ルナー帝国の経済
The Imperial Economy written by Martin Laurie
以下の文書はC02のソースブック、The Four Scrolls of Revelationに掲載されていた記事の翻訳です。原著者のMartin Laurie氏の許可の元に翻訳されており、無断での転載、流用等は禁じられています。
http://www.btinternet.com/~Nick_Brooke/products/fourscrolls.htm
ルナーの経済観念
帝国の貨幣制度
経済動向要因
皇帝の役割
ダラ・ハッパ
諸君主領Satrapies
河のカルト
ダールセン地方とグレートシスター(大姉)
属領地政府
ルナー教会会議Synod
金融許認可家門Financial Houses
連盟Associations
首都グラマー
カルマニア
帝国関税
クラロレラ帝国
帝国専売品
総論
帝国歳入歳出表
グラマー大学、現実主義的貨幣経済学の権威、ケリス・ヨセフ筆
Martie Laurie、Mark Galeottiの援助により転載
ルナーの経済観念
帝国の目標と相反しているかのように見えるが、ルナーの信仰のなかで最優先の関心はその公共体の福利にあり、豊かな経済力を求めるのである。つまるところ、純粋なルナー財政上の原理により、帝国はあらゆる形での女神のイデオロギーを促進し、究極的に女神のラショーラナ的な真髄を具現化する単なる手段となるのである。
帝国で主流な経済的活動はそういうわけで単なる財政上の必要から行われるわけではなく、女神の価値観念によるのである。ルナーの世界観は全世界がひとつであるという考えが基盤にある。したがって人間の命は究極の存在へと統合される、調和した完全なるものへと適応していくものと見なされているのである。
しかし、この思弁的な基盤は帝国の広範囲で実地に移された場合、いくつかの過酷な現実に突き当たることになる。重要な摩擦はルナーの観念と、経済活動における歴史や伝統のあいだに起こり、帝国内の、多種多様でしばしば騒然としたおのおのの文化や国々の相互作用から生まれるものである。
帝国の貨幣制度 ダランDaranはダラ・ハッパにおける帝国レベルでの標準的な富の単位である。ダランは文字通り「富」を意味する。(ダラ・ハッパは「富める土地」の意味である。)そして1,000枚の金輪貨、もしくは20,000枚の帝国銀貨と同等と見積もられる。全てのサトラップ(太守)レベルでの富がこの単位で計られる一方で、もっとも裕福な市民のみが自分の家産をこの単位で計る。 金輪貨Wheelはロカーノウスカルトによって鋳造される唯一のダラ・ハッパ製の貨幣である。本当のダラ・ハッパ人はこれ以外の貨幣を用いることはないが、金輪貨を目にする機会に恵まれるダラ・ハッパ人もめったにいない。 帝国銀貨Imperialは中心となるルナーの貨幣であり、ルナーの経済政策との結びつきが非常に強いために、単純に「ルナー」と呼ばれることもしばしばある。帝国銀貨はエティーリーズカルトに鋳造され、計画的に1週間の農奴の労働価値、もしくは平均的な兵士の給与と同等と見なされている。 ナヴァル銅貨Navarは帝国製の銅貨である。ナヴァーリアやドブリアン地方からとれた銅の余剰から鋳造される。この銅貨はナヴァーリア女神のカルトにちなんだ古代の儀式のもとに鋳造されて、この地方の豊かな陶器の生産のため、ダラ・ハッパ産の粘土や道具やその他の材料の支払いに用いられる。ダラ・ハッパの貴族はこの貨幣を貯えて高価なナヴァーリア製の陶器を買うために使っていた。ダラ・ハッパ貴族たちは彼らに仕える農奴たちの作るいかなる交易品よりもナヴァーリアの陶器を珍重したものだった。その時代から、ナヴァル銅貨は広く用いられるようになったし、この銅貨10枚分の価値とされる帝国銀貨が導入されるようになってからはますますそうなった。 |
経済動向要因
皇帝の役割
