Swingroove Review

July 2000




Hamish Stuart
"Soon or Later"

Average White Band
"Warmer Communications"
(Atlantic/Rhino)

Hamish Stuart "Soon or Later" (Sulphuric/Compass)

 元アベレージ・ホワイト・バンドのギタリスト/ベーシスト/ヴォーカリスト、ヘイミッシュ・スチュワートの初!ソロ・アルバムが、昨年母国の英国で発表され、このほどアメリカ盤としてもリリースされました。(国内では、7月25日にドリームスヴィル・レーベルより発売予定ですが、インディー扱いのレーベルの為、遅れることも…。ヘイミッシュ&ネッド・ドヒニーの名曲「Whatcha' Gonnna Do For Me」のセルフ・カヴァーが追加収録されるらしい。)
 アヴェレージ・ホワイト・バンドといえば、スコットランド出身のグループで、1974年10月に「Pick Up The Pieces」でインスト・ナンバーとしては異例とも言える全米ナンバー・ワンを獲得したグループとして知られています。そのグループのリーダーは、ベーシスト/ギタリスト/ヴォーカリストのアラン・ゴリーで、このヘイミッシュは、サブ・リーダー的な存在としてゴリーとともに、AWBのグルーヴィー&ファンキーなサウンドを支えてきました。
 ヘイミッシュは、1982年の「Cupid's In Fashion」(Arista)を最後にグループから離れ、ソロ活動を開始。1988年には、AWBで同僚だったドラマー、スティーヴ・フェローン、名セッション・ベーシスト、アンソニー・ジャクソン(b)オーストラリアの女性ブルー・アイド・ソウル・シンガー、レネー・ゲイヤーと「イージー・ピーセズ」というユニットも結成し、A&Mに1枚アルバムも残しています。(残念ながら目立ったヒットも無く自然消滅…CDももう入手困難?か。)90年代は、ポール・マカートニーのグループで活躍していました。
 さてこの初ソロ作ですが、ヘイミッシュのリズム・ギターとヴォーカルを中心に、ベース、リード・ギター、キーボード、サックス、パーカッションという6人編成のバンド形式で作られたもので、メンバーはすべて英国のミュージシャンとなっています。収録曲ですが、全14曲中、1曲、P‐Funkのジョージ・クリントンの曲以外は、ヘイミッシュのオリジナル、もしくは共作によるナンバー。共作陣では、3曲目の「It Is What Is」には、リヴィング・イン・ア・ボックスのリチャード・ダービシャーが、また12曲目の「Midnight Rush」には、インコグニートのブルーイことジャン・ポール・モーニックが名を連ねているあたりが、興味深い所です。サウンドは、AWB時代を思わせるミディアム・テンポのグルーヴィーなナンバー中心で、ヘイミッシュのハイトーンで少しハスキーなヴォーカルをセクシーに聴かせるアダルト・オリエンティッドなものとなっています。アラン・ゴリー中心の現在のAWBのサウンドとよく似たものなので、80年代初めにお互いの指向するサウンドの違いからグループを離れたヘイミッシュですが、もう一度リ・ユニオンしてもいいのでは?と言う感じです。
 それからヘイミッシュ絡みでAWBのリ・イシューものを一枚レコメンド。これは78年リリースの「ウォーマー・コミュニケーションズ」という作品なんですが、ライノが再発するにあたって、ものすごい貴重なトラックを追加収録していたのです。77年のモントルー・ジャズ・フェスでの、「ジ・アトランティック・ファミリー」という当時同レーベルに所属していたジャズ系ミュージシャン達のセッションを収録した2枚組みのアルバムから(このアルバムは一度CD化されたらしいですが、現在ではLP、CDとも入手困難です。)、AWBがサポートしたナンバー2曲がボーナス・トラックに入っています。1曲はパスポートのクラウス・ドルディンガー(ts)英国のベテラン、ディック・モリッシー(ts)デヴィッド・ニューマン(as)らがファンキーなブロウを聴かせてくれるナンバー、そしてもう1曲が、AWBの当り曲ナンバー・ワンの「ピック・アップ・ザ・ピーセズ」です。そのソロオーダーが凄いの一言!。リチャード・ティー(el‐p)マルコム・ダンカン(as〜AWBのサックス奏者、オリジナル・バージョンのサックス・ソロがこの人。)ドン・エリス(tp)ソニー・フォーチュン(as)ハービー・マン(fl)ランディ・ブレッカー(tp)マイケル・ブレッカー(ts)〜演奏時間21分以上という超熱演です。特に、マイケル・ブレッカーのテナーソロの凄いこと!ブレッカー・ブラザースの「へヴィ・メタル・ビバップ」級のカッコ良さです。AWBの「ウォーマー〜」という作品自体は、グループとしては下降線をたどっていた時期の作品なので、その内容に特筆すべきものはあまり有りませんが、2曲のボーナス・トラックのオマケに9曲のAWBの曲が付いてきたと思えば損はないはずです。(個人的には、「ウォーマー〜」は渋い一枚で嫌いじゃないんですが…。)
 最後にまたヘイミッシュの初ソロ作に戻りますが、これという特徴は無いですが、ハイクオーリティーなブルー・アイド・ソウルの好作だと思います。アメリカのミュージシャンの無粋な雰囲気とは無縁の英国独特の渋さというか洒落っ気を感じさせるサウンドが魅力です。AWB時代からのファンはもちろん、AORファンにもお勧め出来る大人のためのポップスです。
2000 7.2 Update

