|
Dave Grusin & Lee Ritenour "Two World" (Decca/Universal) |
70年代〜80年代、リトナーの「ジェントル・ソウツ」やグルーシンの「マウンテンダンス」なんかで育った私には、グルーシンやリトナーには特別な気持ちがあります。その2人が85年の「ハーレクイン」(GRP)以来の共演とあらば、民謡であろうと、演歌であろうと…チェックしないわけにはいきません。 …しかし、まぁ、クラシック作とは…。クラシックとジャズといえば、「鰻と梅干」「天ぷらとかき氷」みたいなもんで、私にとっては、とても「食い合せ」の悪いものなんです。ジョン・ルイスの「サードストリーム」以来、ジャズとクラシックをフュージョンさせたものには、ほんとろくなものはありません。ディヴ・マシューズ、ボブ・ジェイムス…からジャック・ルーシェまで…聴いて感動・感心した作品は皆無でした。 さてさてこの作品ですが、基本的には、オーケストラをバックに、グルーシンのピアノとリトナーのギターが、バッハやバルトークなどのメロディを奏でるといったものです。変に、中途半端なジャズやフュージョン仕立てにせず、きちんとしたクラシックのフォーマットでやっていて、彼らの本気が伝わってきます。耳馴染みの曲は、6曲目の「リヴァー・ソング」だけでした…。 クラシック界から、ソプラノ・シンガーのルネ・フレミング、若手ヴァイオリニスト、ギル・シャハム、チェロ奏者ジュリアン・ロイド・ウェッバーが参加していますが、クラシックに疎い私には、全然知らない人たちです…。1曲だけ、「スペインの民謡組曲」からのナンバーに、ジャズ・フィールドからジェイムス・ウォーカー(fl)トム・ケネディ(b)アレックス・アクーニャ(perc)が参加してますが、これだけです。全曲インストなら、まぁグルーシンとリトナーのファンなら、そこそこ楽しめると思いますが、半数近くの曲に、ソプラノの歌がフィーチャーされているのが、好みが分かれる所でしょう。クラシックのヴォーカルとして聴かず、「ヒーリング」系ヴォイスだと思えば聴けないことはないです。6曲目の「リヴァーソング」など結構癒される雰囲気です。 クレジットは、「グルーシン&リトナー」ですが、グルーシンのオーケストレイションとピアノに、リットのギターやソプラノ・ヴォーカルがフィーチャーされた感じの作品なので、リトナーのクラシック・ギターをたっぷりと聴きたい人には、不満が残ると思います。しかし、グルーシンの弦や小粋なピアノのサウンドは、クラシックであっても、その魅力は十二分に発揮されています。グルーシンの「シネマジック」(GRP)や映画音楽のファンには、楽しめる作品だと思います。でも…次はやっぱり「ハーレクイン」の
続編が聴きたいなぁ…。 8.2 Update |
★★★ |
|
Jimmy Haslip "Redheat" (Unitone) |
イエロー・ジャケッツのベーシスト、ジミー・ヘイスリップの2枚目のリーダー作がリリースされました。 GRPより93年に発売されたファースト作「ARC」は、内省的で少々小難しいコンテンポラリー・ジャズ風の作品でしたが、今作は、ポップ・スター、ジノ・ヴァネリの兄弟のジョー・ヴァネリとの共同制作による、ポップなラテン・フュージョン作となっています。 参加ミュージシャンは、ジョー・ヴァネリ(key,Programming)ラッセル・フェランテ、ヴィンス・メンドーサ(key)オトマロ・ルイス(p)スティーヴ・タヴァグリオーネ、フスト・アルマリオ(sax)チャック・フィンドレイ(tp)ルイス・コンテ、マイク・シャピーロ(perc)…などです。 全体的なサウンドは、「♪チャカ・ポコ〜チャカ・ポコ…」したリズムをバックに、ヘイスリップのテナー・ベースやフレット・レス・ベースのメロディがのっかかったもので、ジョー・ヴァネリのプログラミングによるリズムのせいなのか、予想以上にポップな雰囲気です。これくらいポップなら「スムース・ジャズ」チャートの上位も狙えるかも…しれません。 ヘイスリップのベースといえば、超が付くほどのテクニシャンなんですが、イエロー・ジャケッツでのベース・ソロ・パート以外のセッション・ワークでは、これまた超が付くほど地味なプレイに終始しているので、正直熱心なファン以外は、正直、印象の薄いタイプのベーシストかもしれません。