Swingroove Review

December



Djavan "Ao Vivo"

 ブラジルを代表するシンガー・ソング・ライター、ジャバンの新作がブラジル盤で到着しました。(日本へは10月頃初回入荷したようです。日本盤のリリース日時は未定です。)この作品は、2枚組ながら、1枚ずつの単品でもリリースされていますが、2枚買うと割高になりますから、ファンは2枚組を探してゲットしましょう。
 この新作は、1999年7月に、リオ・デ・ジャネイロで収録されたライブ盤となっています。
 ブラジルでは昨年(国内リリースは今年の6月)発売された「ビッショ・ソルト〜放たれた野獣NO.13」のカヴァー・ツアーだと思いますが、その新作からは、2曲ほどしか収録されておらず、その他の収録ナンバーは、80年代からのジャバンのヒット・ソング大会のようになっています。
 「サムライ」「アズール」「オセアーノ」「アサイ」「ジーナ」…などのヒット・ナンバーを、故郷ブラジルでのリラックスした雰囲気のライブ・バージョンで、聴かせてくれます。
 サポート・メンバーは、日本では無名のブラジル人ミュージシャンばかりですが、ジャバンのヴォーカルとアコーステック・ギターを中心にしたまとまりのある演奏となっています。
 ジャバンやカエターノ・ヴェローゾ、イヴァン・リンスなどのブラジル人アーティスト達は、結構日本でも知られる存在となりましたが、アメリカやヨーロッパ経由の情報や話題が多く、なかなかブラジルでの彼らの活躍ぶりをダイレクトに伝えるものは少ないと思います。このジャバンのライブ盤は、故郷ブラジルでの活躍ぶりをおおいにアピールする作品といえるでしょう。2枚組で約5000円と割高に思えるブラジル盤のジャバンの新作ですが、ファンはもちろん、これからブラジル音楽やジャバンの音楽を聴こうという初心者にもお薦めできる心地よいポップな1枚です。
12.5 Update

★★★☆

Brandan Fields "Fields & Strings"

  初期リッピントンズでの活躍や、クインシー・ジョーンズを初めとする多くの大物アーティストとの共演で知られるLAのスタジオ・シーンのファーストコール・サックス・プレイヤー、ブランダン・フィールズ。
 日本のヴィーナス・レーベルからリリースされたスティーヴィー・ワンダー集以来、約2年ぶりとなる新作が、「PARAS Recording」なるマイナー・レーベルからリリースされました。
 最近では、バジー・フェイトン(g)らとともに、ディヴ・ウェックル(ds)のグループに参加して、ファンキーなサックスを聴かせてくれたブランダンですが、この新作では、タイトル通り、ストリングス・セクションとの共演によるアコーステック・ジャズ作となっています。
 参加メンバーは、彼の嫁さんであるジーナ・クロンスタットがコンサート・マスターをつとめるストリング・セクションと、ブランダン(as,ss)アラン・パスクァ(p)ディヴ・カーペンター(b)ピーター・アースキン(ds)というカルテットが中心で、サックスセクションには、ボブ・シェパードやダン・ヒギンズも参加しています。
 収録曲は、ウィズ・ストリング作らしく、「ミスティ」や「ルック・オブ・ラブ」「ラバーマン」「サマータイム」「エンジェル・アイズ」「オールド・デヴィル・ムーン」それに「ホワット・ア・ワンダフル・ワールド」…スタンダード中心です。
 ほとんどの曲には、当然ながらストリングス・セクションが参加していますが、ブランダン・フィールズ=ディヴ・カーペンター=ピーター・アースキンのトリオで演奏される「サマータイム」や「オールド・デヴィル・ムーン」は、ちょっとモーダルなアプローチで聴かせてくれており、甘口なサウンドが中心の作品の中で、ちょっとしたスパイス的な役割を果たしている感じです。
 またカルテットとサックスセクションによる「4月の思い出」も数少ないアップ・テンポのスウィング・ナンバーで、ブランダンの縦横無尽に駆けまわるフットワークの軽いアルト・ソロを堪能できます。
 その他のナンバーは、少ししゃくりあげる感じが特徴のブランダンのアルトやソプラノで、それらのスタンダード・チューンを丁寧な感じでしっとりと聴かせてくれます。
 また、アラン・パスクァのピアノやピーター・アースキンのタイコが、随所で職人的なすばらしいサポートを聴かせてくれている点も聴き逃せません。
 ブランダン・フィールズといえば、西海岸のサンボーン的なイメージで、ファンキーなイメージが強い人ですが、この作品では、リアル・ジャズ・プレイヤーでもある、彼のもうひとつの側面にスポットを当てた1枚です。ジャズとは言っても、ゴリゴリのジャズではなく、60年代後半のCTIやヴァ‐ヴのような、良い意味でのイージーリスニングっぽい感じなので、フュージョンのブランダンが好きなファンにも楽しめる作品です。
 ただファンキーなブランダンがまた恋しくなったのも事実なので、次作は、ファンキーなフュージョン作を期待してしまいます。
12.8 Update

