Swingroove Review

January 2001



Title/Musicians/Revel

"The Staff"  (Pionner)

Who?

 ウェザー・リポートからリー・リトナー、渡辺貞夫、それからエイブ・ラボリエルとの双頭バンド「コイノニア」などでの活動で知られる、ペルー出身の打楽器奏者アレックス・アクーニャや、LAのトップ・セッション・ギタリスト、ポール・ジャクソンJrらによるフュージョン・ユニット。アレックス・アクーニャは、ベースのジョン・ペイニャらと、「アンノウンズ」なるグループも結成し1枚CDも発表。また昨年には、プリミティヴな打楽器を前面に押しだしたソロ作も発表している。インスト中心なので、あまり関係ないが、コンセプトは、「ジーザス・クライスト」のゴスペル。そう言えば、「コイノニア」もそんな感じだったかなぁ。
 そうそうポール・ジャクソンJrも、今年の2月に久し振りのリーダー作を米ブルーノートよりリリース予定です。

With?

The Staff〜アレックス・アクーニャ(ds,perc) ガスタボ・エラーソ(b) ポール・ジャクソンJr(g) ジョン・ストッダート(key) 
スペシャル・ゲスト〜カーク・ウェイラム(sax) シーラ E(perc) ケヴィン・ウェイラム(vo)

Reflection?

 どっかのレコード店の広告に「スタッフ」の新譜リリース予定!とあり、エリック・ゲイル(g)もリチャード・ティー(p)もいないのに…どないすんねん??と思いましたが、スタッフはスタッフでもあの「STUFF」ではなく、こっちの「STAFF」でした。少しがっかりましたが、面子には、アレックス・アクーニャやポール・ジャクソンJr、カーク・ウェイラムなどが名を連ねており、気をとりなおして?購入しました。サウンドの方ですが、ほとんど打ちこみの無い軽快なLAフュージョンといった感じ。アレックス・アクーニャが参加していると言うことで、もっとラテン色の濃いサウンドが想像されましたが、ライトなブラジル風のサウンドはあるものの、全体的には、手弾きのスムース・ジャズです。特別のインパクトや刺激は皆無ながら、今の時代に、こんな素朴なLAフュージョンをやってるという嬉しさはありました。メンバーでは、ポール・ジャクソンJrのカラカラに乾いた心地よい16ビートのリズム・ギターや、どんなシーンでも常にソウルフルでハートウォームなサウンドを聞かせてくれるカーク・ウェイラムが活躍してます。無名のベース&キーボードですが、サポートメンバーとして聴けば、そこそこですが、ジャクソンやウェイラム、アクーニャと対等に演奏するには、迫力が全然足りません。

etc…

 打ちこみ全盛のスムース・ジャズの中、手弾きでこんなサウンドをやってるのは、やっぱり評価したいです。特に、ポール・ジャクソンJrのギターのファンは、要チェックです。R&B的なグルーヴを活かしたサウンドにするか、ラテン的なサウンドにするのか、そのあたりがもう少し明確になっていれば、もっと音楽にめりはりというかうねりが出たと思います。
2001 1.5 Update

Points?

★★★


Title/Musicians/Revel

"Teen Town" Manhattan Jazz Quintet (Video Arts)

Who?

 1984年に、デヴィット・マシューズ(p) ルー・ソロフ(tp) ジョージ・ヤング(ts) チャーネット・モフェット(b) スティーヴ・ガッド(ds)というメンバーで、日本のキング・レコードよりデビューした「国内産」のジャズ・コンボ。80年代には、このグループのジャズが面白いvs面白くないという論争も巻き起こった。その後、リズム・セクションは、幾度となくチェンジしたもの、マシューズとフロントの2管の面子は不動だったが、ヤングの西海岸移住により、今作からテナーがロックやスムース・ジャズでも活躍する若手〜中堅白人、アンディ・スニッツァーにチェンジ。グループに新しい血を入れて延命策を計っている感じか。

With?