赤の皇帝は単なる表看板ではない。彼は帝国支配の全ての面での土台であり、中心軸であり、核である。彼抜きでは分裂が存在し、いかなる以前のペローリアの帝国をも分割してしまった分離主義的な勢力が割拠へ速やかに、またしばしば流血をともなって向かってしまうだろう。帝国全人民にたいする究極的な不滅の統治をおこなうことが彼の役目であり、彼の支配者としての能力は宗教と世俗双方の領域にまたがっている。それに属する文化全ての宗教、世俗双方の領域が同時に皇帝の支配の方式と、ルナー帝国のかたちを定義することになる。財政的には、皇帝はいくつもの独立した、しばしば相互に対立しあう経済体制を一体のものとして機能するよう統合する。皇帝の全てを包み込むルナーの性質のみがこのことを可能にした。全ての以前のペローリアの帝国が征服した者たちに自分たち独自の体制を強要し、その誤った考え方が最後にはルナー帝国に道を譲ることになったのである。
ダラ・ハッパ
この帝国の中心部はオスリル川の信じられないくらい肥沃な後背地であり、ダラ・ハッパとも呼ばれる。ダラ・ハッパはもはや帝国内の政治的な区域としては存在していないが、それにもかかわらず帝国の富の長期的な基盤となっている。帝国の大部分と違って、ダラ・ハッパは決して商業的なレベルで交易の伝統を発展させることはなかった。むしろダラ・ハッパの交易は階層的な社会秩序に基づいた計画経済によって左右されてきたのである。皇帝と、彼の下のイェルム信徒の貴族階級が全ての生産と富の相を司ってきた。彼らの神、イェルムが知恵と数世紀もの伝統のもとに導くとおり、この地の富の支配力は社会階層を下っていき、それと逆に最下層のロウドリルの民の富と生産は自分たちの上位階級を富ませるために上っていくのである。
伝統的なダラ・ハッパ人には、商売による富裕という概念は、単に笑うべきものか、さもなければまったく不快な考えと見なされる。ダラ・ハッパ人は人はあるべきところに生まれるのであり、単なる富がイェルム神の授けた貴族の階級の代用にはなりえないと理解しているからである。イェルムのパンテオンの中で交易の神と言える神はロカーノウスだが、彼も交易商というよりは「運ぶ者」であり、イェルム神の貴族の命令に従ってものを輸送するのである。
経済活動の最下層は、したがって農奴や街の民の物々交換である。彼らが支払う税は貨幣によって支払われず、現物と労働で支払われる。彼らの活動の上には、伝統的な役人たちの組織があり、ブゼリアンの司祭の監査会の支持にもとづいて国家によって定められたある特定の財産から利益を得ている。高位の知事Overseerの助役レベルになって、ようやく貨幣が実際に用いられる。利用される貨幣単位は常に黄金のダランである。銀や銅の貨幣は禁忌であり、他の文化のそれらの利用は、彼らの野蛮さと無作法さの最悪の表出と軽蔑される。
皇帝の黄金のダラン備蓄は交易を奨励するためより、むしろ頻繁に戦時活動に出資したり、外国の政府や部族を買収したり、外国人の専門家をともなった集団による公共事業を実施するために用いられる。しかししばしば、帝国の援助はある種の財産や資源の権利認定ではなく、単なる将来における納税義務の免除であることが多い。たとえば、「赤の地」の再移住キャンペーンの誘因のひとつは、ひとつの農奴家族が最低一年間入植するごとに、その移住を援助した連盟(訳注:Association、ダラ・ハッパに始まる貴族層を頭にする帝国内の組織。後述)もしくはその他の団体は一度限りのその年の税免除を受けられるという約束である。悲しむべきことに、この寛大さはいくつかの事例で悪用されている。大家族の「赤の地」入植を奨励する後援者がいるが、いくつもの農場に分けて住ませ、その大家族を多くの家族として数えさせて税免除を受けるのである。
ルナー帝国は広く利用される帝国銀貨、銀本位の正貨という効率的な貨幣流通の実施とともに、ダラ・ハッパの伝統的な経済構造にいくつか変化を加えた。農奴階級が帝国銀貨をたくさん見たり使ったりすることはないものの、この貨幣は「富める地」、特にオスリル河畔の都市に住む新興の企業家に取引の元になりうる手段をもたらすきっかけになり、にわか景気をひき起こした。このことはその一方で厳しい社会の摩擦を引き起こした。なぜならイェルムに定義される階級社会に、このように無法で、要求を強く行う階層の居場所はないからである。不可避的にこのようなしばしば才能に恵まれた民はその才能のはけ口としてルナー・カルトの自由に導かれる。エティーリーズ女神は両手を広げて彼らを迎える。
諸君主領Satrapies
サトラップたちは皇帝の代理人である。彼らの司法権は民政と軍事双方の領域を内包する。そして彼らは毎年の皇帝への貢納と同様に、帝国軍や戦略的な労務事業の志願者の提供に責任を持つ。
