Swingroove Review
February 2001
Title/Musicians/Revel |
"Mister.J.P." G.M Project (Video Arts) |
Who? |
サックス奏者Kenny "G"arrettとベーシストCharnett "M"offetteのユニット。今作で通算3作目となる。 |
With? |
カルロス・マッキニー(p,key) ルイス・ヘイズ( ds) |
Reflection? |
実は、このユニットをちゃんと聴くのは初めてなんです。マンハッタン・ジャズ・クインテットなんかと同様、どうも日本制作のユニットものの作品は、何かしょっぱい感じがして食指が伸びませんでした。しかし、今作は、タイトル通り、ジャコ・パストリアスにインスパイアされた作品のようで、「ジャコの曲なら、何でも弾ける!!」と豪語するチャーネットの演奏をチェックする意味で、購入して聴いてみました。1曲目に、いきなりチャーネット作のタイトル曲「MR.J.P.」が登場。チャーネットのポロポロとしたフレットレス・ベースによるアップテンポの4ビートと8ビートが交錯する「それらしい」ナンバーで、ケニー・ギャレットのテクニカルなアルトが、チャーネットのベースと曲のモチーフを創り出してます。う〜ん、こんなことがやりたかったのか?。チャーネットのフレットレスですが、それらしい雰囲気はあるものの、ピッチの安定感や音の太さなど、「捧げる相手」とは比較にならないほどのレベルです…。やはり彼は、コントラバスで勝負すべきだと思います。1曲目を聴いて、だいたいのこの作品の雰囲気がつかめました。2曲目では、ハウス・ミュージックにインスパイアされたケニー・ギャレットのオリジナルで、なんと、ドラム・ループと、ベテラン ドラマー、ルイス・ヘイズが共演!してるユニークなもので、ヘイズのドラムも、それに負けない若々しい演奏で、曲をグルーヴされているのは、凄いことだと思います。…という感じで、作品をラストの9曲目まで、聴いてみましたが、楽曲として印象に残ったのが、最初の1曲目と2曲目だけで、後は、ジャコにインスパイアされたコンテンポラリーな演奏をやりたいのか、トラディショナルなジャズをやりたいのか、解釈に困るやや中途半端な曲が並んでいます。全曲、チャーネットやケニーなどのオリジナルで、いまいちその楽曲に魅力がないのも、サウンド全体の印象が薄い要因の一つだと思います。いっそのこと、ジャコにこだわるんだったら、ジャコの曲かジャコにちなんだ有名曲をやるのも良かったのではないかと思います。全曲に渡って、チャーネットのフレットレス・ベースとコントラバス、ケニーのアルトとソプラノ、それに若々しいルイスのドラム、ほんの少しながらケニー・カークランドを思わせるノリとタッチを持ったカルロスのピアノなど…それぞれの演奏自体は悪くないんですが、それらが合わさって1曲の楽曲となったときには、何故かイマイチになってしまう…。なんなんでしょうか?これは?。思うに、この「G.M プロジェクト」というユニットのコンセプトというか、リーダーの2人のやりたい音が、いまいちはっきりせず、「まぁ適当に、こんな感じでやっとくか」ぐらいの気構えでやってる感じがします。ケニー・ギャレットとチャーネット・モフェットという個性的で実力もあるであろうミュージシャンが真剣にやって出来たサウンドとは到底思えません。このあたりが、日本制作盤にありがちな「仕切り」の甘さが見え隠れするようです。 |
etc… |
メンバーが良いのに、この程度のサウンドとは、ほんともったいないです。しかし、チャーネット・モフェットにしても、ケニー・ギャレットにしても、ミュージシャンとしての実力ほど、彼らのリーダー作では、正直ぱっとするものが無いと思いません?。どちらも、自分のサウンドのコンセプトを上手く作品として表現するのが苦手な感じです。そんなミュージシャン2人による双頭コンボということで、この程度のサウンドが限界なんでしょうか?。チャーネット・モフェットとケニー・ギャレットの個人的なファン以外は、通過しても問題ない作品でしょう。最後にジャコ・パストリアスのファンの方は…聴かないほうがいいでしょう…。 |
Points? |
★★★ |
Title/Musicians/Revel |
