Swingroove Review

November 2000



Title/Musicians/Revel

 "For The Love" Everette Harp (Blue Note)

Who?

 アニタ・ベイカー(vo)やジョージ・デューク(key)、マーカス・ミラー(b)プロジェクトなどでの活躍で知られるスムース/フュージョン系サックス奏者。101ノースという、ヴォーカリストのカール・カールウェルらとのユニットを経て、EMI/キャピタル〜ブルーノートに5枚のリーダー作を残している。

With?

 リッキー・ピーターソン、ティム・ハインツ、ジョージ・デューク、ディヴ・コーチャンスキー(key) マイク・シムズ、トニー・メイデン、ポール・ジャクソンJR、レイ・フラー、ジェフ・ゴルブ(g) アレックス・アル、ラリー・キンペル(b) リル・ジョン・ロバーツ(ds)レニー・カストロ(perc) ジェリー・ヘイ、ゲイリー・グラント、ビル・リーセンバーク(horn section)20/Twenty(vo)…

Reflection?

 前作「ベター・ディズ」から2年振りの新作となるこの作品。97年には、マービン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイング・オン」を丸ままカヴァーした作品を発表し話題となりましたが、1曲目から、「アイ・ウォント・ユー」みたいなミディアム・テンポのグルーヴィーなナンバーからスタート。あの頃のソウル/R&Bが好きなんだなぁ…と改めて感じさせられます。ジョージ・デュークや、マーカス・ミラー・プロジェクトなどで聴かせてくれたハードでファンキーなブロウをCDでも聴きたいのですが、今までのリーダー作では、おとなしい凡庸な普通のスムース・ジャズに終っていて、残念な思いをしたのですが、今作も、基本的には、夜向きなスムース&グルーヴなソウル系フュージョンとなっており、あぁまた?の印象も…。ただ、リズム・セクションが、打ちこみではなく、アレックス・アル、ラリー・キンペル(b)=リル・ジョン・ロバーツ(ds)というライヴのリズム中心なので、グルーヴに腰の強さを感じ、そのリズムに対抗するハープのサックスも、ソリッド感が増した感じです。黒人ならでは?の粘っこさとセクシーなメロディ・フェイクを入れながら歌いこんでいくハープのサックスは、R&Bシンガーを思わせるものです。実際、彼は、ヴォーカルも上手く、今作でも、ミディアム・スロウの今っぽいスタイルのナンバーで、見事なリード・ヴォーカルを披露しています。収録曲は、ハープのオリジナル中心ですが、カヴァーも2曲収録されています。1曲は、スティーヴィー・ワンダーの「ホエア・ワー・ユー・ホェン・アイ・ニード・ユー」もう1曲は、クルセイダースやアヴェレージ・ホワイト・バンドなどの演奏で知られるジョー・サンプルの「プット・イット・ホェア・ユー・ウォント・イット」。ジョージ・デュークのキーボード・ソロをフィーチャーした、スティーヴィーのカヴァーは、メロウで良い感じでしたが、サンプルのアーシーなR&Bテイストなナンバーのカヴァーは、他の曲から浮いている感じで、?な印象。やはり、ハープのサックスは、都会的なサウンドに合うようで、アーシーな楽曲では、そのサウンドがクリアすぎて味気ない感じです。個人的には、8曲目のトニー・メイデンのベンソン・ライクなギター・ソロをフィーチャーした70年代テイストなグルーヴィーなフュージョン・トラックと、9曲目のスティーヴィーのカヴァーが、ハープの個性を上手く活かしたナンバーだと思いました。

etc…

 良い意味で、フュージョンらしい素直な作品です。変に未消化のR&Bのトレンドを入れるのではなく、地に足を付けた骨太なR&Bサウンドを目指した姿勢は、評価できると思います。彼のリーダー作の中では、一番楽しめた作品でした。
11.1 Update

Points?

★★★☆



Title/Musicians/Revel

 "Traiangular 2 " Ralph Peterson (Sirocco Jazz)

Who?

 80年代、新生ブルーノートが結成した新進気鋭メンバーを集めたジャズ・コンボ「OTB」の初代ドラマー。東芝EMI制作のジャズ・レーベル「サムシン・エルス」の第1作目の新譜が、このラルフ・ピーターソンの「V」という、彼にとっての初リーダー作だった。故トニー・ウィリアムスばりの豪快で男っぽいドラムが魅力。90年代後半は、教育者としての活動が中心で、ジャズ・シーンの表舞台から遠ざかっていましたが、昨年あたりから、再びカムバックした様子。ヴァイブをフィーチャーしたユニークなカルテット「フォテット」と、このピアノ・トリオである「トライアンギュラー」が活動の中心。1962年ニュージャージー生まれ。

With?

