戦争についてのアリム王の言葉
Words on War by Martin Laurie
(Enclosure#1翻訳)


HW-jpメーリングリストの記事を再収録したものです。
http://www.egroups.co.jp/message/herowars-jp/290


以下の翻訳はEnclosure誌に掲載されたMartin Laurie氏の記事を許可を得て翻訳したものです。(彼はルナー帝国のエキスパートで、「グワンドルのサガ」のナレーター、一連のグローランサ軍事史研究の大家でもあります。)

もちろん古い記事ですので、最近出されたThunder RebelsやSartar Risingの記事と矛盾する可能性があります。(記事はターシュ王国の始祖であるアリムが双子王朝の継承者ヴァラスタポールに教えを垂れるという形式になっています。)


 
 戦争についてのことば

「貧窮者」アリムからその息子、ヴァラスタポールに対する贈り物―1358年

       
                                                           Martin Laurie 筆

 オーランス人の間では戦争のやり方は地域と組織によってさまざまである。(訳注:考慮すべき)主要な地域はターシュ及びセアード地方と、クイヴィンの地であろう。これらの地域の組織の多くのものは氏族clanか部族tribal、もしくはさらに大規模な王国kingdomである。

*氏族Clan
 われわれは氏族として、家族の血統および自分たちの族長の名誉、もしくはオーランス神の栄光のために戦う。我らの氏族の戦旗が風にはためくとき、誰がその力を否定できるだろうか。もし他のなにもかもが敗れ去るにしても、王国が敗れ、同盟が崩壊するにしても、いつも氏族はのこる。しかしこれは全てのオーランス人にとって真実であるが、戦術の立てかたによって氏族の重要性は、地域ごとに異なる。

・クイヴィンの地
 最初のクイヴィン山地への旅以来、私はこの地方の人々がもっとも好戦的で誇り高いことを知っている。彼らは確かに部族的な集まりを持っているが、それらのいくつかは規模においてとても小さいので、平均的なターシュの氏族程度にしか兵力を集められない!これらの少数の部族のほかに、多くの独立した氏族がある。彼らの氏族はこれらの荒涼とした厳しい丘陵で生活を営んでいる。民兵団(訳注:フュルド)を召集するのに何週もかかったり、荒野へと進軍を行うのに何日もかかる王の力を信頼する者がどこにいるだろう?この独立性によって彼らは強くなるが、また高位の権威にとって信頼しにくく、また大きな戦いで組織をおこなう上でもむずかしい。(訳注:パシュトゥン・アフガン人とイラン人の違い?)

 二つのクイヴィンの氏族がぶつかるときには、多くの怒鳴り声や叫び声が飛び交い、挑戦の言葉や歌が応酬される。詩はまるで侮辱の言葉であるかのように浴びせられ、昔からの遺恨が再燃する。主力が衝突する前に、小作農cottarや若者は粗末な弓や投槍で前哨をおこなう。双方の陣が「猪の首」の陣形を族長chiefと、彼の護衛huscarl、氏族の戦近侍weaponthane、もっともよく武装した自由農民、氏族の戦旗の周りに作る。(原注1:オーランス人は吹き流しを神聖な戦旗として用いる。このような戦旗に対してオーランスの祝福を与える多くの儀式が存在し、氏族に大いなる武運をもたらす。)そのあと彼らは突撃し、全員が下馬する―族長すら!(原注2:実のところ、クイヴィン人のガラナ種の馬は小さくて、鎧を着た戦士を戦場まで運ぶのには適さない。)このような戦いのやり方にはほとんど術の余地がないが、多くの勇気がある。最良の戦士と勇気のある氏族のほうがたいていは勝利する。

・ターシュ及びセアード地方
 我々のあいだでは氏族は部族全体の一部である―族長でない王たちが我々の戦の指導者である。一つの氏族が部族の王の援助抜きに戦争へと行軍するのはまれである。その結果、我々の氏族は軍隊の一部としては良く戦うが、自分たちだけではあまり強くない。

*部族Tribe
 王はその民の中心であるが、それは彼が民の中では「王者Rex」オーランスだからである。しかし強力な部族なくしてなにが王か?真の戦争を遂行することにかけては部族にかかっている。氏族ではより強大な敵と戦う戦力を集められないし、ひとりの族長は一つの氏族以上のものを指図できない。他の族長が彼に従うことはないだろう。

