らくがき帖〜音楽編


13.Arti + Mestieri  川崎公演  2005年6月11日 CLUB CITTA

 迷いに迷ってチケットだけは押さえたものの,実際に川崎まで行ける目途がまったく立たず,正直今回はチケット代無駄にしたかな?とまで考えていました.
 しかし! 為せば成るというか何というか,強引に都合をつけて遠征を強行.大迫力のライブに参戦して参りました.

 入れ込み具合はさすがにPFMほどではなく座席も指定なので,当日は5時開場の所を5時半頃に会場入り.
観客の入りはさすがに上々.

 さて,開演前のお楽しみ“関連グッズ”販売ですが,今回は豪華パンフレットおよびTシャツ,ポスター,それにArti + Mestieri 関連のCD販売でした.

 まあ,最初からパンフレットがあれば必ず購入するつもりだったので,まっしぐらに買いに行ったのですが...なんと!! 思いもかけないことに,ライブ終了後にメンバー7人全員参加のサイン会があるとの告知!参加資格はパンフレット購入者.もとから迷いなんかありませんでしたが,プラスαの特典もあり2500円の出費もなんのその.

 席はかなり端っこの方でしたがけっこう前なのでまずまず.ただし,PA群の近くなので若干不安あり.そうこうするうちに開演時間の6時になるが始まる気配がない.10分ぐらい過ぎにようやく,「まもなく開演...」のアナウンスが流れるがさらに10分ほど待機.まあ,イタリア時間というか,ライブってのはこんなもんですね.

 そして緊張感が高まる中...突然なんとも脱力感を誘う日本語のアナウンスが.いや,ついに実現したArti の来日公演を盛り上げようという意気込みはよく伝わるんです.ワクワクする気持ちも伝わってきます.さぞやプロモートなどに尽力した,その筋では有名な方のお声だとは思います.でも,でもですね.Coolで硬派なArti には全然合ってないんですよ...個人的にこれは減点材料でした.


さて,気を取り直してライブ本番!

いきなり「重力 9,81」!その後はMC一切抜きで「TILT」の全曲演奏.まさに直球勝負.

今回の来日メンバーは,
ベッペ・クロベッラ (key
フリオ・キリコ (ds

のオリジナル・メンバーに

マルコ・ロアーニャg
ロベルト・カッセッタbass
ラウターロ・アコースタviolin
アルフレード・ポニッスイsaxflu
イアーノ・ニコロvo

の若手新メンバーを加えた総勢7人.

 「重力 9,81」から「ストリップス」へとフリオ・キリコのドラムは連打,連打の連続で加速する一方.ひたすら連打で止まる気配は全くなし.リーダーのベッペ・クロベッラの絡み具合が絶妙なのは当然として,新加入のviolsaxも違和感なく手堅い演奏.
gbassが控えめで目立たない印象でしたが,この辺は自分達のオリジナル曲ではないという点も関係しているのでしょう.


 かなり調子よく進行していたのですが,突然今まで舞台にはいなかったヴォーカリストがスモークの中から珍妙な(おカマっぽい)パントマイムをしながら登場.心理的には一挙に数m引きたいような精神的ダメージ.ただ,後述しますが,このヴォーカリスト実力はしっかりしてます.
何曲か聴くうちに彼の加入も十分理由があるのだなと納得はしましたが...個人的にはもうちょっと外見を何とかして欲しい(笑)


 思いがけない心理的な引きはありましたが,演奏自体は予想以上に素晴らしく,Arti + Mestieriの心臓部ともいうべきキリコのドラミングは凄まじい迫力がありました.最初に書いたように,一切のMC抜きで「TILT」の全曲を完遂.

 ひとしきり大歓声がわき上がった後,ベッペ・クロベッロが一人ステージに残り聴衆へ日本語でメッセージを披露してくれました.かなりの長文でしたが比較的わかりやすく,しかも「お客様(おきゃくさま)」の発音が上手く言えなくて,いい加減に流すのではなく3回ぐらい言い直す場面も.意外と(?)几帳面な性格かもしれません.

