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2.Fabrizio De Andre

 PFM関連アーティストとしてはもっとも重要な人物というだけでなく, イタリアの音楽界における最重要カンタトゥーレの一人だと思います. もともとは港町ジェノバを中心に活動し,社会問題を正面から取り上げる社会派の作品が多かったようです.しかし,次第に地中海音楽に傾倒するようになり,この流れが後にMauro Paganiとの共同作業による名盤「Creuza De Ma」(’84)や「Le nuvole」(’90)といった名作につながっていきます.全体的に寡作なアーティストであり,「Anime Salve」(’96)が遺作となり’99年58歳の若さで他界しました.


IN CONCERTO Vol. 1」 & 「IN CONCERTO Vol. 2」   with P.F.M 

1. BOCCA DI ROSSA
2. ANDREA
3. GIUGNO '73
4. UN GIUDICE
5. LA GUERRA DI PIERO
6. IL PESCATORE
7. ZIRICHILTAGGIA
8. LA CANZONE DI MARINELLA
9. VOLTA LA CARTA
10. AMICO FRAGILE
1. AVVENTURA A DURANGO
2. PRESENTAZIONE
3. SALLY
4. VERRANNO A CHIEDOERTI DEL NOSTRO AMORE
5. RIMINI
6. VIA DEL CAMPO
7. MARIA NELLA BOTTEGA DEL FALEGNAME
8. IL TESTAMENTO DI TITO


 PFMとの親交は’70年作の「La buona novella」のバックをI Quelli(PFMの前身)が勤めたあたりからでしょうか.社会派カンタトゥーレだった彼は徐々に地中海音楽に興味を深め’78年「Rimini」を発表します.しかし,その後いろいろなしがらみに疲れたのか,サルデーニャ島で隠遁生活に入ってしまいます.
 そんな彼を励まし,もう一度音楽活動を再開するように働きかけたのがPFMの面々だったようです.Fabrizio De Andreが重い腰をあげることになったのは, 友情や尊敬の念など心情的なサポートのみならず,やはりPFMのアレンジと演奏の質が高かった ことが最大の要因ではないかと思います.


 地中海音楽に傾倒する前の彼の作品はあまりたくさん聴いたことはないのですが,このライブで聴ける音は従来の彼の持ち味とはやはりひと味違います.数年後にMauro Paganiと作り上げる不朽の名作「地中海への道程/Creuza De Ma」とも違うダイナミズムに溢れるアレンジが際だちます.さらに重要な点は,PFMによるアレンジの良さが十二分に発揮されているにもかかわらず,De Andreが持つ魅力を少しも損ねてはいないこと.プログレを期待してはいけませんが,ひとつの音楽作品としては最高の仕上がりだと思います.


「地中海への道程/Creuza De Ma」

1. CREUZA DE MA
2. JAMIN-A
3. SIDUN
4. SINAN CAPUDAN PASCIA'
5. A PITTIMA
6. A DUMENEGA
7. DA A ME RIVA


 Mauro Paganiの全面的なサポートに加え,Franco Mussidaもギターで参加しています.ジェノバ地方の方言で唄いあげる世界観をイタリア語を知らないわたしが正確に理解する術はありません.しかし,その音楽からあふれ出てくる魅力はそんな言葉の壁をいともあっさりと取り払ってくれます.

 Mauro Paganiのページでも書いたのですが,De Andreの魅力の一つはしゃがれた渋い声質.が,彼の声の魅力はそれだけではありません.”渋く”はあるのですが,決して”枯れて”はいないんです.声に独特の色気があるように思います.

 ”色気”とは云っても,けっしてスマートな都会のジゴロなんかが身に纏うものとは違います.何というか田舎or下町っぽい猥雑さが滲み出ています.これはバカにしているのではなく誉め言葉.安っぽい見せかけの魅力にはない深みを醸し出しているという意味ですから.

 音楽面では,民族楽器をふんだんに使い,音楽を聴いているだけで自然と地中海沿岸の風景が瞼に浮かぶほどイタリア南部の風土・風・匂いなどを感じさせてくれます.その一方で,単純な民族音楽ではなくポピュラリティというのか,親しみやすさやわかりやすさも同時に持っています.この作品の一番素晴らしい点は,「地中海音楽」にまるで興味がなくても素直に良い音楽だなと思えそうなところかもしれません.