デヴィット・マシューズ(p) ルー・ソロフ(tp) アンディ・スニッツァー(ts) チャーネット・モフェット(b) ヴィクター・ルイス(ds)

Reflection?

 このマンハッタン・ジャズ・クインテットというユニットは、正直言うとあんまり好きではありません。理由その一、デヴィット・マシューズのいかにも「ジャズらしくしましたよ」的なわざとらしいアレンジが嫌い。その二、マシューズのピアノも嫌い。その三、その一にも通じるものですが、日本人向けのフランス料理やイタリア料理、中華料理みたいな、いんちき臭さを感じてしまう、…嫌いな所はたくさんありますが、要は、このユニットのリーダーである、マシューズが嫌なんですね。CTIのアレンジャー時代から、ドン・セベスキーと同様、大袈裟なオーケストレーションと、ダサダサのリズム・アレンジには、我慢なりませんでした。さてさて、今回ですが、目玉は、新加入のアンディ・スニッツァーです。ワーナーから二枚、マイナーレーベルから一枚と計三枚のリーダー作を発表しているスニッツァーですが、いずれの作品もスムース作で、トラディショナルなジャズを披露している作品は、少なかったので、ここでのジャズ演奏が多いに期待されました。マイケル・ブレッカーをポップにしてシンプルにして、デヴィット・サンボーンの泣きをかぶせたような?芸風のスニッツァーですが、今回の作品の70年代ソウル的なテーマにハマッた感じです。一曲目のマシューズ作のハードバップのお手本みたいなアップ・テンポのトラックでの、ゴリゴリと疾走してゆく真正ハード・バッパー的な演奏も良いですが、三曲目のイントロでのチャーネット・モフェットのコントラバスによる「あのフレーズ」が超ご機嫌なジャコの「ティーン・タウン」や4曲目のウェスの「ロード・ソング」5曲目のスティーヴィーの「アイ・ウッシュ」などの、70年代のCTI的なサウンドでのポップなファンキーさにゴリゴリ感というエッジを加えたテナーは、かなりカッコ良いものです。マイケル・ブレッカーと比較すると、マイケルは、どんな場所でも確実にイカせてくれるのに対し、アンディの方は、イキそうでイカない中途半端な所もありますが、音の太さと迷いの無い堂々とした演奏を聴いていると、そんなネガティヴな部分は、今後の経験と実績で、テイクオーバーしてくれるはずです。ここまで、アンディー・スニッツァーのパートしかコメントしてませんが、正直、この作品で、印象に残るのは、彼のテナーだけなんです。ルイス=モフェットのリズムは、鋭さや刺激は無いものの、良い意味でジャズらしくよたった感じで悪くは無いですが、ソロフのトランペットは相変わらずのワンパターン、マシューズのわざとらしさも健在…と良くも悪くも「マンハッタン・ジャズ・クインテット」のパーソナリティーは、継承されてます…。新加入のスニッツァーを除いては。2000年8月NY録音。

etc…

 ピアノを若手〜中堅のラリー・ゴールディングスやケヴィン・ヘイズ、ディヴ・キコスキーあたりにチェンジすると、さぞ素晴らしいユニットになるでしょう。でもこうすると、もはや「マンハッタン・ジャズ・クインテット」では無くなると思いますが…。サウンドの焦点を、テナーのアンディ・スニッツァーに絞り、「アンディ・スニッツァー・クインテット」として聴けば、結構楽しめる作品だと思います。
2000 1.5 Update

Points?

★★★☆


Title/Musicians/Revel

"Matthew Garrison" Matthew Garrison ( GJP)

Who?

 名前からも想像出来る通り、60年代のコルトレーンのカルテットで名前を残した偉大なベーシスト、ジミー・ギャリソンの息子。ザヴォヌル・シンジケートやジョン・マクラフリンなどでの活躍で知られる。ジャコ〜ビクター・ベイリー的な流れを汲む若手ベーシストの期待の星。

With?