"Unknown Sessions Vol.1" Miles Davis (Kind of Blue) |
Who? |
ジャズ界の「帝王」として、畏敬と恐怖、嘲笑の入り混じった複雑な思いで、1940年代後半から、鬼籍に入る1991年まで、世界の音楽ファンの耳目を釘付けにしたトランペッター。 マイルス・ディヴィス〜1991年9月28日カリフォルニア州サンタモニカの病院にて、肺炎、呼吸困難の合併症により死去。享年65歳。 |
With? |
ディヴ・リーヴマン サム・モリソン(sax) レジー・ルーカス ピート・コージー(g) マイケル・ヘンダーソン(b) アル・フォスター(ds) エムトゥーメイ(perc)アンノウン・キーボード(菊地雅章?) |
Reflection? |
名作「カインド・オブ・ブルー」の録音時の様子を、ドキュメンタリー風に収録した「メイキング・オブ・カインド・オブ・ブルー」を発表した「カインド・オブ・ブルー」レーベルより、昨年の夏あたり?にリリースされた、1973年〜76年のスタジオもの(リハーサルを含む)を集めたコンピュレーション的ブート。昨年秋に出版された、中山康樹氏著の「マイルスを聴け2001」の中で、「メイキング〜」とともに、絶賛されてたブツ。ここには、1973年7月、1975年2月、5月、1976年3月という3つの時期の録音が収録されてます。73年ものは、70年代後半、マイルス自身が出演したという(個人的には記憶にないんですが…80年代の焼酎のCFなら覚えてますが…)TDKのCFに使われていた70年代マイルスお得意のジャンキーなファンク・ナンバー「TDK ファンク」(3テイク)。75年2月ものは、「パンゲア」「アガルタ」直後の2月下旬に録音された、ピート・コージーとレジー・ルーカスのギターをフィーチャーしたマイルスのトランペット抜きのミディアム・テンポのグルーヴィーなファンク・トラック「アンタイトルド・チューン」(リハーサルと思われる)。75年5月ものは、フローティング感のあるラテン・テイストな曲「アンタイトルド・ラテン」(5テイク)。「グシャン・バシャン」のイメージの強いこの時期にしては意外なほど、シンプルでライトな雰囲気。76年3月ものは「マザー・ディアレスト・マザー」というギターとシンセをフィーチャーしたスペーシーなスロウ・ナンバーと「ジャック・ジョンソンのテーマ」風のアップ・テンポナンバー「アンタイトルド・チューン」(2テイク)。体調不良なのか、76年のものには、マイルスはトランペットを吹いておらずキーボードとコンダクトのみの参加。2テイク収録されてるアップテンポの「アンタイトルド・チューン」うちの1つには、サム・モリソンのウネウネしたソプラノが、もうひとつには、アンノウン・キーボードなる人(菊地雅章という噂?)のカッコ良いシンセ・ソロがフィーチャーされてます。全12トラック収録、70分以上の長時間収録です。73年のものは、あの時期のサウンドの典型ともいうべきもので、カッコ良いですが、新鮮さや驚きはありません。「アガ/パン」直後から、76年3月までの音源を聴くと、「ダーク・メイガス」〜「アガ/パン」あたりで、飽和したサウンドを、力強いビート感やグルーヴ感はそのままに、無駄なものを削ぎ落としてサウンドを洗練させようとしていた印象です。その印象は、ピート・コージーとレジー・ルーカスのギターをフィーチャーしたミディアム・テンポのグルーヴ・チューンや、「アンタイトルド・ラテン」で、特に強く感じます。「プラグドニッケル」あたりの60年代中期あたりからは、多彩なインプロヴィゼーションやリズムにこだわった演奏重視で、楽曲そのものには、あまりこだわりを感じませんでしたが、口ずさめそうなメロディーラインを持った「アンタイトルド・ラテン」では、再び曲やメロディーに対してもこだわりを見せつつあったのかな?と思わせます。また、その曲では、ピート・コージー&レジー・ルーカスのギターのリズムやパターンが微妙に違うテイクがあり、マイルスが、それまでのリズミックなこだわりと、メロディアスなアプローチを上手くミックスしようと、試行錯誤をしていた印象を強く持ちました。正規盤だけでは、70年代マイルスは、「アガ/パン」という2枚の日本でのライブ盤で、精魂尽き果てて、81年に復帰するまでの間は、何も無かったようにしか思えませんが、このように発掘された音源を聴くと、「アガ/パン」後の、サウンドの洗練化やメロディーへのこだわりがあったからこそ、81年に「ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン」という作品が生まれたような気がします。とにかく、収録されてる楽曲云々以上の価値を持つ、素晴らしいドキュメンタリー作です。 |