 その後,ベッペが各メンバーを紹介.フリオが早く出過ぎて,ステージ上の機材の陰で隠れて待つといった茶目っ気のあるシーンも楽しめました.

 で,記憶通りならここでベッペ・クロベッラのキーボード・ソロ(もしかしたら次のMCの前後だったかもしれない).どうしてもフリオ・キリコのドラムばっかりが取り沙汰されるArti + Mestieriですが,やっぱりこの人の腕も相当なもんです.

 ここで観衆もメンバーも一息つけたので,また気合いを入れ直して今度は2nd「明日へのワルツ」からの曲を演奏開始.

 で,結局かなりの曲を演奏しきってしまいました(笑)
 ただ,わたし自身は「明日へのワルツ」の曲名を正確に憶えているわけではなく,“ほぼ”という表現しかできません.しかし,7〜8割方は演奏したような気がします.

 2部でもフリオ・キリコの速射連打の嵐は一向に衰える気配はなく,他のメンバーもすごく堅実なプレーを展開.こちらもちょっと余裕が出て,他のプレーヤにも目がいくようになる.Saxのアルフレード・ポニッスイ,手堅いだけでなく切れのある気持ちいい音出してくれます.最初目立たないかな?と思っていたbassも派手さはないもののメチャクチャかっこいい音だしてます.Vlnも最年少18歳というパンフレットの記載でしたがどうしてどうして.堂々とした演奏内容です.開演前はやっぱりギターはジジ・ベネゴーニでなければと思っていたのですが,この点もライブが進むうちに不安や不満を感じることはなくなりました.

 さらに,一番不安材料であったヴォーカリスト.中盤になると実力があるのは分かってきたので,徐々に気にならなくなってきました(笑)
 しかも,最初のチューブがからまったヘビメタ系からシースルーのヴィジュアル系へと衣装を変えたあたりではかなりの違和感あったのですが,ポニーテールのロングスカート姿になるにいたって...慣れました(笑)

 何より歌が上手いということが,見た目の異質さをすべて払拭してくれました.

 そして,「明日へのワルツ」からの曲が終わったところで,再びベッペが英語のMCを披露.「ワールドツアーとくにアルバムの邦版がリリースされている日本へ来るのは夢だった」みたいなことをしゃべり,新メンバーの持ち味を前面に出した曲を披露するとのこと.

 まず,最初はsaxdrumのみによる曲.まったく初耳だったのですがとても新鮮で,かっこいい演奏が堪能できました.Saxのアルフレード・ポニッスイ,ユベントスのTシャツ着たり,真っ赤のスーツ着たりとかなり不可思議なファッション・センスですが腕は上々.

 次にスツールを持ち出して,ギターのマルコ・ロアーニャがアコースティック・ギターを持ち出して見事な演奏を披露してくれました.もちろん一緒に素晴らしい絡みを聴かせてくれたbassのロベルト・カッセッタも高い実力を見せつけてくれました.

 新メンバーに関しては演奏が進むにつれ,その腕前が確かなことは自然と感じ取れます.が,ここでダメを押すように全面に押し立てた新曲を披露するあたりの構成が心憎し.
 わたしは初めて聴いた曲ばかりでしたが,このあたりの曲は最新作に収録されているのかもしれません.

 そして,ベッペのMCに導かれて「ムラレス」(フルのオリジナル・アルバムとしては最新作かな?)からの曲を演奏開始.
 「ムラレス」からの曲もすごく良くて,1曲終わる毎にかなりの拍手と声援.

 この辺になるとメンバーも聴衆もテンションがメッチャクチャ高くなっていて,1曲終わる毎に“これがラスト?”っていうぐらい拍手するもんだから,もう何が何だか良く分からなくなっていました.

いちおう自分の記憶では1回目のアンコールはボンゴ(?)をセットした後.