 ディヴィッド・キコスキー(p) ジェラルド・キャノン(b)

Reflection?

 ラルフ・ピーターソンというミュージシャンは、一度極めようとした音楽コンセプトは、意地でも続けていく、かなりストイックな人間のようです。88年にサムシン・エルスから発表したピアノ・トリオ作「トライアンギュラー」から、12年も経った今、その第2弾がリリースされるのですから、相当ストイックというか石頭だと思います。その12年前の「トライアンギュラー」のメンバーは、ジェリ・アレン(p)とエシエット・エシエット(b)で、サウンドも、ジェリの個性的なピアノを活かしたモンク的なものでしたが、新しい「トライアンギュラー」は、えらくすっきりしたピアノ・トリオ作となっています。やはりピアニスト、チェンジの影響は大きくモンク的なアレンに対して、ハンコック〜コリア路線のキコスキーをフィーチャーしているので、「普通」っぽく聴こえるのでしょう。ただ「普通」っぽいとはいっても、リーダーはラルフ・ピーターソンなので、凡庸なサウンドになるはずはなく、ラルフの知的かつパワフルなドラムと、ラルフに煽れてイキまくるキコスキーのピアノの対決が楽しい豪快なピアノ・トリオ作となっています。収録曲は、ラルフやメンバーのオリジナル中心で、スタンダードは、「ナイト&ディ」と「イフ・アイ・ワー・ア・ベル」の2曲。豪快で力強いドラムは、かつてのOTBやサムシン・エルス盤などで知られる所ですが、モーダルでスロウな曲での力強さと繊細なブラシによる知的な演奏も素晴らしいものがあります。またラルフにインスパイアされたのか、素晴らしい演奏を披露しているのが、ピアノのディヴ・キコスキーです。いままでは、チック・コリア的で、やや線の細い感じのピアニストでしたが、ここでは、ひとまわりスケールが大きくなったような力強くファンキーなピアノを聴かせてくれています。ここでのキコスキーのピアノは、ケニー・カークランドを思わせるものがあります。ベースのジェラルド・キャノンも、やんちゃなラルフのドラムを上手くサポートする「内助の功」みたいな演奏も好感が持てます。

etc…

 クラリネットのドン・バイロンなんかをフィーチャーして、オーネットやモンクを追求していた90年代初期のラルフもいいですが、個人的には、コンセプチュアルなジャズよりも、ジャズ・ドラマーとしての魅力を120%活かしたような、今回のトリオ作の方がより楽しめました。改めて感じたのは、ラルフ・ピーターソンというドラマーのセンスの良さです。豪快で力技のドラマーというイメージがありますが、それだけではないんですね。とはいいつつ、ベースのキャノン作のファンキーな1曲目や、多分エルヴィン・ジョーンズに捧げたであろう5曲目、それに、超アップテンポで、原曲が分からなくなるほどスウィングしてる、ラストの「イフ・アイ・ワー・ア・ベル」といったアップ・テンポな曲での、パワフルなドラムに思わず興奮してしまいました。ピアノ・トリオといえば、最近どうも、ビル・エヴァンスを横目でチラチラ見るような、女性的というかおかまチックで軟弱な演奏が、日本ではウケるみたいですが、これは、そんな演奏とは対称的な豪快で骨っぽいピアノ・トリオ盤です。いや〜久々にピアノ・トリオを聴いて、ここまで興奮しました。素晴らしいです…。
11.1 Update

Points?

★★★★☆



Title/Musicians/Revel

 "Transition" Dave Weckl Band (Concord/Stretch)

Who?

 80年代初期、フュージョン・バンド「フレンチ・トースト」やミッシェル・カミーロのトリオ(w/ アンソニー・ジャクソン)を経て、86年に、チック・コリア・エレクトリックバンドへの参加し、一躍人気ドラマーに。当時は、その手数の多さと、独特の「裏打ち」のビートが話題となったが、近年は、そのプレイもややシンプルになり、自己のバンドにこだわったグループ・サウンドを重視している感じ。

With?

