの「サムソン」からのリリースということで、ジェフ・ローバー・フュージョン以来、シーンの中心人物であり続けたベテランも、「都落ち」状態といった感じで、何か寂しいものがありますが、実際に聴いてみると、そんなことを微塵も感じさせないなかなかのスムース・ジャズです。ジェフ・ローバーの手による打ちこみをベースに、生のベースやドラム、打楽器などをアクセントにしたグルーヴ感を上手く出したリズムも、相変わらず見事。また、良い意味での「フュージョン的」なツボを、絶妙に突いて来るメロウ&スムースなオリジナル曲など…、今まで、特に、90年代のヴァーヴ・フォーキャスト時代を上手く成熟させたような魅力は、ジェフ・ローバーならではです。また今作では、彼には珍しく?カヴァー・ソングが3曲収録されてます。チャカ・カーンの80年代初期のダンス・ヒット・ナンバー「エイント・ノー・バディ」、クルセイダースのこちらは70年代の名曲「キープ・ザット・セイム・オールド・フィーリング」、そして、ラムゼイ・ルイスの演奏で知られるソウル・ジャズの名曲「ジ・イン・クラウド」の3曲で、どれも原曲のメロディーの良さを上手く活かしたもので、特に、「キープ〜」でのメロウなローバーのローズとこれまた甘いアルブライトのサックスがたまりません。ローバーのソロは、ピアノとフェンダー・ローズが中心で、そのシンプルでメロウなタッチは、もはや「職人芸」、あのジョー・サンプルにも迫る魅力があると思います。この作品で、唯一の不満な点は、FMでのオンエアを意識したのか、ほとんどの曲のレングスが4分前後とやや物足りません。もっと聴きたい…と思っていると、いつの間にか「フェード・アウト」というのはやっぱり寂しいです。 |
etc… |
スムース・ジャズを含めて、「ジャズ系」のCDのセールスが伸び悩むというか収縮傾向にある中、ネームバリューのあるベテランとて厳しいものがあるのでしょうか。そんな厳しい中、このジェフ・ローバーの新譜ですが、変に流行を追いかけたり、浮いたヴォーカル・チューンでシングル・ヒットを狙う…みたいな「仕掛け」に頼らず、自分のルーツである「フュージョン」にこだわった所は、個人的には、高く評価したいと思います。やはり「餅は餅屋」。この手の音楽に対する経験とセンスは、超一級です。70年代〜80年代からのフュージョン・ファンには、ある種の「懐かしさ」も感じられ、特にお勧め出来ます。 |
Points? |
★★★★ |
Title/Musicians/Revel |
"Here" Dean Brown (EFA〜Victor) |
Who? |
1955年8月15日生まれのギタリスト。ジミ・ヘンに多大な影響を受け、独学でギターを習得。14歳の頃には、アマチュアながら人前で演奏するまでになっていたらしい。バークリー卒業後は、タイガー大越(tp〜我が街芦屋市の出身!)のタイガーズ・バグに参加し、プロとしてのキャリアをスタートさせる。その後、ビリー・コブハム(ds)のバンドなどにも参加し、80年代中期には、ボブ・ジェイムス(key)のグループから声がかかる。ボブ・ジェイムスを通じ、NYのコンテンポラリー・ジャズ・シーンとのコネクションが生まれ、マーカス・ミラー(b)やデビット・サンボーン(sax)での活躍が高く評価され、この初リーダー作発表へとつながって行く。ステージで、頭を振りながら、「白目をむいて」ギターを掻き鳴らすその様子は、かなり「アブナイ」。しかし、「天才的」とも言える、感覚の鋭さは、特にデビット・サンボーンなどから絶賛されている。ローランドのギターから生まれる、ジャンキイーで歪んだサウンドもファンキーで個性的。 |
With? |
リッキー・ピーターソン バーナード・ライト デロン・ジョンソン ジョージ・デューク ジョージ・ホィッティ(key) マーカス・ミラー シュクーラー・デイル (el-b) クリス・マクブライド ジェームス・ジーナス(ac-b) ウィリアム・ジュジュ・ハウス ビリー・コブハム ロッキー・ブライアント マイケル・ブランド(ds) ドン・アライアス ダニエル・サンドウィック(perc) マイケル・ブレッカー(ts) デヴィット・サンボーン アンディ・スニッツァー(as) ビル・エヴァンス(sax) ランディ・ブレッカー(tp) カトリース・バーンズ(vo)… |
