Swingroove Review

May 2000



Ken Navarro "Island Life" (Positive Music)
 アコースティック・ギター中心のスムース系アーティスト、ケン・ナヴァロの新作が、彼自身が主宰するレーベル「ポジティヴ・ミュージック」からリリースされました。
 このギタリストは、日本では1枚のみ邦盤としてリリースされたのみで、正直無名に近い存在のミュージシャンですが、アメリカのスムース・ジャズ・シーンでは、かなりの人気者で、この夏に行われる各地のジャズ・フェスでも引っ張りだこの存在とか。
 サウンドの方は、打ちこみっぽいリズムをバックに、心地よいアコースティック・ギターがメロウ&グルーヴなメロディを奏でるといった、この手のサウンドの定番のような感じです。特に、ピーター・ホワイトあたりのサウンドに近い感じでしょうか。ミディアム〜スロウ中心の収録曲は、どれもスムース・ジャズ直球ド真中といった感じの心地よさで、ナヴァロのギターも弾き過ぎず、空気を多く含んだ、そのサウンドは、際立った個性は無いものの、十分評価できるものだと思います。
 キーボード、ベース、ドラム、サックスが参加したサポートメンバーは、無名のミュージシャンばかりながら、サウンド全体の心地よさを損なわないツボを押さえたなかなかのプレイです。
 初夏〜夏にかけての車のCDチェンジャーにしのばせたい1枚です。良いメロディのスムース・ジャズが聴きたい人には、知名度は低いですが、是非チェックしてみてください。
2000 5.1 Update
★★★☆

Chris Minh Doky "Listen Up!"(Video Arts Music)

 坂本龍一のツアーメンバーとしての活躍や、兄のピアニスト、ニールス・ラン・ドーキーとの双頭グループ「ドーキー・ブラザース」で知られるベーシスト、クリス・ミン・ドーキーの新作がリリースされました。
 前作では、デヴィッド・サンボーン、マイク・スターンから、レイラ・ハサウェイまで参加した大作でしたが、今作は、自己のバンド中心を中心に、そこにランディ・ブレッカー、ケニー・ギャレット、ジョン・スコフィールド、小曽根真らのゲストがフィーチャーされる作品となっています。クリスは、コントラバスとベース・ギター両刀使いながら、今作では、コントラバスのみで勝負しています。とはいっても、ストレートなジャズ作ではなく、ヒップなR&Bテイストのファンキーなナンバーや、幻想的で少しフォーキーな感じのする曲が中心で、敢えてカテゴライズするなら、「フュージョン」の範疇に入るようなサウンドです。
 「クリス・ミン・ドーキー・バンド」のメンバーは、クリス(b)ラリー・ゴールディングス(org)ジョージ・ウィッティー(key)アダム・ロジャース(el‐g)ルイス・ウィンズバーグ(ac‐g)クラレンス・ペン(ds)。ここでは、やはり、ゴールディングスのオルガンがファンキー&グルーヴィーで最高です。彼のオルガンを聴くためだけにこの作品をゲットしても損は無いはずです。またリズム・セクションを組む、ペンのドラムも「スコン、スコン」ときまりまくりのカッコ良さです。マイケル・ブレッカーと昨年やってきたアダム・ロジャースですが、相変わらずの線の細さで、これはあんまり関心できません。クリスのベースですが、16ビート系のリズムでの、コントラバスといえば、80年代のガッド・ギャングやステップス・アヘッドなんかでのエディ・ゴメスが思い浮かびますが、テイスト的には通じるものはありますが、残念ながら、その領域には到達していません。しかし、エディほど硬くないややルーズな感じのサウンドは、逆に今の時代の音なのかもしれません。
 前作には、ランディ・ブレッカーの歌&Tpをフィーチャーしたブレッカーズの「ドント・ゲット・ファニー・ウィズ・マイ・マニー」や、レイラ・ハサウェイが歌う「アイ・ジャスト・ワナ・ストップ」などのカヴァー曲があり、大きな話題を集めましたが、本作でも、なかなか面白いというか聴き所のあるカヴァーナンバーが収録されています。1曲は、ランディ・ブレッカーのTpとカトリース・バーンズのVoをフィーチャーした「1999/カンタロープ・アイランド」ともう1曲がブレッカーズの名曲「ロックス」です。ヴォーカル部分はプリンスの「1999」ランディのソロは「カンタループ〜」という技ありのヒップなカヴァーや、久しぶりに聴いた感じのファンク系のジョン・スコのウネウネ・ギターソロをフィーチャーした「ロックス」は、この作品の中でも、特にお勧めのナンバーです。
 なかなか骨のある聴き応え十分のNYフュージョン作です。生楽器の本物のグルーヴが下半身を揺するサウンドです
2000 5.1 Update