 トム・ケネディ(b) スティーヴ・ワインガード(key) ブランダン・フィールズ(sax,fl)

Reflection?

 ここ何作かは、「ディヴ・ウェックル・バンド」としてのグループ・サウンドを追求している感じですが、今回の新作も、その延長線上のサウンド。前作まで参加していた、ギターのバジー・フェイトンとポップス畑でも活躍しているキーボードのジェイ・オリヴァーが抜けたので、少しポップさが薄れ、ややジャズっぽい雰囲気になっています。そのあたりが、好みの分かれる所で、個人的には、サウンドの幅や広がりが無くなった感じで、バジーやジェイの抜けた穴はやはり大きいと言わざる得ません。代わって参加している、スティーヴ・ワインガードというキーボード奏者ですが、収録曲のほとんどにもコンポーズで関わるなど、リーダーのウェックルとともに、今作のキー・パーソンと言えます。が…正直、あんまり面白くないです。印象的な曲も無いし、キーボードの演奏も、所々にチック・コリアやザヴィヌルみたいなフレーズが出てくるものの、いたって普通。この手のサウンドであれば、トライバル・テックのスコット・キンゼイくらいキレてないと退屈です。この「色気」の無い、キーボード奏者のおかげで、本来カラフルでいい演奏をするはずのブランダンのサックスも、沈んでしまってます。まぁウェックル=トム・ケネディのリズムそのものは好調ですが、演奏されてる楽曲が地味で魅力的なものが少ないので、そのリズムの良さを活かしきれてない感じです。ウェックルのドラムは、ほぼオーバー・ダブなしで、パーカッション類も、同時にパフォームしているなど、今作でも凝ったプレイをしているようですが、その凄さもドラマーでない私には「あぁ…そう…」という程度のものです。このウェックルやタニア・マリアなんかとも共演しているベースのトム・ケネディは、ペキペキしたウェックルのドラムの隙間をうめてゆくようなウネウネとしたプレイで、さすがのプレイでした。アルバム全編、曲自体がたいそう退屈なので、私はリズムばかり聴いていた印象です。

etc…

 とにかく中途半端なサウンドです。ブリブリ・バリバリのコンテンポラリー・ジャズをやりたいのか、R&Bテイストなファンキーなインストをやりたいのか、はたまたジャズがやりたいのか、次作でははっきりさせて欲しい です。彼のGRPでのファースト・アルバムの1曲目「タワー・オブ・インスピレイション」(多分、タワー・オブ・パワーにインスパイアされた曲?そういえば、ウェックルのドラムの師匠のひとりは、全盛期のT.O.Pを支えたディヴィッド・ガリバルディだった。)を最初に聴いた時のような、あのカッコ良さと衝撃を是非もう一度味あわせて欲しいものです。
11.8 update

Points?

★★☆



Title/Musicians/Revel

 "Casino Lights '99" Various Artists (Warner Bros.)

Who?

 昨年のモントルー・ジャズ・フェスでの、ワーナー・ブラザース所属のミュージシャンによるライヴ・パフォーマンスを収録した2枚組アルバム。1982年にリリースされた「カジノ・ライツ」(アル・ジャロウ、ランディ・クロフォード、イエロージャケッツ、ディヴ・サンボーン、マイク・マイニエリ、ラリー・カールトン、ロベン・フォード、マイケル・ブレッカー、マーカス・ミラー、ラーセン=フェイトン・バンド…参加)と、モントルー・ジャズ・フェスの25周年記念4枚組みボックスに収録された「カジノ・ライツU」(「カジノ・ライツ」からの未発表テイク集)に次ぐ、3枚目の「カジノ・ライツ」。モントルー・ジャズ・フェスティヴァルといえば、スイスはモントルーのいろいろな会場で、当時進行してゆくイベントですが、「カジノ」とは、その会場のひとつの名前。

With?

 ボブ・ ジェームス(key) マーク・ターナー(ts) ケニー・ギャレット(as) ラリー・カールトン(g) カーク・ウェイラム(ts) ケヴィン・マホガニー(vo) ボニー・ジェイムス(ts) リック・ブラウン(tp) ガブリエラ・アンダース(vo) ジョージ・デューク(key) フォープレイ(group)… 

Reflection?