・クイヴィンの地
 コリマーとマラニのみがこれらの民の中で真の部族と呼ぶに価する。残りの部族は氏族の見せかけ以上のなにものでもない。しかし彼らは部族のまとまりとして戦うし、彼らの王は氏族が行っているのと同じように戦う家門householdを付き従えている。それぞれの部族がその他の部族と直接ぶつかり合い、部族に加わっている氏族は部族の旗と王の周りに集まる。我々と同じように、戦闘での右翼は名誉のある守備位置である。このような状態で彼らのお決まりの氏族的な戦争の手法が持ち出されることになる。戦術と巧妙さが用いられることはめったにない。


・ターシュ及びセアード地方
「赤の皇帝」の軍勢との戦争で、我々はどうやって一つの集団として戦うか学んだ。王者が統合し、王が命令を下す。王が戦場を選ぶ。彼は考慮して自分の兵力を配備する。我々の民の間では、このことはいつも評価されるわけではないにしても、理解される。より高度な戦略がしばしば用いられる。騎乗兵力は作戦行動と一気に打撃を与える急襲に用いられる。

 王の家門は部族の中心である。そこにはもっとも偉大な戦士たちがいて、賢明な王が、敵が弱かったり、バランスを失っているときを見計らって彼らを攻撃に向かわせる。一つの部族は戦争を行えるが、一つの氏族にはつかみ合いがせいぜいである。(訳注:ルナーやEWF、後のアーグラスなどが行った集合的なWyterの創造についてはここでは触れられていない。アラコリング人とヒョルト人の違いなのかもしれない。英雄アラコリングはEWFの司祭制度を破壊し、小さい規模の部族を、司祭階級の力を統合する魔術を用いる王たちを増やすことで増やしていったようである。ヒョルト人の考える国家はアラコリング人の考える世俗的なものよりもはるかに魔術的なものなのかもしれない。)


*部族連合The Tribal Confederation
 部族がいくつも集まるとき、連合が作られて偉大なる言葉が語られる―そして我々は偉大さへと立ちあがる。ターシュや、ヒョルトランド、そしてシリーラのような王国は戦争ではまさに強大さを発揮する。これらの軍勢は数千もの兵力を集められる。これらの軍はよく武装され、訓練を積み、よく協力しあう。シリーラ人は騎馬術で名声を博し、ヒョルトランド人は甲冑をまとった騎兵で有名であり、我々自身はといえば、不動のシールドウォールで高名となっている。(原注3:アリムは大言壮語している。1360年のミリンズ・クロスの巻物によると、アリムの軍勢には三種の兵力しかない―アリムの強力な魔術、「草飼う民」の同盟軍および限度のない蛮族戦士の群れ。)


*兵団、異邦人と敵
 
・兵団Warbands
 北の国では、戦争は戦士たちのなかでも最強の者たちの職業となっている。このような地の兵団はトゥーラの領土(訳注:オーランス氏族の領土)や街の所有権をめぐって各地で吹き荒れる小規模な戦争に自分たちの技を雇ってくれる王をさがしている。このような者たちは王の兵力にたいして大きな援軍となりうるが、賢く用いる必要がある―彼らは支払いがなければ愛想をなくすし、彼らのうちのあるものはオーランス人の美徳にうとい。「勝利の娘」にたいする戦争は多くのこの種の兵団を生み出した。キンネルフ同盟Cynnelfing Allianceはシリーラ人と戦うためにこのような多くの兵団から結成された。「賢明なるLongwise」グウィサールは、「征服の娘」に立ち向かわなければならないと考えて、多くの兵団の者がこの抵抗運動のために彼のもとに集まったのである。彼女の権力の増大ははじめのうち彼らから土地を奪い、放浪者としての生活を強いるようになったのである。キンネルフ同盟の敗北により、彼らの南方への移住でわたしは大いなる利益を受けてきた。

・異邦人たちForeigners
 異邦人の戦闘力は決して侮るべきではない。わたしは「純粋な馬の民」の戦士が瞬きする間に1ダースもの矢を動いている敵に射ち込むところを見たことがある。わたしは彼らの巧妙な陽動とみごとな戦術を見てきた。彼らのターシュとの同盟はルナーが対抗しがたいほどの力を我々に与えてきた―ルナーは「純粋な馬の民」と対抗するために東方から傭った遊牧民を連れてくる。

