Italian Progressive Rock 12
イタリア・プログレの“影/陰”を代表するバンドのひとつ.代表作は「YS /
イプシロン・エッセ」.
聴き手を選ぶとは思いますが,文句なしの傑作です.
2枚のアルバムを発表し解散していますが,1stには2nd「YS /
イプシロン・エッセ」で作詞作曲を担当し中心メンバーとなるジャンニ・レオーネは参加しておらず,内容もハードロックものということで,プログレとして紹介されるのは2ndの「YS」のみです.
「YS」
1. INTRODUZIONE / イントロダクション
2. PRIMO
INCONTRO / 第1部
3. SECONDO INCONTRO / 第2部
4. TERZO INCONTRO /
第3部
5. EPILOGO / エピローグ
bonus tracks
6. LA TUA CASA COMODA / 安息の家
7.
DONNA VITTORIA /
ヴィットリア夫人
まず,冒頭の妖しい歌声と重く暗く響きわたるオルガンが,アルバム全体の雰囲気を暗示しています.わたしはこの部分を聴いただけで,彼らの作り出す退廃的な世界の虜になってしまいました.
地の底から響くように無気味に鳴り響くベースやコーラスも,オルガンやメロトロンがうねり狂う中をドラムやギターが切り裂くような暴力的展開も,破綻寸前の精神を強靭な理性で押さえつける如く,見事な知的制御を受けています.陰鬱で,暴力的.しかし見事なまでの構築美.
秘教・密教的な観念(知性),剥き出しの情念(感情),抗い難い魅力をもつ暗く淫靡な欲動(肉体).その3者が渾然と交じり合う独特の激しく暴力的かつ暗く陰鬱な世界が広がります.
こんな風に扇情的な語句を並べると,安っぽい怪奇・オカルト趣味の音楽と誤解されるかもしれませんが,圧倒的な完成度の楽曲や演奏面の確かさ(その背後にある知性や思想も含めて)が,そんなありきたりな揶揄を受けつけません.
ボーナス・トラックはギターとベースのメンバーが脱退後,キーボードのジャンニ・レオーネとドラムのジャンキ・ストリンガの2人で録音したシングル盤に収録されたもので,このシングル発表後正式に解散しています.最近発売された紙ジャケ盤にはこの2曲が収録されています.
歴史の闇に沈んでいったIl Balletto di
Bronzoですが,1995年頃中心メンバーだったジャンニ・レオーネはまったく新規にメンバーを集めバンドを再結成.「YS」全曲演奏という信じられない内容のライブ盤を発表.そして2002年9月,さらに信じ難いことに来日公演が決定しました.
「TRYS」
1. LA DISCESA NEL CERVELLO / 脳への侵略
2. TASTIERE
ISTERICHE / ヒステリーのキーボード
3. MARCIA IN SOL MINORE / ト短調のマーチ
4. DONNA
VITTORIA / ヴィットリア夫人
5. OPTICAL SURF BEAT / オプティカル・サーフ・ビート
6. INTRODUZIONE
/ イントロダクション
7. PRIMO INCONTRO / 第1部
8. SECONDO INCONTRO /
第2部
9. TERZO INCONTRO / 第3部〜 EPILOGO / エピローグ
10. TECHNOAGE
/ テクノエイジ 11. LOVE IN THE KITCHEN /
キッチンの情事
新生Bronzoのライブ・アルバム.録音は’96年9月6日.場所はローマ.
目玉はなんといっても「YS」全曲演奏.リズム隊+keyboardの3ピース・バンドで,音楽に何とも言えない妖しい艶を添えていた女声コーラスもなく,オリジナルと比べると全体的にあっさりとした雰囲気です.オリジナル「YS」の持つ濃密なカオスや闇は若干薄れていますが,現代的でより硬質な感触があり新しい魅力も感じます.
バンドの核とも言えるジャンニ・レオーネのソロ作や他名義のバンド活動の作品は未聴だったのですが,このライブに収録されている曲はどれもかなりの水準です.
彼らは“懐かしの再結成”といった一時的なものでなく,今“現在“活動を続けているようです.ライブ盤録音時とはジャンニ・レオーネ以外のメンバーを一新しているとはいえ,現在進行形のバンドとしての来日公演.わたしはかなり期待してますよ.
(2002年8月)
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