スコット・キンゼイ(key) デヴィット・ギルモア アダム・ロジャース モーディー・ファーバー(g) ジーン・レイク ベン・ペロウスキー(ds) アート・タンクボヤチアン(perc) デヴィット・バイニー(sax)…

Reflection?

 ザヴィヌル・シンジケートへの参加や、最近、ウェザー色を強めてる感じのスコット・ヘンダーソン=ゲイリー・ウィリスのトライバル・テックのブレーンのキーボード奏者スコット・キンゼイが参加していることから、ウェザー〜ザヴィヌル・シンジケート的なサウンドの匂いをまず感じました。ただそのサウンドを模倣しているのではなく、シタールや、アコーディオン、各種打楽器、ヴォイスなどを使ったスペーシーなサウンドメイクに強い影響を受けている感じで、音楽的主張は、ちゃんとベースでやってます。サウンド的には、ギターのアダム・ロジャースや、デヴィット・ギルモア、キーボードのスコット・キンゼイ、ドラムのジーン・レイク/ベン・ペロウスキーをフィーチャーしたリズムを強調した「バンドもの」とヴォイスや打楽器などとの「デュオ」っぽいものの2つに分かれてる感じです。ベースの特徴は、ボトムのベース・ラインのパートでは、線を細くしたヴィクター・ベイリーみたいですが、メロディを奏でるサウンドは、いわゆるベース・ギター的な演奏で、話題のリチャード・ボナにも勝るとも劣らない素晴らしさです。その繊細さを感じるベース・ソロからは、派手さはないものの、しっかりとした「ソウル」を実感することが出来ます。ジャコの影響を受けながら、モノマネの終ることなく、ベースを正面に据えた新しいサウンドを模索する姿勢は、評価できるものだと思います。また1曲では、3分弱の小曲ながら、コントラバスも披露しており、偉大な親父と比較されるのは辛いとは思いますが、そっちの方ももっと聴かせて欲しい感じです。

etc…

 ベースだけでなく、キーボードやリズムのプログラミングなども手掛けるギャリソンは、ジョー・ザヴィヌルや、ジョン・マクラフリリンのような、サウンド全体で自分の音楽や信念を伝えてゆくタイプのミュージシャンのようです。このほぼ自主制作なファースト作では、今の自分のやりたい音楽や表現したい音を、同じマインドを持つミュージシャン達と自由に作ったような印象で、結果的に、ザヴィヌルやマクラフリンのサウンドに酷似してしまったのは、いかに彼等の影響が大きいかを示している所でしょう。この作品では、まだまだ未完成ながら、21世紀のウェザー・リポートのサウンドの胎動が感じられるはずです。
2000 1.5 Update

Points?

★★★☆



Title/Musicians/Revel

"Full Metal Quartet" (Owl)

Who?

フランスのピアニスト、エリック・ワトソンが中心となったユニット。エリック・ワトソンは、仏OWLなどに硬質なリーダー作を残している。

With?

エリック・ワトソン(p) エド・シグペン(ds) マーク・ドレッサー(b) ベニー・ウォレス(sax)

Reflection?