★★★★

渡辺貞夫 "Sadao 2000" (Verve)

 貞夫さんの新作「SADAO 2000」は、久しぶりのコンテンポラリー作となりました。
 古くから若い才能のあるミュージシャンとの共演で、新しいサウンドをクリエイトしてきた貞夫さんが、今作のコラボレイターに選んだのが、アフリカ出身の若きベーシスト、リチャード・ボナ。貞夫さんとアフリカン・カルチャーといえば、ブラジルと並んで貞夫さんの生涯のライフ・ワークのような存在なので、ボナとのコラボレーションは、至極自然な成り行きといえるでしょう。
 参加メンバーは、ベース、ギター、ヴォーカルなどを巧みに操るマルチ・インストゥルメント・プレーヤー、ボナを中心にしたシンプルなもので、キーボードに新生ブレッカー・ブラザースでの活躍で知られるジョージ・ホィッティ、ドラムにディヴ・サンボーン・バンドにも参加していたジョナサン・ジョセフ、それに1曲マイク・スターンがギターで参加しています。
 貞夫さんとアフリカ出身のボナとのコラボレーションということで、アフリカン・テイストの強い濃いサウンドかな?と思って聴くと、ボナのヴォーカルをフィーチャーしたナンバーの他は、良い意味でのいつもと変わらないエヴァー・グリーンな魅力の「サダオ・フュージョン」が展開されているのに、少し意外な感じがしました。もちろん「SADAO 2000」というタイトルどおり、リズム・フィギアやアレンジは、確かにアップ・トゥ・ディトな感じですが、貞夫さんのアルトやソプラニーノによるメロディーが出てくると、「マイ・ディア・ライフ」〜「カリフォルニア・シャワー」…の流れのサウンドで、ほっとひと安心です。貞夫さんお得意のボサ・テイストなナンバーもあったりして、いつもながらメロディーを丁寧に慈しみながら吹くサックスは、本当に素晴らしいものです。特にこの作品では、サウンドのまとまりと、そのスケールの大きさという一見すると相反するような要素を高次元でバランスさせており、このあたりは、昨年の共演ライブ以来の「相思相愛」の形で実現したサダオ=ボナのコラボレーションならではといえるでしょう。
 サイドメンでは、ネイティヴな躍動感あふれるボナの活躍は当然ですが、ボナとは対照的に都会的なクールなテイストのホィッティのピアノ&キーボードも、「SADAO 2000」の影の功労者といった感じの活躍です。注目のマイク・スターンのギター・ソロですが、大した事はありません…。
 前作は久々のビ・バップ作「リメンブランス」で、聴き応え はありましたが、よりナチュラルな「サダオ・ミュージック」はこっちのような気がします。個人的には、ここ何作かの貞夫さんのアルバムの中では、一番気に入った作品です。自然で懐の深い貞夫さんのキャラクターが、そのまま音楽になったような素敵なアルバムです。
2000 5.8 Update

★★★★

Scott Wilkie "More Than You Know" (Narada Jazz)