★★★★

Simon Phillips=Jeff Babko "Vantage Point" (Jazzline)

 今や、すっかりTOTOのドラマーとして 定着した感のある英国出身のドラマー、サイモン・フィリップスの新作が、ドイツのレーベル「ジャズ・ライン」(コンテンポラリー系の好盤の多いLipsticの姉妹レーベル。)からリリースされました。
 最近は、TOTOでの活動の傍ら、自らのレギュラー・グループも作り、そのグループでのライブ・アルバムも発表するなど今の時代には珍しい?テクニカルなフュージョン・サウンドで人気を集めています。
 今回の新作は、レギュラー・グループから少し離れ、何とアコースティック・ジャズにチャレンジしたものとなっています。意外な感じもしますが、トニー・ウィリアムスに多大な影響を受けていることを公言するサイモン・フィリップスですから、「いつかはジャズを…」という気持ちが大きかったのでしょう。
 このサイモンのジャズ・アルバムですが、レギュラー・バンドの白人キーボード奏者であるジェフ・バフコとの双頭ユニットでのクレジットながら、実質、リーダーはもちろんサイモンでしょう。参加メンバーは、サイモン(ds)ジェフ・バブコ(p)ブランダン・フィールズ(ts,ss)ウォルト・ファウラー(tp)ディヴ・カーペンター(b)というクインテットです。
 収録曲は、全7曲中、ラストに収録されてるフレディ・ハバード作の「Spirit Of Trane」以外は、サイモンかジェフ・バブコのオリジナルとなっています。
 正直言うと、この作品にはあまり期待はしていなかったのですが…聴いてみると…いや〜かなりカッコ良いサウンドにびっくり!してしまいました。4ビートのアコースティック・ジャズながら、すごくコンテンポラリーでソリッド、分かりやすく言えば「ステップス」みたいなジャズです。一曲目のアルバム・タイトル・トラックから、粒立ちの良いサイモンのやや前ノリのドラムがグイグイとドライブしています。サイモンの敬愛するトニーのビートとは、基本的には別物な感じですが、オカズの入り方などは、トニーっぽいなと思わせる部分も無い訳ではありません。しかし、予想以上にカッコ良い4ビートのドラミングを聴かせてくれていることには間違いありません。雰囲気的には、チック・コリア・アコースティック・バンドでのヴィニー・カリウタといった感じでしょうか。
 サイドメンでは、コ・リーダーのバブコのピアノとサックスのブランダン・フィールズが特に大活躍。ジョーイ・カルデラッツォをシンプルにしたよう素晴らしいピアノを披露しているバブコは、いつか彼のピアノ・トリオ作を聴いてみたくなるほどです。またフィールズのサックスも、リッピントンズでの爽やかプレイが嘘のようなモーダルでアグレッシヴなテナーです。LAでトップを張るスタジオ・ミュージシャンの底知れぬパワーを実感させてくれます。
 収録曲の中でとにかく凄いのが、ラストに入っているライブ・レコーディングによるハバードのナンバー「スピリット〜」です。火を吹くような急速調4ビートのサイモンのパワフルに暴れるリズムをバックに、マイケル・ブレッカーも真っ青な感じのフィールズのテナーや豪快なファウラーのトランペット、モーダルでグルーヴィーなバブコのピアノ、それにトニーへのオマージュを感じさせるサイモンの力のこもったドラム・ソロなどが、15分45秒に渡って楽しめる凄いトラックです。
 多分、フュージョン系中心の参加メンバーを見て、あんまり乗り気にならないジャズ・ファンも多いかと思いますが、騙されたと思って聴いてみて下さい。こんなにカッコ良いコンテンポラリーなアコースティック・ジャズはそんなに無いと思います。前半にもコメントしましたが、「ステップス」あたりのジャズの好きな人には、直球なサウンドのはずです。
2000 7.3 Update

