Italian Progressive Rock 1-0
1.P.F.M. その(0)
2002年5月の来日公演を契機に,古くからのPFMに加え,新しくPFMの音楽に惹かれた方々にも弊HPを見ていただく機会が増えたようです.今までわたしの怠慢ゆえ,PFMの歴史やキチンとしたディスコグラフィーはけっこう端折っていましたが,少し自分の知識整理も兼ねて入門ページを設置してみたいと思います.
そんな訳で筋金入りのPFMファンを自認する方は,このページは読み飛ばしてください.
1960年代中〜末期,それまでの3分間ラブ・ソングが中心だったロック・シーンに変化が起こります.その先駆けはビートルズの「SGT. PEPPER'S
LONELY HEARTS CLUB BAND」頃(諸説はありますが)でしょうか.
ロックのダイナミズムにクラシックやジャズのエッセンスを取り込んだ今までにない音楽が誕生します.その中心地はイギリスですが,その運動はドイツ,イタリア,フランスなどに飛び火していきます.
本家イギリスに実力的にずば抜けたグループが多数輩出したのは当然ですが,ドイツ,イタリア等,それまでロックの分野では後進国と見なされていた国々にも,その国独自の趣をもった,つまりイギリスのバンドには真似の出来ない個性を持ったバンドが誕生しました.
その中でもPFMは実力・知名度ともイタリアを代表するバンドといえます.また,イタリアのバンドが世界に通用することを知らしめたバンドとも言えるでしょう.
PFMの魅力は,ジャズやクラシックを取り入れた複雑かつスケールの大きい楽曲を見事なアンサンブルで描写する点であり,複雑で高度な構成であるにも関わらず,親しみやすさと美しさを兼ね備えたメロディー・ラインが随所に散りばめられている点でしょう.
たしかにプログレに求められるもう一方の要素,破壊性,混沌・トリップ感といった面には欠けますが,プログレのもつ「様式美」の部分を(模倣ではなく)体現しているバンドの代表格だと思います.
また,イタリア・地中海の風土に根ざす民族音楽の要素は,イタリア出身バンド独自の味であり,イギリスのバンドでは味わえない魅力です.
バンドの歴史を簡単に書くと,ラブ・ポップ・ソングのカバー・バンドだったI QUELLI を母体として’70年に結成されています.オリジナル・メンバーは,フランコ・ムッシーダ(g),フランツ・ディ・チョッチョ(ds),ジョルジョ・ピアッツア(b),フラビオ・プレモーリ(key),マウロ・パガーニ(vol,flute)という腕利きのミュージシャンたち.そして通算4枚目の「甦る世界」からはベースがパトリック・ジヴァス(元アレア)に交代し黄金期を迎えます.その後,専任ヴォーカリストのベルナルド・ランゼッティを加えて,’75年最初の来日公演を行いました.
その後は,グループの中心人物だったマウロ・パガーニが脱退するなど,メンバーの入れ替わりも多く(’02年再来日でゲスト参加だったルーチョ・ファブリも一時期正規メンバーでした),その音楽もプログレとは離れていきました.
この時期の評価は,日本では特に低くほとんど紹介されませんでしたが,作品自体は良質のアルバムを制作しています.’80年代後半から約10年間活動を休止していましたが’95年活動を再開.’02年の再来日など新しいピークをむかえようとしています.
1.「STORIA DI UN
MINUTO/幻想物語」
1.INTRODUZIONE/イントロダクション
2. IMPRESSIONI DI SETTEMBRE/9月の情景
3. E'FESTA/祭典の時
4.
DOVE...QUANDO...(PARTE 1)/何処で...何時...(PART 1)
5.
DOVE...QUANDO...(PARTE 2)/何処で...何時...(PART 2)
6. LA CARROZZA
HANS/ハンスの馬車
7. GRAZIE DAVVERO/限りなき感謝
彼らの1stアルバム.アルバム全体を通して,静的な部分と動的な部分の対比が絶妙ですが,このメリハリは1つの楽曲内でも守られていて,単調な一本調子の曲はほとんどありません.次作「友よ」や英語盤の「幻の映像」を最高傑作に推す人が多いようですが,個人的には甲乙つけがたい完成度だと思います.
