バッドトリップ"という言葉を聞いたことのある人は多いと思います。よく「バッドになる」とか言います
よね。平たく言えば"悪酔い"ということになるんでしょうか。自分をコントロールできない恐怖、もう戻
れないのじゃないかという不安、全く根拠の無い妄想、死への願望などなど、合法、非合法問わず、
意識を変革するドラッグには必ずついて回るものです。特に幻覚剤の場合、その効果が強力な反面、
バッドになった場合の影響も大きく、精神に深い傷を負ったり、最悪の場合、死ぬことも有り得ます。

 トリップにはバッドもグッドも無く、起きたこと全てを受け入れることで、更に深い領域に入れるという
考え方もありますし、いわゆる"グッド"なトリップにおいても精神、身体共に客観的に見て危険な状態
に陥ってしまうこともあります。ですが、その辺のところを深く追求していくと長くなってしまうので、こ
こでは一般的なバッドトリップへの対処方法を述べたいと思います。

 バッドトリップを避ける為に一番重要なことはセットとセッティングです。セットとは自分の内面の状
態、セッティングとは、場所、人、時間などを含めた外的な環境のことです。特に幻覚剤の場合、基本
的には自分の精神を増幅させるものですから、不安や恐れがあればそれがそのまま何倍にも増幅さ
れてしまいます。
 ですから、心身ともに、一番ベストな状況を作ることが大事です。落ち込んでいる時など、精神が不
安定な時や、情報不足で「これを食べたらどうなるのか?」といった不安を抱いている時など、セット
が不十分な場合、また、居心地が悪かったり、うるさかったりといった自分が和めない場所、一緒にい
て楽しめない人がそばにいるなどのセッティングが不十分な場合はバッドトリップを引き起こし易くな
ります。

 では、ベストな状態とは何かと言えば、人によって変わりますから一概には言えませんが、最低限
これだけはということを箇条書きにします。
 1.心身共に調子が良い
 2.自分がどうなるのかちゃんと分かっている
 3.一番落ち着ける場所にいる(音、光なども含めて)
 4.的確なガイド役の人間と一緒にいる
 5.過剰摂取しない
 4.は初めての人の場合は必須です。どんなものを試すにしろ、正確な知識を与えてくれて、いい方
向に導いてくれる人の存在は、単にバッドトリップを避けるためでなく、グッドトリップのためにも必須
です。シャーマンということですね。残念にもそういった人がいない場合でも、誰かと一緒の方がいい
です。悪い方向に行きそうになっても、お互いで助け合えますから。

 では、万が一バッドトリップに入ってしまった場合、どうすればいいでしょうか。これもやはり、セット
とセッティングを変えていくということになると思います。具体的には音楽や映像、ライトを変えます。
大きい音やチカチカした強い光はパニックを引き起こし易くなります。
 部屋にいるなら空気を入れ替えて音楽を静かなものに変えたり、どうでもいいお笑い番組なんかを
かけると、割と現実感が戻って来やすいです。

 クラブなどにいるなら、いったん外に出るか、フロアーを変えるなどして、音の大きい場所から離れ
ることです。バッドになると、その場所の空気そのものが重く淀んでいる気がしがちなので、新鮮な
空気を吸うだけで大分いい方向に向かいます。

 その上で、とにかくあせらずに、自分を落ち着かせます。そのために、どれくらい効果が持続するの
か、どう対処すれば効果を落とすことができるのかといった正確な知識が必要なわけです。いつまで
も戻れないんじゃないのかという不安が一番恐いですから。例えばXXXの場合、一番強いピークは
2-3時間で過ぎますし、ビタミンCや甘いものを摂ることで、ある程度は効き目を落とすことができます。
また、幻覚剤は鎮静剤を飲むことで大分落ち着くようです。ただ、薬で落とすことには賛否両論あるよ
うですが。
 ただし、バッドトリップに入っている場合、以上のようなことを自分で行うのは難しい場合が多いでし
ょう。完全に状況が把握できなくなっていることもありますから。また、一緒にいる人間も不慣れな場
合、その人までバッドトリップに巻き込まれてしまうことも多いです。バッドは伝染します。先ほど書い
たことと少し矛盾してしまいますが。なので、ガイド役になれる人が必要になるわけです。

 それはともかく、バッドになった人が自分で対処できない場合、一緒にいる人は、上にあげたような
ことをやった上で、手を握ってあげるなどして優しく話しかけ、バッドになった人を落ち着かせて上げて
下さい。これをトークダウンといいます。その際、無理やり押さえ付けたりといったバッドになった人の
意思に反する行為は逆効果です。できるだけ、かれらの思うままにさせて下さい。もちろん、飛び降り
そうになったり、暴れて外に飛び出したりしたときは別ですが。これらはバッドトリップに限らず、グッド
トリップにおいても、飛べると思い込んで飛び降りようとすることがあるみたいですから、注意が必要
です。

 基本的には適量を、仲の良い人間と試す限りはバッドトリップに入ることは少ないように思います。
ただ「適量」というのがクセモノで、同じモノでも、その時によって効き方が全然違ったりしますから、
くれぐれも度胸試しみたいな過剰摂取はやめましょう。大食い大会じゃないんですから。
 大体こんな感じです。あくまで僕の主観なんで、不完全なところも多いかと思いますが、そういった
ところはどんどん指摘して下さい。直していきたいと思ってます。
 
 せっかく飛ぶならいい旅したいですよね。みなさんそれぞれ考えてよい旅を。