政治的支配を保証する必要から、諸君主領は帝国の組織なのであり、このことはたいていの場合、領土の中の数多くの文化的、政治的集団の領分を定義することになる。したがって一つの君主領が多くの異なる財政構造を抱えているのは当たり前のことになる。皇帝のやり方にならって、サトラップたちは財政上の歳入のさまざまな要素を支配する。領土内の小さな諸文化の名目的な指導者になるのである。たとえば、ダージーンのサトラップはダージーンの大マニマト(訳注:ダージーン人の伝説的な皇朝=王の称号)でもある。シリーラのサトラップはダラ・ニ、ラクレーン地方及び「高地」の大王High Kingでもある。カラサル(訳注:原文のコスターディはおそらく間違い)のサトラップは西部エスヴシル地方の知事であり、カラサルの「塗油された王」であり、ダールセン地方の「輝く顔Bright Face」でもある。これらの副次的な役割は皇帝にとって取るに足りないものと見なされ、したがってこれらの権利をサトラップたちに委任するわけである。しかし、この考慮すべき権勢と引き換えに(実際のところは全体的な帝国の政策に従うかぎり、彼らは自分たちの領域では自治権を持つ君主なわけだが)サトラップたちは皇帝に皇室のブゼリアンたちに査定された、毎年の貢納をおこなう義務があるわけである。
河のカルト
帝国を流れる三つの主な大河の規模のために、これらの河は帝国の要、交易の大動脈となっている。これらの河があまりにもよく用いられているので、道路の整備は意識的におろそかになっている。ペローリアの数多くの川が大量の輸送を可能にしているからである。オスリル河、アーコス河、ポラリストール河のカルトは、古代以来の権威にしたがってその交易を支配している。しかしルナー帝国は、彼らの効率的な交易独占権を早期の内乱時代に打ち破った。帝国の利益と河の政治的見解が衝突した時代であった。正当かつ不可避的に、帝国が河のカルトの偏狭な関心と彼らの確立した河の交易権と交通権に勝利したのであった。
その時代以来、河のカルトは全ての私的な河の交通から利用税を得る権利を持っている。この徴収権は宗教的なものと見なされているが、皇帝によって命じられ、帝国の法律の支持を得ている。河のカルトとの協議の元に、エティーリーズカルトが10年ごとに「河の背信」について取り決めを行う。この祭事は帝国の勝利を記念するものであり、河の神々の敗北が再演され、交易を行うのに絶好の日である。この思いやりの報酬として、皇帝は河の民が兵力を移動させるように命令する権利と、帝国水軍に配属する予備軍auxiliariesを彼らのところから召集する権利を持っている。その引き換えとして、河のカルトは帝国水軍を河賊や、外国の脅威に対して呼び出す権利を持つ。請願が公式的に行われると、続く1年のうちのいつ脅威に対して立ち向かうかは帝国水軍にゆだねられる。もし危機状態が続くなら、その地域の川のカルトはその権限をおびやかすものに対抗するのに必要なかぎり、利用税を際限なしに引き上げることができる。
ダールセン地方とグレートシスター(大姉)
カラサル君主領の領土内であるものの、「女性の国」ダールセンはサトラップの財政の権限から独立している。グレートシスターはダールセン地方の名誉的な指導者であり、オルダネストゥム(訳注:Ordanestyum、おそらく帝国元老院)への援助と帝国の全女性に対する彼女のたゆみない努力の報酬として、大姉のカルトSisterhoodから貢ぎ物を得ている。これらの歳入の大部分は粘土職人や小規模な織工や、木こりや、その他の伝統的なダールセン地方の生産から生まれていて、大姉の軍Sister's
Armyの軍備に用いられている。グラクロドントの大都市がグレートシスターの個人的な領地であり、彼女のみが利潤の多い淡水海と白海間のポラリストール河交易から歳入を集めることができる。この歳入の損がカラサルを君主領の中でもっとも貧しいものの一つにしていて、このことがサトラップを激怒させる。その怒りのあまりグレートシスターを目にするだけでサトラップは脳卒中を起こすほどであり、危うく命を落とすところだった。
属領地政府