2.「PER UN AMICO/友よ」

1. APPENA UN PO'/ほんの少しだけ(人生は川のようなもの)
2. GENERALE/生誕
3. PER UN AMICO/友よ(幻の映像)
4. IL BANCHETTO/晩餐会(晩餐会の3人の客)
5.
GERANIO/ゼラニウム
(カッコ内は英語版「幻の映像」収録時のタイトル)
文句無しの名曲「1.ほんの少しだけ」をはじめ,楽曲の完成度は圧倒的です.クラシックの要素を取り入れた美しい旋律は1st同様ですが,1stより若干JAZZっぽいかなと感じます.メリハリのある聴くものを飽きさせないアルバム構成は基本的に1stと共通です.このアルバムがキング・クリムゾンのピート・シンフィールドに認められて,世界デビュー向けの「幻の映像」が作られることになったそうです.
美しい旋律と壮大な広がりを感じさせる「1.ほんの少しだけ」,「3.友よ」は名曲ですが,P.F.M.のアグレッシブな面が垣間見れる「4.晩餐会」もお奨め.
3.「PHOTOS OF GHOSTS/幻の映像」

1. RIVER OF LIFE/人生は川のようなもの
2. CELEBRATION/セレブレイション
3. PHOTOS OF GHOSTS/幻の映像
4. OLD RAIN/オールド・レイン
5. IL BANCHETTO/晩餐会の三人の客
6. MR. 9 'TILL
5/ミスター9〜5時
7. PROMENADE THE
PUZZLE/プロムナード・ザ・パズル
マンティコア・レーベルより世界デビューすることになったPFM英語バージョン第1弾.内容はイタリア語版の2nd
の楽曲を中心に構成され,英詞をPete Sinfield
が書き下ろしています.このアルバムも素晴らしい仕上がりなのですが,イタリア語というのは独特の雰囲気をアルバムにもたらすようで,イタリア語ヴァージョンを好む人も多数.
1,3,5,6,7はイタリア語版の2ndから,2は1stからで,4は書き下ろしです.英詩はPete
Sinfield が書いていますが,単にイタリア語を英語に翻訳したものではなく「作詞」しています.また,「6.MR. 9 'TILL
5」はインスト曲だった「生誕」に新たに歌詞を付けたものです.
4.「THE
WORLD BECAME THE WORLD/甦る世界」
1. THE MOUNTAIN /マウンテン
2. JUST LOOK AWAY/通りすぎる人々
3. THE WORLD
BECAME THE WORLD/甦る世界
4. FOUR HOLES IN THE GROUND/原始への回帰
5. IS MY
FACE ON STRAIGHT/困惑
6. HAVE YOU CAKE AND BEAT
IT/望むものすべては得られない
このアルバムは英語版とイタリア語版がほぼ同時期に録音・発売されています.この英語版には1stに収録されながら「幻の映像」に未収録だった「九月の情景」が,「THE
WORLD BECAME THE WORLD/甦る世界」としてリメイク・収録されています.
「THE WORLD BECAME THE
WORLD/甦る世界」以外の曲はイタリア語版とそう印象が違うわけではありません.音の分厚さは前2作から比べるとぐっと増しています.ジャズの要素もより強くなっています.ただ,しつこいようですがイタリア語の質感,語感はやはり全体の印象に特別な”何か”を付加しているようで,やっぱり個人的にはイタリア語版を推します.
5.「L'ISOLA DI NIENTE/甦る世界」
1. L'ISOLA DI NIENTE/幻の島(マウンテン)
2. IS MY FACE ON STRAIGHT/困惑
3. LA LUNA NUOVA/新月(原始への回帰)
4. DOLCISSIMA
MARIA/ドルチッシマ・マリア(通りすぎる人々)
5. VIA
LUMIERE/ルミエール通り(望むものすべては得られない)
イタリア語版としては3枚目のアルバム.前作までとは少し異なり,英語版とイタリア語版がほぼ同時期に制作されています.お奨めは「1.幻の島」と「4.ドルチッシマ・マリア」.壮麗な雰囲気を持ち,スケールの大きい複雑な展開を堪能できる「1.幻の島」とあまりにも美しく,この上もない安らぎを感じさせてくれる「4.ドルチッシマ・マリア」.さらにエスニックな雰囲気あふれる「新月(原始への回帰)」.これも間違いなく名作です.