 昨年暮れあたりから、「出る出る…」と言われながら、発売が延期されていた「3枚目」の「カジノ・ライツ」が、やっとリリースされました。参加しているフィーチャード・アーティストは、「with」のパートで表記している通りで、82年の「カジノ・ライツ」に比べるとやや小ぶりな感じもしないでもないですが、コンテンポラリー/スムース系を代表するミュージシャン達が、たくさん参加した豪華なライヴ・アルバムとなっています。マーク・ターナー、ケニー・ギャレットのセットは、アコースティック・ジャズで、残りは、すべてフュージョン・セットとなっています。という訳で、全体の雰囲気は、やや軽い印象で、ギャレットやターナーのファンには、消化不良を起こしそうな感じです。まずCD1の聴き所はですが、1曲目収録の、ジュームス・ジーナス(b)=ビリー・キルソン(ds)というアコースティック・リズムセクションを率いたボブ・ジェイムス・トリオのアコースティック・フュージョンといった感じでクールな「マインド・ゲームス」とラストの7曲目収録の、リック・ブラウン、ラリー・カールトン、ボニー・ジェイムス、ケニー・ギャレット、カーク・ウェイラム、ジョージ・デュークらによるオールスター・セッションの「オールウェイズ・ゼア」でしょう。特に、ロニー・ロウズ作のジャズファンクの名曲「オールウェィズ・ゼア」での、ボニー〜ケニー〜カークと続くサックス・バトルはかなりカッコ良いのですが…。本来は、その後、ジョージ・デューク〜リック・ブラウンのソロが続いてゆくはずなのに、そのパートが編集でカットされているようです。1枚の収録時間に制限の多かったLP時代ならまだしも、CDで、それも2枚組みにしているのに、そんな無粋ことをするとは…。プロデューサーのマット・ピアソンの見識の無さは、憤慨モノです。他の曲でも、モントルー・ジャズ・フェスのHPで調べると、実際の演奏時間より、CDに収録されているものの方が短いものもあり、それらも編集されている可能性もあります。CD2では、4曲目収録のジョージ・デュークで、ガブリエラ・アンダースをフィーチャーした懐かしい「ブラジリアン・ラブ・アフェアー」や、5曲目のフォープレイの小粋なアレンジが光る、マイルスの「フォー」、それに続く6曲目の、フォープレイと、リック、カーク、ボニーの共演による、ボブ・ジェイムスの名曲「ウェストチェスター・レイディ」、そして7曲目のフォープレイと、オールスター・セッションによるハンコックの「ウォーターメロン・マン」あたりが、聴き所でしょう。フュージョン・ファンにとっては、特に、99年バージョンの「ブラジリアン・ラブ・アフェアー」やネイザン=ハーヴィーのグルーヴィーなリズムがカッコ良い「ウェストチェスター・レディ」あたりは、もう涙モノの世界でしょう。ここまでのコメントでも分かる通り、この「カジノ・ライツ '99」の主役は、はっきり言ってフォープレイです。特にボブ・ジェイムスは、自己のトリオや、マーク・ターナーのサポートなど大活躍です。また1曲しか収録されていないのが残念ですが、シェドリック・ミッチェル(p)=ナット・リーヴス(b)=クリス・ディヴ(ds)を率いたケニー・ギャレット・カルテットの演奏も素晴らしく、「ウェインズ・サング」でのエキサイティングなパフォーマンスも印象的でした。エンディングに、ケニーが「ジャン・ピエール」のテーマを連発していたのには…苦笑しましたが…。 逆に印象が薄いというか、実力不足を露呈しているのが、ボニー・ジェイムスやリック・ブラウンといった新進スムース系の連中です。セッションに参加している演奏は、悪くないのに、リーダー・セットとなると、サウンドに起伏が無く平板な印象です。CDでは明確だったサウンドのコンセプトが、ライブでは、固め切れてないのでしょう。また、ラリー・カールトンのセットもいまいちで、演奏で光っているのは、フォープレイでの演奏だけです。これは非常に残念でした…。

etc…

 収録曲の出来不出来の差はあるものの、70年代のアリスタ・オールスターズ(ブレッカー兄弟、マイク・マイニエリ、スティーヴ・カーン、ウォーレン・バーンハート、トニー・レヴィン、スティーヴ・ジョーダン)による「ブルー・モントルー」80年代の「カジノ・ライツ」に続く、フュージョン系ライブ・アルバムの名盤の誕生でしょう。パット・メセニーやブラッド・メルドー…といった他のワーナーの人気ミュージシャンも参加してれば、もっと深い作品になったと思いますが…。
11.13 Update 

Points?