etc… |
「カインド・オブ・ブルー」レーベルの商品は、渋谷の某ショップの専売商品のようです。噂ではCD‐Rと言われてますが、一応はプレスものです。このVOL.2もすでに発売されてますが、収録時間も40分足らず、収録曲も2曲×2テイクというものなので、、まずは、ここで紹介したVOL.1を入手されることをお勧めします。1枚、約4000円とマニア心を煽った「ぼったくり」的な値付けながら、これに関しては、その価格以上の価値をもつアーティスティックなドキュメンタリー作だと思います。 |
Points? |
作品の性格上、評価不能。 |
Title/Musicians/Revel |
"Johnny Griffin & Steve Grossman Quintet " (Dreyfus) |
Who? |
コルトレーンやハンク・モブレーとテナー・バトルを繰り広げた1957年のブルーノートの名盤「ア・ブロウウィング・セッション」でお馴染みの「リトル・ジャイアント」ジョニー・グリフィンと、70年代初期から、マイルスやエルヴィン・ジョーンズのバンドに参加しているコルトレーン派テナー奏者スティーヴ・グロスマンの双頭コンボ。両者とも、欧州移住組。 |
With? |
マイケル・ワイス(p) ピエール・ミシェーロ(b) アルヴィン・クイーン(ds) |
Reflection? |
もし、時空を越えて、このセッションが50年代に行われてれば、まさに「火を吹くようなテナー・バトル」になっていたはずですが、録音されたのは、世紀末の2000年5月(パリ)ということで、2人の「ベテラン度」を考えると、そんな「熱さ」はあまり期待しませんでした。しかし、実際に聴いてみると、表面的で奇抜な熱さは感じられませんが、50年代のジャズを慈しみ、「あの頃」のホットなジャズをなんとか蘇らせてやりたい、という「熱い」想いが伝わってくるサウンドです。そのあたりは、4曲目収録のジジ・グライスの「ニカズ・テンポ」を聴けば良く分かると思います。その他の曲も、グロスマンやグリフィンのオリジナル中心ですが、1曲目のグロスマンらしい力強いバピッシュなテーマを持ったカッコイイ、アップテンポのナンバーや、3曲目のグリフィンの素晴らしいバラッドなど…ジャズの魅力を凝縮したようなイイ曲ばかりです。2人のテナー奏者ですが、特に素晴らしいのがグリフィンです。グロスマンは、70年代の鋭角的な演奏から、80年代以降、角が取れて歌心と円熟味を感じさせるものとなりましたが、ここでの演奏もその延長線上にあるもので、良いパフォーマンスですが、新鮮さや驚きはありません。一方のグリフィンですが、円熟したとはいえ、まだまだアグレッシヴさを残すグロスマンと対等にバトル、いやいや、場面によっては、グロスマンを食うほどの若々しい演奏に、びっくりしてしまいました。堂々とした音で、良い意味で「吹き流している」グリフィンは、まさに「リトル・ジャイント」の貫禄十分で、さすがのグロスマンも、その存在の大きさに、思わず、1歩身を引いた?感じでしょうか。フロント・ラインの2人同様、欧州移住組のアルヴィン・クイーンの50年代ジャズの熱さを髣髴させるドラムや、バピッシュなツボを心得たバッキング&サポートで、サウンドをより芳醇なものにしているマイケル・ワイスのピアノも、こっそりと?チェックしておきたい所です。 |
etc… |