しかし、今作やイエロージャケッツの近作を聴けば、相当の力量を持ったベーシストであることが実感できることでしょう。バッキングは、スラップをほとんどやらず(でも初期のイエロー・ジャケッツやジノ・ヴァネリのサポートでは、キレのあるスラップもやってましたが…)どっしりとした太いラインでリズム・キープをするタイプで、ボサノヴァやラテン調のリズムには、特に定評があります。また今作で、大きくフィーチャーされてるベースによるメロディですが、特にスロウなナンバーでの、フレット・レスによる幻想的で美しい演奏は、かなり素晴らしいものだと、改めて感じさせられました。 とは言いつつ、そんなに印象的な曲があるわけでも無しの、まぁ地味な部類に属する「スムース・ジャズ」なので、ベーシストやヘイスリップの個人的なファン以外には、そんなにお薦め出来る作品じゃないかもしれません。しかし作品のクォーリティーそのものは、結構ハイ・レベルなものなので、ラテン系のフュージョン/スムース・ジャズのファンだったら、ゲットしても決して損は無いと思います。 8.2 Update |
★★★☆ |
|
青木智仁 "Experience" (Victor/JVC) |
角松敏生やSPEEDといったJ‐POPから、渡辺貞夫、ノブケイン、SOURCEなどのジャズ/フュージョン系のセッション/レコーディングを通して、今や日本のトップ・スタジオ・ベーシストに成長した感のある青木智仁。80年代に角松のバンドに参加した頃は、「和製マーカス・ミラー」といった感じの、キレのあるベキベキしたスラップ・ベースで、私個人も結構な影響を受けました。当時「自分が上手く弾ければ、こんな風に弾きたいなぁ…」という感じで、彼の楽器やエフェクター類をチェックしていました。 久々のリーダー作となる2枚目は、「Experience〜経験」というタイトル通り、今まで、彼と縁のあったミュージシャンが総出演したといっても過言では無いほど、豪華なメンバーが、恩返しとばかりに馳せ参じてます。彼の演奏が世に出るきっかけを作ったとも言える、角松敏生(key,g,vo)は、もちろん、渡辺貞夫(as)渡辺香津美(g)村上秀一(ds)佐山雅弘(p)山木秀夫(ds)といったジャズ界の重鎮、ディメンションの勝田一樹(sax)増崎孝司(g)、元T‐スクェアの本田雅人(sax)伊藤たけし(sax)オルケスタ・デ・ラ・ルースの塩谷哲(key)カシオペアの野呂一生(g)13CATSの沼沢尚(ds)のフュージョン界の人気者、浅野祥之(g)友成好宏(key)といった角松バンドの同僚、石川雅春(ds)梶原順(g)小池修(sax)のSOURCE仲間、またヴォーカリストには、近藤房之助、永井”ホトケ”隆という少々濃〜いブルース・メンが参加しており、まさに日本のジャズ〜フュージョン界の総力を結集したような面子です。 サウンドは、ゲスト参加したミューシャンの個性を上手く活かしたグルーヴィーなフュージョンナンバーが多く収録されてます。青木氏のモースト・フェイバリット・ベーシストのひとりである、ロッコ・プレスティアの在籍するタワー・オブ・パワーみたいなホーン・セクション バリバリのファンキー・トラックの1曲目や、角松のインスト・アルバムの曲みたいなポップな2曲目、角松自身が参加したクールな5曲目…などなどフュージョン・ファンならたまらない展開が続きます。何と言っても、このアルバムのアペックスは、スラップでの超絶4ビートで、ナベサダのアルトが冴える8曲目「ドナ・リー」と9曲目に続く、ジャコの「カム・オン・カム・オーヴァー」でしょう。この曲の並び?何か気が付きません?。そうです、ジャコのファースト・アルバムの1曲目と2曲目そのままなんです。「ドナ・リー」同様、「カム・オン〜」も全編スラップで勝負。ジャコの曲を、スラップでやる、というのは、マーカスが、全編スラップでやった「ティーン・タウン」と同じパターンで、新鮮味は無いですが、カッコ良ければそれでいいんです!。ドラムは、ポンタ師匠、エレピは佐山氏とポンタ・ボックス状態。ヴォーカルは、近藤&永井のシブシブシャウト。もう最高です。 青木氏のベースも、初期の「マーカス命!」的なペキペキ・スラップだけではなく、ロッコ・プレスティア的なプクプク・グルーヴなプレイや、ジャコ的なラインで攻めるグルーヴなど、演奏に幅が出て、その結果、それぞれの曲をパフォームする際の表現に深みが感じられるようになりました。名実ともに、日本のトップ・セッション・ベーシストになったと言っても決して過言ではないと思います。 いやいや、楽しいフュージョン・アルバム
