LIVE REPORT + α


03. Holly Cole       大阪公演  2003年9月6日   BLUE NOTE OSAKA
04. Rachael Yamagata  大阪公演  2005年1月28日  CLUB QUATTRO



 初めて聴いたきっかけは,どちらも某オーディオ雑誌のCDレビューで見かけたから(聴き始めた時期はだいぶん違いますけどね).

 オーディオ・マニア(最近ではオーディオ・ファイルとか言うらしい)で話題となる作品は,まあ大部分がクラシックと正当派ジャズ.優秀録音という観点で考えればこの二大ジャンルを抜きに話は進まないんですけど,ポピュラー音楽の分野からも毎号いくつかは必ずピック・アップされます.

 が,しかし...プログレ関連の作品が話題に上ることは皆無(笑) 唯一の例外は Pink Floyd の「狂気」.
 確かにプログレ関連の作品は全盛期が'70年代前半とちょっと古いし,またプログレッシブ・ロックの成り立ちから考えても,「演奏の質」には神経使っても「録音の質」には神経尖らせないだろうなぁ,ってタイプが多いですからね.
 そんなわけで,オーディオ好きの端くれであるわたしがもっぱらオーディオ雑誌から仕入れるネタは,ほぼ(と言うより全く)プログレとは無関係なジャンル.

 で,前述のクラシックと正当派ジャズ以外にもう一つオーディオ好きが好むジャンルが「女性ヴォーカル」.
 まあオーディオ好きの多くが”オヤジ”という点からもこの傾向は納得できるんですが(笑),やっぱり人間の声っていうのは録音の善し悪しではっきりと違いが出ますから.
 ところが,そうやって聴き始めたアーティストのライブに行く機会が多いかというと...実はあんまり多くありません.
 女性ヴォーカルのアルバム自体を楽しむことは多いのですが,ある特定のヴォーカリストにのめり込むことってほとんどありません.優秀録音であるとか以前に,ヴォーカリストとしての実力も素晴らしい人たちばっかりなんですけどねぇ.



Holly Cole  2003年9月6日 BLUE NOTE OSAKA

 そんな薄情な状態の中で例外なのが Holly Cole .
 ヴォーカリストとしての力量がどーたらこーたらと講釈する知識はありませんが,個人的にはこの人の作品どれもハズレなし!
声の質とか歌い方とか,選曲やアレンジのセンスとか...
 要因はいろいろあるんでしょうけど,ジャズ寄りのアルバムでも,ポップス寄りのアルバムでも,見事にこの人なりのセンスで唄いこなしています.
 たぶんジャズとかポップスとかジャンル分けに色づけされるのではなく,Holly Cole としての魅力に溢れているから飽きないしヴォーカリスト個人に惚れ込むんだろうと感じています.

 では,実際のライブはどうだったかというと...いあや,良かったです.マジで.
当日は仕事の関係で整理券の確保が遅れたため,席はステージ左横のカウンター席しか取れませんでした.
でも,比較的前の方だったので真横からとは言えステージはよく見えたので非常に楽しめました.

 何か視力に問題があるのかもしれませんが,照明の落ちた客席を通ってステージに向かう際スタッフの女性に手を引かれての入場でした.が,ステージに上がるとそんな素振りは一切なし.(もしかしたら,単に暗くて危なかっただけかもしれません)
ピアノ,ドラム,ベースのシンプルな演奏をバックにしっとりと情感たっぷりに歌ってくれる上に,BLUE NOTEは酒飲みながらライブを聴けるのでまさにほろ酔い気分になれます.その合間にパンチの効いた軽快なナンバーが挟まるので,飽きることなく堪能できます.

 実際間近で見たご本人はジャケット写真などから想像するよりはるかに豊満なので(笑),声量なんかも含めて迫力ある歌声が楽しめました.最大のヒット曲「Calling you」や「Make it go away」などの代表曲をたっぷり歌ってくれましたが,個人的には「I've seen just a face/夢の人」が一番嬉しかったかな?彼女の本質はジャズ・ヴォーカルなので若干お門違いかもしれませんが,わたしは物心ついた最初の洗礼をBeatlesに喰らってますからね.このへんは仕方ないでしょう(笑)
 さっき”しっとり”と書きましたが,全体的にはアルバムで聴くよりはるかにパワフルな印象.その分逆に,スロー・ナンバーが際だったのかもしれません.