★★★★

Various Artists "No Static At All〜An Instrumental Tribute To Steely Dan" (Samson)

 LAのスムース系ミュージシャンによるスティーリー・ダンのトリビュートアルバムが、リリースされました。
 参加ミュージシャンは、ジェフ・ローバー、ロジャー・スミス(key)ドク・パウエル、キエリ・ミヌッチ(g)ウォーレン・ヒル、リチャード・エリオット、ディヴ・コーズ、エディ M(sax)トニー・ガレロ(tp)…と結構なネーム・バリューの面子が参加しています。
 そして、それぞれの曲に、それらのミュージシャンが1人ないし2人がフューチャーされているという構成となっています。収録曲とフィーチャーされてるミュージシャンを一部ご紹介しておきましょう。
 「Do It Again」(ジェフ・ローバー&ウォーレン・ヒル)「Peg」(ドク・パウエル)「FM(No Static At All)」(ジェフ・ローバー&ニック・カーゴ)「Deecon Blues」(ウォーレン・ヒル&トニー・ガレロ)「リキの電話番号」(ウォーレン・ヒル)「Josie」(キエリ・ミヌッチ&ディヴ・コーズ)…。かなりの有名曲揃いとなっています。
 さてその出来なんですが…。スティーリー・ダンの音楽の魅力といえば、あの微妙な色彩感と陰影を持つ曲とシニカルな歌詞をヘタウマに歌うフェイゲンのヴォーカルがミックスして完成するものだと思います。ですから、彼らの曲だけを持ってきて、演奏したところで、正直なんの面白さもありません。またアレンジも原曲のイメージを色濃く残したものなので、もう一歩間違うとスーパーのBGMみたいな感じもしないわけではありません。
 そんな中、2曲目に収録されてる「ペグ」での、ドク・パウエルのギター・ソロは、クリアにしたジョージ・ベンソンみたいな感じで、良い意味で原曲のジェイ・グレイドンとは全く違うアプローチで聴かせてくれているいるのが唯一の救いかな…と思います。
 タイトルには「〜トリビュート」とありますが、この演奏を聴いてそれぞれのアーティスト達が真剣にトリビュートして演奏してるとは、とても思えません。はっきりいってお気軽なカヴァーアルバムで、その曲がたまたまスティーリー・ダンだったというだけ、みたいな作品です。この手の企画をやるときには、「ロック〜サイケ〜ジャズ〜R&B…」それらの要素が渾然一体化したスティーリー・ダンの音楽の本質というものを、少しは考慮してつくって欲しいものです。はっきり言ってこれでは、企画倒れの駄版と言わざるえません。
2000 7.14 Update

★★


このジャケットは、アメリカ盤で、ベルギー盤を含む欧州盤とは仕様が異なります。

Toots Thielemans "The Love Takes〜Vol.1" (Quetzal)

