軽井沢近くに保養所があるので最近取ったばかりの免許で小旅行に出かけた。
負けた碁は忘れてしまえばいいと平気そうな顔をしている和谷と一緒に。
和谷は、気持ちよさそうに上信越の高速をとばしている。
リーグ入りを果たしたはいいが、塔矢とあたり、そこから負けが続いて昇段が遅れた。
負けが続いていることよりウェーブの和谷と言われている事がどちらかといえば気に触っているようでもある。
「伊角さん、着いたらどうすんだっけ。」
「ああ、ホテルのチェックイン済ませて、・・・何でもできるけど、テニスとかするか?。」
ちょっと苦笑いしながら、提案をした。
運動能力は低くもないが、いかんせん、碁しか打ってきていないため体力がない。
「あー、その方がいいな、たまには。ここまできて買い物とかしたくねえし。」
「ちょっとしたハイキングとかもできたな、碓氷峠の方とか、野鳥の森とか。」
「それはパス。」
「じゃあ、運動しようか、たまには。」
「OK。」
あ、なんか楽しみだなーと嬉しそうに和谷がいった。和谷は体を動かすのは嫌いじゃない。
よく進藤とサッカーもしていたりするし。
「・・・夜は、ちょっと戻るけど妙義の方に行こうか。」
「ミョウギ?」
「中仙道の宿場だったところ・・たしか。温泉と蛍が見れるところがあるんだ。」
「蛍!?」
「和谷は見たことあるか?」
「ないっ」
俺たちは生まれも育ちも東京なので、見ることはできない。
うちの祖父母は一応首都圏に住んでいるし、和谷の父方は田舎に住んでいるようだが遊びに行って、いたかもしれないけど興味なかったんでいたかどうか分からないそうだ。
俺も似たようなものだ、どこかで見る機会はあったのかもしれないけど、覚えがない
だから、その幻想的だと言われる夏の夜の水辺を知らない。
・・・どこへ行こうか検索したとき、
和谷となら見たいと思った。
テニスをして、少しだけ旧軽井沢を散策して、保養所のホテルに行く。
夕飯は夕方5時からでよかったので早めに済ませ、嫌にならないうちに、妙義の方へ出かけた。
運転は和谷がしてくれた。
俺はもう眠くて、寝ちゃいけないだろうなと思いつつ、和谷がつくまで寝てていいよというのに甘えて寝てしまった。
さすがに昼間のテニスが堪えていて、しかも夕飯は頂いているので眠くならない訳がない。
でも、和谷も和谷で、着いて、ゆすっても起きない俺をたしなめたのか、
それともナビゲート無しで全部運転したご褒美なのか、深く口付けられて、起こさせられた。
「だって伊角さん、ぜんぜん目を覚ましてくれないんだもんなー。」
後部座席からリュックを取って、クアハウスの方に向かいながら、和谷がにかにかと笑いながらちゃかす。。
「悪かったなっ。」
とりあえず悪態だけはつく。
「後3分起きるの遅かったら、温泉は入れなかったぜ?」
「和谷っ。」
しっかりと睡眠をとってしまっていて、何も言えないわけだが、それ以上続けて言うのはもう俺のせいじゃないよな。
和谷をはたき、俺は先行してすたすたと歩いた。
ゆっくり風呂につかって、一般の人がくつろげる畳の部屋で、コーヒー牛乳とお菓子を軽く食べやっぱりそこでものんびりしてから、外に出かけた。
クアハウス野外の一部に蛍を散策する森があるのだ。
平日なのにそこそこ人がいて、やっぱりこのシーズンしか見れない蛍がいるからだろう。
「『蛍の光』って、夏と冬が合体しているよな。」
「でもかんじんの春じゃないよな。」
などとどうでもいい話をしながら、誘導灯にしている電球に沿って歩く。
何でも、町の人のお手製で前は紙コップで作っていたそうだが、焦げて危ないので銀紙で明るさを調整していているそうだ。