 参加メンバーに、結構、前衛的なイメージの強いピアノのワトソンや、ベースのマーク・ドレッサーが入っているということで、かなりフリーキーなサウンドを予想しました。しかし、ちょっと待てよ!。ドラムには、オスカー・ピーターソンなどとの共演でもお馴染みのベテラン、エド・シグペンがいるぞ。それに、サックスは、コルトレーン〜アーチー・シェップ ラインから、ニューオーリンズ・ファンクまでこなす、ベニー・ウォレス(ウォレスは、あるインタビューで、大きな影響を受けたサックス奏者として、アーチー・シェップの名前を上げてました)?。実際に聴くまで、どんなジャズをやってるのか、想像つきませんでした。この「フル・メタル・ジャケット」をパロったと想像できるユニットでは、リーダーの作曲した組曲が演奏されてます。組曲といっても、クラシック的な組曲では無く、それぞれの曲は独立しており、時折、同じ曲のモチーフが登場するくらいなので、言われてみないと、組曲であるということを意識することは少ないはずです。イメージ的には、かなり難解なサウンドを予想していたのですが、ドラムに、トラディショナルな超ベテラン、エド・シグペンが参加しているということで、4ビートを基本にした、予想よりもはるかに「普通」のジャズでした。ウォレスのフリーキーなソロや、ドレッサーのアグレッシヴなコントラバスのアルコ・ソロなどのパートでは、少し「それ風」の雰囲気がありますが、あくまでも全体のサウンドの中のアクセントといった感じです。硬質なタッチで、スウィングするワトソンのピアノや、近年、バラード色の強い作品の多かったウォレスの、70年代のエンヤ時代を思わせる、アグレッシヴでパワフルなテナーも、聴き応え十分でした。リーダーのワトソンを初めとする、ウォレス、ドレッサーなどの、一流のインプロヴァイザーの妙技が楽しめる硬派なジャズといった感じでしょうか。

etc…

 個人的には、ウォレス目当てで購入しましたが、正解でした。80年代の新生ブルーノート以降は、保守的な活動が多かったウォレスですが、久々にアグレッシヴにキレるブロウを聴いた感じです。べニー・ウォレスのファンは、必聴作ではないでしょうか。
1.25 Update

Points?

★★★☆


Title/Musicians/Revel

"Works For Me" John Scofield (Verve)

Who?

 60年代より、ウィルソン・ピケットなどのR&Bシーンで活動。バークリーを経て、70年代中期、チェット・ベイカーのバックで初レコーディング。その後、フュージョン系グループ、コブハム(ds)=デューク(key)バンドに参加。初リーダー作は、日野皓正のバンドで来日した際に、弟の故元彦らと作った77年のトリオ制作盤。ディブ・リーブマンや日野皓正のサポートを経て、83年に、マイルス・ディヴィスのグループに参加、その人気を不動のものとする。リーダー作は、70年代は、エンヤ、80年代は、グラマヴィジョン〜ブルーノート、90年代には、ヴァーヴから多数リリース。トラディショナルなスタイルから、ファンク〜ロック〜ブルース、それに最近は、ジャム・バンド・スタイルまで、形式にこだわらないヴァーサイタルな活動の力の源は、マイルスとの活動から得られたものに違いない。鋭角的で、引きつった感じのトリッキーなフレーズがトレードマークだったが、90年代以降あたりから、トリッキーさが影を潜めて、その演奏に、味と説得力が増した感じ。パット・メセニーと並ぶ、コンテンポラリー・ジャズ・ギターのリファレンス・ブック的存在。

With?

ブラッド・メルドー(p) ケニー・ギャレット(sax) クリス・マクブライド(b) ビリー・ヒギンズ(ds)

Reflection?