属領地は年ごとにミリンズ・クロスの属領地総督へ貢納を行い、総督を介してオルダネストゥムの了承のもとに皇帝に貢納が送られる。しかしこの歳入が物理的に属領地を離れることはほとんどない。たいていの場合、帝国の代理人たちがこの歳入を管理し、軍事的もしくは民政的ないずれであれ、帝国の意志行使にたいして出資される。たとえばドラゴン・パスの大部分の軍の兵員と給料の提供は帝国のいくつもの連盟Associationに委託され、連盟が属領地政府から歳入からの分け前を受け取り、作戦行動の兵站がとどこおりなく行われるか管理するのである。この努力の返礼として、関わっている連盟は適当な利益を得る。
属領地のそれぞれの王国は歳入を時とともに実証された伝統的な方法で得ている。たとえば、ターシュ王国では王はいまだに強く「王の取り分」King's
Shareの方式に依存していて、氏族の長たちから集めたおのおのの部族長が年ごとの貢納を王に対して行う。それと対照的に、ホーレイでは、ある意味、共同体ごとの課税制度にかなり特定の産業や団体に対する直接的な税制が付け加わったり、場合によっては置き換えられたりしている。「赤の取り分Red
Corner」(赤い陶器の七分の一が徴収されることに由来する)に始まって「穀物の徴収Kernel
Levy」(製粉業者が農奴階級の粉を挽くときいつでもかなりの量に課される)に終わる税制が存在する。諸王国の属領地総督への貢納義務の量は7年ごとに属領地監察に基づいて行われ、「五王国の書」に全ての財産の情報が集められる。徴収された歳入の大部分は属領地政府に提供され、その軍事力と宗教的、民政的な計画に用いられる。属領地の部分をなす諸王国は軍事上の義務として納税の義務をある意味負っているのであり、もしその軍事力が激しく使われているのなら、貢納の免除をしばしば受けることになる。ターシュは帝国の戦争活動で属領地の中でも不均衡な大きさの分を担当している。ドラゴン・パスでの絶え間のない軍事作戦の結果、ターシュ以外の他の属領地はターシュ軍にたいする資金提供のため、特別な税を払う義務が生じていて、彼らの間で不満が生まれている。ターシュが煽動したり、圧力をかけたりして帝国のドラゴン・パスへの介入を単に自己勢力の拡大のための不断の戦争努力のひとつにしてしまっていると考えているのである。
属領地の中での交易はイサリーズやエティーリーズの寺院や会Leagueなど(訳注:Associationの下位組織)が競争し、帝国と遠隔の地双方での新しい取引先を開拓することに積極的であるため盛んである。属領地政府の設立と交易の管轄がはじまったことは、平和的な論争解決のシステムの創造と同じことであったし、地域間の交易から生まれる収益は莫大に増加した。この繁栄によって属領地政府にはいくつか特筆すべき歳入源が生まれ、このことで大規模な建築計画が生まれた。属領地の栄光を記念するセルナンThernan市のガルガンチュアGargantuan(訳注:原著者によると巨大な記念像らしい。)や、フィリチェット市の大孤児院等、社会保障のプログラムなどである。
ルナー教会会議Synod
ルナー教会は帝国の経済動向に底知れない影響を与えてきた。広範囲に広がる、寺院と信者を抱えて、ルナー教会は帝国じゅうに代表者がいる。「鎌の月scythes」は収入の七分の一を納める税(訳注:Imperial Lunar Handbook-1によると市民権にかかる税)で、教会がこの巨大なネットワークを通して集める。ルナーのカルトの二つの偉大なる中心、グラマーとトーランまでこの税は向かうことになる。エティーリーズカルトはこの巨大な国家財政組織の支柱であり、それがどこにあろうともルナーの市民とカルトの構造を支援する仕組みになっている。ルナー教会会議はいくつもの下位の団体があり、その仕事はルナー教会の引き続く繁栄を保証することである。改宗の努力を続けることと、帝国の精神的な健全さを保つために、このことは不可欠なのである。孤児院や、共同自治体や、寺院や巡礼団の全てはこの教会の得た富によって援助されている。
土地の寄附の増加によって、教会は豊かになり、その七分の一税の利用が自由になり、歳入は帝国じゅうでさらなる勢力の増大と布教の努力に用いられることになる。教会の帝国での普遍的な広がりにより、以前はヴァンチの富豪たちやシリーラのカルテルだけが受け持っていた銀行の役割を教会が負うようになってきた。教区dioceseで作られた証書は他の教区でも用いられることになり、それらは公式的に紙幣として使われることが多くなる。そして紙幣は利用者が正貨でダラの包みの1ダースを運ばなければならない嫌悪すべき仕事から免除するのである。
