SOLO WORKS
2. Franco Mussida
I Quelli
から始まって現在に至るまで,常にPFMに籍を置きその中核を担ってきた人物.PFMの華の部分を形成したのがMauro Pagani
なら,PFMの根幹を支え続けているのがMussida とFranz Di Cioccio
と言えるでしょう.曲のクレジットをみるとほとんどの曲に彼の名前を見ることが出来ます.メンバー・チェンジやその時代に沿った音楽性の変化にも関わらず,PFMの音楽に流れるトーンのようなものが脈々と受け継がれているのは彼の功績と言って良いかと思います.
ロック・ギタリストとして一流の腕を持っているのですが,その第一歩はクラシック畑から始まっていると思います.どこかの資料でそんな内容を読んだ気もするし,第一,彼の奏でる音はクラシック・ギターの素地抜きに成立しないでしょう.
Mussida
のギターは透明感に溢れ,アップテンポな部分でも単に陽気なだけでなく,カラッとした見通しの良さが感じられます.「ラテンの血」という一般的なイメージから連想しがちな激情や情念と言った感覚とは異なり,もっと穏やかな温度感が一番の持ち味です.
その風貌や握手してもらった時の印象からも,穏やかである種求道的な雰囲気を感じましたが,その演奏スタイルや音色も控えめで決してテクニックをこれ見よがしに誇示するような点はありません.カリスマ性には欠けるかもしれませんが,超一流のミュージシャンに間違いないと思います.
「Racconti della tenda rossa / 赤いテントの物語」
1. VOCI / 言葉遊び
2. ORIZZONTI DEL CUORE / 心の地平
3. RADICI DI TERRA / 大地の根
4. LA CAVA DI SABBIA / 砂の洞穴
5. HIMALAYA / ヒマラヤ
6. DANCE CLASSIQUE / ダンス・クラシック
7. LA TEMPESTA / 嵐
8. LA DISCESA DI MICHELE / ミカエルの降下
9. PORTI LONTANI / 遙かな港
10. ZANOOBIA / ザヌービア
11. PIANI PARALLELI / 平行面
12. LITTLE MARIE / リトル・メアリ
13. TENDA ROSSA / 赤いテント
14. CAFFE' CONCERTO / カフェ・コンチェルト
ジャケット絵が示すように,ヒマラヤの山中に張られた赤いテントをモチーフにした曲で構成されたアルバム.アルバム全体を貫くテーマとして「赤いテント」というキーワードがあるようですが,全体の印象はトータル・アルバムというより小品集という雰囲気です.
「小品集」と書きましたが,それは作品の内容がそこそこレベルだとか,ぶつ切りの内容の寄せ集めという意味では決してありません.むしろ,アルバム全体を流れるトーンは首尾一貫しており,対訳を読むと詠われている内容もそれぞれ関連性を持っています.
では,なぜ「小品集」というイメージがするのかと言えば,注目をパッと引くような派手な仕掛けがないから.超絶技巧や壮大なテーマを嗜好しがちなプログレ好きにはもの足らないでしょうが,非常に出来の良い地中海ポップ/イタリアン・ミュージックです.
心地よい温度感を持った透明感溢れるギターの音色に,やや控えめにヴォーカルがからまり,どの曲も気持ちよくスッと耳に入ってきて決して神経を逆なでするような所がありません.かと言って,平板で単調な曲が並んでいる訳じゃありません.地味ながら良く作り込まれて変化に富んだ作品群が並びます.BGM的ではなく,真剣に聴くべき内容を持っていると思います.
しかし,地味なのは間違いなし.もし,「PFMのFranco
Mussida」という縁がなかったら,わたしがこの作品を耳にすることはなかったでしょう.そういう面からも傑作と言うわけにはいきませんが,これからも折に触れ聴き返したくなるであろう佳作です.
「Accordo」
1. ACCORDO 45'53''
これは実験音楽というのか,現代音楽というのか...音楽のジャンル分けには疎いのですが,少なくともポピュラー音楽ではありません.自分も含めプログレ好きの人間は,少しでも斬新さがある音楽や実験精神に富んだ音楽は,総じて「××はプログレだ」とか,「○○の**という作品はプログレの範疇に入る」とかプログレ分類したがるクセがあるようなのですが(それがおかしな方向に脱線するとプログレ定義の論争になる),これはどう考えてもロックじゃないでしょう.
アルバムを購入後2回ほど聴いただけで封印していましたが.今回このページを書くにあたって再度聴いてみました.やっぱり訳が分かりません.収録曲は「Accord
45'53''」のみ.CDのブックレットには楽譜とイタリア語の解説があるので,楽譜の読める方やイタリア語の分かる方が手に取ると,それなりに何を表現したいか理解できるのでしょうが.....少なくともわたしは2度と聴かないでしょう.「普通の人」は買ってはいけない内容(笑)
しかし,「赤いテントの物語」のわずか4年後の録音なんですが,こちらは物の見事に尖っています.いくら地味で毒っ気がないように見えても,世界有数のプログレ・バンドの中心人物だっただけはあるな...と妙に感心.
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