★★★☆

Jaco Pastorius Big Band "Twins T&U"

 中山康樹氏著の「新・マイルスを聴け」の中で、日本人の無編集・ノーカット版を有難がる現状を諭しているページがありましたが、このほど、めでたく2枚組となって復刻された「Twins」を聴いて、そのことを改めて思い出しました。
 「Twins」のリリース後83年に、アメリカで発売するために、1枚組に編集した作品「インヴィテイション」が、92年にCD化されましたが、 この2枚組の「Twins」は、アナログ盤が廃盤となって以来、一度もCD化されることなく店晒しにされていた作品です。
 実は私は、この2枚組の「Twins」は完璧に聴いたことが無く、今までは編集盤の「インヴィテイション」でこのライブの模様を知るしかなかったのですが、今回初めて、完全な「Twins」を聴いて、冒頭の感想となった訳です。
 このジャコのビッグバンドは、名盤「ワード・オブ・マウス」をライブでパフォームするためのバンドなんですが、あのジャコの思い付きとインプロヴィゼイション、それに絶妙なテープ編集により生まれた奇跡のような音楽をライブで再現するのは、かなり無理があったのではないかと思います。
 「ワード・オブ・マウス」以降のジャコは、すでに相当イッておりプレイが散漫でダラダラとした部分もあることから、ライブ盤を作品として成立させるには、ある程度の編集が必要だったように思います。
 「インヴィテイション」では、カットされていた「エレガンス・ピープル」やカットされていたソロ・パートなどをCD化された「Twins」で聴いても、正直必然性のあるトラックとは言えないと思います。  ジャコの死後、雨後の竹の子のように、イッてしまった後の未発表音源が、リリースされましたが、そのほとんどが、ジャコの栄光に泥を塗るようなものばかりです。
 その未発表作品の中で、唯一すばらしいと思うのが、「バースディ・コンサート」(WEA)のみです。
 この「Twins」ですが、コンサートの記録としての価値では、確かに2枚組の方が上でしょうが、作品としての価値は、「インヴィテイション」の方が上だと、私は思いました。  「インヴィテイション」は上手く編集されていたんだ、ということを改めて実感させられました。
 ジャコのソロ活動の記録は、たくさんの公式・非公式なアルバムの形で存在しますが、ファーストアルバム「ジャコ・パストリアス」セカンドアルバム「ワード・オブ・マウス」以外は、ジャコ・マニア以外は、極論を言えば聴く必要はないと思います。それだけ、これらの2枚の作品が飛びぬけて素晴らしいということの裏返しなんですが…。(数々のブートレグなどを聴いた上での結論です。)
 最後にこの「Twins」ですが、「インヴィテイション」を持っている人はあえて買う必要はありません。またこのコンサートの様子を知りたいという人にも、作品のまとまりを重視するひとには、あえて「インヴィテイション」をお勧めします。
 私のジャコへの感動はファースト作1曲目の「ドナ・リー」がすべてです。
12.13 Update

★★★

Azymuth "Pieces Of Ipanema"