 まず,イアーノ・ニコロからデメトリオ・ストラタスへのトリビュートのつもりなのか,彼の実力を見せつけるかのような「白い象」を熱唱.技法的にはホーミーって言うんでしょうか,あの独特の歌唱法をしっかりこなしていました.
 続いて...たぶん「明日へのワルツ」2回目.もしかしたら本公演の最後が「明日へのワルツ」で,アンコール1回目が「重力」2回目だったかも.

 何れにしても演奏自体は圧巻.みなさんノリノリ(少なくともわたしの周囲は)オールスタンディング状態なので,当然拍手喝采は鳴りやまず.
 最初は疑心暗鬼だったけど,かなりの間拍手していても客電がつかないので嫌が上にも2回目のアンコールへの期待が膨らむ.


 そして,期待通りメンバー再登場.が,曲がなかなか始まらない.フリオとベッペが何やら打ち合わせをして,他のメンバーも何を演奏するのか確認している様子.

 ようやく話がまとまったのか,ベッペが「15分くらいかかるけど,もう1回“関節”をやっていいかな?みんな,賛成してくれるかい?」とのMC.当然,聴衆からは賛同の拍手と歓声.

 こちらも興奮状態だし,演奏曲もArti + Mestieriの代表曲.盛り上がらない訳はないですけど,1回目と比べてパワー,テンションともまったく落ちていないのが驚異的.3時間近くぶっ通しで演奏しているはずなのに.このあたりにも彼らの情熱が感じられて,本当に大満足のライブでした.



しかし,全編を通して感じたのはフリオ・キリコの化け物じみた迫力.
もう最初から最後まで連打!連打!連打!
「ここまでやるか!?」とか,「それでも連打か!?」みたいな気もするんですが(笑),
まあ,それが彼の持ち味ですからね.
でも,生で見る迫力は想像を絶してました.
もうここまで高速連打の波状攻撃で押し切ったらテクニック云々とは別次元の話.
手数がテクニックの全てではありませんが,やっぱりフリオ・キリコは超一流です.


脚注:
T.セット・リスト


 今回はセット・リストは脚注扱いです.ホントに自信なし.それにこのライブの模様はライブCDとして発売されるので,強いて載せる意味も薄いでしょう.
 ただ,速報性という点と思い出の再確認の意味で,間違いを承知で書いておきます.



第1部 アルバム「ティルト」から
1.重力 9,81
2.ストリップス
3.侵食
4.ポジティボ/ネガティボ
5.路上
6.華氏
7.関節

(注:上では全曲演奏と書きましたが,“Tilt”に相当する部分は演奏していない)

8.キーボード・ソロ
  + MC,メンバー紹介 (by Crovella

第2部 アルバム「明日へのワルツ」から
9.明日へのワルツ
10.花芯
11.9つの月の後で
12.メスカル酒〜メスカル酒の杯
13.終末

(注:短い曲や連続して演奏される部分も含むので,実際はもう少し多くの曲を演奏したと思う)

第3部 新作から
14.SaxDrumの掛け合い
15.アコースティック・ギターをフューチャーした新作
16.アコースティック・ギター,ベース,サックスの絡みを全面に出した新作


第4部 主にアルバム「ムラレス」から
17.Arc en Ciel
18.Terra Incognita
19.Alba Mediterranea 
(注:邦題知りません)
20.重力 9,81 (2回目)


アンコール1回目
21.白い象
22.明日へのワルツ (2回目)


アンコール2回目
23.関節 (2回目)



U.サイン会

 ライブ終了後の思わぬプレゼント.7人全員参加のサイン会.3時間近くに及ぶ演奏を終えた直後だというのに,メンバー全員がにこやかに丁寧にサインをしてくれました.
 下手な英語で“Thank you !”とか“Excellent !”とか声かけながら,メンバー全員と握手させてもらいました.キリコの手はごっつい腕とは裏腹に意外と小さい気がしました.それにベッペにも”I'd waited you for a long, long, long time !”とひとしきり愚痴れたし大満足です(笑)ヴォーカルのニコロなんかは“Thank you”って声をかけたら,“ありがとう”って返してくれたり,本当に頭の下がるサービス精神でした.


    


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