無機的な理屈を振りかざした「新しさ」だけを売り物にしたジャズしか評価されない今のアメリカのジャズに対する、痛烈なアンチテーゼ的な作品だと思います。どうもアメリカ(日本もそうかも…)のジャズ界は、極端なようで、ジャズの伝統といえば、ウィントンのように19世紀にまでさかのぼりだすし、新しい音といえば、頭でっかちの小手先だけのサウンドが出てくる…といった感じで、現代のジャズの本当のルーツである40年代後期〜50年代にかけての「ビ・バップ」〜「ハード・バップ」にかけてのジャズが、正当に評価されているとは言い難いと思います。そんな頃のジャズを、上手く「トリビュート」した素晴らしい作品だと思いますが、これをフランスのレーベルで、ヨーロッパに移住したアメリカ人が録音していると言うのは、なんとも複雑な印象です。アメリカのジャズ・シーンは、やはりもうダメなのでしょうか…。 |
Points? |
★★★★☆ |
Title/Musicians/Revel |
"Sketches Of James " Various artists (KOCH JAZZ) |
Who? |
LAのギタリスト、ティム・ウェストンがプロデュースした、シンガー・ソング・ライターのジェームス・テイラー(クール&ザ・ギャングのジェームス・JT・テイラーとはちゃいます…)をトリビュートしたコンピュレーション作品。 |
With? |
参加ミュージシャン〜 タワー・オブ・パワー ニューヨーク・ヴォイセス、レス・マッキャン(vo) ジェラルド・アルブライト(sax) ミッチェル・フォアマン(p) フローラ・プリム(vo)&アイアート・モレイラ(perc) ロベン・フォード(g,vo) オスカー・カストロ・ネヴェス(b) ポンチョ・サンチェス(perc) シャーリー・ホーン(vo) |
Reflection? |
シンガー・ソング・ライターのジェイムス・テイラーといえば、ジャズ〜フュージョンのファンにも、70年代の名曲「ドント・レット・ビー・ロンリー・トゥナイト」でマイケル・ブレッカーが、メロウで素晴らしいテナーを披露しているとか、長年にわたって彼のツアー・バンドのミュージカル・ディレクターをドン・グロルニック(key)がやってたとか、今年の夏〜秋に発売予定のマイケル・ブレッカーのバラードアルバム(参加メンバーは、ハービー・ハンコック、パット・メセニー、チャーリー・ヘイデン、ジャック・デジョネット)に、ゲスト・ヴォーカリストで参加するらしい…などなどで結構知られた存在ではないでしょうか。ただ、今何故、彼をトリビュートする作品を作る意味があるのか?や、参加ミュージシャンのうちの何人かは、どうしても、ジェームス・テイラーとイメージ的に結びつかない?など、疑問も多い作品ながら、タワー・オブ・パワー、ミッチェル・フォアマン、ジェラルド・アルブライト、ロベン・フォードなどの演奏が気になり、結局購入しました。全曲を通して聴いてみた感想ですが、まぁジェームス・テイラーをトリビュート云々…というより、演奏する曲の「お題」が彼の曲だっただけという感じで、それぞれのミュージシャンが、自分のスタイルで好き勝手にやってるようです。従って、作品トータルのイメージはバラバラです。そんな中、面白かったバージョンをいくつかご紹介しておきましょう。例のホーン・セクションをバックにブルージーなカヴァーを披露したTOPの「スティーム・ローラー」。ロベン・フォードのリード・ギター、デヴィット・T・ウォーカーのリズム・ギターをフィーチャーし、渋くブルースしてるレス・マッキャンの「ノーバディ・バット・ユー」。パトリース・ラッシェン(p)エイブ・ラボリエル(b)ポール・ジャクソンJr(g)アレックス・アクーニャ(perc)ランド・リチャーズ(ds)をバックに、LAフュージョンの魅力の極みを感じさせるジェラルド・アルブライトの「ユア・スマイリング・フェイス」。透明感のあるピアノ・トリオで聴かせるミッチェル・フォアマンの「サムシング・イン・ザ・ウェイ・シー・ムーヴス」。ラッセル・フェランテ(key)ジミー・ヘイスリップ(b)ゲイリー・ノヴァック(ds)をバックに、「ブルーライン」のような雰囲気で聴かせるロベン・フォードの「ユー・メイク・イット・イージー」など…。このあたりが、気に入ったあたりです。逆に、その他は、なんでジェームス・テイラーの曲やんの?みたいな感じで、特に、フローラ・プリム&アイアートやポンチョ・サンチェスなどの演奏で違和感がありました。 |
etc… |