 ブラジルを代表するジャズ/フュージョン・グループ、アジムスの最新作が、前作同様、UKのFaroutレーベルからリリースされました。
 アジムスといえば、NHKの人気FM番組「クロスオーヴァー・イレブン」のテーマソングに、彼らのナンバー「フライ・オーヴァー・ザ・ホライズン」(79年のアルバム「ライト・アズ・ア・フェザー」に収録されてます。)が使われていたことでもよく知られています。
 80年代前半は、マイルストーン・レーベルからリリースされていたので、日本でも彼らの音楽の様子が、比較的コンスタントに伝わってきましたが、80年代後半以降は、邦盤リリースが無くなったため、活動の様子があまり伝わらなくなりました。80年代後半イギリスのクラブ・シーンで、「ジャズ・カーニバル」というナンバーがリバイバル・ヒットしたことがきっかけとなり、イギリスを中心に再評価を集めるようになり、日本でもクラブ系の人間を中心に再び人気を集めるようになりました。前作、前々作とリリースしているFaroutレーベルもクラブ系の音楽を多くリリースしているレーベルです。
 さてアジムスといえば、ホセ・ロベルト・ベルトラミ(key)アレック・マルエイロス(b)イヴァン・コンチ(ds)という不動のトリオによるグループで、アレック=イヴァンの緩いグルーブにのせて、ベルトラミのフェンダー・ローズとシンセがゆらゆらと漂う感じのサウンドが魅力ですが、最新作でもその伝統的な魅力は引き継がれています。
 1曲目のアルバム・タイトル曲の、クラブっぽいテクノ風ビートには少々戸惑いましたが、2曲目を聴くと安心しました。いつもの感じです。3曲目以降もゆったりとしたクールなボサ・フュージョンが続きます。4曲目のナンバーが彼らの当り曲「ジャズ・カーニバル」にそっくりなのはご愛嬌ですが…。今作では、ヴォーカルやギターが所々でフィーチャーされているのが、やや目新しい所でしょうか。
 レビューだけにいろいろと理屈をつけて誉めたり批判したりしないといけないのですが、このアジムスの音楽については、そんな理屈抜きに「気持ち良い」というひとことに尽きると思います。「クロスオーヴァー・イレブン」のテーマで、「あぁ…この音いいなぁ〜」と思った方は是非一度このグループの音楽をじっくりとお聴きになることをお薦めします。
 最後に蛇足ながら、ジャケットを飾るイパネマ海岸の写真の数々を見て、約1月間滞在したブラジルのリオ・デ・ジャネイロが懐かしくなったことを付け加えておきます。(内容には関係ないですが…)
12.15 Update

★★★

Harvey Mason "The Best Of Harvey Mason"

 スティーヴ・ガッドとともに世界のセッション・ドラマーの頂点を極め、近年ではフォープレイのメンバーとしても活躍するハーヴィー・メイソンの70年代後半〜80年代初期にかけてのArista時代のソロ・ワークのベスト作が、何故か今ごろBuddhaレーベルからリリースされました。
 当時のハーヴィー・メイソンといえば、リー・リトナーのジェントル・ソウツへの参加を初め、LAとNYを又にかけジャズ〜フュージョン・シーンからソウル、そしてディヴィッド・フォスター系のAORシーンまで…鬼のようなセッション活動を行っていた頃で、ソロ・ワークもそんな広範囲な活動を反映させたバラエティ豊かなサウンドとなっています。
 ハーヴィー・メイソンといえば、ドラマーとして卓越した才能を持っているだけでなく、リー・リトナーのAOR作の名盤「Rit」のプロデュースを手掛け成功をおさめるなど、プロデューサーとしての側面を持ったミュージシャンだけに、ソロワークにおいても、変にドラマーのリーダー作ということを意識させることの無いグルーヴ感いっぱいなポップサウンドとなっています。
 このベスト盤には、75年の「マーチング・イン・ザ・ストリート」から81年の「MVP」までの5枚のアルバムからセレクトされており、「マーチング〜」の頃のフュージョン・テイストが強い時代のから、70年代後半から80年代初期のようなEW&Fばりのダンサブルなディスコ・テイストまで、当時のコンテンポラリー・サウンドを網羅したようなセレクトとなっていますが、トータルな印象はやはりタイトルにもあるように「グルーヴ」を大切にしたセレクトになっているようです。
 個人的なお気に入りは、やはり77年の「ファンク・イン・ア・メイソン・ジャー」からのトラックで、ディヴィッド・フォスターやTOTO系のミュージシャンが参加したAOR〜ソウルなヴォーカルナンバー「ティル・ユー・テイク・マイ・ラブ」ジョージ・ベンソン、ロニー・フォスター、ホルヘ・ダルト、スタンリー・バンクスという当時のベンソン・バンドがそのまま参加した(当時ベンソン・バンドのレギュラードラマーでした。)マービン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイング・オン」ジェントル・ソウツの名演でおなじみで、ディヴィッド・T・ウォーカーとEW&Fのヴァーダイン・ホワイトの渋いプレイが光る「リキッド」という3曲がセレクトされていますが、どれも70年代フュージョンの歴史に残る名演奏です。
 このベスト盤を聴いていると、クロスオーヴァーからフュージョンへと名称変更しながら発展していった当時のフュージョンの進歩の過程をそのまま示しているような感じがしました。また逆に80年近辺の薄っぺらいディスコ調のトラックを聴くと、なぜフュージョンが廃れたのかもわかるような気がします。
 作曲、プロデュースとドラマーとして以外にも優れた才能を発揮するハーヴィー・メイソンですが、95年に「ラタマキュー」を発表して以来、フォープレイにかかりきりといった印象がありますが、これだけトータルな才能をもったドラマーは稀有な存在なので、早く次の新しいソロ・プロジェクトを進行させてもらいたいところです。
12.18 Update