 西海岸のフュージョン系新進ピアニスト、スコット・ウィルキーのセカンド・アルバムが、ファースト作同様ナラダ・ジャズ・レーベルから発売されました。
 ファースト・アルバムとなった前作は、打ちこみメインのスムース・ジャズとは一線を画するアコーステック・ピアノを主体にした80年代近辺の「モロLAフュージョン」的サウンドで、新人の作品ながら「その筋のファン」から高い評価を集めました。今回の新作も、前作同様、生のドラム=ベースのリズムによる湿度の低いメロディアスなLAフュージョンが展開されています。
 収録曲も、ジャコの演奏でも有名なピー・ウィー・エリス作の「ザ・チキン」以外は、ウィルキーのオリジナルなんですが、そのオリジナルのキャッチーなこと。このキャッチーなフュージョンサウンドは、80年代初期のダン・シーゲルを思わせるもので、この「歌モノチック」なサウンドは、日本人には特に受けるところではないかと思います。アレンジも、 ピアノ弾きまくりの曲は無く、適度にギターやサックスのソロをフィーチャーし、おまけに5曲目のファンキーなトラックには、これまた日本人好みのスラップ・ベースのソロまで入っており、この辺も日本人向けなポイントのひとつでしょう。
 参加ミュージシャンは、ウィルキーのバンドのメンバーが中心ながら、ポール・ジャクソン.JR(g)エリック・マリエンサル(sax)アレック・ミルスタイン(b)レニー・カストロ(perc)らが、スパイス的なピリりとしたプレイでサウンドを引き締めています。
 ウィルキーのピアノですが、デヴィッド・ヴェノワ2世といった感じですが、ヴェノワほど湿っぽさはありません。プレイがややワン・パターンというか1本調子な感じもしますが、まだアルバム2枚目の新人ですから、仕方ないところでしょうか。
 70年代後半〜80年代初め頃のフュージョン・ファンには、特にお勧めしたい作品です。インナー・シティ・レーベル時代のダン・シーゲルの再来を思わせるポップ・フュージョンの佳作です。
2000 5.14 Update

★★★☆

Joey Calderazzo "Joey Calderazzo" (Columbia)