数年ごとに来日しているので,この方に関しては今後も生で見るチャンスは期待できそう.次回来日公演もぜひ行きたいと切望している一人です.


で,オマケで個人的な推薦盤を.



まず,一番のお気に入りは「Don't somke in bed」
1曲目の「I can see clearly now」は彼女の持ち歌の中でもベスト5に入るお気に入り.
が,しかし.何と言っても圧巻は「Tennessee waltz」.
夜遅く帰宅.でも翌日の仕事に備え夜更かしも出来ない...
そんな時でも,この1曲を聴くだけで”ほっと”一息つけてリラックス&リフレッシュできる.
まさに自分にとっての名曲&名演です.








次いで,純粋なジャズ・ヴォーカル作品ではないけれど「Romantically helpless」
たしかに思いっきりポップス寄りの内容ですが,
もともと正当派ジャズ・オンリーでない点が彼女の持ち味の一つでもあります.
ジャンル分けは無意味.このアルバムにも彼女の魅力がたっぷりと詰まってます.










そして,追加の推薦盤として「Baby, it's cold outside」
これは純粋にクリスマス・アルバムなので季節限定的な面は否めません.
しかし,内容は素晴らしいの一言.クリスマス限定なんてもったいない!
さすがに一年中とは言いませんが,寒い季節に暖房の効いた部屋で楽しむには格別の作品です.









Rachael Yamagata  2005年1月28日 CLUB QUATTRO

 さて,滅多に行かない女性ヴォーカリストのライブですが,最近もう一人ライブを観にいったアーティストがいます.Rachael Yamagata という新人さん.昨年末or今年始めに日本でのデビューアルバムが発売されたばっかりです.

 なにぶんデビュー直後なのでHolly Coleと比較したらまだまだな面が多いのですが,デビュー・アルバムでは良い曲を書いているし,歌もなかなか上手いし,録音もさすがに鮮度が良くて魅力たっぷり.
 そんな折り,急に予定外の休日(単に代休なんですけどね)に恵まれたので,偶然来日公演があるのを知っていた彼女のライブにふら〜っと出かけたというわけです.

 クラブ・クワトロはステージの近くはスタンディング・フロアになっていて,後方が一段高くなってカウンター席があり,最後尾にテーブル席(といっても簡易テーブルですけど)があるというスタイル.
 今回はゆっくり楽しむことが目的なので,開場してすぐに入場したのですがカウンター席に直行.スタンディング・フロアにも徐々にお客さんが入っていくのですが,予想以上に女性一人とか女性同士とかの客が多い.

バック・バンドはギター,ベース,ドラムの基本に加え,チェロとヴァイオリンが加わりけっこう大所帯.グランドピアノもセットしてあるのですが,これはRachael Yamagata本人が演奏.かなり手狭な印象.

 で,肝心の内容ですが...今回は”まずまず楽しいライブ”というのが率直な感想.
 歌唱力は十分あるものの,ライブではまだ少し不安定というか荒さが目立ちました.ただし,ピアノの弾き語り(とくにアンコールのバラード曲)なんかではさすがに魅力的だなと感じたし,将来性は十二分に感じました.
 この辺は彼女の歌唱力だけの問題ではなく,バックのメンバーも全員すごく若く,その荒さというか不安定さも原因なのかもしれません.
それに,まだ持ち歌も少ないためステージも1時間少々.観衆とサビの部分を歌おうと盛り上げようとするのですが,英語の歌詞を歌える人はそう多くない.これは,別に英語だからと言うのが決定的な理由ではなく(サビの部分は比較的簡単な英語),やはり「極めつけのヒット曲がない」というのが主な原因.
 CDジャーナルのアルバム紹介では「”この1曲”が書けるかどうかが,彼女の今後を左右する」みたいな評を載せていましたが,ライブを観て”なるほどなぁ”と思いました.
 個人的には「Worn me down」は”代表曲”のお墨付きあげても良いかなと思うんですけどね.



「HAPPENSTANCE」

デビュー・アルバムは輸入盤と邦盤で曲順が若干違い,ジャケットも違います.
邦盤にはボーナス曲が2曲あり.
写真は邦盤.








「LIVE AT THE LOFT & MORE」

それと会場で買ったライブ+αのミニ・アルバム.
ライブ後,サイン会があったのでちゃっかりサインしてもらいました.
実に気の良い”ねーちゃん”だったので,個人的にはこれからも頑張って大物になって欲しいです.





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