★★★☆

Steps "Smokin' In The Pit"

 1979年、当時ブレッカー兄弟も経営に参加していたというNYのジャズ・クラブ「セヴンス・アヴェニュー・サウス」(「セヴンス〜」や「ミッケルス」などフュージョン系ジャズ・クラブが昔はNYにもあったんですが…今はどちらもありません。)でのギグにより自然発生的に結成されたステップス。マイク・マイニエリ(Vib)マイク・ブレッカー(ts)を中心に、ドン・グロルニック(p)スティーヴ・ガッド(ds)エディ・ゴメス(b)というノン・リーダーのクインテット(まぁ実質的にはマイニエリとブレッカーの双頭バンドですが、表向きはリーダーがいないことになっています。)でスタートしたステップスは、当時フュージョン系のミュージシャンと思われていた彼らのジャズにおける凄まじい底力を見せつけられました。また沈滞気味だったジャズ/フュージョン・シーンに、アコースティック・ジャズという一見レトロなスタイルで切り込んでいったことは、80年代以降ウィントン・マーサリス一派がネオ・ハードバップでジャズの流れを創っていった歴史を考えても、凄く意義のあったことだと思います。
 ステップスは日本コロンビアに3枚のアルバムを残し、82年にエレクトラ/ミュージシャンに移籍し、アメリカに同一名称のグループが存在したということで、グループ名を「ステップス・アヘッド」に変更し、サウンドの指向をややコンテンポラリーよりに傾けながら新たな一歩をスタートさせたのでした。
 さて前置きが長くなりましたが、この「スモーキン〜」は1980年に日本コロンビアよりリリースされたステップスの歴史に残るファースト・アルバムで、1979年12月六本木ピットインで収録された2枚組のライブ盤となっています。
 日本ではQ盤として今でも日本コロンビアからリリースされていますが、こちらのマイニエリが主宰するレーベルNYC盤では、別テイクとアディショナル・トラックが5曲!も追加収録されています。「フォールティ・テナーズ」や「ノット・エチオピア」(ギターの渡辺香津美抜き)の別テイクの他に、後にマイニエリのソロ・プロジェクトでも演奏している「アンクル・ボブ」とグロルニック作の思索的なピアノソロ曲の「モーメント」それにジョー・ヘンダーソンの名曲「レコーダミー」がニュートラックとして収録されてますが、その中でも「レコーダミー」が凄いんです。ガッド=ゴメスの8ビートによるファンキーなリズムをバックに、ブレッカーが吹きまくってます。鋭角的にキレまくるブレッカーのソロは、錆びたナイフみたいに切れ味の無くなった最近のソロとは雲泥の差があります。またブレッカーの後、ガッドのドラム・ソロなんですが、これもガッドのベスト・パフォーマンスのひとつにあげてもおかしくない名演です。ゴメスのコントラバスも、後の「ステップス・アヘッド」や「ガッド・ギャング」でも感じたのですが、「こんなファンキーなリズム、コントラバスじゃ無理やろう?」というフレーズを難なくこなしてます。(「ノット・エチオピア」でのゴメスのベースも要注意です。)
 とにかくメンバー全員のベスト・パフォーマンスが楽しめる作品で、特に故ドン・グロルニックのすばらしいジャズ・ピアノはこの作品の隠れた魅力のひとつでしょう。メンバー全員の一番脂ののった時期をシューティングした名盤中の名盤です。30代以上のファンには、おなじみの作品ですが、まだ聴いたことの無い若いファンの人でも、参加メンバーの一人でも気になる人がいれば絶対に聴いてみてください。彼らの凄さを実感できるはずです。
 この2枚組のNYC盤はプレス枚数が少なく入手がやや難しいそうですが、是非見つけたら即ゲットで聴いてみてください。また、ステップスの音源の版権がNYCに移ったようで、「パラドックス」「ステップ・バイ・ステップ」というスタジオ盤を2枚組にして、アディショナル・トラックを追加してリリースするという予定もあるそうです。
 再発作品ながら、追加トラックの素晴らしさを含めて久々に5つ星を進呈したいと思います。2枚組で140分以上にわたって素晴らしい感動と興奮が持続します。あぁ〜やっぱりカッコええわ!。
12.19 Update