 前作、前々作と、60年代後半〜70年代初期のジャズ・ロック的なテイストの「ジャム・バンド」スタイルの作品を発表していたジョン・スコですが、この新作は、「表面上」はアコースティック・ジャズ・スタイルの作品となりました。宣伝文句には、「ジョン・スコがジャズに帰ってきた!…」などと、大袈裟なコピーが踊ってますが、ジョン・スコが、どっかに行って訳でもなく、ジョン・スコは、ジョン・スコ、彼はずっと、「ここ」にいた訳で、「帰ってきた〜」という表現はどうかと思います。また、「表面上」アコースティック・ジャズ〜とコメントしてますが、ジャム・バンドの若い連中たちとの経験から得たものを捨て去った訳ではなく、そのシンプルなグルーヴ感やポップさを踏まえた上で、今のジョン・スコの考えるジャズをパッケージしたような作品なので、アコースティックがどうのこうのや、トラディショナルがどうだの、ということは無意味のような気がします。「今のジョン・スコフィールドのジャズ」これが、すべてだと思います。過去のブルーノート時代などのジャズと比べての一番の違いは、サウンドの分かり易さと、しなやかさにあると思います。全曲(一部参加メンバーとの共作)ジョン・スコのペンによるオリジナルなんですが、演奏の為の楽曲というものは少なく、特にピアノとギターのハーモニーがユニークな聴きやすいジャズに仕上がってます。若手のマクブライド、ベテランのヒギンズというリズムも、絶妙で、現代的なハーモニーを持つジャズに、伝統的なジャズの良さともいうべき、リズムのボトムに、安定感というか安心感を与えてます。ピアノのブラッド・メルドーの参加は、特に素晴らしく、70年代のエンヤ盤での、ハル・ギャルパーやリッチー・バイラークとの共演にも通じるスリリングなテンションを感じさせてくれます。ジョン・スコとメルドーによる表裏一体のギターとピアノの絡みは、歴史的共演といっても過言ではない素晴らしさだと思います。逆に?なのが、サックスのケニー・ギャレットです。ギャレットの演奏自体に問題があるのではなく、この作品に参加させた意味がいまいちよくわかりません。ジョン・スコのソロ・スペースがたっぷりなのは、自己のリーダー作なので、当然ですが、その他の主なソロ・パートを、メルドーとギャレットで分けあうことになり、それぞれのソロが完全燃焼できるほどのスペースが与えれれてない感じです。メルドーは、ソロ以外でもバッキングで存在をアピール出来ますが、サックスはそう言う訳にはいかないので、ポッと出てきてパッと消えるみたいな中途半端な存在に終ってます。どうしても、ギャレットとやりたいのなら、やっぱりピアノレスでやるべきだと思います。

etc…

 「やっぱりジョン・スコは分かっていた!」これが、聴き終わったあとの素直な感想です。ジャム・バンドの有名・無名の若手から、今の空気を貪欲なまでに吸収し、自分のやりたい音に融合させて、「今」を表現して未来を見据えてゆく。この音楽の発展のさせ方は、かつてのボス、マイルス・ディヴィスと同じ手法です。2001年1月の東京〜大阪のブルーノート・ツアーでは、今やジャム・バンド・シーンの大物ドラマーとなったベン・ペロウスキーらとアグレッシヴなジャム・バンド・スタイルのパフォーマンスを披露していただけに、当分ジャム・バンド系のサウンドを指向してゆくものと思われますが、どんなサウンドをやっても大丈夫!。カッコ良いジャズは、彼に任せましょう!「ジョン・スコは信用できます」。
1.25 Update

Points?

★★★★


Title/Musicians/Revel

"Change"/"Night Life" Walk Away (Walk Away Records)

Who?

Krzysztof Zawadzki(…読めない…)というポーランド人ドラマー率いるコンテンポラリー・ジャズ・ユニット。リーダーのドラムは、力はそこそこ有りそうだが、ラフでバタバタとした印象。他のメンバーは、Janusz Skowron(key) Tomasz Grabowy(el-b)。キーボードは、大したことは無い感じだが、ベースは、ジャコ風から、NY系のペキペキ・スラップまで器用にこなすなかなかのプレーヤーみたい。このユニット自体は、「上手いアマチュア」と言った感じ。やりたい音は、ビル・エヴァンスやビクター・ベイリーあたりがやってるNY系のコンテンポラリー・ジャズか。

With?

"Changes"〜
Randy Brecker(tp) Adam Wendt(sax)
"Night Life"〜
Dean Brown(g) Bill Evans(sax)

Reflection?