正直、良く分からない作品です。上でコメントしたように、1曲単位では、そこそこ良いものはあるものの、それらのためだけに、CD1枚を買うのもどうかな??という感じです。結局、トリビュート作品というのは、企画や参加する面子、それにトリビュートする人への敬意や熱意などを、相当つめておかないと、この作品のように中途半端、意味不明のものになると言うことでしょう。 |
Points? |
★★☆ |
Title/Musicians/Revel |
"In A Heartbeat" Chuck Loeb (Shanachie) |
Who? |
80年代初頭から、スタン・ゲッツのグループで活動。その後、ステップス・アヘッドやビル・エヴァンス(sax)グループなどにも参加。ギタリストとして食えない頃は、CNNなどのステーションや番組のジングルなども制作してたらしい。ソロ・デビュー作は、日本のジャズ・シティー盤(1987年)で、ピアノ/キーボードには、小曽根真も参加していた。dmpやシャナキーに多数のリーダー作を残している。近年は、NYのスムース・ジャズ界の重鎮として、プロデューサーとしても活躍。ギタリストとしての個性は、そんなに強くないが、プロデューサー的な才能を活かし、4ビート・ジャズから、ブラコン〜ロックまで、シーンや楽曲にあわせたセンスの良いサウンドが出せるのは見事。 |
With? |
ウルフガング・ハフナー ヴィニー・カリウタ(ds) ジェリー・ブルックス、ロン・ジェンキンス、ウィル・リー、マーク・イーガン(b) マイク・リクイッチ、ジョン・ワーキング(key) ネスター・トーレス(fl) アンディ・スニッツァー、デヴィット・マン、トニー・ラカートス、キム・ウォータース、ウォルター・ヴィーズリー(sax) ジム・ピュー(tb) デヴィット・チャールス(perc) カーメン・クエスタ(vo)… |
Reflection? |
いつの間にか、NYのスムース・ジャズ・シーンを代表する存在にまで成長したギタリスト、チャック・ローブ。80年代半ば頃までは、無骨で淡白なジャズ・フュージョン系ギタリストといった感じでしたが、「スムース・ジャズ」のムーブメントが起こりつつあった90年代初期に、dmpからシャナキーへと移籍したあたりから、無骨だったサウンドがスムースに洗練されてゆき、それが成功の大きな要因になった感じです。さて99年の「リッスン」以来2年振りの今回の新作ですが、今までのシャナキー移籍後の路線を継承するスムース・ジャズ・スタイルの作品です。1曲目の少しジャジーな雰囲気のリトナーの「ウェス・バウンド」みたいなサウンドを聴くと、少し路線変更かな?と思わせますが、トラックを進めてゆくと、スムース&メロウないつものサウンドです。少し変わったかな?と思わせるポイントは、「夜っぽい」ブラコン調の曲が減り、1曲目や10曲目のようなジャジーな曲があったり、dmp時代のようなフォーク/ロック系のテイストの曲が増えたり、ホーンセクションをフィーチャーした曲が加わったりしたあたりでしょうか。印象的な曲は、やはり楽曲の良いカヴァー・ナンバーで、7曲目収録の嫁さんのカーメン・クエスタをフィーチャーしたアコースティックでフォーキーな雰囲気のドン・マクリーンのカヴァー「ヴィンセント」や9曲目収録のスティーヴン・ビショップの「オン・アンド・オン」とブルース・スプリングスティーンの「ファイアー」をメドレーにした曲が、ほっこりと和めました。その他の曲も、「これはっ!」というインプレッシヴな曲は無いものの、丁寧に作られた感のある上質なスムース・ジャズなので、この種のサウンドを期待するファンの耳を裏切ることは無いでしょう。クレジット上は、結構豪華なサポート・メンバーが参加していますが、あくまでもチャック・ローブの音楽の一部でしかないので、派手な活躍を期待すると拍子抜けしてしまいます。 |
etc… |
全体的なサウンドは、やや退屈なスムース・ジャズといった感じですが、丁寧なサウンド作りに関しては評価出来ると思います。フュージョンは、90年代、「スムース・ジャズ」という名前で何とか生き延びてきましたが、もうそろそろ、その神通力も通用しなくなってきてるようです。21世紀のフュージョンは、一体どんな形で生き延びるのでしょうか?。 |
Points? |
★★★ |
Title/Musicians/Revel |
"Document" Karizma (Ulftone Music www.ulftone.com) |