★★★★★

Yellowjackets "The Best Of Yellowjackets"

 1981年にロベン・フォード(g)のセッションがきっかけとなり結成されたフュージョン・グループ、イエロージャケッツ。結成当初のメンバーは、リーダーのラッセル・フェランテ(key)ジミー・ハスリップ(b)リッキー・ローソン(ds)ロベン・フォード(g)で、1981年、トミー・リピューマ制作のアルバム「イエロー・ジャケッツ」(WEA)でデビューを果たしました。その後、ウェストコースト・フュージョンタッチの作品をWEAに3枚残し、86年MCAへ移籍。MCA〜GRP時代は、ウェザーリポートをも彷彿とさせるコンテンポラリー・ジャズ指向のサウンドで、軟弱なフュージョン・グループというイメージを一新させました。94年には古巣WEAへの復帰を果たし、結成当時の聴きやすいAORチックなフュージョン・サウンドとMCA〜GRP時代のハードなコンテンポラリー・ジャズ・テイストを融合させたアップ・トゥ・ディトなサウンドを聴かせてくれています。
 今回リリースされたこのベスト盤は、WEA時代の音源をコンピュレートしたもので、1981年〜1985年と1994年〜1998年という2つの時代の作品からセレクトされています。ある意味で一番聴き応えのあったコンテンポラリー・ジャズ指向を強めていたMCA〜GRP時代の作品が抜け落ちているため、この1枚でイエロージャケッツというグループの全貌を知るという訳にはいきませんが、その分かなり聴きやすいポップなベスト盤となっています。
 メンバーは、リーダーのラッセル・フェランテとサウスポーのベーシスト、ジミー・ハスリップは不動ながら、その他のメンバーは時代毎にチェンジしており、その他の歴代レギュラーメンバーは、マーク・ルッソ(sax,1985-1989)ボブ・ミンツァー(sax EWI,1990-)リッキー・ローソン(ds,1981-1986)ウィリアム・ケネディ(ds,1987-1998)などで、今作には収録されたトラックは無いものの現在ピーター・アースキンがレギュラー・ドラマーをつとめています。
 まぁMCA〜GRP時代が収録されていないとは言え、「ホーム・カミング」や「インペリアル・ストラット」「クレアーズ・ソング」などの現在でもライブなどで演奏する当り曲も入っているので、彼らのベスト盤としてはまずまずのセレクトにはなっています。特に「インペリアル〜」は、後にコンテンポラリー・ジャズ化してゆくグループのサウンドを先取りしたしたようなもので、今聴いても古さを感じさせません。個人的にはマーク・ルッソのメロウなアルトが光る1985年の「ダディーズ・ゴナ・ミス・ユー」(後にボビー・コールドウェルが「ショウ・ミー・ユア・ディヴォーション」として歌っているナンバーのオリジナルバージョン)やジミー・ハスリップのスラップ・ベースのグルーヴィーなリズムがたまらない1983年の「トップ・シークレット」(この曲も後に、コーラス・グループ、ニューヨーク・ヴォイセスがヴォーカル・ナンバー化しています。) など、初期のポップな時代のナンバーがしっくりときました。
 また1997年録音の未発表音源も1曲だけ収録されていますが、何かのテーマみたいなスロウで地味な小曲なので、この曲目当てに買うと痛い目にあいます。
 グループ結成が1981年といえば、約20年ものキャリアを誇るグループ、イエロージャケッツを手っ取り早く知ることのできるベスト盤です。私もこのベスト盤で、改めて彼らのサウンド聴きなおしてみて、意外と(失礼?)中身の濃い音楽であるということを再確認しました。20年近くのキャリアはやはり伊達ではありません。
12.19 Update

★★★☆

は1(最悪)〜5(最高)です。
感想を書きこんでいただければ幸いです。

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