6.「COOK / LIVE IN USA」 74/08/22
Tronte & 74/08/31 NY
1.FOUR HOLES IN THE GROUND/原始への回帰
2.DOVE...QUANDO.../何処...何時...
3.JUST LOOK
AWAY/通りすぎる人々
4.CELEBRATION including THE WORLD BECAME THE WORLD/セレブレーション〜甦る世界〜
5,MR. NINE TILL FIVE/ミスター9〜5時
6.ALTA LOMA FIVE TILL NINE including WILLIAM TELL OVERTURE/アルタ・ロマ5〜9時〜ウィリアム・テル序曲〜
収録はPFM初のUSAツアーのもので,まさに絶頂を極めようとするバンドのエネルギーを余すところなく捉えた傑作ライブです.収録曲全てが文句なしの演奏で,唯一不満だった音質面もCD化に際してリマスターを施されています.
人によってはこの作品をベストに推すほどの完成度.スタジオ録音と共通する繊細な構成美に,ライブ特有のパワフルなドライブ感が加わって,圧倒的な迫力で聴くものを虜にしてしまいます.
7.「CHOCOLATE KINGS」

1. FROM UNDER
2. HERLEQUIN
3. CHOCOLATE
KINGS
4. OUT OF THE ROUNDABOUT
5. PAPER
CHARMS
アルバムから受ける印象は前作までとかなり違います.新加入の専任ヴォーカリスト Bernardo Lanzetti がもつ”ロック色”の非常に濃いボーカルも,その感触の変化に深く関係していると思います.しかし,単純にヴォーカルの声質が変わっただけでなく,演奏そのものもhard
& heavy なものにシフトしています.音楽から感じる”迫力”や”存在感”といったものに焦点を当てれば,PFMの全作品中でもこのアルバムが突出しています.
しかし,ヴォーカル面でも演奏面でも繊細さ・華麗さはずいぶん削られてしまい,”力押し”の印象は否めません.ただ,全体のレベルが低下しているかというと必ずしも違います.
この「CHOCOLATE KINGS」を名作と評価する声も多く,PFMの最高傑作のひとつに推す人もたくさんいます.その評価もけっして間違っていると思いませんし,わたし自身も嫌いな作品ではありません.あくまで「大好きではない,以前のPFMとはがらっと違う」ということです.
8.「JET LAG」
1. PENINSULA
2. JET LAG
3. STORIA IN
<<LA>>
4. BREAKIN IN
5. CERCO LA LINGUA
6. MERIDIANI
7.
LEFT-HANDED THEORY
8. TRAVELER
Mauro Pagani が脱退したのちに作られたアルバム.コアなPFMファンや音楽評論家の中には Pagani 在籍時こそがPFMの黄金期であり,「CHOCOLATE
KINGS」までがプログレのアルバムとして評価に値すると考えている方も多いようです.また,「JET LAG」はジャズ・フュージョン色があまりにも強く,逆にクラシックの要素が希薄なため,プログレ・ファンの間では一段低く評価される場面もあるように思います.たしかに「友よ」,「甦る世界」などに比べると音を幾重にも折り重ねるような厚みや繊細さには欠ける印象です.しかし,全体としては非常に出来の良いアルバムだと個人的には思っています.
これ以降の作品については,弊サイトの本編もまだまだ未完成の状態です.また,一般的な評価におけるPFMの全盛期はだいたいこの当たりまで.したがって,一応の入門ページはいったんここで終了.
将来余裕が出来たら,公式アルバムのディスコグラフィーを兼ねてこのページを更新していく予定にしています.
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