 80年代後半に、マイケル・ブレッカーのバンドから流星の如くジャズ・シーンに現れ一躍人気ピアニストとなったジョーイ・カルデラッツォの新作が、ブランフォード・マーサリスのプロデュースで、コロンビアからリリースされました。
 初リーダー作以来、ブルーノート・レーベルの専属アーティストだったのですが、90年代半ばにリストラされ、前作はマイナーレーベルの「オーディオ・クエスト」からのリリースでしたが(内容は、ボブ・ベルデン・アレンジのホーンセクションとの共演によるなかなかの意欲作だった。ジョーイ曰く、ハンコックの「スピーク・ライク・ア・チャイルド」みたいな音にしたかったとか。マイルスの「キリマンジャロの娘」なんかもやってます。今では少し入手が難しいかもしれませんが、見かけたら是非聴いてみてください。)、今作でめでたく?メジャー復帰を果たしました。
 このジョーイ・カルデラッツォというピアニストですが、私は、80年代後半に初めてマイケル・ブレッカーと一緒に来日したときに見ているんです。(その時は、マイケル・ブレッカー:ts,EWI ジョーイ:p マイク・スターン:g ジェフ・アンドリュース:el‐b アダム・ナスバウム:dsだったと思う。)当時からハンコック+マッコイというスタイルながら、良い言い方をすれば「若さほとばしる情熱的なプレイ」悪く言えば「とにかく荒いプレイ」が印象的でした。この勢いを活かしてどんどん前進してゆくか?一発屋で終わるか?のどちらかかなと思っていましたが、その後良い形で成長し、めでたく今に至ったようです。やはり若い時に、上手くまとまり過ぎてるプレーヤーは、どうも限界が来るのが早いみたいで、このジョーイみたいに最初が、あんな感じだと、意外と長持ちするみたいです…。
 現在は、あの故ケニー・カークランドの後任としてブランフォード・マーサリスのバンドに参加しているそうですが、彼のピアノは、ホーン、それもトレーン派のテナーマンとの相性が良く(マイケル・ブレッカー、ジェリー・バーガンジ、ブランフォード・マーサリスなど)、その豪快で重量感のあるピアノは、そんな現代のテナー・ヴァーチュオーゾ達を上手くサポートしています。
 さてさて今回の新作ですが、ホーンとの相性の良いピアニストながら、敢えてトリオで勝負した「ヘビー級」のピアノ・トリオ作となっています。メンバーはジョーイ:p ジョン・パティトゥッチ:b ジェフ・ワッツ:ds。とにかく、ジョーイとジェフ・ワッツのぶつかり合いがもう凄いことになってます。特に4曲目やマイケル・ブレッカーのアルバムに収録されていた7曲目の「スリング&アロウズ」というアップテンポのナンバーでのジョーイやジェフのプレイは、まさに「火を吹く」ような熱さです。それに対しベースのパティトゥッチはやや線が細い感じで、ここは、ロドニー・ウィテカーやクリス・マクブライドみたいな黒人の重量級ベーシストが欲しい気もしますが…まぁこれはこれで良しとしましょう。
 収録曲ですが、ジョーイのモーダルな60年代チックなオリジナル中心で、それ以外は、ビル・エヴァンスの「タイム・リメンバード」とマイケル・ブレッカーの「スリング&アロウズ」となっています。
 今回ジョーイのピアノで一番感心したのが、エヴァンスの「タイム〜」でのプレイです。エヴァンスの曲といえば、どうしてもソフトにリリカルな感じでプレイしがちですが、ジョーイは原曲の良さを活かしつつ、妙にエヴァンスの幻想に惑わされず自分のプレイに徹している感じです。これほどまでに、自分の演奏に対して、自信を持って堂々と演奏するピアニストは、そんなにいないと思います。
 いやいやほんとカッコ良いピアノ・トリオ作です。マジで…。ケニー・カークランド亡き今、黒人と白人という差こそあれど、ケニーの後継者は、彼=ジョーイ・カルデラッツォしかいない!、そんな確信を持たせてくれたコンテンポラリー・ピアノ・トリオの秀作の誕生です。
2000 5.15 Update

★★★★☆

Jay Azzolina "Past Tense" (Double Time)

 スパイロ・ジャイラへの参加や、マイケル・フランクスのサポートなどで知られるNYのギタリスト、ジェイ・アゾリナのニュー・アルバムが、マイナー系ジャズ・レーベル「ダブル・タイム」から発表されました。
 彼のリーダー作といえば、10年ほど前、「アンティリーズ」からリリースされていた記憶がありますが、私が知る限りでは、それ以来の新作ということになります。その内容なんですが、結構コンテンポラリーな雰囲気の作品だったような記憶がありますが…。
 今回の新作なんですが、前作のそんな印象から、コンテンポラリー・ジャズ的なサウンドかな?と思って聴くと、意外と「ジャズ」してるサウンドでした。参加メンバーは、チャールズ・ブレンジーグ(p)ジョン・パティトゥッチ(b)アダム・ナスバーム(ds)クリス・ポッター(ts)。幻想的なコンテンポラリーアレンジに仕立てたスタンダードの「マイ・シップ」1曲に、ジュリー・アイゲンバーグのヴォーカルがフィーチャーされています。収録曲は、オリジナル中心で、曲想はコンテンポラリーながらアコースティックなものです。最近リリースされたジョン・アバークロンビーやボブ・ミンツァー、ジョン・パティトィッチらのプロジェクト「ハドソン・プロジェクト」のサウンドに近い印象です。メンバー全員が白人ということで、サウンド全体のイメージも「白い」感じで、「血沸き肉踊る」というよりも「知性」が勝ったジャズです。
 アゾリナのギターのタッチも、ここでは、淡白なアバークロンビーといった感じですが、「本職」がスタジオ・ギタリストのため、良い意味でもそうでない意味でも器用さが目立ちます。
 サイド・メンでは、テナーのクリス・ポッターが大活躍です。スティーリー・ダンのツアーやレコーディングなどにも参加し、いよいよブレイク寸前のポッターですが、マルチルード奏者ながら、ここではテナー1本で勝負。マイケル・ブレッカーのクローンでは無い、新しいスタイルのコンテンポラリー・テナー・プレイを聴かせてくれています。
 正直そんなにインパクトのある作品じゃないですが、嫌いじゃないサウンドです。NYのスタジオ・ミュージシャンが、今の感覚で作った「ジャズ・アルバム」という感じで、なかなか渋いのではないでしょうか。
2000 5.21 Update