です。モロ、タワー・オブ・パワーみたいな曲や、ジャコのファーストアルバムと同じ曲の並びがあったり…と「そのままやん!」とつっこみたくなる部分もありますが、自分の好きなものをそのままやったという良い意味での純粋さを感じます。とにかく「カッコ良いもん勝ち」そんな1枚です。 8.9 Update |
★★★★ |
|
David Hazeltine "Blues Quarters Vol.1 (Criss Cross Jazz) |
マリーナ・ショウ(Vo)やスライド・ハンプトン(tb)との共演を経て、近年では、エリック・アレキサンダー(ts)やエリ・アレを含むジャズ・ユニット「ワン・フォー・オール」での活躍するピアニスト、デビット・ヘイゼルタインの新作がクリスクロスからリリースされました。ただ「新作」とはいっても、録音は1998年の12月ということで、新しさという点では、日本のヴィーナス盤が最新作ということになりますが…。また今年の初めに録音したクラシック・トリオ(ルイス・ヘイズ:ds ピーター・ワシントン:b)のセカンド作が、近々シャープ・ナイン・レーベルからリリース予定となっています。これだけ、多くの録音をこなすということは、それだけ創造意欲が満々ということなのでしょうか。 このクリスクロス盤は、エリ・アレのテナーを含む、カルテット編成。メンバーは、ヘイゼルタイン(p)エリ・アレ(ts)ドゥエイン・ブルーノ(b)ジョー・ファーンスワース(ds)。ベースのブルーノ以外は、「ワン・フォー・オール」でお馴染みの面子です。 選曲は、半分がスタンダード、半分が、ヘイゼルタインやエリ・アレのオリジナルというバランスのとれたもの。スタンダードも、マイルスの「マイルストーンズ」を初め、「スプリング・イズ・ヒア」「クライ・ミー・ア・リバー」それにバードの「シェリル」と興味深いナンバーばかりです。かなりモーダルな「スプリング・イズ・ヒア」や、本来は恨み節のはずのこの曲を、軽やかなボサ・ノバ風に演奏してるあたり、なかなかユニークなスタンダードの解釈といえるでしょう。 演奏の方ですが、この面子ですから、出てくるジャズもどんな感じ?か想像できると思いますが、その通りの快適なハード・バップ作です。ヘイゼルタインのピアノは、どうも、トリオよりもホーン入り、それもワンホーンとの相性が良いようで、リーダー作でありながら、良い意味で控えめなプレイで、むしろエリ・アレのソロ作?と思うほどです。しかし、これがヘイゼルタインの個性というもので、マリーナ・ショウなどの唄伴で鍛えた絶妙のサポートと一小節、いや一音でも無駄にしない質実剛健な?ソロは、演奏の自由度のより大きいトリオよりも、このようなカルテットの方が、彼の個性をより活かすものだと思います。エリ・アレのテナーも、もはやデックスっぽいだの、トレーンの影響が云々…という次元をオーバーテイクし、早くもエリ・アレの演奏になっており、どんどん骨太になってる感じです。ここまで、成長してくれると、デビュー作のデルマーク盤からずっと彼を追いかけてきたかいがあったというもんです。 年齢的には、もうオーバー40なので、若手とはいえないですが、まさに今が旬ともいうべきピアニストです。とかく、日本では、インチキ臭いというか胡散臭さプンプンのポスト・キース・ジャレットやビル・エヴァンスみたいな(その際たる例が、ブラッド・メルドー!)ピアニストが受けるので、ハード・バップ一筋のヘイゼルタインのようなピアニストは、なかなかマニア以外の耳に届く機会が少ないですが、「ジャズとはこれやでっ!」見たいなカッコ良いプレーヤーなので、是非一度聴いてみて下さい。 8.19 update |
★★★★ |
