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IL BALETTO DI プログレッシャー 〜 プログレ者が観るバレエ (ボレロ編 #1)

1985年3月6日 ジョルジュ・ドン ”ボレロ” by ジョルジュ・ドン&東京バレエ団 (於:フェスティバルホール)


演目:
1.水晶宮
2.アダージェット
3.詩人の恋
4.ボレロ



当サイトの内容からすれば激しく違和感のあるテーマかもしれません.
が,しかし.
わたしは年に1回ぐらいのペースでバレエを観に行ったりしています.
ただし,知識という点では皆無.
ただひたすら興味のある演目を鑑賞するのみです.

そもそもバレエとの最初の出会いはもう20年以上前.
偶然友人に誘われて出かけたジョルジュ・ドンの公演でした.
メインの演目はバレエ・ファンには言わずもがなと思いますが,もちろんモーリス・ベジャール振り付けによる「ボレロ」.
それ以前にはバレエのバの字も知らなかったのですが,衝撃を受けたという言葉がピッタリするほど感激した記憶が今も残っています.

ジョルジュ・ドン,モーリス・ベジャール,「ボレロ」

これらのキーワードがわたしとバレエをつないでいます.

彼の踊る「ボレロ」の魅力を言葉にするのは困難ですが,幸い比較的簡単に観る方法があります.
映画「愛と哀しみのボレロ」のクライマックス・シーンが,ジョルジュ・ドンの踊る「ボレロ」そのものだからです.
映画自体が名作なので(超大作かつテーマが重厚すぎるのが難点?),レンタル・ビデオ店などを覗けば容易に見つかると思います.
少しでも興味を持たれた方はぜひご覧になるようお奨めします.

最初に断ったように,わたしのバレエに関する知識は極貧.
したがって,わたしが「ボレロ」の内容を説明するのはお門違い.
しかし,まったく知らない方へのフォローの意味合いと,この記事を書く気になった動機を説明するには不可欠なので,無理を承知で少しだけ解説を.

この「ボレロ」,音楽はもちろんラヴェル作曲の「ボレロ」.
バレエの演目としてはクラシックな振り付けによるヴァージョンももちろん存在するのでしょうが,わたしは観たことがありません.
舞台に中央に設置された巨大なテーブルの上に”メロディー”役のダンサー.
テーブルの周囲を取り囲むように配置されたイスには”リズム”役のダンサー達.
舞台の上はこれだけ.ものすごくシンプルなセットです.
主役は言うまでもなく”メロディー”(例えばジョルジュ・ドン).
ただし,メロディー=男性,リズム=男性とかメロディー=女性,リズム=男性とかいろいろなパターンが存在します.

そして肝心の振り付けなのですが,これが何とも特異.
はっきり言ってモーリス・ベジャールの振り付けは独特すぎてバレエを観ているという気がしません.
それぐらい独創的.
もちろんその独創性は「ボレロ」のみに当てはまるのではなく,わたしの観た演目全てに当てはまります.
まず第一印象として優雅というにはほど遠い.この時点で普通のバレエとは異質.
しかし,すぐにその動きには素晴らしい魅力が溢れていることに気付かされます.
躍動感,歓喜や激情など感情の発露,それから得も言われぬ色気...
(ただ,最後の「色気」に関しては,ジョルジュ・ドンの個性に拠るところも大きいとは思います.)

でも,わたしが衝撃を受けた本質は振り付け云々では決してありません.
一にも二にもジョルジュ・ドンの踊りそのものに打ちのめされてしまいました.


その衝撃から数年.
NHKなどで放送される「World Ballet Festival」をチェックしたりしつつ,いつかチャンスがあればジョルジュ・ドンの踊る「ボレロ」をもう一度みたいなと思う程度でした.
が,そんな折り突然舞い込んだジョルジュ・ドンの訃報.
このニュースを聞いたときは正直がっくり来ました.もう二度と”あのボレロ”を観ることが出来ないと.
当時のわたしとバレエをつなぐ接点はほぼジョルジュ・ドンのみでしたから,その訃報以後数年間はバレエとは縁遠い日々となってしまいました.

そんなわたしが再びバレエに興味を持つようになったきっかけは,モーリス・ベジャールが直属のバレエ団以外に世界で唯一”あのボレロ”の上演を認めている劇団があるという話を聞いたからでした.
そのバレエ団がチャイコフスキー記念東京バレエ団.

もちろんそうと知ったからと言って,そうそうバレエの公演に行けるわけではありません.
まず仕事との関係.基本的に貧乏暇なし(笑)
さらに,優先順位の関係.
やはり強引に都合をつけられる機会は限られるので,どうしても”秘技!その日は絶対帰らせてもらいます”や”奥義!!何と言われようが休みます”を使うのはプログレ関連になってしまいます.


ところが,数年前から平日の公休日が設定されるシフトとなり,天の配剤か大阪国際フェスティバルで行われるバレエ公演の開催日がその公休日と重なるという事実を発見.
それをきっかけとして,以後再びバレエ公演に出かけるようになりました.
そして,念願の「ボレロ」にようやく巡り逢います.
しかし,再びあの日の感動を味わうにはもう少し回り道が必要でした.

その辺の詳細はまた書きたいと思いますが...紆余曲折の末,

ついに”東洋のヴィーナス”と称される上野水香さんのボレロに辿り着きます.

以下,IL BALETTO DI プログレッシャー 〜 プログレ者が観るバレエ (ボレロ編 #2)に続きます.



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