らくがき帖〜音楽編


2.Renaissance 大阪公演 2001年3月13日 BIG CAT

 いきなり結論ですが,”最高”でした.バンドに対する思い入れ,観る場所etc...いくつか要因があるとは思いますが,それらを差し引いても素晴らしい内容でしたね.昨秋のKing Ceimson の大阪公演よりパフォーマンスは上でした.わたしはCrimson とRenaissance どちらが好きかハッキリしろと言われれば,Crimson と答えますが,今回の来日公演に関しては別.それほど見事な内容でした.では,さっそくライブ・レポートのほうを進めていきます.

 会場時間の6時きっかりにBIG CATに到着すると,すでに人の列.整理番号順に呼ばれるので,しばし待機ののち入場.さっそくパンフレットを購入.3,500円也.高い!が,気を取り直して会場内へ.all standing なので早々とドリンクを確保し,前のほうで張り付くことにする.開演前から1時間立ちっぱなしも疲れるが,良い位置を確保するためには仕方ないですね.とくに連れは身長あまりないので,後ろだと話にならない.正面やや左よりの3,4列目に陣取ることに成功.
 時々会場を見渡してみると,観客の年齢層はほぼ同世代から上が中心か.King Crimson は意外に若い観客が多くてびっくりしたと書きましたが,今回は観客層のばらつきはあまりなさそう.裏を返せば新規のファンが増えていないことの証明で,最近のヒーリング流行りの傾向からすれば意外&残念.絶対わたしらより若い世代の感性で聴いても心を捉えそうなのに...

 開演予定の7時になり今か今かと待っていると,「Prologue」が流れ出し,いやが上にも期待感が増す.曲が終わる頃,Annie 以外のメンバーが入場.そして曲の終了と同時についにAnnie Haslam 登場.いきなり「Carpet Of The Sun」が始まり,Annie の歌声が響くと,不覚にも思わず目頭が熱くなってしまいました.Crimson のライブに行くと”どんな音出す気だ?演奏(や)るならやってみろ”みたいな感じで,けっこう気合いが入っているので,今回のようなことはないのですが,Renaissance はひたすら好きの一心なので,生の演奏を聴けるだけで幸せな気分になります.(今回はそんな感慨をはるかに上回る感動が待っていたんですが,その時点では気付く由もなし) 1曲目終了後メンバー紹介がありました.ここで来日メンバーとset list を.

 中心メンバーは言わずと知れた,Annie Haslam (vo),Michael Dunford (g),Terence Sullivan (dr) の3人.それに加え「Tuscany」に参加していたMickey Simmonds (key),さらに’91年のAnnie 来日公演に参加したRave Tesar (key),Dave Keyes (b) の3人が脇を固めます.

Set list は
1. Carpet of the Sun
2. Midas man
3. Opening out
4. Lady from Tuscany
5. Pearls of wisdom
6. Dear Landseer
7. Northern lights
8. Moonlight shadow
9. Precious one
10. Ananda
11. One thousand roses
12. Trip to the fair
13. Mother Russia
e-1. Ashes are burning
(9,10は最新のソロ・アルバムからみたいです.はじめて聴いたので曲名はMCの聞き取り)

 「1.Carpet of the Sun」に続いて「2. Midas man」,「3. Opening out」と往年の名曲を立て続けに演奏しファン・サービス.この頃になり,ひょっとして今回のパフォーマンスはすごく良いんじゃないか,という期待がムクムク湧いてくる.CDで聴く往年の演奏に一歩もひけをとっていないじゃないですか!

 4,5,6曲目と新作「Tuscany」からの曲.曲をはじめる前に簡単に曲の由来やエピソードの説明がAnnie さんからある.何しろAnnie さんからの距離がほんの数m.ちょっとした表情や仕草もハッキリ見えるし,ライブ・ハウスの醍醐味を満喫.さすがに年齢を重ねた感はあるが,ホントに生き生きとして輝いていました.蛇足ながら本日の衣装は,グレーのタイツ・ルックにグレーとブラックのひらひらしたケープ?を纏っていました.靴は当然なし(笑)
 わたしは,新作の「Tuscany」は往年の名作にけっしてひけをとるデキではないと思っていますが,往年の名曲達にまじってライブで聴いてさらにその思いを強くしました.オーケストラがなくてもtwin keybords のふたりが補ってあまりある活躍振り.