 私の貴重な思い出のひとつに、目の前30センチの距離で、トゥーツ・シールマンスのハーモニカの生演奏を聴けたことがあります。確か、クリスマス前のFM番組にプロモーションのゲストで来た時で、演奏してくれた曲は「ホワイト・クリスマス」だったと思います。もう感動という以外のなにものでもありません。この時ほど、番組ディレクターという役得を実感したことは無いですね…。
 もうひとつ、トゥーツ・シールマンスにまつわるネタをひとつ…。クインシー・ジョーンズ氏がこんなコメントを残しているんです。「もし君の作品に、ハーモニカのソロが欲しい時は…。まずトゥーツ・シールマンスに頼みなさい。もしだめなら、スティーヴィー・ワンダーに頼みなさい。どちらもだめな時は…ハーモニカ・ソロは諦めなさい。」それほど、彼のハーモニカが素晴らしいということを示す有名なエピソードです。
 さてこのトゥーツの新作なんですが、1994年〜98年までの、彼の故郷であるベルギーやNYで収録されたライブ録音を集めたものとなっています。
 サポート・メンバーは、収録場所や日時によって異なりますが、ケニー・ワーナー、ナタリー・ロリアーズ、ミシェル・ヘー(p/key)レイ・ドラモンド、ジェイ・アンダーソン(b)アダム・ナスバウム、ジュキス・ウーティア(ds)…などが参加しています。
 収録曲は、「アイ・ラヴ・ユー・ポーギー/サマー・タイム」「スター・ダスト」「ボディ・アンド・ソウル」「オール・ザ・ウェイ」などのスタンダードや、お得意のブラジルものでイヴァン・リンス作の「コメサー・ジ・ノーヴォ」(パティ・オースティンが「ジ・アイランド」としてヒットさせた曲のオリジナル。)ビル・エヴァンスとの共演作での演奏が印象的なポール・サイモン作の「アイ・ドゥ・イット・フォー・ユア・ラヴ」それにジャコの名曲「スリー・ビューズ・オブ・シークレット」など…トゥーツのライブに一度でも行った人ならお馴染みのナンバーばかりです。
 トゥーツの演奏をレコードやCDでしか知らない人に少し意外な感じもするでしょうが、トゥーツのハーモニカの力強さやアグレッシヴさに驚きを感じるかもしれません。言っちゃ悪いですが、かなりの高齢のはずなのに、そんな凄い演奏をするパワーがどこにあるんだ?と思います。しゃべると、普通の人の良いおじいちゃんなんですが…。とにかく、彼の音楽に対する熱く深い想いがそのままハーモニカに乗り移ったトゥーツの演奏は、もう涙なしには聴けないはずです。トゥーツのハーモニカがあまりにも素晴らしく、サポート・ミュージシャンの演奏にまで、気持ちが回りませんが…そんな中、同郷のピアニスト、ミシェル・ヘーや女流ピアニスト、ナタリー・ロリアーズがトゥーツをインスパイアするようなイマジネイティヴな演奏を聴かせてくれてます。
 近年、ブラジル作やフレンチ作など企画モノが多かっただけに、ライブ録音ということで、生演奏には敵わないにしても、トゥーツの普段着に近い生の魅力に迫れる好作ではないでしょうか。ただライブで必ずやってくれる、トゥーツのハーモニカと並ぶ十八番である「ホイッスル・ギター」(口笛とギターをユニゾンで聴かせるもの。クインシーの「ブルーゼット」でもお馴染みですね。そういえば、彼はもともと、ギタリストだったんですよね。50年代のジョージ・シアリング・クインテットでも、「ギター〜ジャン・シールマンス( 本名)」と紹介されてます。)が聴けないのは少し残念ですが、これは、VOL.2に期待しておきましょう。
2000 7.16 Update

★★★★

Michael Lington "Vivid" (Samson)

 ダン・シーゲル(key)リチャード・スミス(g)ボビー・コールドウェル(vo)ドク・パウエル(g)中心のフュージョン・プロジェクト「ダブル・スケール」などのLAフュージョン系の新譜でちょこちょこ名前を見るようになった白人サックス奏者マイケル・リングトンの3年ぶりの新作がリリースされました。
 彼のサックスを初めて聴いたのは、ボビー・コールドウェルの「ソウル・サヴァイヴァー」か、ダン・シーゲルが主宰するフュージョンユニット「バーズ・オブ・フェザー」のアルバムだったと思いますが、その時は、クレジットを確認するまでは、ボニー・ジェイムスかな?という感じの演奏でしたが、今作を聴くと、ボニー・ジェイムスよりもディヴ・コーズに近いかな?とも感じましたが、まぁ、どっちにせよスムース系サックスの王道を行くスタイルには変わりありません。
 さてこのアルバムですが、彼のLAのスタジオ・シーンでの人気者ぶりを象徴するかのように、トップ・スタジオ・ミュージシャンが大挙して参加しています。ブラッド・コール(key)マイケル・トンプソン、トム・ロテッラ、ボブ・マン、アラン・ハインズ(g)ニール・ステューベンハウス、ヴェイル・ジョンソン(b)ジョン・ロビンソン、リッキー・ロウソン(ds)レニー・カストロ(perc)ランディ・クロフォード、ジョン・パガーノ(Leed Vo)レスリー・スミス(Back Vo)トニー・ガレロ(tp)…。
 キーボードやサウンドメイク全体をブラッド・コールが仕切っているようで、数多くのポップ〜ソウルを手掛けている彼らしく、全体のサウンドの感触はスムース・ジャズというよりも、歌モノっぽい感じのサウンドです。ポール・ブラウン系の打ち込み中心のスムース・ジャズとは、一味違う、「インストAOR」ともいうべきサウンドでしょうか。「インストAOR」っぽいとは言っても、この手のサウンドには、今やお約束とも言えるヴォーカル・ナンバーもちゃんと入ってます。1曲は、ランディ・クロフォードをフィーチャーしたバカラック・ナンバー「メッセージ・トゥ・マイケル」、もう1曲はジョン・パガーノをフィーチャーしたバラッド・ナンバーとなっています。またカヴァー・ナンバーは、ランディ・クロフォードの歌う「メッセージ〜」とデルフォニックスのメイジャー・ハリスのヒットで知られる「ラヴ・ウォント・レット・ミー・ウェイト」です。
 スムース・ジャズの定番ともいえるソウル〜R&B系のインストとは、一味違うやや白いAOR的なサウンドながら、トータル的には、スムース・ジャズの壁を破っているような作品ではないので、そんなにインパクトのある作品ではありません。ただ打ち込みをバックに、サックス・ソロをかぶせて一丁あがり的な安っぽいサウンドではなく、かなり丁寧に作られているので、スムース・ジャズ/フュージョンが好きな人には、それなりに楽しめると思います。個人的には、嫌いなタイプのサックス奏者ではないので、これからの活躍を応援してゆきたいと思います。ボニー・ジェイムス、ディヴ・コーズ、ウォーレン・ヒル…そのあたりのファンの人は、押さえていて損はないプレーヤーではないでしょうか。
2000 7.17 Update