 プラックスの地で、わたしは巨大なバイソンに乗る騎獣戦士たちの兵団を傭った経験がある。彼らの突撃は強力なあまりファランクスの方陣すら突破してしまう!性急さと愚かささえなければ、彼らに立ち向かうことのできる軍隊はほとんどないだろう。可能性としては、「純粋な馬の民」がいるが、彼らはプラックス人を憎悪していて、彼らと死ぬまで戦う可能性がある。この感情は相互がいだいているもので、この憎しみをもった敵どうしは別々にしておくことだ。

 ダゴーリ・インカースのトロウルたちが、最近わたしに援助を申し出ている。「月の民」にたいして戦争をしかける暗黒の軍団を適当な代価で送ってくれている。夜間に彼らの強力な戦士たちは敵の野営を探し出したり、我々の敵の領土を襲ってくれる。時たまだが、わたしは戦場の陣に彼らを加えるため、その襲撃隊を呼び戻す。トロウルの突撃は恐るべき光景である。荒涼とした地形、過酷な状況で彼らと対抗できる者はほとんどいない。彼らは天候が最悪な「闇の季」の夜間に戦うことを好む。ヴァリンド神が世界を歩き、全ての正気の人間が眠っているときに、トロウルたちはいちばん活気にあふれている。ルナーは犠牲をこうむってこのことを学んできた。

・敵たち
 わたしたちの最大の敵は「赤の月の帝国」である。「征服の娘」がセアード地方全土を従わせたとき、我々の自由なオーランス人としての存続は、戦いの能力にかかってきた。ルナーの民は手ごわい敵である。彼らはきらびやかな格好をした兵士からなる膨大な軍隊や、好戦的な傭兵団や、不敵な英雄たちを備えている。彼らの魔術は致命的で、連携をとって働く。オーランス神と「揺るがす者の作り手たちShaker Makers」の加護があってのみ我々は彼らを圧倒しうる。彼らを打ち負かすのに我々は自分たちの力を活用しなければならない。我々は分断された戦場で戦わねばならず、彼らの陣形を乱さねばならず、一対一で彼らよりすぐれた戦士たちが戦えるようにしなければならない。我々は彼らの騎兵団をちりぢりになるようにしなければならないし、ファランクスの側面を攻撃しなければならない。我々は混乱させ、狂わせなければならない。我々は襲撃し、破壊しなければならない。しかし、戦勝を望む心よりも、帝国の反応に対する恐怖を優先させなければならない。もし我々が彼らをあまりにも頻繁に、かつ激しく打ち負かすと、「赤の皇帝」が挑戦するのが不可能なまでの兵力を伴ってやってくるだろう。我々が優越する兵力をもつようになるまでは、我々はオーランス神がアロカを倒すための準備として用いた策略に倣わなければならない。わたしに時を与えたまえ、さすれば「嵐の王」のまえに再びもうひとりの「皇帝」が倒れることになる!

*魔術について
 我らのうえにある嵐と、我らの足元にあるケロ・フィンとともにあって、我らの道に立ちふさがる力のあるものはほとんどいない。しかし「帝国」は我らの雲を焼き尽くす太陽の魔術を持ち、彼らの邪悪な大地の女祭たちは大地をそのものを屈服させることができる。彼らと戦うときは、いつも彼らの司祭を先に殺し、月が暗い日に戦いをおこなうことだ。(訳注:この時代、まだ「昇月の寺院」はない)彼らのルナー魔術師はこの時最弱になるが、イェルムの司祭たちはこのことでは影響を受けない。雷鳴と稲妻が我々の最大の武器であり、我々の機動性もまたそうである。シルフたちとマスターコス神の力で、我々は思考より速く、彼らの軍隊の中心を予期し得ないかたちで攻撃できる。どんな帝国とも同じように、彼らの中核は腐敗している。もし我々が決定的に打撃を与えれば、彼らは我らの前で崩壊するだろう。 >>

ルナー帝国の強みはHWルールでいうヤーナファル・ターニルズの「ヴュクシルム」、多種多様な兵種を団結させる力にあり、また月の満ち欠けの影響をこうむらなくなるヤーラ・アラーニスカルト「昇月の寺院Temple of Reaching Moon」の力によってグローラインの外に積極的に領土を拡張することが可能になりました。アーグラスはイーグルブラウン隊などの新式の軍隊や「昇嵐の寺院」などを作ってこれに対抗することになります。

Zeb



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