金融許認可家門Financial Houses
ダラ・ハッパ人が高利貸しという野蛮な仕事にたずさわることが宗教的に不可能であることから、ルナー帝国以前の時代にはいくつか外国の(言葉を返せば、非ダラ・ハッパ的な)手法の発展があった。将来の歳入と引き換えに、本来得られる額以上に速やかに金を充分集める手法である。ダラ・ハッパの皇帝たちは外国人から金を借りることを認めるくらいなら、黒衣を着てどぶの中に住んだだろうけども、そういう事件はルナー帝国以前の歴史に幾度も起こったことなのである。よくある例としては、戦争は収入をただちに要求することになるし、しばしばこういう戦争は民事上の処置から起こるものなのである。三種類の特徴的なグループがこのような事業に資金を提供している。
最初かつ最古、そしていまだに最も成功しているグループはヴァンチ人であり、ダラ・ハッパ人は「泥棒」と恩知らずにも彼らのことを呼んでいる。エルメクスドロス皇帝(訳注:Elmexdros、Denesiod皇朝(EWFと友好的)の軍人皇帝)はヴァンチ人を国に迎え入れて、いくつかの都市と帝国の独占事業からの将来の歳入と引き換えに、自分の果てしない戦争に資金提供することを認めた。ヴァンチ人の高利貸しとしての烙印ゆえに、ヴァンチ人は公共の場でアライグマのような化粧をすることを要求されたし、この伝統は今日まで続いている。ヴァンチ人の富豪たちはオスリル河流域すべてに強い取引のつながりを持っていて、数多くの異なる場所から交易の後援者として資金を集めることができる。ヴァンチ人は交渉に優れていて、ダラ・ハッパの歳入が生まれるところでは独自の重要な分野に詳しい。
シリーラのカルテルはもうけの多い金融市場のヴァンチ人の独占に対抗をはじめた。河の商人の同盟が未来の羊毛の利益を元手に金を借りて、対カルマニア戦争に融資したことが始まりだった。それ以来彼らはシリーラのサトラップのセレリスとの戦争Seleran Warsに特別に資金提供する主要な財源となり、成長で高みに登った。シリーラ人は特に属領地に明るく、いくつもの強力な帝国の連盟と組んでいる。
淡水海商会Sweet Sea Leagueはかつて「封鎖」がはじまるまで、淡水海をまたにかけて働いていた。カルマニアの大王(シャー)たちに協力する強力な団体で、ソグの都にまで流れるジャニューヴ河沿いに取引を持ち、そこから短期間の融資条件で莫大な資金を出すことができた。「封鎖」とルナーの勢力勃興とともに、商会は力の多くを失ったが、とりわけ「血王の戦い」の後に帝国に敵対したからだった。しかし今では、グレートシスターや河のカルトとの太いきずなで、盛り返してきている。また彼らは多くのカルマニアの大家に財政上の多くの貢献をしている。
これらの大きな金融複合企業は、勢力と数を増すに従い、ますます帝国の連盟Associationと競争を激しくしている。皇帝は連盟の資金提供でいくつかの短期的な計画に投資をしてきているが、それと引き換えに連盟に高い地位の称号や報酬を得ることを認め、その一方でこれらの(非ダラ・ハッパの)企業家門は奪われた取引の機会に騒然とするのである。
連盟Associations
もともとはダラ・ハッパで生まれた概念だが、連盟Associationが帝国内の大部分の活動の経済的な基盤となっている。ほとんど全ての民がある会leagueかそれとも異なる会に属していて、会は大きな連盟とつながりを持っている。その一方でその連盟がより大きいか、より政治的な連盟とつながりを持っているのである。
現代の帝国では、これらの連盟のいくつかは巨大で、経済的な、ときには軍事的な力で小国に匹敵する。二つの主な種類があり、サトラップ(訳注:君主領の太守)によって認可され、君主領の境界内の定められた地域で活動をおこなう連盟と、帝国に属していて、帝国じゅうで活動をおこなう機会をもつ連盟がある。
皇帝のみが皇室特許を帝国認可連盟の候補に勅令として与える権限をもつのであり、ひとたび与えられた許可はその皇帝の命令によってのみ取り除かれるものである。帝国認可連盟はたいてい帝国じゅうとそれを越えた地域に広がり、数多くの相違する検討課題と哲学を持っているが、全てが強力であり、数多くの地域とつながりを持ち、しばしば重要な資産をいつでも手の届くところに置いている。