Reflection? |
ディーン・ブラウンが、2年ほど前から、自主制作的に録音し続けていた作品が、リリースするレコード会社が決まったようで、やっと発売にこぎつけたようです。そんな事情もあってか、アルバム全体としてまとまりは、正直、あんまり感じられず、ファンク〜ブルース〜ロック〜ラテン…などの要素をジャズ〜フュージョンというベースに散りばめた、良くも悪くも「ごった煮」的な作品です。2曲目では、フレットレスで、3曲目では、スラップを交えたベースでメロディラインを演奏してるマーカス・ミラーや、3曲目のマーカスも参加したトラックでお馴染みのブロウを聴かせてくれるサンボーン、7曲目のややダークな感じのラテン風のトラックで、ウネウネとテナーをブロウするビル・エヴァンス、それに10曲目のベヴィーなリズムのミディアム・ファンク調の曲でファンキーなテナーを披露するマイケル・ブレッカーなどなど…、ゲスト・ミュージシャンのパフォーマンスは、期待以上のものだと思います。ディーン・ブラウンのギターも、ライブで聴かせてくれる、ジャンキーでファンキーなテイストが、スタジオ録音だからと言って、その要素が希釈されることなく、収録曲の中に詰まっている感じ。ディーンもゲスト・ミュージシャンの演奏そのものはカッコ良いんですが…。しかし…何か物足りない…というかインパクトが無い?。思うに、1曲ビートルズのカヴァーを除いて、全曲ディーン・ブラウンのオリジナル(もしくは参加メンバーとの共作)なんですが、そのオリジナル曲が、地味というかいまいち面白みに欠けているからだと思います。せっかく、面白い曲を提供できるマーカスや、ブレッカー・ブラザースのプロデューサーでもあるジョージ・ホイッティ、サンボーン・バンドの「番頭」リッキー・ピーターソンなんかも参加しているんですから、その辺に、楽曲面やアレンジなどでのサポートがあれば、もっとインパクトと深みのあるサウンドになったんじゃないかと思います。 |
etc… |
「ポスト・ハイラム・ブロック」の第一人者として、今後の活躍が大いに期待されるギタリストです。相撲とり級にまで成長してしまったあの「巨体」が災いしてか、往年のキレが無くなったハイラムに対し、感覚の鋭さや良い意味での「キレた感じ」は、今やディーン・ブラウンの方が上でしょうが、作曲やプロデュース的な才能に関しては、ハイラムの足元にも及ばない感じです。次作では、きちんとしたプロデューサーを立てて、演奏のカッコ良さだけではなく、楽曲やアルバム全体の「インパクト」や「深み」をもう少し追求して欲しいと思います。ハイラム・ブロックあたりにプロデュースを依頼するのも、良いアイディアかと思いますが…。 |
Points? |
★★★☆ |
Title/Musicians/Revel |
"Kiss In The Rain" Rick Braun (Warner Bros.) |
Who? |
Sadeのツアーのトランペッターなどを経て、スムース・ジャズ界を代表するトランペッターへ。メサ・ブルームーンや、アトランティック・ジャズなどにリーダー作を残している。今や、盟友のサックス奏者ボニー・ジェイムスとともにワーナー・ブラザースの「スムース・ジャズ部門」の看板ミュージシャン。ポップでケレン味のない雰囲気は、現代のハーブ・アルパートか?。 |
With? |
リッキー・ピーターソン ミッチェル・フォアマン デビッド・K・ウッズ(key p) ノーマン・ブラウン トニー・メイデン(g) ピーター・ホワイト(ac-g) ネイザン・イースト アレックス・アル ロベルト・ヴァリー(b) ハーヴィー・メイソン リル・ジョン・ロバーツ(ds) ポリーニョ・ダ・コスタ ルイス・コンテ(perc) スー・アン・カウエル Shai ケヴィン・レトー(vo) ユージ・グルーヴ(sax) ラリー・ウィリアムス(sax key) ジェリー・ヘイ(tp) ポール・ブラウン(programming)… |
Reflection? |
