らくがき帖〜音楽編


12.Tunnels with Percy Jones & Sixnorth 京都公演 2004年2月1日 Live Spot RAG 

 久々にかなりマニアックなライブに参加.
 まあ,Percy Jonesは元Brand Xの知る人ぞ知る凄腕ベーシストだし,Sixnorthも地元京都を中心に日本のジャズロック界では実績のあるグループなんですが...そもそもの所属ジャンル自体がマイナーですからね.一般の方々への知名度は皆無かな?

 とは言え,演奏内容はどちらのグループも素晴らしいものでした.が,その持ち味は見事に対照的.
 全体のまとまり,構成力などが最大の聴かせどころだと感じたSixnorthと音そのものの存在感で圧倒したTunnels.ジャズロックの持つ魅力の両極端をおなじ空間で味わうことができ,非常に得した気分になれました.

 もう少し補足すると,ゲスト・メンバーを加え7人編成の構成美を聴かせてくれたSixnorthは,個々のメンバーがテクニック的に素晴らしいことを前提として,やはりバンドとして,曲としての完成度の高さが魅力.実は思わず帰りにニュー・アルバムを買ってしまったのですが,やはりアルバムでゆっくり聴きたいと思わせる内容でした.

 対するTunnelsは...はっきり言って曲名なんかどうでもいいですね(笑)アルバムもTunnels名義のアルバム3枚のうち2枚持ってますが,パッと聴いても曲名は思い出せませんでした.つまり構成美・構成力という点ではSixnorthには一歩譲ると思います.が,しかし!生で聴くその迫力は生半可なものではありません.もちろん音が大きいとか生だから迫力あるとかのチャチな理由ではありません.自分の言葉ではうまく言えませんが,「ジャズに名曲なし.あるのは名演のみ」という有名な格言が自然と思い出される素晴らしいステージでした.
 まさに”ジャズロック”のもつ魅力の多様性(今回は両極端な面)を改めて感じさせてくれたライブだったと思います.

 さて,当日は開場時間少しすぎてRAGに到着.前売りを早めに買っていたので,すんなりと最初の方で入場.真ん中あたりの落ち着ける席を確保.マンウォッチングというか会場全体を見渡し,当日の客層を観察(趣味悪いですけど,けっこうライブの楽しみの1つ.笑)...老夫婦から学生風までバラバラ.年齢層だけでなく,プログレやジャズロック好きというマニアックな方々が案外少ない印象.やはり地元バンドSixnorthの関係者・知り合いの方々が多いのか.いつものライブとは”ちょっと雰囲気違うけど,なんか懐かしい”って思っていたんですが...思い出しました.学生時代友達の出るコンサートで感じたアットホームさとダブるんですね.

 そんなこんなで時間を潰しているうちに,まずSixnorthの面々が登場.メンバーはゲストの女性コーラスを含めた7人.

島秀行:bass
小田島伸樹:guitar
清野拓巳:guitar
松田"Gori"広士:drums
浦千鶴子:vo
飯田一樹:key
吉本史:cho

 ニューアルバム「PRAYER」からの曲「Magnetic factor」(たぶん)で幕開け.この時点ではニューアルバムは未聴だったのでほとんどの曲は初めて聴いたのですが,前述したようにどの曲も聴き応え充分.もちろん演奏自体のしっかりしているからこその構成美なんですけど,やはり全体のまとまりというのが際立っていました.
 それでも敢えて言うなら,ダブル・ギターの二人の演奏がとくに印象的.家でCDを聴くとギターが特別印象に残るわけじゃないのですが,ライブでの存在感は抜群でした.それとかなり硬質なインタープレイとは対照的なjazzyな雰囲気の女性ヴォーカルも耳に残りました.

 約1時間半ほどのライブが終了して,ステージの準備のために小休止.この間を利用してトイレに行ったのですが,会場は押すな押すなの人だかり.この辺が小さいライブハウス特有の熱気が感じられて,個人的には凄く好きな雰囲気でした.


 会場の雰囲気も落ち着き始めた頃,当初のお目当てTunnelsの面々がステージに登場.しばらくゴソゴソと最終チェックをした後,客席のライトが落ちてライブ・スタート.
 最初の音が鳴り響いた瞬間...いや,なんと形容していいのか.会場の空気感ががらっと変わってしまいました.テクニックが凄いのは疑う余地はありません.Percy Jonesだけが凄いのではなく,他のメンバーも一流.でも,はっきり言ってそんなことは気にならないんです.そんなレベルとは少し違う”何か”が発散されているんです.

 最初に書いたように,Tunnelsの曲が特別素晴らしいメロディーラインを持っているかというと...けっしてそんなことはありません.家でCD聴いていても,”凄いなぁ”,”痺れるなぁ”とは思っても,”この曲なんて名前?”とは思わないんですよ.ぶっちゃけた話,曲目なんてどうでもいいというのが正直な感想.

 同じような感覚はジャズの名盤を聴きかじっている時によく感じます.わたしは特別耳の肥えたジャズ・ファンではないので,巷で評判のいわゆる名盤や名録音を聴いたり,時々ジャズ・バーの生演奏を聴いたりするぐらい.でも,理屈や知識なしでも”いいなぁ”と思うことはしばしばあります.そんな時って,曲名やメロディーなんてどうでもいいことが”なぜか”多いんです.この”なぜ”が理解できれば,本物のジャズ・ファンなんでしょうが,エセ・ファンにはまるっきり分かりません(笑)

 そこで前述の格言.「ジャズに名曲なし.あるのは名演のみ」(正確にこの通りだったかどうか忘れたけど...) なかなか奥の深い言葉だし,異論も多々ありそうですけど,自分がジャズから受ける感動をうまく表現してくれているように思っています.

 今回はその言葉を肌身で感じさせてもらった感じです.言葉に出来ない”何か”を発散し,感じさせてくれたTunnelsに感謝.
 最後に今回の来日メンバーを.

Tunnels
Percy Jones : fretless bass
Marc Wagnon : MIDI vibes
Lance Carter : drums
 

 何れ劣らぬ強者揃いという面々でした.しかし,今回MIDI vibesという楽器の生演奏を初めて体験.木琴?鉄琴型シンセサイザーというか何というか...いや,おもしろかった(笑)ちなみに,ドラムは最新アルバム「Progressivity」に参加していたFrank KatzからLance Carterに変わっています.


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