Related Artists


1.I Quelli

 PFM関連アーティストではなくPFMの前身そのもの.ただ,Mauro Paganiが合流した後も”I Quelli”を名乗っていた時点では,まだまだイタリアン・ビート・バンドの評価だったので,あえて関連アーティストの項で扱います.


 「I Quelliがどういう流れでPFMへと変貌を遂げていったのか?」という話題に関しては,オフィシャル・サイトに詳しい記述があります.以下はその記載を元に自分なりにまとめた内容です.



 当時(’60年代末頃まで)のイタリアにおけるバンドの基本は,耳あたりの良いキャッチーな曲と女の子受けする格好いいリード・ヴォーカル.そして,たいがいの持ち歌はイギリスやアメリカでヒットした曲のカバーであり,その歌詞も原曲の歌詞とは何の関係もないものが主流だったそうです.いわゆる”3分間ラブ・ソング”.したがって,バンドにおけるもっともクリエィティブな部分はカバーするべき曲の選択をする瞬間でした.

 その頃から,I Quelliのメンバー(Franz Di Cioccio,Franco Mussida,Flavio Premoli,Giorgio Piazza)は他のバンドとは違う意識を持ち,音楽面でも演奏面でもそのクオリティーにしっかりと気を配っていたようです.その姿勢はLucio BattistiやFabrizio De Andreといった実力者にスタジオ・ミュージシャンとして高く評価されていました.”I Quelli”としてリリースしたレコードもそれなりに売れたようです.

 しかし,この時点ではその音楽はまだまだ普通のバンド・サウンド.この昔ながらのバンド・スタイルを彼らは”Chitabasbatorga”と書いています.何のこと?って感じですが,要するにバンドの構成がChitarra (guitar), basso(Bass),batteria (Drums), organo (Keyboard)というスタイルであり,これらの頭文字から取った造語が”Chitabasbatorga”ということみたいです.

 ところが時代の潮流として,プログレッシブ・ロックという音楽がイタリアにも押し寄せて来そうな気配があり,この流れを敏感に感じ取った彼らは,新しい独自の方向性(identity)を探り始めました.この頃,オフィシャル・サイトの記載では,さらなる脱皮を目指す意味から新しいバンド名”Krell”を名乗り始めていたようです.

 自らの独自性を模索し始めた1969年の夏,彼らはロックに近いアプローチを試みているフルート&ヴァイオリン奏者の噂を耳にします.当時,Mauro Paganiは”Dalton”というバンドで演奏していましたが,PFMのメンバーと会うや否や意気投合.すぐさま彼らと合流する決心をしました.

 そして自らの独自性・方向性に対する解答の糸口を,ChicagoやKing CrimsonやJethro Tullのようなバンドの音楽に見出すことになりました.当時の彼らの音楽に対する情熱は半端なものではなかったようで,練習への遅刻には厳しい罰金を科し,稼いだ金は何よりもまず新しい楽器などにつぎ込んだそうです.

 1970年,厳しいリハーサルに加えスタジオ・ミュージシャンとしても活動を続けていた彼らに大きな転機が訪れます.Franz Di CioccioがドラマーとしてEquipe 84というバンドに8ヶ月間レンタルされることになったのです.
 このレンタルによってI Quelliは所属会社”Ricordi”との古い契約から解放されることになりました.(いわゆる貸しを作ったということでしょうかね,笑) 
 その結果,大手レコード会社のやり方に批判的だったL. Battisti, A. Colombini, Mogolなどが中心となって設立された新進気鋭のレコード会社”Numero Uno”へと移籍することになりました.


 そして,本当の意味でPFMの前身といえる”I Quelli”がデビューします.場所はアリストン劇場の近くにある”ウイスキー・クラブ”.雇い主の要望は単純・明快,かつ非常に前向きなものでした.

「コマーシャルな音楽はいらない.限界を越えられるエネルギーを秘めた音楽はポップ・ミュージックだけだから」
(注)個人的には”ポップ・ミュージック”というのはすごく軽いノリというイメージがあるのですが,オフィシャル・サイトの記載をそのまま書きます.意味としては”ポップ・ミュージック=初期のプログレ”と同義だと解釈しています.

 彼ら独自の楽曲とKing CrimsonやJethro Tullの異彩を放つカバー曲とが絶妙のバランスで混ざり合ったライブは,観衆たちに熱狂的に支持されるようになりました.そして,彼らは自分たちの方向性が正しいことを確信したようです.



 ここからPFMとしてのデビューまで,まだもうひと山ふた山あるのですが,これ以降は”P.F.M”としての歴史でしょう.どちらにしろ,プログレッシブ・ロックの本場イギリス以外のバンドが頭角を顕わしていく課程がよくわかります.


「 I GRANDI SUCCESSI ORIGINALI 」

CD 1
1. LACRIME E PIOGGIA (RAIN AND TEARS)
2. UNA BAMBOLINA CHE FA NO NO
3. SIGILLATO CON UN BACIO
4. MI SENTIVO STRANO
5. QUESTA CITTA SENZA TE
6. 15 ANNI
7. DICI (DIZZY)
8. PER VIVERE NISIEME
9. QUATTRO PAZZI
10. PENSIERI
11. DIETRO AL SOLE (BACK IN THE SUN)
CD 2
1. LA RAGAZZA TA TA TA
2. HIP, HIP, HIP HURRA (1, 2, 3, RED LIGHT)
3. MARILU
4. VIA CON IL VENTO
5. NUVOLE GIALLE
6. A LA BUENOS DE DIOS
7. HUSH
8. ORA PIANGI
9. DETTATO AL CAPELLO
10. NON CI SARO (I CAN LET GO)
11. TORNARE BAMBINO (HOLE IN MY SHOE)
12. PA' DIGLIELO A MA'


 ”I Quelli”としては’69年に「Quelli」というアルバムを1枚だけ出しています.その他にシングルは7〜8枚出ているようです.しかし,わたしは当然というかオリジナルは聴いたことも見たこともありません.第一,日本には何枚ぐらい現存するんでしょう?
 したがって,長い間 I Quelli に関してはほとんど情報はありませんでしたが,上述のようにofficial web siteの記載などネットの発達で情報も集まるようになりました.そして,ようやく幻だった”I Quelli”の作品をほぼすべて聴くことが出来ることになりました.

 ”ほぼすべて”と書きましたが,このCDはなんと2枚組で,オリジナル・アルバム「Quelli」に加えてアルバム未収録のシングル曲も収録する全23曲のサービスぶり.

 収録曲はDeep Purple,Aphrodite's child,M. Polnareffなどの曲を含め他のミュージシャンのカバー曲が中心です.しかし,F. Mussidaの名前がクレジットされた曲もあり,優れた作曲センスの片鱗を見せています.

 購入する前は,話の種にというかコレクションに近いつもりだったので,正直内容には期待していませんでした.しかし,どの曲もしっかりと彼ららしいアレンジで丁寧に演奏されているので,期せずして上質の”懐メロ洋楽集”の雰囲気になっています.
 別に真剣に耳をそばだてては聴いていませんが,BGM代わりにけっこうよく聴くCDの一つになってしまいました.たぶん’60年代の洋楽好きの方は気に入るのでは?


PFM top

top