 渋谷のディスク・ユニオンの地下に入って突き当たりの角左側のフュージョン・コーナー(行ったことのない方すんません…)に、2枚、アルバム・タイトルなのか、グループ名なのか良く分からないCDがディスプレイされてました。通りすぎようとした時、「チェンジズ」という作品には、スペシャル・ゲスト、ランディ・ブレッカー、「ナイトライフ」には、ビル・エヴァンスとディーン・ブラウンのクレジットを発見!。聞いたことも無いグループで、どんな音をやってるかも分からないので、通過しようと思ったのですが、もし、こんな超マイナー盤、2度と手に入らないかも、内容が良かったらどうしよう…と迷いだし、結局、2枚とも購入しました。まず、「チェンジズ」の方から。こちらは、1997年7月ワルシャワのジャズ・クラブでのライブ録音。ランディ・ブレッカーが全曲に参加してます。収録曲も「The Sleaze Factor」や「Four Words」といった96年のランディのブラジリアン・テイストなソロ・アルバム「イントゥ・ザ・サン」に入ってる曲をやっているなど、ランディ・ブレッカーのソロ的な色合いの強いステージです。他にも、ジャコのファンキーな「Chicken」やキース・ジャレットの「Lucky Southern」なんかもやっていて、なかなか楽しいNY系のフュージョン・サウンドと言った感じです。サックスのアダム某という人も、マイケル・ブレッカーにそっくり!。ブレッカー・ブラザースを擬似体験?出来る感じです。ランディ・ブレッカーのフュージョン系のステージは、近年、ブレッカー・ブラザース以外では、あんまり聴くことの出来ないと思いますので、その点では、貴重な作品ではないでしょうか。もう1枚の「ナイトライフ」の方は、1998年7月Lublinという所でのライブ録音。ランディ参加の方よりも、ペキペキ度の強いサウンドで、ビル・エヴァンスのソロ・ワークに近い感じです(2曲オリジナルを提供)。また、今やデヴィット・サンボーン・バンドの2代目番頭(もちろん初代は、ハイラム・ブーロック!)にまで成長したギターのディーン・ブラウンも4曲、オリジナル曲も提供して、ギターの他に、コンポーズでもサウンドに貢献してます。(余談ながら、80年代中期にボブ・ジェームス・バンドで来日した時の、ディーン・ブラウンは、演奏にキレも迫力も無く、ダサかったなぁ…)ライヴでは、白目をむいた危ない表情で、ファンキーに歪んだキレキレのギターを聴かせてくれるディーンの危険な?ギターを堪能させてくれます。(2001年2月リリース予定のディーンの初リーダー作も楽しみです。)ディーン・ブラウンとビル・エヴァンスの双頭バンドともいうべき、このサウンドは、今では、ややレアな存在となった、NY系のソリッドなフュージョン・サウンドの魅力を伝えてくれる貴重な存在といえるでしょう。

etc…

 「チェンジズ」は、ランディ・ブレッカーのファン、「ナイト・ライフ」は、ディーン・ブラウンとビル・エヴァンスのファンは必聴の作品です。どちらもライブ盤ということで、それぞれのミュージシャンの生の魅力が、レコーディング作品以上にクローズ・アップされてる感じです。単独では、どうってことの無い「ウォーク・アウェイ」というフュージョン・ユニットながら、アメリカの有名ミュージシャンのサポートとして聴けば、なかなかではないでしょうか。ちなみに、2001年1月上旬、ディスク・ユニオン渋谷店、タワーレコード渋谷店で、この2枚の在庫がありました。NY系フュージョン・ファンは、探してでも聴いてみる価値のある作品だと思います。
1.27 Update

Points?

★★★★


Title/Musicians/Revel

"Now !" Stuff (Skip Record)

Who?

1976年、ベーシスト、ゴードン・エドワーズを中心に、コーネル・デュプリー、エリック・ゲイル(g) リチャード・ティー(key) スティーヴ・ガッド、クリス・パーカー(ds)のメンバーで、アルバム「スタッフ」でデビュー。ファンキーでR&B感覚溢れる、グルーヴィーなインストゥルメンタル・サウンドは、クロスオーヴァー〜フュージョン・ブームの波にも乗り大人気となる。79年の「スタッフ・イット」を最後に、レギュラー活動は休止されたが、リチャード・ティーの死をきっかけに、94年キーボードにジェイムス・アレン・スミスを迎え、「メイド・イン・アメリカ」という作品を発表。そのあたりから、ゴードン・エドワーズは、「スタッフU」と名乗り音楽活動を行っており、このほど発表された新作も、この「スタッフU」のメンバーが中心。

With?