|
Branford Marsalis "Contemporary Jazz" (Colombia) |
待望のブランフォードのレギュラー・カルテットによる新作がリリースされました。とにかく、ジョーイ・カルデラッツォ(p)入りのカルテットのライブの評判が高かっただけに、とにかく楽しみな一枚でした。 改めてメンバーは、ブランフォード(sax)ジョーイ・カルデラッツォ(p)エリック・レヴィス(b)ジェフ・ワッツ(ds)のカルテット。 収録曲は、1曲スタンダードの「チーク・トゥ・チーク」!!がある他は、ブランやレヴィス、ワッツのオリジナルで全7曲です。 1曲目から聴いてゆくと…。ブランフォードのオリジナルで、リズムこそ変拍子っぽいものの、良い意味で、軽さを感じる曲でした。ブランのテナーも、ここ何作かで聴かれた鬼気迫るストイックな感じではなく、歌を感じさせる軽やかなものです。曲自体は、そんなにポップじゃないものの、ワッツ=レヴィスのリズムのグルーヴ感を活かした、なかなか聴きやすいオープニング・トラックです。2曲目は、ブランお馴染みの暗い系のスロウ・バラッド。「レクイエム」というタイトル通り、内省的なサウンドですが、カルデラッツォのスケールの大きなピアノや歌心溢れるブランのテナーなど…聴き所も多いのでそんなに退屈しません。「レクイエム」といえば、この作品は、亡きグローヴァー・ワシントンJRや、ミルト・ジャクソン、チャールス・アーランドらに捧げられてます。3曲目は、16分弱に及ぶ大作。やはり今作のハイライトでしょう。フリーキーなテナーのブロウでスタートするこの曲ですが、様々に変幻するビートでのドラムのワッツ、ピアノのカルデラッツォとの濃密なインター・プレイは凄いものを感じます。カルデラッツォの素晴らしいピアノに、亡きケニー・カークランドも、草葉の影で、ほっと胸をなでおろしてる所でしょう。「もう俺がいなくても大丈夫だな…」と。またワッツのタイコも素晴らしく、ブランのジャズには、もはや必要不可欠な存在でしょう。4曲目は、スタンダードの「チーク〜」。久々にブランのロリンズ・ライクな演奏を聴いた感じです。ジャズ・テナーの王道をゆく豪快なブロウです。5曲目は、ワッツのパワフルなタイコを前面に押しだしたコンテンポラリーでモーダルなジャズ。6曲目は、思索的なバラード。ラストの7曲目は、複雑なリズムのイントロのブルースです。ブルージーなリズムとファンキーな展開が交錯するユニークな曲です。7曲目の後、シークレット・トラックが入ってるのですが、これが、シブシブのミディアム・ブルース。ロリンズを通り越して、ベン・ウェブスターばりのテナーです。ひょっとすると、今のブランの本音がここにあるのかもしれません?。 全体的には、何かふっきれた感じの作品です。何かやってやろう、何かを伝えよう、みたいな重いテーマを作品に課すのではなく、気に入ったグループで、出来ることを楽しくやってやろう的な作品だと思いました。また今回は、ソプラノは使わず、全編テナーで勝負してますが、フリーキーになりがちなソプラノが無いだけに、作品のイメージがよりマイルドに感じるのでしょう。とにかく、一時のコルトレーン命的な芸風から、新しい1歩を踏み出したことは間違いなさそうです。シークレット・トラックに入ってるような超トラディショナルな演奏からも、想像できるように、先祖帰り的な指向も出てきたのかもしれません。タイトルの「コンテンポラリー・ジャズ」とは、「ブランフォードが考えるもっとも望ましい今のジャズ=伝統的なジャズのハーモニーやリズムと現代的なビートとの融合」。これを聴いて私はこう解釈しました。 8.19 update |
★★★★ |
|
Gene Lake "Cycles" (Passin' Thru) |
スティーヴ・コールマンのファイブ・エレメンツとの共演を経て、近年では、デヴィット・サンボーンやマーカス・ミラー、ミシェル・ンデゲオチェロなどのバンドでも活躍するドラマー、ジーン・レイクの初リーダー・アルバム(…だと思いますが…?)が発表されました。親父が、アルト奏者のオリバー・レイクということで、その音楽的血統は確かなものがあります。 ジャズからフュージョン、ファンク、ヒップ・ホップまで…なんでもこなせるドラマーだけに、どんなサウンドなのか?興味津々でしたが、結果は、ほぼジーン・レイク自身のワンマン録音によるファンク系フュージョンでした。ドラムはもとより、キーボード、プログラミング、それにベース!も本職並みの凄さでこなしてます。
