PFM-1


管理人自身イタリア語がわからないので,邦題のあるものはすべて邦題を併記しています.
P.F.M. その(1)

 イタリア・プログレの代表格PFMはジャズやクラシックの要素を取り入れた美しくも複雑な旋律,そのスケールの大きい楽曲を見事なアンサンブルで描き出す確かな演奏技術が持ち味です.破壊性,混沌・トリップ感といった要素には欠けますが,プログレのもつ「様式美」の部分を(模倣ではなく)体現しているバンドの代表格だと思います.それに,ライブでは十二分にパワフルです.ジェントル・ジャイアント,キング・クリムゾン等の影響も指摘されますし,否定もしませんが,”影響がある”=”物真似,2番煎じ”ということではありません.演奏技術といった小手先の能力だけでなく,確固としたオリジナリティをもっています.

 ’70年の結成(オリジナル・メンバーは,フランコ・ムッシーダ,フランツ・ディ・チョッチョ,ジョルジョ・ピアッツア,フラビオ・プレモーリ,マウロ・パガーニ)以来,メンバーチェンジはあるものの現在でも活動していて,’00年にも新作を発表しています.しかし,その音楽性はかなり変遷をくり返し,もはや(俗に言う)プログレとは呼べないでしょう.

 わたしの中では,(1)イタリア語バージョンを英語版に先行(or同時)して発売していた時期(1stから3rd「甦る世界」まで.この時期の英語版も含む),(2)世界市場をメイン・ターゲットにした「CHOCOLATE KINGS」と「JET LAG」,(3)イタリア国内を優先したその後&脱プログレ期,といった分類になっています. マウロ・バガーニが在籍した「CHOCOLATE KINGS」までをひとまとめにすることが多いのでしょうが,個人的に「JET LAG」は魅力たっぷり&十分プログレだし,「CHOCOLATE KINGS」はそれ以前とは感触が違うので,上記のように分けて話しをすすめます.


(1)1st 〜 3rd(イタリア語バージョン)

1.「STORIA DI UN MINUTO/幻想物語」
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1. INTRODUZIONE/イントロダクション 
2. IMPRESSIONI DI SETTEMBRE/9月の情景 
3. E'FESTA/祭典の時 
4. DOVE...QUANDO...(PARTE 1)/何処で...何時...(PART 1) 
5. DOVE...QUANDO...(PARTE 2)/何処で...何時...(PART 2) 
6. LA CARROZZA HANS/ハンスの馬車 
7. GRAZIE DAVVERO/限りなき感謝

 彼らの1stアルバムで,わたしのお気に入りNo,1.楽曲の完成度などから2ndを最高傑作とする人が多いでしょうし,わたしも各曲の完成度は2ndのほうが上と思います.ただ,「2.9月の情景」から「3.祭典の時」へのスイッチング(静から動への)があまりに強烈なインパクトを与えてくれたので,あえてこちらをNo,1に推します.とくに「3.祭典の時」は,楽曲そのものの完成度も2nd収録曲に比べて遜色なく,P.F.M.全作品中でも1,2を争う傑作です.

 アルバム全体を通して,静的な部分と動的な部分の対比が絶妙ですが,このメリハリは1つの楽曲内でも守られていて,単調な一本調子の曲はほとんどありません.3曲目でぐっと盛り上げ,「4,5.何処で...何時...」の美しい旋律によるリラクゼーションから,緊張感あふれる「6.ハンスの馬車」への反転も見事.


2.「PER UN AMICO/友よ」
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1. APPENA UN PO'/ほんの少しだけ(人生は川のようなもの) 
2. GENERALE/生誕 
3. PER UN AMICO/友よ(幻の映像) 
4. IL BANCHETTO/晩餐会(晩餐会の3人の客) 
5. GERANIO/ゼラニウム
(カッコ内は英語版「幻の映像」収録時のタイトル)

 文句無しの名曲「1.ほんの少しだけ」をはじめ,楽曲の完成度は圧倒的です.クラシックの要素を取り入れた美しい旋律は1st同様ですが,1stより若干JAZZっぽいかなと感じます.メリハリのある聴くものを飽きさせないアルバム構成は基本的に1stと共通ですが,完成度はかなりupしています.このアルバムを聴いたクリムゾンのピート・シンフィールド(グレッグ・レイクがライブを聴いて,だったかもしれない)に認められて,世界デビュー向けの「幻の映像」が作られたのは有名&納得です. 

 美しい旋律と壮大な広がりを感じさせる「1.ほんの少しだけ」,「3.友よ」は名曲ですが,P.F.M.のアグレッシブな面が垣間見れる「4.晩餐会」もお奨め.「2.生誕」も高い完成度を誇りますが,楽曲の雰囲気,アルバム全体に占める役割を考慮すると,楽曲単独では1stの「祭典の時」のほうが上.でも,これは不満点ではありません.アルバム全体でみると,この曲も素晴らしい調和を見せています.

 歌詞も秀逸.わたしはイタリア語が分かりませんし,英語も原語で詩を味わうほど堪能ではないので,訳詞家の感性・能力による部分が大きい対訳をもとに断定してはいけないのでしょう.が,1st・2ndとも素晴らしい詞が並んでいて,世間的に評判の高いピート・シンフィールトよりも上ではないかとさえ思います.より平易かつ簡潔な言葉と表現で,勝るとも劣らない深い味わいを醸し出していると感じるからです.


3.「L'ISOLA DI NIENTE/甦る世界」
pfm3.JPG 1. L'ISOLA DI NIENTE/幻の島(マウンテン) 
2. IS MY FACE ON STRAIGHT/困惑
3. LA LUNA NUOVA/新月(原始への回帰)
4. DOLCISSIMA MARIA/ドルチッシマ・マリア(通りすぎる人々)
5. VIA LUMIERE/ルミエール通り(望むものすべては得られない)

 
(カッコ内は英語版の邦題)

 イタリア語版としては通算3枚目(英語版を含むと4枚目)のアルバム.前作までとは少し異なり,英語版とイタリア語版がほぼ同時期に制作されています.繊細な音の積み重ねや複雑な楽曲の進行などは前作同様ですが,随分華やいだ(というより豪奢,贅沢な)雰囲気が全編を支配しています.単純に明るい,あるいは音が贅沢だ(これも事実ですけど)といった意味ではありませんが,1,2作目にあった哀愁や「影」の部分が減った印象は否めません.その分清涼感や安らぎを感じさせる面が多く,良い悪いではなく雰囲気の問題です.

 お奨めは「1.幻の島」と「4.ドルチッシマ・マリア」.壮麗な雰囲気を持ち,スケールの大きい複雑な展開を堪能できる「1.幻の島」とあまりにも美しく,この上もない安らぎを感じさせてくれる「4.ドルチッシマ・マリア」.この2曲がこのアルバムの真価を代表しています.そして,「3.新月」もまさにイタリアの風土そのものを感じられる上に,演奏もそれはそれは素晴らしいのですが...この曲だけはライブ・ヴァージョン方が圧倒的に好みです.


次回はこの時期のライブ音源に関して.なお裏ジャケットの画像は管理人が見せる価値があると判断したもののみ載せています.

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