らくがき帖〜音楽編
新しい出会いを求める気力に欠ける今日この頃.Flower Kingsはプログレ系の雑誌で特集が組まれるほど注目されている現役・実力派ですが,最近まで聴いたことはありませんでした.
ところが幸運に恵まれ「Stardust we are」をようやく聴くことが出来ました.
まず,ベスト盤でもライブ盤でもないのにCD2枚組の大作というヴォリュームに圧倒されます.内容も25分に及ぶタイトル・ナンバーを筆頭に,一口で言い表すのが難しいほどバラエティーに富み,噂に違わぬ実力披露しています.
全体の核となるのはロイネ・ストルトのギターであり,明るく,華やかな雰囲気が全篇を支配しているので,聴いていて心地よいというのが第一印象.
各々の楽曲も全体の構成も緻密に作りこまれているし,テクニック的にも高いレベルにあるので,音楽的にはピンと張詰めた側面も併せ持っています.“心地よい”=“フワフワとした甘い雰囲気”とはぜんぜん違います.しかし,やっぱり最初から最後まで楽しい気分で聴くことが出来ます.
はっきりとは自分でも説明できないのですが,いくつか思い当たる理由はあります.
第一に,メロディーラインはどの曲も秀逸.
それに各楽器もギターを筆頭にノビノビと響き渡っているように感じることも心地よい一因.どの曲も甘ったるいわけではないですが,ほんのりとした温かみが感じられます.
一方,大作も含まれますが,壮大な叙事詩といった肩肘張った雰囲気はありません.神経を逆なでしたり,ギリギリと緊張感を高めたりといった要素もありません.「アヴァンギャルドではない」とも言えるでしょう.
じゃあ,このアルバムはレベルが低いのか?凡庸なのか?
否!ものすごく聴き応えのあるハイ・レベルの作品.
いかにもアヴァンギャルドといった音楽だけがプログレッシブ・ロックではないはずです.....って,“このフレーズどこかで書いたことあるなぁ”と思ったら,Greensladeのとこで書いた文章そのままですね^^;
両者の音楽性は違いますが,“膨大なアイディアや高い演奏力・構成力を秘めながら,そんな舞台裏は微塵も感じさせず,さりげなく心地よい気分にさせる”,どちらもそんな感触を持っているように思います.
実を言うと,Flower Kingsのレビュー,「Stardust we are」のレビューを書こうとしても,なかなか進まずえらい苦労しました.もちろん,筆力のなさと乏しい感性が主因なのは間違いないんですが,CDの内容にもすこし原因があります.
まず,わたしが持っている「北欧」というイメージとFlower Kingsの音楽との間にものすごい隔たりがあったこと.
わたしの「北欧」へのイメージはかなりステレオ・タイプで,雪と氷,厚く垂れ込める雲,厳しい寒気,澄みきった空気と水,白夜とオーロラ.みごとに暖かいとか華やかといったイメージがないんですよね.それに北欧のバンドといえばAnekdotenのように暗く陰鬱なものが真っ先に思い浮かぶし.....
さらに,雑多な要素の音楽がCD2枚組と言う分量に目一杯詰まっているということも,スカッとレビューが書けない要因.個人的には中近東やラテン・アメリカの風景が思い浮かぶ(笑)場面もあるほどワールド・ワイド.反面,北欧を思い浮かべた個所はほとんどないという始末^^;
あとは前項と関連があるけど,あまりにも膨大な内容が詰込まれているということ.たしかにこれだけ豊富なアイディアを収めるにはこの分量が必要だとは思う.途中でダレルとか,飽きるとかいうこともなく最後まで聴かせる力もある.でも...個人的にはやっぱり膨大過ぎて,焦点がぼやけている感が拭えません.
最高の音楽を敢えて削る.ある面,アーティストとしてはもっとも苦痛を伴う作業の末に生み出された濃縮果汁のような作品も聴いてみたい気がします.....が,次作の「Flower Power」も2枚組みたいだなぁ(笑)