ゴードン・エドワーズ(b,vo) マイク・クラーク(ds) コーネル・デュプリー、ミック・ガフニー(g) ジェイムス・アレン・スミス(key,vo) アレックス・フォスター(sax) ホーンズ&コーラス

Reflection?

 いやいや、何の拍子か?あのSTUFFの新作が、ドイツのマイナーレーベルから、突然リリースされました。昨年あたりから、STUFF新作発表か?!の噂は間違いじゃなかったんです。今や、リチャード・ティーも、エリック・ゲイルも他界し、いまさら再結成した所で…という感じもしないではないですが、なんだかんだ言っても胸踊るものがあります。さてさて、恐る恐るパッケージを開いて聴いてみると…。まだ生きてる!スティーヴ・ガッドもクリス・パーカーもいない!まずがっかりしてしまいました。そうなんです。このSTUFFは、70年代のあのSTUFFでは無く、80年代以降、ゴードン・エドワーズが中心になって活動している「STUFFU」がベースとなっているんです。ドラムは、ハンコックのヘッド・ハンターズのマイク・クラーク。ギル・エヴァンスのマンディ・ナイト・オーケストラやジャコのビッグ・バンドなんかのも参加してたサックス奏者アレックス・フォスターも参加してる。もうこうなると、あのSTUFFがリユニオンしたと言うよりも、ゴードン・エドワーズのソロ作品として聴いたほうが良さそうです。収録曲は、全10曲中、ラスト2曲がライブもの。 ライブでは、キャノンボールの演奏でお馴染みのザヴィヌル作の「マーシー・マーシー・マーシー」と、オリジナルのSTUFFでもお馴染みのスティーヴィーの「涙を届けて」をやってます。レコーディングものでは、3曲目に「SUKIYAKI」こと中村八大作の「上を向いて歩こう」もやっていて、途中までは、良い感じなんですが、突然、日本語のあの歌詞のコーラスが登場しコケてしまいます。全体的なサウンドは、もちろん、R&Bテイストなブルージーなサウンドで、あのSTUFFの流れを感じさせ無くもないですが、やっぱりこれはSTUFFとは認めたくないです。ライブでの2曲は、レコーディングものに比べると熱いですが、それでもサウンドの雰囲気は淡白。単純で味の無いマイク・クラークのドラムや、妙にリチャード・ティーを意識したようなアレン・スミスもしょっぱい。コーネル・デュプリーは、あのブルージーでレイド・バックしたフィーリングのギターで孤軍奮闘してますが、その頑張りも空しく響いてます。 コーネルのギターのバックでは、エリック・ゲイルのリズム・ギターがあって、リチャード・ティーのブロック・コードのバッキングが絶対に要るんです!。せめて、まだこの世にいるガッドとパーカーのツイン・ドラムによるリズムだけでも残して欲しかったなぁ。とにかく70年代のSTUFFとは、比べものにならない貧弱で淡白なサウンドです。貧弱なメンバーで、あの頃の雰囲気をいくら出そうと思っても、所詮無理な話です。

etc…

 まぁSTUFFは、ゴードン・エドワーズがリーダーのグループなので、グループの名前をどう使おうと勝手なのかもしれませんが、ファンは許しません!。クドイようですが、これはSTUFFではありません。聴いていて、ほんとに悲しくなりました。口直しに、70年代のオリジナルSTUFFや、スティーヴ・ガッド率いたガッド・ギャングでも聴きたい気分です。トホホ…。
1.27 Update

Points?

★★



Title/Musicians/Revel

"Exciting Story" Acoustic Quartet (Walk Away Records)

Who?