特に上手いと感じたのは、エレクトリック・ベース。バンドの大将であるマーカス・ミラー直伝とも言えるヒップでファンキーなビシバシ・スラップを随所で聴かせてくれてます。本職?のドラムですが、音の方が、プログラミング中心なので、サンボーンやマーカスのバンドで聴かせてくれるような豪快でソリッドなプレイはそんなに聴けません。まぁ、この作品では、ドラマー=ジーン・レイクをアピールするものではなく、トータルなグルーヴ・アーティストとしての存在と才能をアピールしたいのでしょう。ただ次作では、マーカスやンデゲオチェロなんかとリズム・セクションを組んだバンド仕立ての作品を期待しますが…。 曲の方は全曲、ジーン・レイクのオリジナル。数少ないゲストの一人である、ギターのデヴィット・フュージンスキーのキレキレ・ソロが炸裂してる1曲目のドラム・ン・ベース調の曲や、親父のオリバー・レイクのカッコ良いソロをフィーチャーした2曲目のミディアム・ファンク・ナンバーあたりは、う〜んなかなか…と言う感じですが、その他の曲は、ジーンのドラムと自身のスラップ・ベースによるグルーヴィーなリズムとプログラミングを組み合わせたトラックに、シンセやベース!によるメロディが乗るというもので、やや単調な感じです。やはり一人多重録音には、限界があるようです。ただ、前半にもコメントしましたが、ジーン・レイクのベースはかなり上手いです。マーカスがソロ作で聴かせるようなベースによるメロディ・ラインのパフォームも完璧です。これだけ上手いとベーシストとしても、仕事のオファーが舞い込みそうです。 ゲストですが、2曲にフュージンスキーのギターが(1曲はソロあり
、もう1曲はリズム・ギターのみ)1曲に親父が、それに何曲かに無名のキーボード奏者とギタリストがフィーチャーされる他は、ジーン・レイクのワンマン状態です。 収録曲自体は、結構ポップなファンク・フュージョンですが、ほとんどジーン・レイクのワンマン・レコーディングということを考えると、やはりマニア向けの作品といえるでしょう。もう何曲かに、バンマスのサンボーンやマーカスなんかが参加してると、随分作品のインパクトがあったと思いますが…。多分自主制作に近いのりで作られた作品だと思うので、入手は難しいかもしれません。ちなみにTは、渋谷のディスク・ユニオンで入手しました。 8.20 Update |
★★★ |
|
Hans Ulrik "Shortcuts〜Jazzpar Combo 1999" (Stunt) |
欧州を代表するジャズ・プライズのひとつであるデンマークの「JAZZPAR」がオーガナイズした「JAZZPAR COMBO 1999」の作品が、地元のレーベルのStuntからリリースされました。 今回の主役は、デンマークのサックス奏者ハンス・ウーリック。そして、サポート・メンバーには、欧米を代表する凄いジャズ・メン達が、ウーリックによりセレクトされています。その「ドリーム・チーム」(ウーリック自身がライナー・ノーツの中でこう表現してます。)のメンバーは…ジョン・スコフィールド(g)ラース・ダニエルソン(b)ピーター・アースキン(ds)。 こうやって偉そうにレビューしてますが、実はハンス・ウーリックという人のサックスを聴くのは、この作品が初めてで、スコフィールド、アースキンのプレイに惹かれてこのCDを買ったのですが…。ウーリックは、テナーがメインのようで、その演奏スタイルは、ブレッカー路線のようです。ただブレッカーのように、パワーで押しきるタイプではなく、どちらかと言うと、繊細な表現力で勝負するタイプではないでしょうか。また牧歌的な楽曲でのソプラノでのプレイは、アメリカ系のプレーヤーにはないようなスケールの大きな歌心を感じせる魅力があります。 収録曲は、ウーリックを初めメンバーのオリジナル・ナンバーが8曲収録されています。特に、ジョン・スコ(3曲)とアースキン(2曲)のオリジナルが良い感じです。