Who? |
80年代初めに、キーボード奏者デヴィツド・ガーフィールドが、ベーシスト、ディーン・コルテスらと結成したフュージョン・ユニット。現在は、ガーフィールド個人のユニットで、その他のメンバーは、作品毎に異なっている。80年代後半、日本のアルファ・ムーンレコード(現イースト・ウェスト)のレーベル「ベイクド・ポテト」から、故カルロス・ヴェガ(ds)レニー・カストロ(perc)ネイザン・イースト(b)マイク・ランドゥ、スティーヴ・ルカサー(g)らをフィーチャーした「キューバ」や「オール・ザ・ウェイ・ライブ」などを発表し話題となった。今では、数少ない存在となったLAで活動するフュージョン系レギュラーユニット。 |
With? |
デヴィッド・ガーフィールド(key) マイク・ランドゥ(g) ニール・ステューベンハウス(b) ヴィニー・カリウタ(ds) |
Reflection? |
昨年、日本のAOR系インディ・レーベル「クール・サウンド」を通じて、ガーフィールド個人名義のソロアルバムは、発表されていましたが、カリズマとしては、90年代初頭以来、約10年振りとなる作品です。録音は、昨年4月にドイツとデンマークでライブ・シューティングされたもので、ドイツのマイナー・レーベルからのリリースとなっています。グループ結成以来、打楽器を多用した「ラテン・フュージョン」的なイメージの強かったカリズマですが、今作では、そんなイメージを一新するソリッドなフュージョン作となっています。いつもなら、レニー・カストロら、打楽器奏者がレギュラー的にグループに参加してましたが、ここでは、キーボード=ギター=ベース=ドラムだけで勝負。LAで超一流のスタジオ・ミュージシャンとしても活躍しているメンバー達が、自分達のやりたいことや主張を思いっきり出し切った感じのする「男らしい」フュージョンです。演奏されてる曲も、以前のカリズマのように、キャッチーなポップさを優先したような曲は無く、ウェザー・リポートで知られる、ウェイン・ショーター作の「パラディウム」やマイケル・ブレッカーのファースト・アルバムに収録されていた、ドン・グローニックの「ナッシング・パーソナル」など、かつてのカリズマでは想像出来なかったような収録されており、それらの曲では、特に、メンバー全員の超「バカテク」振りが大きくフィーチャーされてます。「ナッシング〜」のコンテンポラリーな4ビートなリズムでの、ランドゥのギターがハマっていたのは、少々意外でした。しかし、カリズマのファースト作に入っていた「ヘヴィー・レジン」や、ジェームス・ニュートン・ハワード(key)のシェフィールド・ラボ盤や、ガーフィールドが中心となったジェフ・ポーカロのトリビュート盤などにも収録されていたデヴィッド・ペイチ作の「Eマイナー・シャッフル」といった「LAフュージョン」的な曲も演ってますので、かつてのカリズマのファンも十分に楽しめると思います。とにかく、メンバー全員の演奏が「凄い」のですが、その中でも、特に存在感を大きくアピールしているのが、ヴィニー・カリウタとマイク・ランドゥです。ジェフ・ポーカロを思わせるシャッフル的に「跳ねる」感覚と、ビリー・コブハム的ワイルドさと手数の豊富さを合わせ持ったヴィニーのドラム。スティーヴ・ルカサーをセンシティブにして、微妙なよじれ感をプラスしたディストーション・ギターが快感なランドゥのギター。そんな彼らの魅力が、このライブ盤では炸裂しています。リーダーのガーフィールドも、結構頑張っているとは思いますが、一番の役割は、自由なパフォーマンスを展開するための空間作りという側面が大きいと思います。 |
etc… |
収録曲がすべて7分以上、一番長いもので14分ちょっとという、聴き応え感十分のフュージョン・ライブの傑作です。このメンバーでの来日公演を熱望します。絶対「生」はマジでもっと凄いはずです。特に、ヴィニーのタイコ。10年ほど前、チック・コリアのアコースティック・バンドのライブを大阪ブルーノートで見ましたが、その音の大きさと迫力には、正直、驚かされました。(他のメンバーは、チック(p) ジョン・パティトゥッチ(b))。 |
Points? |
★★★★☆ |
★は1(最悪)〜5(最高)です。
感想を書きこんでいただければ幸いです。