AVよもやま話


7.Kingdom 第1〜4章

 WOWOW初回放送時のキャッチ・コピーは”デンマーク版「ツイン・ピークス」”.たしかに謎が謎を呼ぶ展開,不条理な世界観など共通項は多いでしょうが,”悪ふざけ”の程度はこちらの方が上かもしれません.

 あらすじはデンマークの権威ある大病院が舞台の(一見)オカルトもの.医療事故や過去の怨念,悪魔の落とし子(?)や彷徨える幽霊などが絡まり,一見本格オカルト物と思いきやちっとも恐い内容ではありません.奇抜な登場人物が大真面目に奇行を繰り広げるので,笑うに笑えない喜劇をみるような不条理劇が展開されます.
 この内容とセピア色に褪せた画面(全編色褪せっぱなし)が摩訶不思議な雰囲気を醸し出しています.

 ツイン・ピークスは再放送を一通り見ただけなので奥深い内容は知りませんが,少なくとも「Kingdom」の魅力は強烈な個性をもつ登場人物の性格と行動にあると断言していいでしょう.

 怪しい”空気体操”を推進する病院長,ねじ曲がった根性と未熟な腕をもつ主任医師,病院に寝泊まりする素行の怪しい若手医師,霊との会話を生き甲斐にする妙な霊感おばさん,Mr.スポックをパロったような狂信的解剖学教授,低俗な悪ふざけをくり返す院長のバカ息子.....ろくなヤツはいません(笑)

 このろくでもない連中が自分の都合のいいように好き勝手動き回ります.その暴走をかろうじてつなぎ止め,ストーリーとしての時間軸を保っているのが,幽霊や怨霊(?)などの怪談話ですが,これも謎というよりただの不条理話と言えなくもありません.要するに頭で見るものではなく感性で見る映画ですね.でも,この不条理劇は痺れます(笑)


「KINGDOM (第1章〜第2章)」公開時のパンフレット.


「KINGDOM II (第3章〜第4章)」公開時のパンフレット.


 物語は第5章以後も続く予定だったみたいですが,物語の要とも言うべき主任医師ヘルマー役のエルンスト・フーゴ・イェアゴー(スウェーデン演劇界を代表する名優)が急逝したとのこと.正直,彼の代役が務まりそうな俳優は思い当たりません.また,ヘルマー医師抜きにこの先のストーリーが展開できるとも思えません.この難局をラース・フォン・トリアー監督はいかに乗り切るのでしょうか.ぜひ”あっ!”っと驚くような新展開で続編が作られることを祈っています.


 ・・・・・と云うような淡い期待を抱きつつ数年が過ぎました.続編の知らせは一向にありません.まあ,ラース・フォン・トリアー監督は変わり者と評判.製作ペースも自由気まま.1作目の「THE KINGDOM(第1〜2章)」が1991年,2作目の「THE KINGDOM II(第3〜4章)」が1997年とのんびりした製作ペースではあります.
 しかし,昨年長らくDVD化されていなかった本作品がついにDVDとなりました.しかも「KINGDOM COMPLETE BOX」として.もう喜んでいいのやら,悲しむべきなのか...
 わたしの知らない間に続編が作られていて,こそっと”complete”になっているのでは?との仄かな期待もむなしく,やはり作品は第4章まで.あぁ...悔しい.

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