最初は明るかった電灯もだんだんと抑えていって、足元が薄暗くなる。
何度か転びそうになりながら前に進み、人工の明かりが消え、真の闇になった。
すると暗がりに
・・・・蛍の火が、灯る。
「すげぇ・・・。」
和谷が息を呑んでいる。
俺も同じだ。
いくつもの青い光が点いてやがて消え、また別の光が灯る。
低い方を飛んでいる蛍が水面を照らしてそこに水辺があることを教えてくれた。
幻想的だと聞いていたけど、誰がいるのか判別しにくいところでずっと蛍を見ていると、足元も消えるような錯覚が起こる。
近くに来た蛍を和谷が捕まえようとするが、逃げられていた。
「ちぇー、むずかしいな。
「見ている方がいいだろ?」
舌打ちをして口惜しそうにしている和谷にフォローを入れる。
「そうかなあ、すぐ放してやるから手元で見たいな」
「だって虫だろ。光っているのはきれいだけど。」
「うわ、伊角さん虫触れないのっ。」
「昔は捕まえてたけど、もう嫌だよ。」
うわー情けないーと笑われた。
嫌なものは嫌なのだ。しょうがないだろと笑い返す。
そうやってしばらく下らないやり取りをしていたが、周りが静かだったのと、
この夢心地な沈黙の空間に酔った。
少し経って、和谷がためらうようにそっと俺の手を握ってきた。
驚いて、俺はその手を振りほどいた。
外で手を繋ぐのは・・・できないから思わず手を引いてしまったのだ。
「みんな蛍の方見ててわかんないよ。」
暗いので隣にいるのに和谷の表情はよく分からなかったけど、想像はついた。
笑っている、んだろう?。
こんなに和谷が好きなのに、なんで
なんで振りほどけるんだろう。
最近やっと聞いてこないでキスをしてくれるようになったのに。
さっきの車の時のキスも嬉しかったのに。
「・・・ごめん。」
和谷のポケットに入れた手に触れた。
泣きたくなった。
せっかくの蛍見が自分で台無しにしようとしている。
和谷がまた軽く手を握ってくれた。それだけで、安堵して目の前の蛍が霞んでくる。
「よっ、と。」
パッと近寄ってきた蛍を和谷が今度こそ捕まえた。
「へぇ、やっぱり虫だなあ。」
ほらっと見せてくれる。
「・・・結構、大きいな。」
ホントは光の粒が飛んでるんじゃないかと錯覚しているから、なんか変な感じがした。
「恐い?」
「大丈夫だよ。」
ぽやん、と光らせている源氏蛍が和谷の手のひらにいる。
蛍はしばらく戸惑っていて、それからまたふよふよと和谷の手から離れる。
「・・・もういいのか?」
「もういいよ。」
ちゃんと彼女作れよーと冗談を言っている。
怒っていない、のはわかる。彼はこういうことでは怒らない。
でも傷つけた。
「・・・伊角さん。そろそろ行こうか。」
人もまばらになり、クアハウスの閉館は10時だ。
「伊角さん?」
「あ、ああ、」
「10時まであと15分だから行こう。」
ぼーっと自己嫌悪に陥っていて、和谷の台詞が入ってこなかった。
後半蛍も見てないんじゃないかと思う。
戻るべく元来た道に振り返り歩き出す。
足元が明るくなってきて、
ふいに、つながれた手が放された。
「伊角・・さんっ?!」
思いっきり逆走している、自分に和谷が驚いて、叫んだ。
明るくなったからだ。少なくなったけど人目もある。
和谷は俺に気をつかっただけだ。
わかっている。
だけどそうさせてるのが俺で、それが哀しくて、
どうしようもなくて、たぶん泣いてんじゃないかと思う自分がみっともなくって蛍のいる方に駆け出した。
ごめん、落ち着くまで、・・・・待って。
「・・・伊角さんっ。」
追いつかれて腕をつかまれた。
そして、その勢いのまま口付けられた。