君主領認可連盟はサトラップによって認可されるが、サトラップの管轄する領域内でしか活動することができない。そのため帝国の認可する連盟よりも小さいことが多い。(それでも多くがたくさんの人員と広い範囲の資産を持っている。)そしてしばしばより大きな帝国の連盟と協定を結んでいる。
帝国認可連盟は毎年ブゼリアン・カルトに監査を受けて、生み出す利潤に応じて課税される。サトラップの連盟はそれほど頻繁に監査を受けないし、しばしばサトラップのために徴税の任務を請け負う。彼らは歳入源に責任が与えられ、サトラップに特定の歳入をもたらす。サトラップに払わねばならない以上に集められる場合だけ、利益を得られる。そして実際、そうできなければ損失をこうむる。
首都グラマー
帝国首都は皇帝の個人的な領地であり、毎年数千ものダランを生み出し、消費する。混み合ったこの都への食糧供給は帝国の歳入をかなりの割合で要し、グラマーの穀物無料配給Glamour Grain Grantとして知られる。しかし交易と巡礼の中心地として通行税や十分の一税を帝国金庫に入れるわけでもある。グラマーはまた、帝国内でもっとも正貨の流通している都市であり、一日で流通する帝国銀貨の数はアガー全土で一年で見られる数よりも多い。この経済活動の影響は低く評価しようがない。ひとつのところに数多くのグローランサ最良の職人と起業家を雑然として抱えている影響力は、ますます頻度が増していく完成された品物の取り引きで明らかであり、おびただしい数の商業上の冒険がグラマーから始まって、贅沢な物産の探求は増加するばかりである。それは富裕な人々がこの都にいるのか、もしくはすくなくとも、人々の一部が余分な収入を消費に費やそうとしている証拠である。
カルマニア
カルマニアは例外的な地位を帝国経済のなかで占めてきた。シャーShahによって統治される王国としての性質から、カルマニアは、皇帝もしくはペローリアのパディシャーPadishah(訳注:世界の王、赤の皇帝のこと)の個人的な領土であることが認められている。そのため、カルマニアで生み出された歳入は直接的にサトラップ(訳注:西域領の四人のサトラップ)たちが皇帝に贈る貢ぎ物として送られる。この歳入の一部はたいていの場合、皇帝によって帝国金庫に下賜されるが、大部分は彼が用いるために残しておかれる。皇帝の親衛(イェニチェリ)隊Jannisaryとカルマニア内の個人的な財産はこの歳入によって維持される。
帝国関税
増大を続ける贅沢品の交易と、属領地からの輸入のために、赤の皇帝ロブストゥスRobustusは自前の税関機関Customs and Dutiesを設けて狩猟兵団Hunter Corpsの一部に任せた。彼らの役目は安全にハートランド地方の経済的利益を守ることである。ついには帝国税関吏はハートランド地方の国境全てに見られるようになった。戦略的に重要な地点を押さえ、移動する巡視隊が見張ることで、全ての輸入される物産に関税が支払われることが保証されるようにした。これは皇帝にとって非常に重要な税収源になり、またハートランドを、安い労働力で資本を投入する属領地や異国人との不公平な競争から救うことにもなった。特にターシュからグラマー市に入る穀物の輸入量は新しく加えられた関税の重さを感じている。この関税がハートランドの農場をほったらかしの休閑地にして、ハートランドの農奴や貴族が収入を奪われる一方で、貪欲な蛮族たちが帝国の銀貨で金持ちになることから防いでいるのである。
贅沢な嗜好品もまた重い関税がかけられ、このことは密輸の問題を関税吏が取り締まることにつながった。密輸業者はしばしば重武装し、騎乗するか乗船していて、獲得することが可能なはずの莫大な利益のために戦いの準備ができている。この脅威に対抗するために、税関吏たち自身もまた武装し、強力な密輸団体と対峙した時にそなえて、数に劣っているときに帝国狩猟兵団から自分の僚友を呼び出せるように用意している。
クラロレラ帝国