昨年リリースされたボニー・ジェイムスとの共演作「シェイク・イット・アップ」も好評だったリック・ブラウンの新作がリリースされました。プロデュースは、ボニー・ジェイムスで「大当り」したポール・ブラウンとリック・ブラウン。基本的には、ボニー・ジェイムスの諸作でお馴染みのメロウ&グルーヴなスムース・ジャズですが、リズム・セクションには、生の楽器がかなり使われている感じで、以前のサウンドよりソリッドな印象を受けました。特に、数曲で、ネイザン・イースト=ハーヴィー・メイソンという「フォープレイ」のリズム・セクションもフィーチャーされていて、「貫禄」のリズムセクションを獲たナンバーでは、サウンドのクオーリティが「ワンランク・アップ」状態です。スムース・ジャズのアルバムでは、恒例とも言えるカヴァーものですが、ニューソウル風にアレンジされたビル・ウィザースの「ユース・ミー」とR&Bコーラス・グループ「Shai」をフィーチャーしたレオン・ラッセルの「ソング・フォー・ユー」のブラコン風という2曲。またヴォーカルものは、前出のShaiフィーチャーの曲と、ジョージ・デュークの秘蔵っ子の女性ソウル・シンガー、スー・アン・カウエルをフィーチャーしたブラン・ニュー・ヘヴィーズやインコグニートを思わせるグルーヴィーな曲の2曲。その他は、リック・ブラウンやプロデューサーのポール・ブラウンの曲ですが、スムース・ジャズの王道を行くようななかなかの曲揃い、特に、4曲目のグローヴァー・ワシントンJr.にインスパイアされたミディアム・テンポのナンバーや、ラストの10曲目のチャック・マンジョーネを髣髴させるミディアム・スロウでメロディアスなナンバーが印象に残りました。 |
etc… |
全体的には、もう旬を過ぎた感もある、ベタなスムース・ジャズながら、収録されてる楽曲の良さとアレンジのセンスなどに助けられた感じです。また、スムース・ジャズと言えば、その半分以上が、サックス、そのほかでも、キーボードかギターがほとんどと言う中、トランペットのスムース・ジャズということで、その「クール」な響きはやや新鮮さも感じます。夜のドライブのクールでシルキーなBGMには、ぴったりなサウンドでしょう。 |
Points? |
★★★☆ |
Title/Musicians/Revel |
"Peace of Mind" Carmen Cuesta (Skip Records) |
Who? |
スムース系の人気ギタリスト、チャック・ローブの嫁さんのヴォーカリスト。ローブのアルバムでは、リード・ヴォーカルやコーラスなどでも活躍。スペインか何かの欧州系。ヴォーカルは、線も細く声量もあまり感じられないが、透明感と清涼感で勝負といった所。 |
With? |
チャック・ローブ(g,key,produce) ウィル・リー マーク・イーガン ティム・レフェーヴレ(b) ミッチェル・フォアマン ボブ・ジェイムス(key) ウルフガング・ハフナー(ds) デビット・チャールス(perc) ビル・エヴァンス ルー・マリーニ デヴィット・マン(sax) ティル・ブレナー(tp) トゥーツ・シールマンス(harm)… |
Reflection? |
数年前、ウィル・リーへのインタヴューの中で、「今、チャック・ローブの嫁ハンのソロ作のレコーディングを済ませてきた…」と語っていましたが、やっとその作品が完成されたようです。彼女のヴォーカルは、チャック・ローブのソロ・アルバムの中では、もうお馴染みですが、個人的には、正直そんなに魅力を感じるものではありませんでした。パット・メセニー風の曲での、ワードレス・ヴォイス的なコーラスでは、まずまずの雰囲気を出していものの、ヴォーカルものでは、線の細さと存在感の薄さを露呈していた感じでした。この初ソロ作でも、基本的には、そんな印象は変わってません。それ以上に感じるのが、収録されてる曲のインパクトの無さです。ほとんどの曲が、カーメン・クエスタやチャック・ローヴのオリジナルなんですが、地味というか曲としての魅力に乏しいものばかり、チャック・ローブのソロ作品をややフォーキーにして地味にしたような曲がほとんどです。カーメン・クエスタのヴォーカルが地味なだけに、楽曲の良さや、アレンジの妙なんかで、聴かせていかないといけないはずなのに…。