★★★☆

George Benson "Abusolutely Benson" (GRP)

 ジョージ・ベンソンに期待することって何なんでしょうか?。ウェス直系のジャズ・ギタリストとしてのソリッドなジャズを期待する向きもあるでしょうが、私は、「粋」でコンテンポラリーなフュージョン・サウンドを期待してしまいます。「ブリージン」「ギブ・ミー・ザ・ナイト」「ユア・アイズ」…で育った私には、当然のことです。
 何故こんなことを冒頭に書いたかと言うと、「純粋なベンソン」なる新譜を聴いて、「純粋なベンソン」とは?と考えてしまったからなんです。「ブリージン」の恩人であるトミー・リピューマをメイン・プロデューサーに迎え、コアのリズム・セクションにジョー・サンプル(p,el-p)=スティーヴ・ガッド(ds)=クリス・マクブライド(b,el-b)を起用したそのサウンドは、1曲1曲を聴けば、悪くはありません。まぁNYのマスターズ・アット・ワークの連中が手掛けた1曲目のダニー・ハサウェイの「ザ・ゲットー」と中途半端なラテン・ナンバーの2曲目は、プロデュース・チームが安物なのがモロに出た「B級ラテン・ファンク・フュージョン」的なノリですが、7曲目の超渋いベンソンのジャズ・ギターが堪能できるジャズ・バラッド・アレンジのスティーヴィーのカヴァー「レイトリー」(これはおまけにストリングス・アレンジは、アリフ・マーディン!)、ブルージーなレイ・チャールズのカヴァーの8曲目「カム・バック・ベイビー」、9曲目の70年代フュージョン的なベンソン=サンプルの共作など…それなりに良い曲というか聴き所もあります。がしかし…。
 どうも個人的にはパッとしないんですねぇ。これが「純粋なベンソン」?というのが素直な感想です。それは多分私は「ブリージン」〜「ギヴ・ミー・ザ・ナイト」「ユア・アイズ」あたりで育ったためだと思います。その頃のベンソンのサウンドの魅力は、とにかく「粋」なカッコ良さがあったと思うのですが、この新作には残念ながら、その「粋」さを全く匂わせてくれないんです。76年の「ブリージン」以前のファンと今の「クラブ系」的な軽薄なリスナーを同時につかもうとした作品のような気がしますが、そこが作品のイメージを中途半端なものにしているようです。また収録曲が、「ラテン・ファンク系」「ジャズ系」「70年代フュージョン系」「ブルース系」とはっきり分けれてしまっているのも、アルバム全体の印象をバラバラにしている原因の一つでしょう。70年代後半〜80年代前半のグルーヴィーで「粋」なサウンドはもう期待できないんでしょうか?。
 ジョージ・ベンソンという人は、根っからのパフォーマーなんだと思います。逆に言えば、プロデュースやパッケージングなどには向いていないということです。この作品は、トミー・リピューマがメイン・プロデュースながら、商人に成り下がったリピューマのダサいパッケージングで随分損をしていると思います。ベンソンのオッチャンは…。次作は、最先端を行くか?ナタリー・コールみたいなゴージャスなスタンダード路線か?のどちらかで、今作のような「中途半端」は勘弁してほしいです。
2000 5.28 Update