ペント荒野が交易に対して解放されて以来、クラロレラは最大の貿易相手国のひとつと化している(我々がますます損をするようになっているが。)クラロレラの贅沢な絹織物や、陶器、茶、香辛料は驚くべきほど帝国の富裕層に人気が出ている。あまりにも需要が多いので、キャラバンは大人数で毎週のように荒野を越えている。不幸なことにクラロレラ人は帝国の物産にほとんど興味を示さないので、我々は彼らの品物と引き換えに黄金を支払わなければならないできた。この正貨の流出は貨幣供給にあまりにも損害を与えてきたので、皇帝はハジアや、その他の月で育てられた薬草の輸出増加を命令した。それはクラロレラ人に中毒をもたらす性質があり、我々の財政上の損失を相殺する市場を生み出そうとする試みだった。残念なことにクラロレラ人はこの中毒性が生み出す社会不安、クラロレラの抑圧された民が熱心に求めるものに気づいてしまい、ルナー帝国のいくつかの組織の交易に封鎖をかけるようになった。貿易戦争が起こりかけているし、密輸は増加の一途をたどっている。
帝国専売品
皇帝は7種類の重要な物産と鉱物(銀、ガラス、金、ジン、鉄、月の石、奴隷)の独占的専売権を主張している。帝国の、これらの重要な物産全ては皇帝の財産である。交易、採鉱、採集は特定の地域において、帝国勅令の元に競争が禁止されている。またその交易、採鉱、採集の権利は皇帝の専売権担当局Office of Monopoliesの発布する専売権についてのお触れのもとに、最初の入会納付金と固定された収量を条件として与えられる。この責任はその独占が生み出す利潤がどれだけであれ、皇帝に納付しなければならず、投機家の投機の対象となっている。また、この責任による過酷な経済的現実は数多くの家門を破産させているし、破産した家門の土地は奪われ、その一族は専売権担当局の納付要求に応えるために奴隷にされてしまう。その一方で、時を得て、抜け目なく購入され、運用された独占権は永久的に巨利を生むことは実証されていて、皇帝の愛顧を強く受けた家門の多くが、自分たちの領地にひとつ以上のこのような独占権を有している。
総論
ルナーの経済観念は理想的完全に達することは不可能なものの、ルナーの信仰と、皇帝の栄光と、女神の全てを包み込む性質は深遠な影響を帝国の民に与えてきた。セレリスとの戦争による大破壊のあとの数十年もの平和は、ペローリア経済の耐久力と我々の潜在力をしめしてきた。反逆の神々の最終的な敗北とともに、経済的な完全性への我らの追及において、ジェナーテラの大部分が我らのところに加わることは、もはや時間の問題であるように思える。
帝国歳入歳出表 | |||
帝国歳入財源(単位:ダラン) | 総計18700 | ||
各君主領からの貢納 | 「銀の影」 | 800 | |
コスターディ | 1180 | ||
オラーヤ | 500 | ||
オローニン | 950 | ||
ドブリアン | 970 | ||
カラサル | 650 | ||
「原聖地」 | 1400 | ||
シリーラ | 1120 | ||
ダージーン | 1320 | ||
帝国各連盟Associationからの税収 | 1700 | ||
属領地政府の貢納 | 1880 | ||
帝国専売品収入 | 2450 | ||
帝国交易関税収入 | 1300 | ||
・帝国直轄部収入 | グラマー | 610 | |
カルマニア | 900 | ||
皇帝直轄地 | 750 | ||
帝国カルト | 220 | ||
帝国歳出(単位:ダラン) | |||
60% 軍備支出 | 帝国親衛軍 | 1683 | +小計11220 |
騎兵軍団 | 2805 | ||
ハートランド軍団 | 3366 | ||
魔術学院 | 1683 | ||
守備兵団 | 2805 | ||
14% 国家組織支出 | 治安内務 | 655 | +小計 2618 |
官僚組織 | 1571 | ||
徴税組織 | 393 | ||
12% 公共投資 | 建築 | 449 | +小計2244 |
輸送 | 898 | ||
寺院 | 449 | ||
灌漑、堤防 | 449 | ||
6% 宗教祭事 | 1122 | ||
4% グラマー市穀物供給 | 748 | ||
4% 予備積立 | 738 |
ルナーの経済観念
帝国の貨幣制度
経済動向要因
皇帝の役割
ダラ・ハッパ
諸君主領Satrapies
河のカルト
ダールセン地方とグレートシスター(大姉)
属領地政府
ルナー教会会議Synod
金融許認可家門Financial Houses
連盟Associations
首都グラマー
カルマニア
帝国関税
クラロレラ帝国
帝国専売品
総論
帝国歳入歳出表