 ひとつ上のレビューで登場した、「Walk Away」というポーランドのフュージョン・グループのリーダーのドラマー、Krzysztof ZawadzkiとAndrzej Cudzichというベーシストのリズム・セクションと、アメリカから迎えたゲストがポーランドで共演した演奏をライブ録音したもの。キコスキ参加の96年11月とカルデラッツォ参加の12月の2つのステージの模様を収録。発売されてるレーベルも、Walk Away Recordsということなので、多分、Krzysztof某の自主制作的な作品?。

With?

Bob Berg(ts) David Kikoski (Track 1.2)/ Joey Calderazzo(Track3〜5)(p)

Reflection?

 前出の「Walk Away」とこの作品というKrzysztof某、関連の3タイトルが、昨年暮れあたりから、輸入盤店に出まわってますが、どの作品も、正直、ゲストのネームバリューだけで存在してるようなもので、これもあんまり期待せずに購入しました。1曲目に、早速?スタンダードの「枯葉」が入ってるんですが、いきなり、テナーのボブ・バーグが過激にブロウしていて、それにつられるように、ポーランド人リズム・セクションも結構な頑張りを聴かせてくれてます。バタバタとして決して上手いリズム・セクションじゃないですが、凄腕のゲスト達を上手く煽って、演奏を、タイトルどおり「エキサイティング」なものにしていると思います。アコースティック〜というユニット名からすると、4ビートのジャズを粛々とやっているイメージがしますが、2曲目には、ディヴ・ウェックル作のコンテンポラリーなリズムを持った曲が登場したり、4曲目では、ジョーイ・カルデラッツォがフェンダー・ローズを弾いてたりと、4ビートやアコースティックにこだわったものではなく、ボブ・バーグやマイク・スターンあたりがやってるNY系コンテンポラリー・ジャズがやりたいのでしょう。だから、ボブ・バーグをはじめとする、このあたりのミュージシャンをNYから招いたに違いありません。収録曲は、1曲目の「枯 葉」とラストのトレーン作の「インプレッションズ」を含む5曲ながら、ライブ録音ということで、ほとんどの曲が15分以上のレングス!。特に1曲目の「枯葉」なんぞ19分10秒という超長尺です。収録曲すべてにいえますが、演奏の構図が、ポーランド・リズム・セクション vs ボブ・バーグ、カルデラッツォ/キコスキという感じになっていて、アメリカのミュージシャンのそれぞれの得意技?が随所で披露されてます。2曲目では、バタバタのファンキーなドラムに煽られてキコスキ、バーグが炸裂。3曲目は、ボブ・バーグが自らのソロ作でやりそうな感じのミディアム・テンポのナンバー。バーグの硬派な歌心を感じさせるテナーが見事。4曲目は、カルデラッツォがローズを弾いてて、ウネウネしたメロディー・ラインと、ローズのサウンドが、チック・コリアみたい。ラストは、コルトレーンの「インプレッションズ」。ゴリゴリしたベースと、ドタバタドラム、それに当然、バーグのテナーが大活躍!。いやいや…全編聴くと、お腹いっぱい、ごちそうさま、そんな感じで、特にボブ・バーグのファンには、満腹感いっぱいの作品ではないでしょうか。

etc…

 最近のアメリカものの新作は、ひねりすぎた作品が多く、本来のミュージシャンの味や良さをスポイルしたものが意外と多いと思います。そんな中、この作品は、多分、なんにも考えずやってると思われ、それが個性的なミュージシャンの魅力を上手く引き出してるように思います。この作品の唯一の懸念は、アメリカ人ミュージシャンにきちんと、印税が支払われてるか?ということです。ジョーイ・カルデラッツォが、自分がかつて参加したポーランドのGOWI盤のトリオ作について、「勝手に発売された!。ギャラも印税ももらってない!」と激怒してました。この盤についても、そんな胡散臭さがプンプン漂いますが、演奏そのものは、胡散臭いものでは決して無いので、安心してお買い求め下さい。
1.29 Update

Points?

★★★★


は1(最悪)〜5(最高)です。
感想を書きこんでいただければ幸いです。

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