そんな中、一番良かったのは、ボブ・ジェイムスのピアノをフィーチャーした、スティングのカヴァー「シェイプ・オブ・マイ・ハート」でした。もっと、このようなカヴァーものを入れたり、ヴォーカルに、ボサノヴァっぽい雰囲気もあるので、そんな雰囲気のものをもっと入れたりすると、アルバム全体のイメージも、少しは、「パッと」するものになったと思います。チャック・ローブの人脈を活かして、サポート・ミュージシャンは、結構豪華なラインナップですが、2曲目のボサノヴァっぽい感じの曲でのトゥーツ・シールマンスのハーモニカ以外は、大した演奏はやってません。トラック終了後のシークレット・トラックには、アントニオ・カルロス・ジョビンの名曲「シェガ・ジ・サウダージ」が、入っていて、ローブのアコースティック・ギターのボサノヴァ・リズムも渋く、やっと「キタ!キタ!キタ!」という感じでしたが、ヴォーカルは何と子供の声…。何で彼女がちゃんと歌わないのかな??。「トホホ…」を通り越して怒りをも覚えるエンディングでした。 |
etc… |
まぁ、全編に渡ってチャック・ローブのギターがフィーチャーされてるので、ローブのファンは、「買い」だと思いますが、その他には、誰が買うんだろう…というのが正直な感想です。「J-WAVE」開局時の10年ほど前だったら、「おしゃれ系アコースティック系ヴォーカル」という感じで売りだせたと思いますが、今は、そんな時代でもないし…。サポート・ミュージシャンの豪華さに目が眩んで、このCDに食指が伸びた人も多いかと思いますが、そんな人は、もう一度、陳列棚に戻したほうが無難だと思います。 |
Points? |
★★ |
Title/Musicians/Revel |
"As One" The Larry Goldings Trio (Palmetto Jazz) |
Who? |
80年代後半より、メイシオ・パーカー(sax)のバンドで活躍していた白人オルガン奏者。ドイツのマイナー・ミュージックや、ワーナー・ブラザースなどに多数のリーダー作を残している。オルガン奏者としてのイメージが強いが、ピアニストとしても活躍。ジミー・スミスやジャック・マクダフなどに影響を受けた、コテコテ系が主流を占めるオルガンの世界の中、 近年のラリー・ゴールディングスは、ラリー・ヤング系とも言える思索的な路線を行く。 |
With? |
ピーター・バーンスタイン(g) ビル・スチュワート(ds) |
Reflection? |
前作同様、マイナー・レーベルのパルメット・ジャズよりリリースされたラリー・コールディングスの新作ですが、前作からの流れを引き継ぐ内省的なオルガン・ジャズとなっています。「内省的」というか、地味というか、暗いというか…、オルガンものといえば、ファンキーでグルーヴィー、コテコテいうイメージが強い中、これほど沈み込んだようなオルガン・ジャズを聴いたのは初めてです。まぁ、その部分は、このトリオの個性だと思うので、良いとは思いますが、サウンドにエッジというかアクセントが無いんです。「ダラっ〜っと」…全9曲収録時間49分11秒延々と続いてゆくのは、どうかと思います。60年代のグラント・グリーンあたりに強く影響を受けたバーンスタインに、サウンドの「毒」の部分を担当させるのは、少々荷が重すぎる感じなので、ビル・スチュワートのドラムに期待することになりますが、リズムだけで、サウンドにアクセントをつけるのも、キツイでしょう…。ここは、デビット・フュージンスキーみたいな過激なギターをフィーチャーするか、コルトレーン系な個性派サックスなどを参加させるかして、ラリー・ゴールディングスのオルガンの魅力が上手く浮かび上がるように、工夫する必要があるように感じました。 |
etc… |
ラリー・ゴールディングス自身は、このトリオにこだわりを持っていて、いろいろと音楽的に探求してみたいようですが、個人的には、トリオとしては限界だと思います。我々オーディエンスに向いたベクトルを感じられる作品を是非作ってもらいたいです。 |
Points? |
★★☆ |
★は1(最悪)〜5(最高)です。
感想を書きこんでいただければ幸いです。