★★★

Bonny James/Rick Braun "Shake It Up" (Wea)

 ボビー・コールドウェル・バンド出身のサックス奏者ボニー・ジェイムスと、シャーデーなどのツアーで頭角を現したトランペッター、リック・ブラウンという2人のスムース・ジャズ系の人気プレーヤーのダブル・クレジット・アルバムがリリースされました。
 この2人といえば、スムース系の人気プロデューサー、ポール・ブラウン絡みなども共演していますが、何と言っても印象的だったのが、昨年(1999年)のモントルー・ジャズ・フェスにおける「ワーナー・オールスターズ」でのパフォーマンスでしょう。このスペシャル・ユニットは、カーク・ウェイラム(ts)をミュージカル・ディレクターに、ボニーとリックを初め、サックスには、カーク・ウェイラムとケニー・ギャレットが、ギターには、ラリー・カールトンが、キーボードにはジョージ・デュークという、まさにオールスター・キャストというべきメンバーによるジャム・セッションでしたが、2人のメロウ&グルーヴなパフォーマンスは、凄腕のリアル・ジャズメン達の中でもキラリと光っていました。
 さてこの作品ですが、プロデュースは、ポール・ブラウンとボニー・ジェイムス(一部の曲で、リック・ブラウンもコ・プロデュースを担当。)。サポート・ミュージシャンは、ディヴィッド・トカロノフスキー、ダリル・スミス、カール・バーネット(key)ポール・ジャクソンJr、ロン・ローレンス、トニー・メイデン(g)ラリー・キンペル、アレックス・アル(b)リル・ジョン・ロバーツ、ゲイリー・ノバック(ds)ポリーニョ・ダ・コスタ(perc)フォープレイ…等というLAのファースト・コール達。曲の雰囲気ですが、ポール・ブラウン=ボニー・ジェイムスのプロデュースということで、ボニーのソロ作を思わせるミディアムなメロウ&グルーヴ・ナンバーが中心ですが、リズム・セクションをライブのドラムとベースを使った曲が多いので、ソリッドなグルーヴ感が強調され、良い意味でフュージョンらしく仕上がっているようです。収録曲ですが、オリジナル中心ですが、1曲ホレス・シルヴァー!の「ソング・フォー・マイ・ファーザー」がミディアムな渋いスムース・ジャズ・アレンジでカヴァーされてます。また今作の目玉のひとつであるフォープレイとの共演ですが、さらっと聴くと、どこがフォープレイ?みたいなバッキングですが、良く聴けば、ラリー・カールトンやボブ・ジェイムスのリフがチラッと聞こえるというムチャ渋なコラボレートです。
 いやいやボニー・ジェイムスのサックスが今作では、更にに良くなった感じです。この種のジャンルのサックス奏者は、黒人/白人を問わず、皆ケニーGフォロワーになってしまっている中、ボニーは、昨年12月他界したグローヴァー・ワシントンJRの後継として最右翼であることを確信させてくれます。骨のあるテナーと流れるようなメロディー・ラインのアドリブは、スタイルの差はあれど、グローヴァーの持っていた魅力と共通するものがあります。リックのペットも、ハーブ・アルパート2世みたいなポップな雰囲気で、スムース系ではやや珍しい楽器ということで、これからも伸びてゆきそうな感じです。
 ブレッカーズ以来、サックス&トランペットのコンビネーションといえば、ありそうで実はあんまり無かった印象ですが、やはりカッコイイ組み合わせです。今年上半期のスムース・ジャズの中でも、かなりの上位にランクするであろう上質な作品です。スムース・ジャズ/フュージョン・ファンには、必聴アイテムです。
2000 5.29 Update

★★★★

は1(最悪)〜5(最高)です。
感想を書きこんでいただければ幸いです。

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