ブリソス人の非・神話Anti-Mythology of Brithini
Changes and Greggings in Revealed Mythologies



神話

 Revealed Mythologiesで明かされたマルキオン教徒の神話(?)はほぼブリソス人の残した形であると思います。冒頭に植民市の住民に対するザブールの布告があり、彼(とその臣下のブリソス人)がどのように世界を見ているか、またどのように見ていると信じさせようとしているかについて、若干の推理が得られます。(ヴァデリ人の神話は残念ながらありません。)ザブールは完全に登場人物の人格、あるいは神格を無視して、あたかも彼らが相互作用をする物であるかのように「科学的な」陳述をしています。

(いわく、三角形の形をした論理王国には六つの部族があって、それぞれ「研究家」(多くが後のブリソス人)、「航海家」(後にウェアタグ人)、「通訳家」、「探検家」(このうちの一部が論理王国の境界をすぎて探検してしまい、ヴァデル人になった)、「書記家」、「建築家」でありました。彼らはそれぞれ四つの階層、タラール、ザブール、ホーラル、ドロナーに分かれていて、原始的な社会からの発展というものを知らずに最初から都市を持っていました。これは現実に全くパラレルを見出せない設定ですね。)


 マルキオン人の神代の経過は、マルキオンの行為Actionによって変化が始まります。彼は、この魔術的な世界の中にあって、「論理王国(ダンマラスタンDanmalastan)」の源としてザブールの言葉から姿をあらわします。(彼が現実世界の一神教の神に似ているところは、彼の「全能」の属性が歴史の最初から姿をあらわしているわけではないということです。)彼は世界の変化に応じて姿を変えていき、「創造主」、「法」、「創始者」、「預言者」、「犠牲」と五回の行為(「創造」、「顕在」、「増大」、「重複」、「破壊」)に応じて変化していきます。(それぞれが神知者の言う「創生時代」、「緑の時代」、「太陽の時代」、「嵐の時代」、「大暗黒」にそれぞれ該当します。)この点「受肉した」神を信じるキリスト教徒に実在の一神教の中では一番似ていると思えます。



「人間」の概念は、ザブールが世界と人間をどのように見ているのか語っていない以上、マルキオン自身と彼によって作られたルーンの諸力(これにはザブール自身も含まれます)がかつてどのような存在であったのか、どのように変化したのか明らかではありません。いずれにせよ、マルキオンによって創造されたこれらの力ある者たちは、多くが物質界をおのれのものとみなし、あるいは望み、「神教」や「呪術」など自分に対する誤りの信仰を自分たちより力弱い存在に押しつけたのです。彼らは自分に備わるルーンを自分の所有するもののように扱い、神々の戦争の原因を作ったのです。(HWの設定によると、秘法の術者に対する誘惑はまず最初に神界から、次に精霊界から、最後に魔道界からルーンという純然たる力の形をとって現れると書かれており、非常に示唆に富んでいます。つまりルーンを意識的に用いようとするのは魔道だけだということでしょうか?)彼らのあやまちにより「神々」が論理王国から生まれたということになります。

 ヴァデルの堕落とザブールの背信も、神話のテーマです。ただしザブールは自分自身の背信の理由について沈黙し、それが他の変化とおなじく、物体の相互作用とみなし、そうすることである意味で創造主の人格的な部分を捨て去り、創造主のエッセンスと世界が混ざり合うことで「慰め」が遍在する新たな世界を生み出したという事実を述べています。(Peter Metcalph氏によると、マルキオンの死は、スパイクが爆発した、あるいはモスタルと世界機械が故障を起こした時点を意味しているようです。)おそらくこの出来事はブリソスの「無神論者」の意見に応じない他のマルキオン教徒にとって、大いなる犯罪、悲劇であり、解けない謎でもあるのでしょう。(彼らはマルキオンの「第五の行為」を「破壊」でなく、「犠牲」と呼びます。)

 
 ヴァデル人はモスタリと手を組んで論理王国の残党や南方のアートマル帝国を攻撃し、ザブールとの戦いの最終局面の時はワクボスやカージャボールの軍とまで手を組んだようです。しかし彼らもザブールの強大な魔力の前に滅ぼされ陸地は沈められました。HWの設定ではマニリア限定の出来事である「我が戦い、皆が勝った」や「曙」は改訂された神話では、ザブールがはんぶん異教徒のマルキオン教植民市の民を集め、協力して魔道で大いなる魔道をふるったことになっています。


 肝心なことは、すくなくともフレストルの革新以前には、マルキオン教徒はマルキオン=創造主の他に(ウォーラス、イーヒルム、蛇王朝の祖霊などの)神々をも信仰していて、汎神論的な態度を取り、それが現代の正統派マルキオン教徒のように決定的に間違った、「魂」に害を及ぼすことだとはかんがえていなかったことです。そして彼らは曙のときにはザブールとブリソス人たちに味方して、太陽を取り戻すのに成功しました。

 


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