「LE NUVOLE」

1. LE NUVOLE
2. OTTOCENTO
3. DON RAFFAE'
4. LA DOMENICA DELLE SALME
5. MEGU MEGU
6. LA NOVA GELOSIA
7. 'A CIMMA
8. MONTI DI MOLA


 音楽的には「地中海への道程」の延長線上にある作品.ただ,オーケストラの導入などによるスケール・アップという側面以上に,どことなく”地中海音楽”を一つのステップとして次のステージへと向かう助走が感じられます.
 Mauro Pagani の”地中海音楽”というステージに腰を据えてより高みを目指していく姿勢と,少しだけ違いが出始めているような感触です.

 それにはこの作品を作る上でのパートナーとして,Mauro Paganiに加えてIvano Fossati (De Andre らの次世代に属する素晴らしいカンタトゥーレ)が大きな位置を占めていることも関係しているのかもしれません.

 前述したように”地中海音楽”が根底にありますが,わたしは”地中海”のみに縛られるのではなく,広く”イタリア”の薫りを感じさせてくれるアルバムだと思います.



「1991 Concerti」

CD1
1. DON RAFFAE
2. LA DOMENICA DELLE SALME
3. FUME SAND CREEK
4. HOTEL SUPRAMONTE
5. SE TI TAGLIASSERO A PEZZETTI
6. IL GORLLA
7. LA CANZONE DELL'AMORE PERDUTO
8. IL TESATMENTO DI TITO
9. LA CANZONE DI MARINELLA

CD2
1. CREUZA DE MA
2. JAMIN-A
3. SIDUN
4. MEGUN MEGUN
5. 'A PITTIMA
6. A DUMENEGA
7. 'A CIMMA
8. SINAN CAPUDAN PASCIA
9. LE NUVOLE



 Mauro Paganiらのサポートの元,”地中海音楽”の総決算とも言うべきライブ.
 ごくごく個人的な感想を言わせてもらえれば,長い長い彼の音楽活動全てを通しての代表作であり,音楽活動の頂点を示すライブだと思います.
 彼がずっと大切に歌い続けていた「マリネラのカンツォーネ」など比較的初期の曲ももちろん素晴らしいのですが,「Creuza De Ma」と「La nuvole」から選りすぐった曲を熱演するDISC2はまさに圧巻.
 そして渾身のライブが終わりを告げた最後の最後に演奏されるインスト曲「La nuvole」は荘厳なまでの美しさに溢れています.

 実はこの「La nuvole」という曲,アルバムで聴いたときはそれほど好きではありませんでした.アルバムのタイトル曲ですが,スタジオ盤では女性2人の朗読(会話?)がメインで,1曲目に入っていることもあり”アルバムの触り”ぐらいの印象でした.
 しかし,このライブではよけいなヴォイスは一切なし.それが逆に,広大な蒼天に浮かぶ雲と荘厳な光を感じさせて...CD2枚組という濃密なライブの余韻に浸らせてくれま
す.


「ANIME SALVE」


1. PRINCESA
2. KHORAKHANE
3. ANNIME SALVE
4. DOLCENERA
5. LE ACCIUGHE FANNO IL PALLONE
6. DISAMISTADE
7. A CUMBA
8. HO VISTO NINA VOLARE
9. SMISURATA PREGHIERA


 '96年作.残念ながら遺作となってしまった作品です.
 本当によい作品ですが,特別”地中海音楽”を感じさせる音ではありません.一人のベテラン・アーティストがじっくりと,ごく普通の,でも極上の音楽を聴かせてくれます.
 De Andreのカンタトゥーレとしての持ち味は十分発揮された名作です.それ故に”次作”が製作されていれば,もっともっと進化/深化した新しい境地を聴けたのでは?という夢がどうしても捨てきれません.
 書いても詮のないことですが...やっぱり彼にはもう少し長生きして欲しかったと思います.......合掌.



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