雰囲気ですが、寒色系のアコースティック・コンテンポラリー・ジャズ。イメージとしては、ジョン・スコのギターが大きくフィーチャーされているということで、ブルーノート初期のジョン・スコのソロ作を思わせます。そこに、北欧らしいクールな透明感を加えた感じでしょうか。 ハンス・ウーリックのサックスもさることながら、今作の聴き所は、ズバリ!ジョン・スコのギターです。最近のジョン・スコのソロ作といえば、「ジャム・バンド」なる中途半端なスタイルで、ダラダラとした焦点の定まらないフレーズを垂れ流してる印象があり、ジョン・スコも「もはやこれまでか…」という感じでしたが、この昨年録音の作品を聴いて、「まだいけるやん…」と見直しました。やはりジョン・スコは、リアル・ジャズ・メンなんですよ。「ジャム・バンド」のテクニックも教養もな〜にも無しのクズ達と共演してるからあんな風だったんですね。とにかく、ここでのジョン・スコのギターはキレまくってます。ただ70年代後半のように、弾きまくりで「アウト」して、キレているのではなく、鋭いナイフのように、短いフレーズやリフで、リズムやサックスに襲いかかるかのような凄さというか迫力があります。 リーダーのハンス・ウーリックを知らなくとも、ジョン・スコや、マーク・ジョンソンのベースディザイアーズやジョン・アバークロンビーのサポートでのアースキンのファンだったら、絶対「買い」の1枚です。 8.28 Update |
★★★★ |
|
Fourplay "...Yes,Please!!" (WEA) |
ベスト盤やクリスマス・アルバムも含め今作で、7作目となるフュージョン界のドリーム・チーム的ユニット「フォープレイ」の新作がリリースされました。 早速余談から…。この「Four Play」というグループ名は、ボブ・ジェイムス(key)=ハーヴィー・メイソン(ds)=ネイザン・イースト(b)=ラリー・カールトン(g)(もちろん3作目までは、リー・リトナー)4人のスーパーミュージシャンが一同に集ったという意味と、「For Play=前戯」という少々Hな意味とのダブル・ミーニングなんですね。それだけ、このユニットで前戯のようなセクシーな音楽を目指したということなんでしょうか。(苦笑…) 余談はこれくらいにして、レビューを…。とは言いつつ、サウンドの方は、いつもと一緒です。ミディアム〜スロウで、適当なグルーヴ感を持ったセクシーなナンバーが11曲収録されています。このユニットの恒例行事ともなっていたR&Bクラシックのカヴァーは、今回は無しで、ヴォーカルも、シェリーなる新人や、シャンティ・ムーアがフィーチャーされているのみです。その変わりといっては何ですが、ネイザン・イーストの魅力的なスキャットやコーラスが効果的に使われてる感じです。 4枚目のオリジナル・アルバム「4」以来参加している、ギターのラリー・カールトンですが、クリスマス作を含めると、今作で3枚目の参加となる訳ですが、相変わらずどうもしっくりきません。もちろん、カールトンも元はと言えばスタジオ・ミュージシャンですから、彼のギターはちゃんとフォープレイのサウンドの中に溶け込んでいるんですが…。じゃ〜何で…と言いたくなる所ですが、フォープレイのギターがカールトンで無くてはだめだ、というポイントが見つからないんです。ボブ・ジェイムスやハーヴィー・メイソンが書いたジャズ/フュージョン的なサウンドはいいとしても、ネイザンが書いたR&Bテイストなボトムのビートが効いたような曲では、カールトンのギターが窮屈そうなんです。これなら、ポール・ジャクソンJrやレイ・フラーあたりのカッティング系のギタリストをサポートにいれた方がしっくりとくると思います。逆にカールトンのブルージーなギターを聴かすトラックも数曲あるんですが、これがまたフォープレイ的なサウンドからやや浮いた感じなんです。笑顔を振りまきまがら、自由奔放に弾きまくるカールトンのファンとしては、やはり大きな不満が残ります。そのあたりが、ギター1本で勝負するタイプのカールトンと、サウンド・プロデューサーとしての側面を持ち合わせたリー・リトナーとの違いなんでしょうか。当然ながら、このユニットにはリトナーの方が適任だと思います。 職人仕立ての超スムーズで、気持ち良いサウンドであることは、今作でも、十二分の感じられますが、少々このサウンドにも飽きてきた…というのが正直な所です。そろそろ、このユニットの限界点が見えてきた感じです。私からの提案としては、あえて、このグループからギタリストをはずし、「3人+1人」としての新しい「フォープレイ」として、曲に応じて、その1人にサックスを入れるとか、ヴォーカルを入れるとか、またギターを入れるとかして、新しさを出してみてはどうでしょうか?。(安藤