「伊角さん、気にしてるの?、さっきの。」
「・・・ごめん・・。」
「謝らなくたっていいよ、驚くのわかっててしたもん、俺。」
「でも、振り払う自分が嫌だ。」
和谷だって、大丈夫と判断したから触れてきたのだ。
いつだって、俺のために慎重でいてくれる。
「じゃあ、俺が無茶したら、ひと呼吸おいて考えて、言葉でキャンセル。」
大丈夫の判断は俺と伊角さんじゃ違うし、驚いても仕方ないよ。
それに、いつも伊角さんだめなときはしっかり怒るじゃん。簡単だよ、と提案してくれる。
暗くてわからないけど、笑っているのが伝わる。
和谷の気持ちが嬉しくて、自分の気持ちが素直にできないのがわかって哀しくて、短く返事をするしかできなかった。
「伊角さんが落ち着くまで、俺は蛍を捕まえているから。」
そう言うのでさっきの蛍の水面に目をやる。
人気がなくなって、さらに闇が輝いているように見える。
ぼんやりと綺麗だなと思った。
和谷は近寄ってこない蛍を取れずに眺めていた。
やっぱり和谷と見てるから綺麗だなと思うんだと思う。
「・・・・もう行かないとまずいよな。」
「なんで?、11時だと思ってましたーとか言えばいいじゃん。」
「だめだって、・・・落ち着いたから、出る。」
「そっか。」
並んで歩き始めて、和谷が手をつないできた。
さっきの後悔があるのに振り払いはしないけど、また驚いてしまった。
「・・・なんで俺、驚くんだろう。」
「嬉しいからじゃないか?」
自惚れた台詞を和谷が珍しく言う。
それが今は嬉しい。
「・・・そうかもな。」
和谷を引き止めて、握っている手に力をこめた。
自分は本当に和谷が好きなんだ。
和谷のすべてが好きで、それを素直に伝えたくて。
顔を寄せて、
・・・・・和谷にキスした。
口付けし終えると、うしっ、とガッツポーズして和谷が喜んでいる。
俺もあんなふうに喜べたらって思った。
「明日は何しようか。」
戻りの運転は俺がしていた。
和谷は元気にナビゲートしている。
「・・・おきて、朝ご飯食べて、浅間山の方行こうか。ドライブコースみたいだし。」
「よしっ、また、とばそーっと。」
「いきなり、スピード違反でつかまることにはなるなよ。
「ラルクのドライバーズ・ハイみたいになったりしてな。」
「なんだよそれ。」
相変わらず世情にはうとい。しかもちょっと前の歌だ。
知っていたら冗談でも言うなってところだが、和谷が言いたい事はそれじゃないから。
「伊角さんと一緒ならいいって事だよ。」
頬にキスをされた。
う、運転中です!。
「あ、朝一に軽井沢の教会よって行こうか!!。」
冗談めかして、でも気持ちは本気でそんな事を言ってきた。
「和谷っ。」
わざと車をゆすって和谷をドアの窓にたたきつけた。
いってーと悲鳴をあげるが、少々問答無用です。運転中だから。
・・・・言ってることは賛成だけど、・・・結構。
「・・・できそうだったらしような。」
和谷にとって嬉しい一言がいえた。
うわー嬉しすぎてマジ泣きそう、って呟いている。
・・・・俺でよければ。
来年も蛍を見に行こう。
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支離滅裂と言うか好き勝手書いているというか。
イラストも書きたいけど夜のシーンをコピックで書くのは至難の業なので
とりあえずSSを。
日記にも書いたけど、蛍を見に行ってきました。
メインはスポーツ大会だけど、
ぼんやりと蛍を見ていて、こんなネームを考えてました。
ネームと言うか、伊角さんから和谷にキスする話を・・・。
うひゃあーーー
こっぱずかしいなあこいつら。