★★★

Bobby Watson & Taylor Made with Tokyo Leaders Big Band "Live at Someday in Tokyo" (Red)

 70年代後半、ウィントン・マーサリスらとともに、アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズに参加し、頭角を現したアルト奏者ボビー・ワトソン。80年代は、ベーシストのカーティス・ランディと「ホライゾン」というユニットを率い、新生ブルーノートに何作かの好作品を残しました。近年は、Kokoperiレーベルでフュージョン作の吹きこみを行ったり、イタリアのRedレーベルに作品を残したりしています。私は、2年ほど前に大阪ブルーノートで、バーナード・パーディー(ds)=コーネル・デュプリー(g)のグループ〜チャック・レイニー:b ロニー・リストン・スミス:p ボビー・ワトソン:saxで来日した時に、彼の生演奏を聴きましたが、フュージョン系のフォーマットだったために、やや窮屈そうな感じもしましたが、豪快で自由奔放なスタイルは、そのままといった感じでした。
 さて今作は、昨年の春に、東京のライブハウス「サムディ」で収録されたビッグ・バンドもので、共演メンバーは、「トーキョー・リーダース・ビッグ・バンド」という通り、リーダー・クラスの日本人ジャズ・メンとなっています。
 収録曲は、1曲を除いてボビー・ワトソンのオリジナル。オリジナル曲には、定評のある彼ですが、今作でも、「ジャズってカッコ良いなぁ…」と実感できるような良い曲が多く収録されています。またボビーのアルトをはじめとするソロを引き立たせるダイナミックなビッグ・バンドのアレンジも、光ってます。
 なによりも素晴らしいのは、ここに参加してる日本人ジャズ・メンのレベルの高い演奏です。イタリアやフランス、デンマークなどでは、アメリカ人ミュージシャンを現地のミュージシャンがサポートし、録音する、といったスタイルは結構あり、特にイタリアモノでは「RED」などで発表されてますが、それらに勝るとも劣らない素晴らしいサポート振りを発揮してます。特にピアノの今泉正明、和製マイケル・ブレッカーことテナーの佐藤達哉、ドラムの岩瀬立飛が良い仕事をしています。まぁベースの納浩一が、スペースの問題からか、エレベを弾いてるのが悔やまれますが…それが唯一気に入らなかった所です。
 ボビー・ワトソンのアルトの素晴らしさは、あれこれ言わなくても分かると思いますが、今回なによりも感じたのが、日本人ジャズ・メンのカッコ良さです。妙に優等生的で勉強臭い、アメリカの若手ジャズ・メンよりずっとヒップな感じがします。これまで個人的には、あまり国内のミュージシャンには、あまり注目していませんでしたが、これを期に要チェック状態突入!です。日米のジャズ格差解消を印象付ける作品。あとは裾野の広がりかな?。
2000 7.28 Update

★★★★

は1(最悪)〜5(最高)です。
感想を書きこんでいただければ幸いです。

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