★★★★



Title/Musicians/Revel

"Basie & Beyond" The Quincy Jones - Sammy Nestico Orchestra (Quest〜Warner Bros.) 

Who?

 ソウル〜ジャズ界の名プロデューサー。元々は、トランペッター。50年代は、トランペッターとして名を為そう努力していたものの、確かチャーリー・ミンガスかなんかに「お前のトランペットはあかん」と一蹴され、一大発起。トランペットを捨てて、アレンジャーへ転向。それが大正解で、60年代後半には、黒人としては初めてのマーキュリー・レコードの副社長に就任するなど成功をおさめる。その後、メジャー・レーベルの役員の座を捨てて、A&Mとアーティストとして契約。80年の「愛のコリーダ」を頂点に数々の名作を発表。ソウル界のトレンド・リーダーとして活躍。プロデューサーとしては、マイケル・ジャクソンの名作「スリラー」を筆頭に、パティ・オースティン、ジョージ・ベンソン、フランク・シナトラなどを手掛け大成功へと導く。90年代以降は、マイルスとのコラボレーションによる「ポーギーとベス」の再演を含むジャズ・フィールドでの活動が目立つ。サミー・ネスティコは、カウント・ベイシー・オーケストラの作曲家。ビッグバンド界では神様的存在だとか。

With?

 グレッグ・フィリンゲインズ(key) ランディ・カーヴァー(p) ポール・ジャクソンJr(g) チャック・バーガファー(b) ニール・ステューベンハウズ ジミー・ジョンソン(el-b) ヴィニー・カリウタ(ds) エミール・リチャーズ(vib) ポーリーニョ・ダ・コスタ(perc) ダン・ヒギンズ アーニー・ワッツ ピート・クリストリーヴ ジェラルド・アルブライト ゲイリー・フォスター カーク・ウェイラム(sax) ジェリー・ヘイ ゲイリー・グラント オスター・ブラッシャー(tp) ビル・ワトラス ジョージ・ボハノン ビル・リーセンバーク(tb) ヒューバート・ロウズ(fl)…  

Reflection?

 80年代の「愛のコリーダ」や「バック・オン・ザ・ブロック」90年代の「Q's ジューク ジョイント」、またマイケル・ジャクソンの「スリラー」などで、時代をリードする新しいソウル・ミュージックを聴かせてくれたクインシーが、カウント・ベイシーに捧げたビッグ・バンドものをリリースする、という情報を耳にした時、正直な所、がっかりしました。90年代に入って、ジャズ・オリエンティッドな活動が多かったので、意外な感じはしなかったものの、クインシーも「もう終ったなぁ…」という感じでした。しかし、実際に聴いてみると、さすがに新しさは感じないものの、意外と古さを感じさせないコンテンポラリーなビッグ・バンド・サウンドに、少し驚かされました。もちろん、カウント・ベイシー・オーケストラをベースにしたにしたものなので、ヒップ・ホップやブラコン的な要素は無く、全体の雰囲気は、ゴージャスなハリウッド産のフルバン・ジャズですが、よ〜く味わってみると、ジェリー・ヘイのアレンジによるホーンのハーモニーに新しいエッジが効いていたり、ヴィニー・カリウタのリズムがジャズじゃないハネ方をしていたり、ポール・ジャクソンJr16ビート的なリズム・ギターが入っていたり…と「地味に面白い」んです。特に、ヴィニーのドラムは、ジェフ・ポーカロ的な微妙にハネた感じで、サウンドに若々しさと躍動感をもたらしているようです。フィーチャリングされているソリストでは、アーニー・ワッツとカーク・ウェイラムが、フルバンの中に埋没しない個性的なソロを聴かせてくれています。意外と渋いランディ・カーヴァーのピアノも聴き所。

etc…

 予想以上に面白い作品でした。サウンド全体のゴージャスさは、フランク・シナトラのクインシー制作盤「LA イズ・マイ・レディ」のオケを聴いている感じです。ただジャズで一度挫折してるクインシーは、ジャズになるとえらく生真面目になるようで、もう少し作品に遊びというか幅があってもいいかな?とも思います。フルバン・ジャズの「やや苦手」な私は、LAのファーストコール達の職人芸を中心に楽しみました。
11.26 Update

Points?

★★★☆



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