まさひろ(g)=伊東たけし(sax)の2人のユニットとして再出発するT‐スクェアみたいに。)このままでは、「フォープレイ」のサウンドという自らの作った縛りに、自らが縛られサウンドのスケールが、どんどん小さくなってっしまうのではないかと思います。マンネリ化という大きなマイナス・ポイントを考えると、残念ながら、歴代のフォープレイの作品の中では、最低な作品と言わざる得ないと思います。誤解の無いように言えば、フォープレイとしては最低というだけで、スムース・ジャズの新譜として聴けば、今だに最高の部類の属する素晴らしいサウンドなんですが…。 8.28 Update |
★★★ |
|
Omar Hakim "The Groovesmith" (Oh-Zone) |
89年リリースの初リーダー作「リズム・ディープ」(GRP)以来となる、人気ドラマー、オマー・ハキムの2枚目のリーダー・アルバムが、オマーがスタートさせたプライヴェート・レーベル「Oh-Zone」からリリースされました。 前作「リズム・ディープ」は、スーパー・ドラマーのリーダー作としては、拍子抜けするようなポップなヴォーカル作に当惑したファンも多かったと思いますが、今作も、その「リズム・ディープ」の路線を踏襲するような作品となっています。 参加ミュージシャンは、ドラムはもちろん、リード・ヴォーカルからキーボードまで器用にこなすオマーを中心に、キーボードに、デンジル・ミラー、ケニー・カークランド、マイケル・ベアデン、ギターにニック・モロック、アブダル・ズーリー、ベースに、ジェリー・ブルックス、ヴィクター・ベイリー、パーカッションに、バシリ・ジョンソン、サックスにボビー・フランチェスキー、バックヴォーカルに、ダリル・トゥークス、ポーレット・マクウィリアムス、シェリル・ペプシ・ライリーらが顔を揃えています。その中でも、ジャズ/フュージョンファンは、ビクター・ベイリーと故ケニー・カークランドの参加に注目していると思いますが、残念ながら…どちらも1曲ずつの参加に終っており、ケニーは、ミディアム・テンポのインスト・ナンバーで、ケニーらしいカッコ良いピアノ・ソロを聴かせてくれてますが、ビクターは凡庸な演奏に終っています。 収録されてるナンバーは、ほとんどがオマーのペンによるヴォーカル・ナンバーで、オマー自身の甘いヴォーカルがフィーチャーされており、雰囲気は、前作「リズム・ディープ」そのものです。R&BともロックともAORともつかない中途半端なもので、一体何がやりたいのかな?というのが正直な感想です。3曲収録されているインスト・ナンバーでは、まぁまぁ叩いてるかな?という感じです。12曲目のラストに収録されてるスペシャルEFXがやりそうな少しエスニックっぽいミディアム・ナンバーで、オマーらしいパワフルな「スネアの乱れ咲き」プレイがやっと聴けますが、それでおしまい…とはやはり残念です。 マーカス・ミラーのファースト&セカンド・ソロ作が、もろブラコン作で、肝心のベースがあまり聴けない、というフュージョン・ファン達のブーイングに対して、「ベースなら他のミュージシャンのバックやサポートで思う存分弾ける、こんな作品は自分のリーダー作でなければ出来ないので、チャレンジするんだ。」というような答えを発表当時、マーカスがしていたような記憶がありますが、このオマーのソロ作も、まさに同じマインドで作られたものなのでしょう。ミュージシャンとしての気持ちも、分からないではないですが、やはりファンあってのものだと思いますので、次作では、ドラマー、オマー・ハキムを前面に押しだした作品を希望せずにはいられません。 8.28 update |
★★☆ |