「八方美人な書評」の正しい楽しみ方


100冊分もの書評を書いていると、その展開の仕方もある一定の形にあてはめることができるようです。
そこで、「八方美人な書評」をよりいっそう楽しむために、ちょっとした解説を試みてみました。


<例 題 文>
【八方美人出版局】
『ああ、八方美人な人生』

八方美人男著 



 いったい、この世はどうしてしまったというのだろう。凶悪な犯罪が多発し、景気
は依然として回復のきざしも見せず、父親の権威は失墜し学校は崩壊、そして政府
は数を頼みにとんでもない法案を次々と可決していく。しかし、こんな今だからこそ、
私たちは他人を尊重し、お互いに助け合っていくべきではないのだろうか

 本書『ああ、八方美人な人生』に出てくる八方美人男は、気の弱い、ウサギのよう
におどおどした性格のサラリーマンで、何をやってもうだつのあがらない人生をおく
ってきた。
 ある日、彼は交通事故にあって死んでしまうのだが、そのとき彼に手を差し伸べた
のが、はるか彼方の星からやってきた生命体「ハッポービジーン」であった。その生
命体から奇跡のパワーを受け継いで甦った八方美人男は、溢れんばかりの八方美人
的エネルギーを駆使し、次々と奇跡を起こしていく。だが、そんな彼の力に目をつけた
秘密結社が、彼の力を我が物にしようとひそかに動き出していた……。

 主人公の八方美人パワーを中心に、じつにさまざまな要素が、まるで竜巻に巻き込
まれていくかのように吸い寄せられ、渾然一体となってとんでもない方向に物語を押
しあげてしまう、その圧倒的な筆力には、ただただ驚かされるばかりである。そこに
は敵とか味方とかいった区切りは無意味である。それまで味方であった美貌の秘書が
突然主人公を襲い、それまで主人公を狙っていた敵が和平会議を申し込む。おそらく、
本書の展開を正しく読める者は、誰もいまい。そして、それこそが著者のおもうつぼ
なのだ。

 八方美人であること――成り行きとはいえそのあまりに重い使命を背負ってしまっ
た八方美人男は、いったい何のために戦いつづけるのか、と私は考える。だんだん制
御が効かなくなってくる八方美人パワーに引きずられるようにして生きる八方美人男
は、しかしどれだけ危険にさらされようと、その力を手放したりはしない。それは、彼
が人間であるがゆえの意地なのだとも言える。

 「俺は八方美人男なんだ。生まれたときからそうだったし、これからもおそらくそう
 あり続けるだろう。力を得たのは、単なるきっかけにすぎない。俺たちがおよそ人
 間である限り、誰の心の中にも必ず八方美人パワーは宿っているはずなんだ」

 愛と戦い、感動という面白さのなかに壮大なメッセージを託して綴られた本書は、間
違いなく第一級の傑作小説に数えられるだろう。八方美人男が繰り広げるめくるめく
世界を、ぜひとも味わってもらいたい。(1999.08.23)


← いわずと知れたタイトル。
  著者の下には受賞した賞の名前が
  入るときも。



← 枕。時候のあいさつのようなもの。
  お急ぎの場合は、読み飛ばしても
  OK。

← あらすじ。あくまでさわり程度。
  あらすじらしいものがない作品
  の場合に苦労する。



← ここらへんで作品の特長を紹介し、
  とにかく褒めまくる。
  いったん落としてから持ち上げる
  ことも。



← もし可能なら、現代社会の問題と
  結びつけ、かっこいい体裁にする
  箇所。たいてい失敗に終わる。

← ここらへんに来ると書くことがな
  くなって、苦し紛れに引用したり
  する。

← 締めの文。ビシッと決めて、それ
  までの支離滅裂な書評をうやむや
  にしてしまうのが目的。


ホームへ