 「7. Northern lights」もわたしのお気に入り.「Song for all seasons」(一番好きなアルバム)から2曲もやってくれるとは期待してませんでしたが,「Tuscany」に一番近い感触をもったアルバムと思っていただけに嬉しいかぎりでした.曲の紹介などは当然Annie さんが中心になりますが,所々Michael Dunford が担当していました.今回は(今回も?)Dunford 氏は縁の下の力持ち的な役割に徹して,ここぞという見せ場が少なかったのがちょっと残念.

 リズム隊が引っ込んで,Annie さんのソロから2曲(8,9).全員が戻ってさらにソロから1曲(10).このへんでAnnie さんから”この前の来日公演来てくれた人は?”っていう問いかけがあって,何人かの方々が手を挙げておられましたが,残念・無念,わたしは不参加でちょっと悔しい思いをしました(笑).

 そして,「Tuscany」のラストを飾っている大作「11. One thousand roses」.まさに圧巻.個人的には最大の聴き所のひとつでした.動と静を巧みに表現する演奏,その魅力を存分に発揮するAnnie の歌声.楽曲の良さもさることながら,新生Renaissance の実力を見せつけるかのようなそのパフォーマンス.”今日のデキはメチャクチャいいのでは?”との期待が確信に変わった瞬間でした.そう感じたのは恐らくわたしだけではないはず.この曲が終わると同時に起きた拍手・声援の大きさから,それが感じられました.

 それに続く「12. Trip to the fair」,「13. Mother Russia」はテンション上がりっぱなし.どちらの曲も文句の付けようがありませんが,とくに「Trip to the fair」は白眉のデキじゃなかったでしょうか.それに新しく加わったkeybord 2人の実力が遺憾なく発揮されていました.名作がある面ではオリジナルを凌ぐ完成度で演奏されている,そんな感慨に浸る隙もないほど聞き惚れてしまいました.

 ここで本公演終了.当然アンコールを求める拍手は続きます.が,みんな拍手のテンポがはやい,はやい!途中で疲れて拍手の勢いが落ちてくるのがはっきり分かって,止まるんじゃないかとヒヤヒヤしました(笑).

 やっとメンバー登場.アンコールはやっぱりというか,期待通り「14. Ashes are burning」.最後もやっぱり熱い,熱い演奏.Annie の絶唱はもちろん,ソロも素晴らしいデキでしたね.Mickey Simmonds とRave Tesar のtwin keybord は聴き応え十分,そしてbass のDave Keyes .正直これほどの演奏を聴かせてもらえるとは思ってませんでした.今回のbest of solist でした.そして,コンサート全編を通して印象的だったのがTerence Sullivan.演奏自体もそれはそれは素晴らしいものでした.パワフルかつ繊細.気合いがビシビシ伝わってきます.期待通りのイヤそれ以上の音を聴かせてもらいました.さらに,かなりの至近距離だったので顔の表情も手に取るように見えたのですが,気合いの乗った表情と共に見せる楽しそうな表情!ホントに楽しんで,ノリにノって演奏しているなと感じられ,それだけで幸せな気分になりました.そして,やはり最後はAnnie の壮絶スキャット!表現する言葉が見つからないほど圧倒的.最後もやっぱり目頭が熱くなりました.

 そして全ての演奏が終わっても拍手は鳴り止みません.”このまま帰るのはあまりにもったいない”,そんな気持ちで手を叩き続けましたが,無情にも終了のアナウンス.しかし,その声を無視して何人かの人たちと拍手を続けましたが,スタッフに前を空けるように促され,ようやく退散することにしました.

 このHPでも書きましたが,わたしは新生Renaissance の新作は往年の名作に引けを取らない内容で,全作品中でもお気に入り上位に位置すると感じてきました.したがって,今回のコンサートは目一杯期待して出かけましたが,その期待を遙かに上回る演奏を聴くことができました.ただ,大部分のファンに支持されている姿とは少し違っているのでは?,との危惧から,他のファンからは如何に評価されるのだろうと考えていました.しかし,今回の会場で起こった拍手と声援の大きさからそれは杞憂にすぎないと感じます.願わくば,次回の来日公演が遠くない将来ありますように.


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